[alm-ore] AL-Mailユーザーだった俺の独り言

愛（風間俊介）は、純（夏菜）の顔をまともに見ようとしない。純も気分が落ち込んでいることを自覚しており、愛には不快な内心が丸見えなのだろうと予想できた。しかし、愛が本当にそう思っているのか確かめたかった。自分がどう見えているか教えて欲しいと迫った。

愛によれば、純の周りには色々な純の顔が見えるという。怒っていたり、泣いていたり、自棄になって笑っていたり。そして愛は告げた。自分と一緒にいると純は不幸になる。これ以上「純」という名の人物が不幸になるところは見たくはないと言うのだ。
そう言われても、純は愛と離れがたかった。愛を強引に誘って沖縄料理を食べに出かけた。

愛は前日にケーキを食べ過ぎたり、風邪気味だったりするせいで、あまり食が進まなかった。それを尻目に、純は一人で大いに食べ、ビールを飲み、一方的に愚痴を吐いた。純は周りの人に笑顔でいて欲しいだけなのに、やることなすことが全て裏目に出るとぼやくのだった。
愛は、純が萎縮してしまうのを見るのは寂しいと告げた。純は誰よりも人のことが好きで、誰よりも一生懸命頑張っている。そんな純を愛は応援したいのだという。

店を出ると、愛は急に腹を下した。体調不良のツケが回ったのだ。家が近いため、純の家のトイレを使わせることにした。

下痢の落ち着いた愛は、トイレの中から純に話しかけた。
彼の弟・純とは、二卵性双生児だったという。小さい頃から愛は健康で、勉強も運動も習い事も人から抜きん出ていた。一方の弟・純は体が弱く、生涯入退院を繰り返していたという。愛は、本来純が獲得すべき才能を自分が奪い取って生まれてきたのではないかと悩んでいたという。

ついに白血病にかかり、骨髄移植以外に助かる道がなくなった。ところが不幸なことに、二卵性双生児の愛は骨髄が適合しなかった。他の家族も不適格だった。他のドナーも見つからず、そのまま純は助からなかった。彼の死ぬ間際の言葉は「愛ちゃんじゃなくて、なんで僕が死ななきゃいけないんだ？」だったという。それに愛は苦しめられている。

その直後、葬式で母の顔が鬼のように見えたという。その顔が「双子なのになぜ骨髄の方が適合しないのだ。なぜ、愛は純を見殺しにしたのだ。」と愛を詰っているように見えたという。それ以来、愛は他人の本心が見えるようになった。家族の顔を見ているのも辛いので、家出したのだ。
他の人の本心が見えるのも苦しい。それ以来8年間、愛は誰の顔も見ずに生きてきた。ところが、純の顔を誤って見てしまった時、彼女の顔には醜い本性がなかった。しかも、死んだ弟と同じ名前だった。
愛は運命を感じたのだ。

けれども、愛が純に抱きつかれた時、目の前に死んだ弟の顔が浮かんだ。弟は「お前といると彼女が不幸になる。死んだ自分のように」と脅すのだという。それで純を避け始めたのだという。

そこまで話すと、愛は落ち着いた。トイレからやっと出てきた。
純は、再度自分がどのように見えているか訪ねた。その時の純は、いつもの純に見えたという。

純は、愛のような人間と一緒にいると面倒なことになると警戒した。
しかし、愛を放っておけないという気持ちの方が勝った。

純は愛の話を全て信じると明言した。
愛は自分が受け入れられたことに喜び、涙を流した。