昨日の放送の最後でアキ(能年玲奈)のミサンガが1本切れたのに合わせて、公式サイトのアキの写真からもミサンガが1本消えたことを確認した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第134回めの放送を見ましたよ。
3月11日夜。
アキ(能年玲奈)はやっとユイ(橋本愛)と電話で話すことができた。ユイは緊急停止した車両から出て、線路を歩いて避難の途中だという。アキは延期されたコンサートをぜひ見に来て欲しいと励ましたが、ユイはもう東京には行くことができないと言う。北三陸の惨状を伝え、東京に行く手段は絶たれたと言うのだ。しかも、あまりに恐ろしくて仕方がないと言う。自分が東京に行くのではなく、アキに北三陸へ来て欲しいと言うのだ。そこまで話すと、ユイは一方的に電話を切った。
それからアキは、上野から世田谷の自宅まで徒歩で帰路についた。交通機関は麻痺し、自分と同じように歩いて帰る人々で街はごった返していた。アキは東北の悲劇やユイの心境を思うと、自分も暗くふさぎこんでしまった。
深夜に自宅へたどり着くと、春子(小泉今日子)と正宗(尾美としのり)は寝ずに待っていた。アキが自宅に連絡をしなかったので、ふたりはアキのことを心配して待っていたのだ。アキの無事を確認すると、ふたりは安堵した。
春子は夏(宮本信子)と連絡がとれないと言って心配していた。ところが、夏はアキにだけはメールを送っていた。20時ころに届いたメールには「御すんぱいなく」とだけ記されていた。アキがそれを春子に見せると、やっと春子は落ち着いた。
翌12日。
北三陸市では、早くも人々が総出で復旧作業が開始された。
大吉(杉本哲太)は早急な鉄道の運行再開を決意した。袖が浜付近のレールはほとんど損傷がなかった。安全さえ確認されれば運行に問題はないというのだ。津波によって多くの自動車が流され、道路も瓦礫で壊滅している。そんな中、鉄道こそが交通の要となることは間違いない。しかも大吉は、北三陸鉄道が走っている事実こそ重要なのだと力説した。北鉄が走っているのを見るだけで人々が勇気づけられるに違いないと言うのだ。それを復興のシンボルにしたいという強い意思を持っていた。
それから5日後の3月16日、運行を再開することができた。ただし、1日3便のみ、北三陸駅-袖が浜駅間だけを時速20kmで走行するという限定されたものだった。その代わり、大吉は運賃を無料とした。北鉄の再開が人々を勇気づけるという大吉の思惑は当たった。北鉄が走りだすと、町の人々は復興作業の手を休め、線路脇から笑顔で手を振った。体を壊してからは仕事を減らしていた夏も、販売用のウニ丼を張り切って作り、駆けつけた。
震災から1ヶ月半ほど経過し、4月29日になった。
日本中がすっかり様変わりしてしまった。「節電」「デモ」「風評被害」「自粛」などといった暗いキーワードが巷にあふれた。一方で、その日から東北新幹線の運行が再開されたり、「絆」という言葉が人々にもてはやされていた。
アキの初主演映画『潮騒のメモリー: 母娘の島』は3月5日の公開後、1周間で打ち切られてしまった。アキの歌う主題歌CDの販売は継続されていたが、宣伝は自粛していた。「寄せては返す波のように 激しく」という歌詞が津波を連想させて不謹慎だからという理由だ。アキの人気幼児向け番組『見つけてこわそう』は辛うじて打ち切りを免れたが、タイトルが『じぇじぇじぇのぎょぎょぎょ』に変えられてしまった。
東京に暮らす芸能関係者たちは、自らの仕事に疑問を持たざるを得なかった。人が生きていくためには、水や食料、電気が必須である。一方で、映画や歌などの娯楽は生命維持に必ずしも必要ではない。自分たちのやっている事が無駄なのではないかと思うようになったのだ。スリーJプロダクションに移籍した鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)に仕事のオファーは幾つもあったが、東北の人に申し訳ない気持ちになってやる気が出ず、全て断ってしまっていた。荒巻(古田新太)は所属タレントを使って東北での食糧支援を行ったが、それが単なる売名行為ではないかと自問自答して苦悩していた。
アキも、すっかり落ち込んでいた。世の中がすっかり変わってしまい、震災前の暮らしや芸能活動がどんなものだったのか思い出せないほどだった。これから自分がどうすればよいかもわからなかった。
アキは種市(福士蒼汰)に会い、自分の悩みを打ち明けた。ニュースで被災地の状況を見聞きすると、自分も駆けつけたいとは思う。しかし、自分が行っても何もできることがないし、却って迷惑をかけるとしか思えないと言うのだった。
アキは北三陸で1年ほど暮らした。そこでたくさんの人と出会い、楽しい思い出がたくさんできた。しかし、近頃ではそれらの記憶が失われたり、悲しいニュースで上書きされるようになってきており、それが辛いと話した。彼らのことを忘れないように、アキは頻繁に北三陸の人々の笑顔を思い出すようにしているという。ただし、ユイの笑顔だけはなぜか思い出せないという。アキはユイに会いたいという切実な思いを種市に話した。
その後、帰宅したアキは、何も言わずに春子のそばに座り、彼女に甘えた。アキは何かを話したそうにしていたが、春子に問われると、何も言わずに寝室に引きこもった。
寝室からアキは、夏にメールを送った。「今年の夏は潜らないよね?」という短いメッセージを送ったところ、夏からは「お構いねぐ」と一言だけ返ってきた。
それからアキは、北三陸の人々の笑顔を再び思い返した。種市と話している時から気になっていたのだが、誰か一人だけ忘れているような気がする。それが誰なのか、アキには思い出せなかった。
アキ(能年玲奈)は北三陸の人々の名前をあげながら、ひとりひとりの笑顔を思い出しています。しかし、一人だけどうしても忘れてしまう。
僕が見ていた限り、思い出されなかった一人というのはヒロシ(小池徹平)です。どうして彼だけ思い出されないのかは、現在のところ不明。
今日の放送でもっとも印象的だったのは、「芸能活動は被災地の役には立たない」と悩むところ。
この感覚、ドラマの登場人物や芸能関係者だけが思った気持ちではなく、日本中の多くの人々も同様に「自分の生業は被災者や世の中の役に立っているのだろうか?」と自問自答したことだろうと思う。少なくとも僕はそうだったし、僕の仕事仲間(心理学者)の多くもそれを引け目に感じていたところがあったように思う。
ただし、彼らは心理業界の中ではいち早く「東日本大震災を乗り越えるために:社会心理学からの提言と情報」というサイトを作って、できる限りの貢献をしようと努力していた。頭が下がります(僕は傍観していただけで、何もお手伝いできなかった)。