[alm-ore] AL-Mailユーザーだった俺の独り言

翌日、那覇から帰ってきた純（夏菜）は慌ててホテルに出社した。千香（黒木華）から不在中の様子を聞くと、桐野（吉田羊）と水野（城田優）が外国人宿泊客（ベン・スレター）の部屋をアップグレードし花束を贈って場を収めたという。
水野に心を寄せる千香は、純に同情を寄せる素振りを見せながらも、水野が純の評価を下げただろうことを内心喜ぶのだった。その態度は純からもよくわかった。

桐野にも謝罪した。桐野はいつもどおりに落ち着いた様子であり、どこか呆れてしまっているかのようにも見えた。車寄せまで見送った桐野によれば、外国人宿泊客は最後の最後まで、純が顔を見せなかったことを残念がっていたという。どれだけ純のことを信じていたか、そればかりを話していたという。
純は胸が苦しくなった。

社員食堂に行くと、水野が食事中だった。気まずく、彼を避けようとする純であったが、水野がにこやかに誘ってくれた。水野は純が舞い上がるほどの笑顔を見せ、気にしなくてよいと慰めてくれた。純はいつもの様に笑っているのが良いとも言ってくれた。

その上水野は、またしても純を口説きにかかった。嬉しくて仕方のない純だが、彼はセックスだけが目的だと愛（風間俊介）に言われたことがずっと気にかかっている。兄・正（速水もこみち）がマリヤ（高橋メアリージュン）を妊娠させてトラブルになっているだけに、ますます男女の性や愛情について敏感になっているのだ。
そこで、水野に子供ができたらどうするかと聞いてみた。その質問に、水野は自分が見くびられていると思った。もしくは、純が遠まわしに自分との交際を断っているのだと解釈した。純と話をしているといつも不愉快な気分になると吐き捨てて、水野は去ってしまった。

仕事に戻った純は、大先社長（舘ひろし）が見知らぬ女性（山野さゆり）とともに客室に入ろうとするところに出くわした。大先は彼女のことをビジネスパートナーだと説明し、彼女の客室で仕事の打ち合わせをするのだと言った。
純が落ち込んでいるのを見て取った大先は「誰かの愛の支えが必要だ」と助言して、部屋の中へ消えた。

その後、愛の妹・誠（岡本玲）がチェックアウトするところに出くわした。誠が愛のことを憎んでいると思う純は、愛のことを弁護した。人の顔を見ると本性がわかり、それが苦しくて社会生活に馴染めないでいる。そんな彼のことを許してやって欲しいと説得した。
誠の返事は、自分も大勢の人々の中で苦しんでいるというものだった。愛が奇妙な能力を身につけたのとほぼ同じ頃、誠の体にも変化があったという。彼女は、他人の体臭が臭くてたまらなくなったのだという。そのため、いつもマスクを着用している。けれども、純からだけはほとんど匂いがしないので不思議に思っているのだという。

ただし、今日の純は少し臭うと言い残してホテルを出ていった。

仕事帰り、純はますます落ち込んだ。自分が一生懸命やっても、誰も褒めてくれないばかりか、足を引っ張るばかりだ。これからは自分を押し殺して、何もせず、何も言わないようにしよう。無気力感にさいなまれた。

純は大先社長の言葉を反芻した。「愛（あい）の支えが必要」というフレーズから、「愛（いとし）の支えが必要」と連想した。そう思うと、愛に会いたくて仕方なくなった。
その瞬間、道に愛が立っているのに気付いた。

近寄ってみたが、愛の様子が普段とは違った。愛が決して純の顔を見ようとしないのだ。