「花びら」って単語を聞くと「回転かな?」などと下品なことしか思いつかないという、薄汚れた大人になってしまったことを後悔している当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第7回めの放送を見ましたよ。
あさ(波瑠)とはつ(宮﨑あおい)は成長し、次の春にはそれぞれ大坂に嫁ぐことと決まった。
父・忠興(升毅)はこの期に及んで、娘かわいさのあまり、嫁に出すのが早過ぎるのではないかと心配し始めた。一方、母・梨江(寺島しのぶ)は自ら娘たちに嫁入り修行の追い込みを行い、むしろ嫁に行くのが遅すぎるくらいだと忠興を諭した。
加えて、あさの様子を見ると、今の機会を逃すわけにはいかないと言うのだ。
あさは、幼いころは親に決められた結婚など受け入れられないと反発していた。しかし、最近ではすっかり嫁に行く気になっているのである。梨江はあさの気持ちが変わる前に嫁がせてしまうのが得策だと考えていた。
あさが結婚に前向きなのには理由があった。
許嫁の新次郎(玉木宏)は、季節の変わり目ごとに京都を訪れる。その度にあさを連れ出し、ふたりで対話を重ねた。それで新次郎のことをすっかり理解し、結婚する覚悟もできたのである。
あさは、新次郎の笑顔が素敵だと思っていた。目を細くして笑う表情に不思議な魅力があると思い、惹かれていた。
ただし、あさのおてんばぶりは昔のままだった。近所の子どもたちがチャンバラをしていれば、晴れ着のまま乱入するなど乱暴な性格は変わっていなかった。粗暴な性格のせいで、花嫁修業もほとんど落第生であった。
一方、姉・はつは嫁入り修行をそつなくこなし、何をやらせてもあさとは天と地ほどの違いがあった。
ところが、嫁入りの日が近づくにつれて、どこかふさぎ込みがちになっていくのだった。その様子にはあさも気づいていており、彼女の婚約者・惣兵衛(柄本佑)をあまり気に入っていないのだろうと想像もできた。しかし、あさは姉には何も言うことができなかった。
ある日、京都へ能の見物に来たついでだと言って、はつの婚約者である惣兵衛とその母・菊(萬田久子)が訪ねてきた。彼らと会うのは4年ぶりである。
あさがこっそりと覗いていると、惣兵衛は昔と変わらず無表情で、ほとんど何も話さなかった。はつも元来の奥ゆかしい性格と緊張のせいで、聞き役に徹していた。主に惣兵衛の母・菊が時候の挨拶や幕末の動乱の話など、比較的当たり障りのない話題を提供していた。
たまたま家族が席を外し、はつが一人だけ残されて対応した。
惣兵衛の母・菊は彼を促し、少しははつと話をするよう水を向けた。しかし、惣兵衛は少しも打ち解けようとする態度を見せなかった。挙句には、結婚後は嫌でも毎日顔を合わせて口をきくことになるのだから、今話すのは無駄であると言って口をつぐんだ。そのような態度であっても、母・菊ははつにたいして詫びるでもなかった。
それどころか、菊ははつに恥をかかせるような質問まで始めた。
大坂一の両替商に嫁ぐからには、はつの身は潔白である必要がある。男関係の醜聞は起こしていないかなどと聞くのである。
もちろん、はつにはそのような問題はなかったが、あまりに侮辱的な物言いに黙り込んでしまった。
それを盗み聞いていたあさは腹が立って仕方がなかった。
彼女の怒りの矛先は、無礼な質問をした菊ではなかった。将来の妻をかばおうともせず、黙ってばかりの惣兵衛に対してふつふつと怒りが湧いた。
あさは、惣兵衛が一人で中座するのを待ち伏せた。彼が出てくると、あさは直談判した。
惣兵衛に、せめて笑顔を見せてくれと頼んだ。はつはよくできた姉であり、どこに出しても恥ずかしくない女性だ。しかし、そんな彼女だって、一人で知らないところに嫁に行くことに不安を感じるのも無理のないことだ。せめて、夫となる惣兵衛が笑ってくれたら、そんな不安も払拭されるだろうと言って、協力を乞うた。
しかし、惣兵衛の返事はつれなかった。
自分はあさに指図を受ける筋合いはない。少女時代はおてんばで少しは大人になったかと思ったが、相変わらず子供だ。それに比べれば、はつは奥ゆかしくてマシではあるが、辛気臭いのはどうしようもない。
などと冷たく言うのだった。
あさの怒りはエスカレートした。
ふたりの婚約者、新次郎(玉木宏)と惣兵衛(柄本佑)の対比が描かれた回。
、多くの時間が惣兵衛のヒドさに割かれていて、新次郎の登場シーンは一瞬だけ(京都で桜を見ている)だったけれど、新次郎の良い許嫁ぶりがとても強調されていた。
あさ(波瑠)の視点からは、ふたりの違いは「笑顔」ということになっていて、そこに焦点が当てられて話が進んだ。もちろん、「笑顔」というのは象徴であって、その背後にある人間性が大きな問題なのだけれど。
新次郎 vs 惣兵衛という対比を軸に話が進んでいくので、わかりやすいし、いい脚本。