公式サイトのアキ(能年玲奈)の写真に、ユイ(橋本愛)からもらった琥珀のブレスレットが加わったことを確認した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第95回めの放送を見ましたよ。
1985年、(古田新太)に連れられ、春子(有村架純)はタクシーで録音スタジオへ向かった。
荒巻は車内で事情を説明した。大型新人として売り出す予定の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)であったが、驚くほど音痴だった。主演映画の主題歌でレコードデビューさせようにも、とても売り物にならない。そこで、春子に影武者となって歌って欲しいという依頼だった。戸惑う春子だったが、それを承諾した。
この話は限られたスタッフだけの秘密とされた。春子がスタジオで鈴鹿ひろ美とすれ違う際にも、知らんふりで通すように指示された。また、荒巻は一部始終を聞いていたタクシー運転手の正宗(森岡龍)にも口止めをした。2500円だった運賃の10倍を支払い、恐ろしい関西弁で恫喝した。正宗はその剣幕の恐ろしさに手が震えるのだった。
いよいよ春子はマイクの前に立った。1回めこそ緊張のあまり失敗してしまったが、2回めは見事に歌い上げた。それで一発OKが出た。スタッフたちも春子の歌唱力に手応えを感じた。
1986年の正月映画として、鈴鹿ひろ美のデビュー映画『潮騒のメモリー』が公開された。映画と共に、主題歌も大ヒットした。町中いたる所でその曲が流れ、人々の評判もすこぶるよかった。春子は自分の歌が褒められ、恥ずかしくありつつも誇らしかった。
ランキング番組『夜のベストヒットテン』でも同曲は連続1位を獲得した。しかし、鈴鹿ひろ美は一度も番組に出演しなかった。出演拒否の理由は、自分は女優が本業であるからだとされた。軽々しく歌番組に出演したりせず、一途に演技に打ち込むという言い訳は、人々から好意的に受け入れられ、むしろ好感度を増す結果となった。
過去の秘密を告白する春子(小泉今日子)の手紙を読んで、アキ(能年玲奈)はたいそう驚いた。今まで何度も鈴鹿ひろ美の『潮騒のメモリー』を聞いていたのに、それが春子の歌声だとは一度も思ったことがなかったからだ。もう一度聞いてみたが、未だに信じられなかった。
しかし、真相を知ると、いろいろなことに辻褄が合うように思われた。たとえば、アキの誕生会のカラオケで、正宗(尾美としのり)が『潮騒のメモリー』を歌わせようとしたが、春子は抵抗した(第36回)。荒巻のアキに対する態度が冷たいのも、重大な秘密の当事者である春子を疎ましく思い、その娘であるアキのことも邪魔に思えるからだと想像された。
その秘密を知っても、アキは彼らを軽蔑するようなことはなかった。むしろ、その時のことをもっと詳しく知りたいと思うのだった。それで、鈴鹿ひろ美の付き人に復帰することにした。鈴鹿ひろ美は、アキには女優の才能は無いと言いつつも、話し相手としてのアキは評価している。それでアキを受け入れることとした。アキは、鈴鹿ひろ美本人は影武者の存在を知っているのかどうか、それが気になった。
1986年、鈴鹿ひろ美はテレビに出て歌いたいと言い出した。しかも、口パクではなく自分で歌いたいと言うのである。マネージャーである荒巻は頭を抱えた。
鈴鹿ひろ美の映画&歌手デビューは1986年初頭。そして大ヒット。
1986年初頭といえば、3月21日に我が最愛の山瀬まみが『メロンのためいき』でデビュー。作曲・松任谷由実(呉田軽穂名義)、作詞・松本隆という強力な布陣。前年度のホリプロタレントスカウトキャラバンのグランプリ(しかも記念すべき10代目)ということで、事務所の力の入れようもかなりもののだったと聞く。
しかし、結局、歌手としての山瀬まみは鳴かず飛ばずで終わってしまった。
山瀬まみが売れなかった理由は、これまではおニャン子クラブ旋風の陰に隠れてしまったというのが定説だったのだが、今日その認識が変わった。
鈴鹿ひろ美の『潮騒のメモリー』と競合したんだから仕方がない。春子(小泉今日子)の歌声には負けるわ、と。
糸井重里と清水ミチコが司会者役を演じた『夜のベストヒットテン』のチャート板では偽物の歌手名ばかり書かれていたのだが、その中に山瀬まみをもじったものが無いかと期待していたんだけれど、なかった。
『あまちゃん』ヒストリー(時系列表)