NHK『あまちゃん』第130回

サントラCD『あまちゃん 歌のアルバム』には、初回特典として、GMTメンバーのカラーロゴステッカーがどれか1枚ランダムに封入されているのだが、うちに届いたのは喜屋武エレン(蔵下穂波)の紫色だったことをご報告申し上げる当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第130回めの放送を見ましたよ。

『あまちゃん 歌のアルバム』に付属していたGMT推しメンカラーロゴステッカー

『あまちゃん 歌のアルバム』に付属していたGMT推しメンカラーロゴステッカー


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第22週「おらとママの潮騒のメモリー」

春子(小泉今日子)が東京に帰ってきた日は、映画『潮騒のメモリー: 母娘の島』の撮影最終日でもあった。春子は自宅に荷物を置くと、撮影スタジオへ直行した。

撮影最終日は、映画のクライマックスシーンの撮影が行われていた。ヒロインが母に別れを告げて島を去るシーンであり、アキがNGばかり繰り返していたシーンだ。

本番中、鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)は突然台本を大きく逸脱し、アドリブで演技を始めた。セットの中を勝手に歩きまわり、タンスを勝手に開けたりした。タンスの中にはセット作成用のペンキなどが収められており、カメラに写りこむとNGになってしまう。スタッフは慌てたが、監督の荒巻(古田新太)は鈴鹿の演技に流れを任せることとし、ガラクタが写らないよう上手くカメラを回すよう指示した。アキ(能年玲奈)も大いに慌てたが、鈴鹿のアドリブに即興で応じた。

鈴鹿は、タンスの中からボロ雑巾を取り上げた。それをアキに手渡し、「辛いことがあったら、これで涙を拭け」と言った。それは、アキが北三陸を出る時に夏(宮本信子)に言われたとのそっくりな言葉だった。夏は「北の海女」手ぬぐいをアキに渡し、同じことを言ったのだった。その時のことを思い出し、アキは感極まった。自分の経験と演技が重なりあい、感情のこもった名芝居をすることができた。

そのシーンの撮影が終わった。すぐさま映像を確認し、カメラワークを気に入らない荒巻はNGにしようとした。しかし、鈴鹿はアキの演技が最高だったと褒め、そのまま使用するよう主張した。鈴鹿に頭の上がらない荒巻は、それに従わざるを得ない。こうしてカットが採用され、撮影は全て終了した。

花束の贈らえたアキは、スピーチを行った。最初こそ自分の拙い演技が皆に迷惑をかけたことを謝り、憧れの女優である鈴鹿ひろ美と共演できたことに感謝を述べていたが、次第に遠慮のない物言いとなった。荒巻が一度は自分を干したことをあげつらい、それにも関わらず自分をヒロインに抜擢するなど見どころがあると偉そうに述べた。鈴鹿ひろ美のことを何かとめんどくさい性格だと腐し、それさえ直せばもっと良い女優になれるなどと不遜な発言をした。立ち会っていた水口(松田龍平)はヒヤヒヤしたが、みんなは笑って聞き流してくれた。

スピーチの最後で、そこにはいない春子への感謝も述べた。春子は何かと口やかましいく、自分と衝突してばかりだったと言う。しかし、実の母子だからこそ言いたいことも言えるのであり、それを許してくれる母は立派なものだと締めくくった。ちょうどスタジオに到着した春子は、陰からそれを聞くことができた。春子は一人でにんまりとするのだった。

しかし春子は、水口を見つけるや否や、彼を人目のつかないところに連れ込んだ。ユイ(橋本愛)から、アキと種市(福士蒼汰)が付き合っていると聞いたことについて、水口を問い詰めた。予備校の広告契約の条件でアキは1年間の恋愛禁止が課せられているのだ。その約束を破ったことについて、マネージャーの水口の責任を追求したのだ。もとスケバンの春子は暴力に訴えた。水口の襟首を掴み、殴る蹴るの暴行を加えた。水口は震え上がり、ふたりの関係はプラトニックなものだから大事にはならないと弁解するのがやっとだった。

開放された水口は無頼鮨へ向かった。種市にのみ、春子に交際がバレたことを知らせた。プラトニックな関係だと報告してあるので、それを厳守するよう年を押した。しかし種市は、アキとキスしたことを正直に述べた。それを聞いて水口は怒り出すのだった。

その時、アキと鈴鹿は無頼鮨の座敷でふたりだけの打ち上げを行っていた。いつも鈴鹿に食べさせてもらうばかりのアキだったが、今日ばかりは自分が鮨をご馳走すると胸を張った。

ふたりは撮影を振り返り、アキの女優としての才能について話し合った。鈴鹿によれば、相変わらずアキの演技は稚拙で、女優の才能はないと切り捨てた。今日の撮影でのアキの芝居は確かに良かったとは認めた。しかし、あの時カメラの前にいたのは映画のヒロインではなく、自分の経験を思い出して感極まった「天野アキ」本人でしかなかったと指摘した。女優として他人を演じる才能がアキにはないのだ。

鈴鹿は、アキはそのままのアキでよいと付け足した。「天野アキ」という個性的な人物を続けていけば良いとアドバイスした。「天野アキ」を演じる女優としてやっていけばいいというのだ。たとえ女優に向いていなくても、何かを一心に継続していくことも才能である。アキはその才能を伸ばすべきだと助言するのだった。

その日、種市は初めて板場を任された。種市が初めて作った刺し身がアキと鈴鹿に供された。アキはそれを美味しく食べるのだった。

そして、2010年の暮れ、主題歌のレコーディングが行われることとなった。アキは録音スタジオへ向かった。

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北三陸を出る時に、アキ(能年玲奈)は夏(宮本信子)から手ぬぐいを餞別に渡されました。夏は、「辛いことがあったら、それで涙を拭け」と伝えたのでした。しかし、僕の記憶している限り、東京のアキがその手ぬぐいで涙を拭いたことはない。海女の衣装を身に付ける際に、頭に巻いている姿はあったけれど。そんなわけで、常々「なんだよ、夏の餞別は『ちょっと良いシーン』として書かれただけで、結局その後回収してねーじゃねぇか。東京であんなに苦労したのに」と少々冷めた目で見ていました。

ところが、今日の放送で、夏の手ぬぐいエピソードがちょっと形を変えて登場。アキが夏の手ぬぐいで涙を拭くことはなかったけれど、鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)が夏と重なるという形で昇華されました。すげぇな、と感心しました。宮藤官九郎はたいしたもんだ。

鈴鹿は東京で夏と会った時に、夏から手ぬぐいを土産としてもらっています。その時に、夏がアキへ餞別として渡した経緯は話していないはずだけれど、不思議な運命のようなもので、鈴鹿は夏とアキのエピソードの啓示を受けたのだと解釈する当方です。昨日の放送では、「鈴鹿が夏に似てきた」というエピソードもあったことですし、人事を超えた何かが発生していたものと考えられます。

その他、アキが鈴鹿に鮨をおごるのもいいですね。常々アキは、鈴鹿のことを同輩の友達のように接してきました。その無礼な態度に対して、鈴鹿は「友達なら私にばかり奢らせてないで、鮨をおごりなさいよ」といった趣旨のセリフを言っていました。それに応えて、今回アキが鮨をおごったんだなと思うと、感慨深いです。鈴鹿からは女優失格の烙印を再度押されてしまったアキですが、大仕事をやり遂げて、鈴鹿と肩を並べるくらい誇らしい気分になっていたんだなぁ、と。

『あまちゃん』ヒストリー(時系列表)
『あまちゃん』 つづく

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