別宅にはテレビがなくて、朝ドラ仕事がやりにくくて困っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』の第1回めをNHK+で見ましたよ。
1927年(昭和2年)、高知県御免予[ごめんよ]町に朝田のぶ(永瀬ゆずな)は暮らしていた。高知では男勝りの女性を「はちきん」と呼ぶが、のぶはまさに周囲から「ハチキンおのぶ」と呼ばれていた。また、のぶは足も速かった。
この日ものぶは町中を駆け抜けて駅に向かっていた。父・結太郎(加瀬亮)は商事会社に努めていて、いつも忙しく各地へ出張へ出かけている。今日は久しぶりに父が汽車で帰ってくるのだ。それを出迎えるため、汽車と競争するように駅へ一目散に走っていった。
さすがののぶも汽車には敵わず、彼女が駅に着いた時には大方の乗客は汽車を降りた後だった。駅舎の入口には、のぶの知らない乗客たちが立っていた。父はまだ駅舎の外には出ていないようだ。
のぶは速度を緩めずに駅舎の中に入ろうとした。のぶの行く手には、のぶと同い年くらいの男の子(木村優来)とその母親(松嶋菜々子)が立っていた。勢い余ったのぶは、その男の子と衝突してしまった。
その拍子に、男の子は持っていた絵の具を地面にばらまいてしまった。ところが、のぶは謝るどころか、「気をつけや、ボケ!」と罵って去ってしまった。
同じ汽車に乗り合わせていた別の乗客(阿部サダヲ)は、ぶつかってきたのは向こうのほうだと慰めながら絵の具を拾い集めてくれた。しかし、男の子はどこか羨ましそうに、再会した父に甘えるのぶをぼんやりと眺めていた。
あくる日、のぶが小学校へ行くと柳井嵩[やないたかし]という転校生が紹介された。のぶは自分がぶつかった男の子だと気付いた。嵩は東京から来たという。その自己紹介は東京の言葉で、高知の言葉とは明らかに違っていた。地元の子どもたちは嵩の話し方をバカにしてからかった。
言葉遣いが違うばかりか、そもそも引っ込み思案である嵩には友だちができなかった。昼休みも、校舎の裏で一人で弁当を食べていた。その姿が悪ガキたちに見つかり、嵩はそこでもいじめられた。嵩の弁当のおかずは地元では見慣れないハイカラなものだったからだ。悪ガキたちに弁当を取り上げられてしまった。
のぶはその様子にいち早く気づいた。悪ガキたちの間に割って入り、弁当を取り返してやった。のぶは、集団でひとりをいじめるような卑怯者たちが許せなかったのだ。
嵩はのぶにお礼を言った。しかし、のぶは嵩のことを頼りないと思って軽蔑した。自分で弁当を捕物度せないばかりか、女の子に助けてもらい、しかものぶのことを「君」などと気取った呼び方をするからだ。
のぶは、「とっとと東京に帰れ!」と吐き捨てて去っていった。
嵩は気落ちした。自分だって高知に来たくて来たわけではないのだ。東京で幸せに暮らしていたころの家族のスケッチを見て自分を慰めた。
のぶが家に帰ると、羽多子(江口のりこ)は転校生のことをすでに知っていた。その転校生は、街の名士の一人である医者の柳井寛(竹野内豊)の家に住んでいるという。母によれば、嵩の父は急に病気で亡くなったのだという。残された母子ふたりで、親戚の柳井寛を頼って高知に来たということだった。
その話を聞いたのぶは、自分の嵩に対する行為を反省した。他に頼るところがなくて仕方なく来た相手に東京へ帰れと言ってしまったのだ。さらに、彼に深く同情した。自分も父のことが大好きである。きっと嵩も彼の父のことが好きなはずであり、そんな人を亡くした気持ちはどんなだろうかと慮った。
のぶは居ても立ってもいられなくなり、柳井の家へ向かった。
しかし、嵩になんと言ってよいのかも分からず、家の前で逡巡した挙げ句、そのまま引き返した。
しょんぼりと道を歩いていくと、ある商店の前に人だかりができていた。人をかき分けて覗いてみると、中心に嵩が居た。嵩は、町では見かけない知らない男から、籠に山盛りになったまんじゅうのようなものを貰っていた。それを一口かじった嵩は「うまい!」と満面の笑みで答えた。
のぶはそれまで知らなかったが、それはパンという食べ物だった。
同じく、のぶは知らないことだったが、パンを作った男は駅前で崇の絵の具を拾い集めてくれた屋村という男だった。彼は、ひとりでしょげかえっている嵩と偶然再会し、元気づけるために一肌脱いでくれたのだ。