糸子の晩年期は尾野真千子から夏木マリに入れ替わること(3月3日より)が発表され、驚くには驚いたが、「清濁併せ呑むっつーか。まぁなんだ、その、まさに『だんじり』っぽく荒々しく突っ走る超展開は、このドラマらしくていいんじゃねーの?今回のスタッフなら視聴者の予想をはるかに超える演出で、度肝を抜く交代劇を見せてくれそうじゃん?かえって楽しみ。」と思う当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第93回目の放送を見ましたよ。
組合事務所に呼び出された糸子(尾野真千子)は、組合長・三浦(近藤正臣)から周防(綾野剛)の本心について話を聞いた。周防は原爆の後遺症に苦しんでいる妻を見捨てることはできないが、本心から強く糸子に惹かれているという。
話が終わって帰ろうとした、まさにその時、周防が事務所に現れた。後でわかったことだが、それは誰が仕組んだものでもなく、全くの偶然だった。糸子、周防、三浦の誰も予期していなかったことで、それぞれがそれぞれに慌てた。
糸子は取り乱して、すぐに立ち去った。
けれども、家に帰る道すがら、糸子は嬉しかった。このような偶然はそうあることではない。ふたりが運命によって結び付けられている証拠だと思われた。
一方で、周防は糸子のことを追いかけて来なかった。糸子はそれが残念であり、不満でもあった。
家に帰り着くと、千代(麻生祐未)が店の前に勝手に台を出し、手縫いのバッグや人形用の洋服などを並べて売っていた。話を聞くと、娘たち(野田琴乃、二宮星、杉本湖凛)が作った小物だという。糸子がピアノを買ってくれないので、自分たちで金を貯めて購入する計画を立てたのだという。
糸子が商品を吟味してみると、小学生が作ったにしては大人顔負けのできだった。一瞬感心する糸子であったが、すぐに正気を取り戻し、店の前を片付けてしまった。
子供たちが学校から帰ってきた。
商品が全てなくなっているのを不可解に思った娘たちだったが、千代は全て売り切れたのだと嘘をついた。代金も千代が用意して渡した。それに気を良くした娘たちは、商品の補充をするため、夜更かしして小物作りに熱中した。
糸子が寝るように叱っても聞く耳を持たない。糸子が強引に布団を敷き始めると、千代が布団の中に隠していた子供たちの商品が出てきた。それで千代の嘘が発覚し、子供たちは一気にやる気を無くしてしまった。糸子も千代の杜撰さに呆れるばかりだった。
しばらくして店に電話があり、糸子は周防に呼び出された。周防に会えることが嬉しい糸子は、鏡の前でどの洋服を着ていこうかとあれこれ迷った。
しかし、どの洋服にも娘たちのいたずらが仕掛けられていた。ピアノを買ってくれと書いた札が、全ての洋服のあらゆる場所に縫いつけられていたのだ。
糸子は和服で出かけざるを得なくなった。
近所の喫茶店で周防に会った。
すると、周防は足を骨折していた。全治1ヶ月だという。北村(ほっしゃん。)の嫌がらせで嘘の悪評を流された周防は繊維業界から干されている。そのため日雇い労働の仕事をしているのだが、その仕事もできなくなって困っているとのことだった。
周防は、組合事務所で糸子とばったり会った時のことを説明した。
ちょうど怪我をした直後で、病院に行く途中に立ち寄ったというのだ。もう日雇い労働はできなくなったので、三浦組合長に頼み込んで仕事を世話してもらうつもりだったのだ。
しかし、三浦は糸子に頼めと言うばかりで、仕事を世話してくれなかったという。そこで、恥を偲んで糸子に頼みに来たというのだ。
実は周防は、三浦との話の内容のほとんどを隠していた。
三浦は周防の仕事の世話をしようと思えば、いくらで世話することができた。しかし、あえてそれをせず、糸子の所へ行くことを強く勧めたのだ。
三浦によれば、自分の好きな女から愛の告白をされることなど滅多にあることではない。躊躇することなく、運命に従えというのだ。周防は人の道から外れることをしようとしている。しかし、人の道は外れてもよく、外れた先で苦しみ、あがき、悩んでこそ人生だと主張した。
それで、周防は糸子に頼ることを決めた。もちろん、三浦から聞いた話は伏せて。
糸子は、翌日から周防を雇うことを決めた。当面は婦人服を手伝ってもらい、少しずつ紳士服も手がけるという青写真を描いた。
帰宅してひとりになった糸子は、まだ迷っていた。
自分が周防と一緒に働くことは、良いことなのか悪いことなのかわからなかった。
しかし、唯一自覚できたことは、自分が周防と一緒に働くことをずっと夢見ていたという気持ちだけは間違い無いということだった。
「外れても 踏みとどまっても 人の道」
三浦組合長の五七五。
適当な写真と一緒に提示してカシャッと一句!フォト575をパロディする演出があっても良かったんじゃないか?良くないけど。
ストーリーが不倫ドロドロ・モードになっていて、世間の評判はあんまり良くないみたいですが。
僕は好きですね、こういうの。いいぞ、もっとやれ。葛藤があってこその「ドラマ」じゃないか。
以前には、「女性差別」、「青二才として自分が認められない」などの仕事上の葛藤があった糸子ですが、仕事が順調に回り始めて、新たな葛藤が生まれてきたという話の流れなわけで。それはそれで大いにありじゃないか。
優等生的にすすめるなら、「子育てと仕事の葛藤」という路線に行くのかもしれないが、そうじゃない超展開な朝ドラだからこそ、本作は見る価値があるわけで。
清濁併せ呑みたい。