フジ『北の国から』第14回

最近、伊丹十三のエッセイ集である『ヨーロッパ退屈日記』やら『女たちよ!』やらを読んでいるわけだが、クールでダンディでちょっとガンコなんだけでユーモアのある著者の様子が本作の吉野によく重なるなぁと思う当方が、BSフジ『北の国から』の第14回を見ましたよ。

* * *

純(吉岡秀隆)と雪子(竹下景子)が東京の令子(いしだあゆみ)を見舞って4日目。ふたりが病院に行くと、令子は薬で眠ったままだった。雪子は純を残して、病室を後にした。

雪子は吉野(伊丹十三)とふたりだけで会いに行ったのだ。
雪子は、令子の病状が良くならないのは入院している病院に問題があると考えていた。その病院は吉野の縁故であり、令子が彼に気兼ねして転院したがらないことも知っていた。それで、まずは吉野を説得する必要があると考えたからだ。
吉野は院長と直接話してきた結果を伝えた。令子の病状については可能性を全て考慮して検査をしている。それでも病原が見つからないので、神経や精神の問題であると考えるのが妥当だという。病院側としても、令子の転院を妨害しているわけではないし、雪子と令子がどうしても希望するなら送り出すつもりではある。そういったことを、吉野は嫌味混じりに説明した。
吉野は話題を変え、純に言及した。翌日、純は北海道に帰ることになっている。純と別れることで、令子の病状が悪化するのではないかと詰め寄った。令子のためにも純を東京に引き止めておくようにと責めるのだった。しかし、雪子はそれには何も答えなかった。

純は病室でじっと令子の寝顔を見ていた。
令子が目を覚ました。純の姿を見つけると、今見ていた夢の話を始めた。夢の中にも純がいて、彼のお気に入りの5段変速ギア付きの自転車に乗っていたのだという。昔純がやっていたように、曲乗りばかりするので令子はハラハラと見ているという夢だったという。東京時代に純が乗っていたその自転車は、今でもアパートの物置にしまってあるという。そこまで喋ると、令子は再び眠りに落ちた。

令子が眠ってしまったので、純はアパートに戻った。そして、令子が話していた5段変速自転車を物置から引っ張りだした。半年放置されていただけで、自転車はすっかり錆びてみすぼらしくなっていた。しかし純は紙やすりで錆を落とし、油をさして、愛おしそうに整備した。アパートの前で作業を行なっていると、同級生だったタカシが迎えに来たので、ふたりで自転車に乗って出かけた。

以前のタカシは、純と同じように変速ギア付きのスポーツタイプの自転車に乗っていたはずなのに、今日はもっとモダンな自転車に乗っていた。聞けば、お年玉を貯めて新調したのだという。もう変速ギア付きの自転車は流行遅れだから乗らないのだという。タカシの家に行くと、純の知らないプラモデルがたくさんあった。例えば、スペースシャトルというものを見せられたが、純にはピンとこなかった。
それからタカシは、高校生の兄が隠し持っているというヌード写真集を見せた。純は初めて見る女性のヌード写真に驚き、罪悪感を抱いた。タカシは餞別だと言って強引に純に引き渡した。純は返そうとするが、タカシは力づくで押し付けてくるのだった。しばらく押し問答が続いたが、その騒ぎが誰かに見つかっては困ると思い、純は渋々もらって帰ることにした。
タカシの家を出る時、彼の古い自転車が打ち捨てられているのが見えた。タカシによればまだ使えるが、流行遅れだから乗らないのだという。
また、渡されたヌード写真集はカバンの底板の下に隠した。帰りの飛行機の手荷物検査場で見つかって叱られるのではないかと思うと、純は心配でならなかった。

アパートでヌード写真集をカバンに隠し終えると、純は令子の病室に戻った。令子は、翌日に純が帰ることをしきりに残念がっている。病気が治ったら北海道に遊びに行きたいなどと言うのだ。
それを聞いていた純は、令子が以前に麓郷へ来たこと(第9回)を指摘した。令子は隠していたつもりだろうが、純も螢も気づいていたと告げた。パジャマに令子の匂いがついていることに螢が気づいたのだと説明した。令子は涙ぐんだ。
純は、令子は純が東京に残る事を望んでいるか質問した。令子は肯定も否定もせず、純の方こそ東京に残る気があるのかと質問した。ところが、純がその答えを言う前に、雪子が病室に戻ってきて会話は打ち切りとなった。

病院を辞した純と雪子は、喫茶店で夕食を摂った。
純は、明日の飛行機には乗らないことを雪子に表明した。五郎(田中邦衛)は怒るだろうが、病気の令子を残しては行けないと言うのだ。また、令子に情が移り、五郎との間で板挟みになるくらいだったら、東京になど来るべきではなかったと後悔の念を表明した。
その時、雪子は冷淡だった。五郎は怒らないから、純の好きなようにすればいいと冷たく告げた。むしろ、五郎はそうなることを予期していたと言う。雪子の態度に怯えた純は、雪子に許しを請うた。けれども雪子は「私には関係ないわ」とさらに冷たく突き放すのみだった。

その晩、純は五郎へ手紙を書いた。まずは、その日起きた当たり障りの無い内容を綴った。友達のタカシとキャッチボールをしたり、自転車を乗り回したりしたことの報告だ。

手紙を書きながら、純は一家で東京に住んでいた時の事を思い出した。
当時、純の友達の間で変速ギア付きの自転車が流行っていた。ところが、純は自転車を持っておらず疎外感を抱いていた。令子に相談し、買ってもらう約束を取り付けた。ところが、その話を聞いていた五郎が、ゴミ捨て場からみすぼらしい自転車を拾ってきた。自分で修理してペンキを塗り直し、それを純に与えた。純は大いに不満だったが、自転車が無いよりはマシだと思い、それに乗って仲間の輪に入った。
ところがある日、警察官が家に訪ねてきた。自転車の元の所有者から訴えがあったので、回収するという。事を穏便に済ませたい令子は即座に謝って差し出した。しかし、五郎は納得がいかなかった。1ヶ月以上もゴミ捨て場に放置されており、そのままでは到底使用できない自転車だったのに、今頃他人が所有権を主張するのはおかしいと言って警官に食ってかかった。さらに、流行遅れだからといって、まだ使えるものをすぐに捨ててしまう風潮も気に入らないなどと自説を打った。警官は怒りだすが、令子が必死に謝ってその場はなんとか収まった。そして、それから何日かして、令子が真新しい5段変速ギア付き自転車を買ってくれた。

その時の純は、五郎は物事の分からない田舎者で、話が分かるのは都会的な令子の方だと思った。
しかし、不思議なことに、今では五郎の気持ちがわからないでもなかった。それというのも、麓郷での半年間の生活を経験したからだ。その生活は、全ての必需品を自分たちで作り出し、様々な工夫を凝らして営んでいるものだ。水道や電気まで自給自足している。純自身はそんな生活に不満が多いし、ほとんど何も手伝いはしなかった。それでも、五郎の行き方のわずか一部でも理解し始めていることを自覚した。

純は、五郎に宛てて書いていた手紙を反故にした。そして、当初の予定通り北海道へ戻ることを決めた。
純は自分で自分の気持ちがわからなかった。五郎との約束はそれほど重要なわけではないし、東京での暮らしが性に合っているのは間違いないし、病気の母のそばにもいたい。しかし、なぜだか無性に麓郷へ帰らなくてはならない気がした。
令子に会えば決意が揺らぐ。それが分かっていたので、純は翌日母には会わず、直接空港へ向かった。令子に、吉野のことが嫌いではないと伝えられなかったことだけが心残りだった。

麓郷に帰って1週間ほどで、純は元の生活に戻った。令子のこともほぼ気にならなくなった。純の留守中、螢と五郎はUFOを見たという。純はあまりにバカバカしくて、まじめに取り合わなかった。

純は、東京から持ち帰ったヌード写真集を正吉(中澤佳仁)とふたりで閲覧した。ふたりは、女性の裸を見ると陰茎が勃起することについて話し合った。その現象については気づいていたが、どうしてそうなるのかふたりにはわからなかった。正吉が杵次(大友柳太朗)に質問したところ、「フキノトウが春に大きくなるのと同じ事だ」という返事があったという。純と正吉には意味がさっぱりわからなかった。
さらに正吉は、自分の経験談を話し始めた。最近結婚した夫婦の家のそばを通りがかった時、中から新婦の笑い声と泣き声の混じったような声が聞こえてきたのだという。それを聞いた時、正吉の陰茎が勃起したのだという。純にはそれがどういうことか想像できなかった。そこで、その日の夜、ふたりで声を聞きに行くことにした。

夜になって、純は星の観察に行くと嘘をついて家を出ようとした。しかし、螢も星を見たいといって付いてきてしまった。純と正吉は走って振り切ろうとするが、螢は足が早くて逃げきれなかった。走り疲れた3人は、野原の上に倒れ込んだ。
その時、夜空に大きな光が見えた。それは色が変わったり、ジグザグに動いたりしていた。3人はUFOに違いないと思い、追いかけた。しばらく追いかけると、森の上に停止して、まるで誰かと会話をするように色が変わり、柔らかく光った。呆然と眺めていると、UFOは突如舞い上がって消えてしまった。

あっけにとられていると、UFOがいたあたりから誰かが歩いてくるのが見えた。3人は慌てて物陰に隠れ、様子を伺った。すると、担任の凉子先生(原田美枝子)が朗らかに「365歩のマーチ」の鼻歌を口ずさみながら歩き去った。涼子は宇宙人と親しい間柄なのかもしれないし、そもそも宇宙人が涼子に化けているのかもしれないと思われた。
自分たちが秘密を見てしまったことを宇宙人に知れると危険が及ぶように思われた。だから、今夜のことは3人の秘密にした。

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フジ『北の国から』第13回

留守にしていたせいで放送に4日ほど遅れをとってしまい本作についてはもう追いつく見込みはなくてしょんぼりしているし、『おしん』の方に関してはもう全く余裕が無いので諦めようかとまで思いつめた当方が、BSフジ『北の国から』の第13回を見ましたよ。

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1981年(昭和56年)5月。
螢(中嶋朋子)は山でフキノトウを採り、野鳥やキツネ、満開の桜の様子などを見て春の到来を感じた。

一方、その日の朝、純(吉岡秀隆)は雪子(竹下景子)と共に東京へ旅だった。令子(いしだあゆみ)が病気で入院したというので、見舞いに行くことにしたのだ。螢は学校があると言って来なかった。純は金曜日に東京に来て、翌火曜日に帰る予定であった。

令子は、純が突然現れたことに驚きつつも、大いに喜んだ。純の滞在が短いと聞きつつも、相好を崩した。

一方の雪子は、令子の入院している病院の雰囲気を訝しんだ。あまり大きくはない病院だからだ。その上、令子は胆石で入院したはずなのに、レントゲン検査してみると何も写らなかったのだという。令子は、神経性のもので心配はないと笑って答えるのだった。

美容室の従業員が、入院中の令子の身の回りの世話をしていた。彼女は雪子にこっそりと事情を話した。
令子の病気の原因は分からないが、ひどい痛みを伴っているという。苦しむとモルヒネを投与するという対処療法しか行われておらず、入院してからもひどくなる一方なのだという。もっと大きな病院で精密検査を受けた方が良いと勧める人もいるが、令子は聞く耳を持たないのだ。それというのも、令子の恋人・吉野(伊丹十三)が紹介した所だから。吉野の上司の親戚の病院であり、彼の立場が悪くなるのを懸念して転院しないらしいのだ。
雪子は、令子に転院を勧めた。しかし、やはり令子は何かと別の理由を述べて、ごまかすのだった。すると、薬の切れた令子は痛みに苦しみ始めた。すぐに医師が呼ばれ、注射を打たれると眠ってしまった。純は、そんな母の様子にショックを受けた。

その夜、雪子は東京の友人を訪ねた。彼女は元看護師で、夫は勤務医である。彼女に令子の状況を相談したところ、やはり転院を勧められた。砂のように小さい胆石は発見が難しいので、大きな病院できちんと検査した方が良いという意見だった。彼女の働いていた病院でも、似たようなケースがあり、その患者は痛みに苦しみながら死んでいったのだという。彼女の夫は、令子の受け入れ体制を整えてくれた。
令子の件が落着すると、話は雪子の恋人の方へ向かった。雪子が北海道で暮らし始めた理由は、現地に新しい恋人ができたせいであろうとカマをかけられた。雪子は何も答えなかったが、脳裏は草太(岩城滉一)のことでいっぱいになった。

純と雪子は、令子のアパートに滞在することとなった。そのアパートは、黒板家が以前に住んでいた場所から近かった。
雪子が知人を尋ねて留守の間、純は東京時代の同級生・恵子(永浜三千子)に会いに行った。彼女は英語塾に通っているというので、それが終わるまで教室を覗くことにした。ところが純は、恵子の姿が見れた喜びよりも、自分が取り残されてしまったショックに苦しめられた。以前、純よりも出来の悪かった友達が、今では見違えるようにスラスラと英語で受け答えしていた。たった半年の間で、自分がひどく遅れてしまったと思った。辛くなり、その日は恵子に会わずに帰ってしまった。

翌日の土曜日の朝、純は登校途中の恵子を待ちぶせた。恵子は純の姿を見るなり、再会を喜んでくれた。それが純には嬉しかった。放課後、恵子の他、懐かしい友だちが数人集まった。
けれども、純は彼らの話の輪に入れなかった。彼らは最新のテレビや音楽の話で盛り上がっているのだが、それらの情報から隔離されている純には何もわからないのだ。隅で一人でヘッドフォンをつけて音楽を聞かせてもらっていた。不意に、北海道の野生動物の話を聞かれた。純は、ここぞとばかりに、ホラを吹いた。リスやキツネはもちろん、クマを間近で見ることも日常茶飯事だなどと言ってしまったのだ。東京の友達たちは感心して聞いてくれたが、純は終始傷ついていた。自分がすでに東京の人間ではなくなってしまっていることが悲しかったのだ。

その後、純は令子の病室に向かった。そこでは雪子と令子が言い争いをしていた。勝手に転院の準備を進めた雪子に対して、令子が腹を立てているのだ。令子は決して承諾しなかったし、吉野に話したら許さないと声を荒げた。
その時、ちょうど吉野が見舞いに現れた。令子は、純に対しては吉野のことを高校時代の友人だと紹介するに止めた。吉野は気さくに馴れ馴れしく、純に話しかけた。純は、吉野のことが気に食わなかった。特に、自分の母のことを名前で呼び捨てにしていることが特に気に入らなかった。

翌日曜日。
病院に行こうとしていたら、アパートへ電話がかかって来た。吉野が純を映画に連れて行ってくれるという。純は吉野と一緒に出かけることなどごめんだと思ったが、子どもなりに気を使って大げさに喜んでみせた。純は渋々出かけていった。映画は『宇宙戦艦ヤマト』だった。昨日、東京の友達たちが見たいと言っていた映画だ。彼らより先に見れることで鼻が高い思いがした。ところが、アニメ映画に退屈した吉野は眠りに落ちてしまい、大きないびきをかきはじめた。いくら揺すっても起きないし、周囲の観客からは白い目で見られるので、純はいたたまれなくなり映画の途中で席を立ってしまった。

その後は、遊園地に連れて行ってもらった。吉野は、ジェットコースターなどに付き合って乗ってくれた。
遊園地には、パンチングマシンがあった。拳で殴りつけると、その威力に応じた評価がなされる遊具だ。純が挑戦するも、ほとんど最低の評価しか得られなかった。不良たちがやって来て、純をバカにして見せつけるように殴りつけた。すると、かなりの好成績が得られた。純は感心した。
その様子を見ていた吉野が、自分も挑戦しようと進み出た。不良たちからは、「おじさんがやっても怪我をするだけだ」などとバカにされるが、吉野は無言で挑んだ。すると、不良たちの成績を越えたのはもちろん、パンチングマシンの最高評価を獲得した。不良たちは目の色を変えて吉野を称えた。

はやし立てる不良たちを尻目に、吉野はほぼ無言で立ち去った。唯一、ボクシング経験があるのかと問われ、「真似だけな」と答えるに留まった。純は、吉野のその一言に惚れた。実力者なのに、クールに謙遜する態度がとてもかっこよく見えたのだ。たとえば、同じくボクシングの練習をしている草太なら、軽薄な表情で聞かれもしないことまでベラベラと話すことだろうと想像された。それとは全く違う吉野の様子が素敵に思えた。

それでも、純は自分が吉野のことを気に入り始めたことを表に出すことははばかられた。
食事をしながら、令子や純自身の今後の事を聞かれたが、素っ気ない喧嘩腰の口調で答えた。自分は数日のうちに北海道に帰るので、あとは吉野にすべて任せると言うのだった。
ところが吉野は引き下がらなかった。男が一人でいることと、女が一人でいることはそもそも意味合いが違う。そうであるにもかかわらず、黒板家では令子だけを一人ぼっちにして、父がふたりの子どもを連れて行ってしまった。それは不公平だと言い、純が東京で令子と共に暮らすべきだと説得した。
純は、母には吉野がいると指摘した。純は、令子と吉野の交際については知らんぷりをするつもりでいたが、つい勢いで口走ってしまった。吉野がもう二度と令子に会わないと約束するなら、自分は母と一緒に暮らすと言い加えた。吉野は、それについてはどうなるかわからないと答えた。わからないことについては約束できないと、理路整然と答えた。
純は、大人相手にすごい話をしていると思った。吉野が令子と結婚する気でいることもわかった。一方で、もう吉野のことは嫌いではなかった。

その後、純は一人で令子の病室に来た。吉野のことを聞かれ、純は楽しかったし、良い人だったと答えた。令子は純のためにガンダムのプラモデル(1/60; 当時2,500円)を用意しており、純は大喜びした。ただ、それと引き換えのように、令子は純が本当に北海道へ帰るつもりかと聞くのだった。純はプラモデルに熱中するふりをして何も答えなかった。

直後、恵子が見舞いに来てくれた。ふたりで外に遊びに出かけた。
恵子も純が北海道に帰ることを残念がった。一人ぼっちになる令子もかわいそうだと付け加えた。恵子と彼女の母は、純が自宅に下宿してもいいと相談していると打ち明けた。父は外国に単身赴任しているし、兄も大阪に下宿している。母子2人きりで寂しいので、純の居候は大歓迎なのだという。なんなら、令子が退院したら一緒に住んでも良いと言うのだ。令子は美容室の仕事で忙しいから、家事の負担が減るのは嬉しいはずだと述べた。

純は北海道に帰ることを迷い始めた。
夜、雪子に正直に相談した。母のことが心配になってきたこと、吉野に父だけが子どもを引き取ることは不公平だと言われたことなどだ。そして、自分は答えを保留しておきたいのだが、一度北海道に戻って五郎(田中邦衛)の管轄下に入ってしまうと、他の選択肢は全て奪われてしまうのではないかと心配しているのだ。もちろん、五郎や螢と話し合う必要はあることも理解しており、純一人ではどうしていいのかわからなくなってしまったのだ。
結局、雪子に思いを打ち明けても、結論は出なかった。

その頃、麓郷では中畑(地井武男)が五郎を訪ねてきていた。中畑は、東京に言った純のことを案じていた。母や東京に未練のある純のことだから、令子に東京に残ってくれと泣きつかれたら帰ってこないだろうと言うのだ。それに対して五郎は、その時は仕方ないと一言寂しそうに答えるだけだった。

道端で花を摘み、学校から機嫌よく帰ってきた螢は、戸外からふたりの話を盗み聞いてしまった。螢は楽しい気分がいっぺんで台無しになってしまった。

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