週刊アスキー2011年12月20日号の大槻ケンヂとみうらじゅんの対談の中で(これに先立つふたりの対談はwebで読める。大笑い必至)、仕事場にやって来た編集者の前で原稿を書くことを「実演!」などと表していたのだが、それと同じように、泊まりがけでやってきた静岡県の宿が相部屋なので、本まとめ記事(のメモを取る様子)も同宿の人の前で実演せざるを得なかった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第129回目の放送を見ましたよ。
東京で直子(川崎亜沙美)のファッションショーが行われる。糸子(夏木マリ)は身の回りの世話係と称して里香(小島藤子)を連れていくことにした。
里香は優子(新山千春)の次女だが、東京での生活に嫌気がして、数日前から糸子のところに転がりこできたのだ。里香は、どさくさに紛れて優子のところへ送り返されるのではないかと警戒した。しかし、糸子はそんなことはしないという。その代わり、夜ふかしばかりして、日中はダラダラしている里香に腹を立て、ごはん分くらいは働けと言うのだった。
しぶしぶながら、里香は東京について来た。直子の華やかなファッションショーの舞台裏に案内してもらっても、ふてくされて隅の方に佇んでいるだけだった。けれども、いざファッションショーが始まると、仏頂面ではあったが、興味を示してモニタ画面を見つめた。
直子のファッションショーは大成功だった。直子だけではなく、多くの売れっ子デザイナーが群雄割拠する時代となった。デザイナーズ・ブランドの洋服がブームとなり、若者たちの間で大人気だ。糸子は、日本中の人々がお洒落を楽しめる時代になったことを感慨深く思う。
しかし、これだけ自由におしゃれができる時代なのに、里香はどういうわけか毎日ジャージ姿だ。直子のファッションショーに顔を出すにあたっても、普段着のジャージでやってきた。糸子には里香の気持ちがわからなかった。
一方、直子はそんな里香を見て愉快になった。自分が初めて東京に出てきた時に学校の制服ばかり着ていてバカにされていたことを引き合いに出しつつ、ジャージを着続けるつもりなら意地を通せと応援するのだった。
糸子と里香は、東京に3日間滞在した。糸子は里香を優子に引き合わせない代わりに、里香を毎日あちこち連れ出した。夜ふかしできないほど観光したおかげで、里香の生活リズムは昼型に戻った。岸和田に帰ると、ピタリと夜ふかしをやめてしまった。
最近、オハラ洋装店では洋服だけではなく、和服の勉強会を開いたりもしている。
その勉強会へ、生地問屋の跡取り息子の河瀬譲(川岡大次郎)が顔を出した。彼の一家と糸子には長い付き合いがある。戦争中、金糸入り布地の使用が禁じられた。金糸入り生地を大量に抱えて困っていた河瀬の曽祖父を助けたのが糸子だった(第52回)。その時の縁が今でも続いているのだ。
河瀬譲は、友人で京都の呉服屋の若旦那・吉岡(茂山逸平)を連れてきた。しかし、糸子にはどっちも頼りないドラ息子に見え、できえれば付き合いたくないと思うのだった。挨拶もほどほどに相手にしなかった。
後日、吉岡が一人でオハラ洋装店にやって来た。初対面で冷たくされたのにも関わらずやって来る度胸と懲りない態度を面白がり、糸子は少しだけ話を聞くことにした。吉岡は糸子に反物を見せた。白地に白糸で刺繍された生地は美しく、糸子は一目で気に入ってしまった。
その様子を見るやいなや、吉岡は床に土下座を始めた。間違えて100反も仕入れてしまったので、助けて欲しいというのだ。戦時中に金糸入り生地100反を引き受けた時のことを思い出し、糸子は呆れてしまった。
家で集中して見ていなかったせいもあるのかもしれないが、どうもドラマの方向性が見えなくて、面白くなかった。糸子が直面する問題が何なのか提示されていないので、どうにも話を追いかける取っ掛かりがないのだ。
洋裁師として娘たちをライバル視して戦うという話でないし、娘や孫の人間的成長を手助けする話でないし、時代の変化に翻弄されるという話でないし、亡くした人々を弔うという話でないし、困っている人を見かけて一肌脱ぐという話でないし。
かといって、そういったことが一切描かれていないかというと、それぞれちょっとずつつまみ食いをしている感じで、どうも落ち着かない。
ピンバック: [alm-ore] NHK『カーネーション』第138回