映画『探偵はBARにいる』を見た

大泉洋が、札幌ススキノの便利屋<俺>を演じる映画『探偵はBARにいる』を見てきた。

原作は東直己『バーにかかってきた電話』。2011年現在、11作ほど出ている<俺>シリーズの2作目だ。
僕はこのシリーズが大好きでほとんど読んでいる(文庫で追いかけているので、単行本で出ている最新作だけは読んでいない)。僕は札幌の街が大好きだから、そこが舞台になっているシリーズも自然に気に入る。著者も札幌在住で、文中に出てくる流暢で正確な北海道弁にも好感が持てる。ススキノを根城にする主人公は、ニヒルな伊達者なのだが、たまに抜けているところもある。なかなか味わい深いキャラクターだ。

大好きなシリーズの映画化とあっては、当然楽しみになる。主人公を演じるのが、今や北海道を象徴する俳優の大泉洋であるということでも期待は高まる。そして、今回の映画の原作になっている『バーにかかってきた電話』はシリーズの中でもお気に入りの一つだ。

原作が大好きなだけに、映像化に対しては少々警戒もしていた。
しかし、先週の公開以来、ネット上の評判をいくつか拾い読みしたところ、いずれも上々の評価だった。
だから、期待に胸ふくらませて見に行った。

僕が見たのTOHOシネマズ海老名で、水曜日の昼の回だった。スクリーン1というかなり大きなスクリーンだったのだが、観客は半分以上は入っていたようだ。なかなかの入りだと思う。ただ、毎月14日はTOHOシネマズのサービスデイで、料金が一律1000円である。そのせいで通常よりも混んでいた可能性もあるが、それを差し引いても人気なのではないかと思う。

映画は、東映のロゴに札幌市時計台の鐘の音がかぶせられて始まった。ロゴが消えると、ススキノの観覧車ノルベサが夜空をバックに光る映像だった。
僕にとってススキノの象徴といえば交差点のニッカの看板(トランプの王様みたいなやつ)をおいて他になかったのだが、言われてみれば確かにノルベサもありだよな、と思い直すことにした(なお、ニッカの広告はその後何度も映画に登場する)。

原作『バーにかかってきた電話』では、そのタイトル通り、バーに電話がかかってきたところから始まる。
しかし、映画では、登場人物の紹介シーンがいくつか続く。原作では、主人公(と読者)が後に知ることになる事件が、早々に披露される。
原作好きにはちょっと気に入らない展開であった。しかし、初映像化とあっては、登場人物の特徴を観客に知らしめるためには仕方ないことだろうと、我慢して見ていた。

原作の主人公は、いつも色の濃いスーツに濃いカラーシャツを着用し、ネクタイもビシッと締めているという設定になっている。毎朝、クリーニング屋に出かけ、昨日着た服を預け、その日に着る服を受け取るというルーティーンになっている。そのついでに、行きつけの喫茶店モンデで飯を食うのが定番。
ところが、映画の主人公は、丸首のシャツに綿パンを履き、革ジャンを羽織るという姿だった。原作にあったダンディズムは皆無だった。主人公は自分の信念に基づいてバカバカしく危険な行動をとるのだが、いつもバカバカしいほどに服装を整える男がバカバカしい信念に基づいてそれをするから様になっていた。映画の中の主人公は、カジュアルな服装でそれをやるものだから、チンピラの単なるその場の思いつきで行動しているように見えて、かなり残念だった。

それから、携帯電話と時計。
確か、原作の主人公は、時計を持つのが嫌いだったはずだ。時計は持っていなくても、札幌の街のどこに街頭時計があるか知り尽くしていて、それを見るという設定になっていたように記憶する。彼が時計を見る場所というのが、札幌を知っている人間なら、思わずニヤリとできる場所で、それがまた楽しかったように思う。ところが、映画の主人公は腕時計をしていた。しかも、それがストーリーのちょっとしたアクセントにまでなっている。これはどうなのか?
携帯電話も、原作の主人公は大嫌いだった。携帯電話など持ちたくないから、行きつけのバーの名刺を配り、そこを連絡先に指定している。映画の中でも基本的にそれを貫いているのだが、あるシーンで遂に携帯電話を所有してしまった。しかも、それを使うことによって物語が展開した。おかしいだろ、おい!原作では、携帯電話を持っていなくても、ちゃんと同じことができるようになっていた。なんでわざわざ携帯電話を持たすかね?しかも、連絡をとる方が逆。むむぅ。

なお、原作の時代設定は、さすがに腕時計はあったが、携帯電話はそれほど普及していない時代である(シリーズが進んで、携帯電話の時代に突入したが)。映画の時代設定は現在である。

ただし、こういった感想は、原作原理主義に基づくものだ。映像化にあたって、別のキャラクタ造形を行ったと言われれば、納得できる範囲ではある。大泉洋が、本シリーズの主人公に新たな肉付けを行ったと思えば、別段それほど腹は立たないと言えなくもないが。
#それでも、携帯電話を使うシーンは納得いかん。

それに、どうも今回の映画は、映像シリーズ化を狙っているフシもある。
ほとんどチョイ役で、物語の展開に関わり合いのない登場人物が妙に細かく描写されていたりする(たとえば、モンデのウェイトレス)。連続ドラマなんかで、箸休め的に出てくるキャラっぽかった。テレビドラマ化されるんじゃないかなぁ。
主人公の相棒・高田(松田龍平)はオンボロ車に乗っていて、肝心な時にエンジンがかからない。その車に関して、エンディングで「次回までにはちゃんとしておく」とかなんとか言っていた。「次回」っつーのは、別の映像化を指していると考えられなくもないわけだ。

原作主義の僕には今ひとつな感じのする映画でしたが、原作を知らない人なら、無我の境地で楽しめる映画ではないかと思われます。
ただし、最近の映画にしては、画面に映る血液多め、おっぱい(含乳首)多め、画面がブレるシーン多め、なのでちょっと心の準備をしておくのがよろしいかと思います。

また、原作主義の当方でも、花嫁のさいごの手紙のシーンはちょっとうるっと来ました。原作の山場をどう描くのかと思っていたのですが、シンプルに抑えた演出で、それが却って良かったように思います。

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