NHK『ブギウギ』第55回

今日は雨っぽいのでテンションの上がらない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第55回めの放送を見ましたよ。

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第11週『ワテより十も下や』

鈴子(趣里)は、愛助(水上恒司)から好きだ、恋人になってほしいと告白された。鈴子は、その場では返事を保留し、去った。
鈴子は本心では嬉しかった。しかし、年齢差や身分の違い、世間体などと考えると躊躇してしまったのだ。鈴子は苦しい気持ちになった。

1943年(昭和18年)10月、それまで大学生の徴兵は免除されていたが、20歳以上の文科系学生を対象に学徒出陣が始まった。愛助も対象となり、いつ召集されてもおかしくない状況となった。
告白されて以来、愛助とは会っていなかったが、鈴子は彼の身を案じた。愛助は体が弱いせいかまだ徴兵されないが、自分の同年代が戦地で戦っていることに対して自身の不甲斐なさを感じていた。

マネージャー・五木(村上信悟)は、鈴子に愛助と別れろと迫った。愛助の母は村山興業の社長であり、恐ろしい人物だとの噂である。彼女を怒らせると、全国の興業主に声をかけて「福来スズ子とその楽団」を使わせないようにすることも簡単だろう。楽団の存続のためにも、波風を立たせないようにしてほしいと言うのだ。

鈴子は、付き人・小夜(富田望生)を伴って、伝蔵(坂田聡)のおでん屋台で酒を飲んだ。その場で、小夜に聞かれるまま、愛助のことを話した。
初めは、亡き弟・六郎(黒崎煌代)のようにぼーっとしていてかわいい子だと思い、まさに弟のように思っていた。しかし、話をするうちにしっかりした人だと思わされるようになった。チャップリンのように世界中の人を笑わせたいなどと夢も大きく、頼もしい。近頃は、学徒出陣の新聞記事を読んで、愛助も戦地に行くかもしれないと思うと胸が苦しくなる。

鈴子は、まだ迷っている。戦争が激しくなり学徒出陣まで始まった時に、ずいぶん年下の男に現を抜かしていることに自己嫌悪を抱くと言うのだ。
一連の話を聞いていた屋台主・伝造は、変な歌を歌っている人間が変なことを気にするなと一括した。以前、鈴子が愛助を連れてきた時のことを思い出し、彼はいい目をした好人物だったと話した。

翌日、決意した鈴子は愛助の下宿を訪ねた。
部屋に入ろうとすると、中から村山興業東京支社長・坂口(黒田有)が愛助を諭す声が聞こえてきた。鈴子はしばらく廊下で聞き耳を立てた。
坂口は、鈴子と別れるよう説得していた。愛助は体が弱くて徴兵されない分、勉学に取り組まなければならない。ゆくゆくは村山興業の立派な跡取りとなり、芸人を戦地慰問に送り出すなどして国に貢献すべき立場である。
鈴子のような歌手にのぼせ上がっている場合ではない。ましてや、向こうは手だれなのだから、愛助は弄ばれた挙句に捨てられるのがオチだ。ましてや、興業会社の跡取りと歌手が結婚することなどできない。ふたりとも一時の気の迷いであり、ままごとをして遊んでいるようなものだ。そうでないとしたら、鈴子は愛助を利用してのし上がろうとしているだけだと結論づけた。

そこまで聞いた鈴子は頭に来て、部屋に怒鳴り込んだ。

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NHK『ブギウギ』第54回

『まんぷく』の再放送を見るともなく見ていて、「おいしいおいしいダネイホン」というフレーズが頭で回り続けて困っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第54回めの放送を見ましたよ。

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第11週『ワテより十も下や』

良い蓄音機があると言って、村山愛助(水上恒司)は鈴子(趣里)を自分の下宿に誘った。世間体のことを考え、小夜(富田望生)を同伴することを条件に鈴子は応じた。

愛助の住んでいる家は立派な屋敷だった。彼の母の知り合いの家で、一部屋だけ借りているとは言うものの、それは通常の学生には似つかわしくないほどだった。鈴子は驚いた。
さらに驚いたことは、それだけ豪華な家にあって、愛助の部屋だけは散らかり放題だった。彼が収集したレコードや芸能雑誌が床にまで散乱し、足の踏み場もないほどだった。愛助けは全く悪びれる様子もなかったが、鈴子と小夜はまず座る場所を作るために片付けから始めなければならなかった。

なんとか落ち着ける場所を作り終えると、愛助は自分の収集品を次々に紹介した。鈴子のレコードはもちろん全て持っていて、出荷数の少ない貴重なものまで所持していた。芸能雑誌も鈴子の記事の掲載されているものはほとんど持っていた。それらをいちいち取り出してきては、鈴子に見せるのだった。そうしながら、鈴子の歌がどんなに素晴らしいか一方的に捲し立てた。愛助は大和礼子(蒼井優)がトップスターだった時代から大阪の梅丸少女歌劇団を見ていたが、礼子よりも鈴子のファンだったという。その後、東京での梅丸楽劇団の旗揚げ公演も観覧したという。

その日は、そうして終わった。別れ際、愛助はまた会いたいと述べた。明日でも明後日でも予定は空いているので、ぜひ会ってほしいと言うのだ。あまりのことに鈴子は苦笑いしたが、はっきりとは断らなかった。

実際、鈴子は、小夜に秘密で愛助に会うようになった。下宿の掃除を手伝ったり、行きつけの伝蔵(坂田聡)の屋台でおでんをご馳走したりした。

愛助は屋台で食事をした経験はほとんどないという。屋台は汚いから行くなと言いつけられていて、それを守っていたのだ。愛助がまだ小さかった頃は父に道頓堀の屋台に連れて行ってもらったことはあるものの、その父も亡くなり、そのような機会は全くなくなってしまったという。

愛助は小さい頃から体が弱く、母から心配されて育ったのだと話した。学校も休みがちで、友達もあまりできなかった。そうなると学校に行くのも億劫になり、ますます休みがちになる。そんな時、母は自身の経営する演芸場に入れてくれた。芸人たちを見て笑っていると、生きる気力が湧いてきた。
そのような経緯もあり、将来は演芸場を拡大したいと考えている。日本ばかりか、世界中に笑いを届けたいと願うようになった。戦争が終わったら、世界中から面白い芸人を集めるとともに、外国にも演芸場を開設したいと夢を語った。

鈴子と愛助は、純粋な友達として友情を深めていった。そのおかげで、鈴子は毎日上機嫌だった。

そんなある日、村山興業東京支社の支社長だと名乗る坂口(黒田有)が鈴子の事務所を訪ねてきた。坂口によれば、愛助は村山興業の跡取りであり、大学を卒業したらすぐに仕事を始めることになっている。愛助をたぶらかさないよう釘を刺しにきた。鈴子は、プラトニックな友情にすぎないと反論した。
しかし、坂口の剣幕は変わらなかった。本人がなんと言おうが、世間の見る目は違うと言うのだ。10歳も年下の大学生を弄んだとして、醜聞になると言うのだ。マネージャー・五木(村上信悟)も坂口に同調した。もっとも彼は、大興業主である村山興業を敵に回したくないのだった。

鈴子は、愛助の下宿を訪れ、坂口支社長が来たことを報告した。そして、彼の言うとおり世間体が悪いと話し、関係を見直すよう話した。
すると愛助は、今のような友人関係がだめなら、恋人になってほしいと願った。

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NHK『ブギウギ』第53回

昨夜は早くに気を失ってしまい『大奥』の最終回を見逃したので、NHK+でちゃんと見ようと思っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第53回めの放送を見ましたよ。

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第11週『ワテより十も下や』

神戸での公演を終えた鈴子(趣里)は、東京に帰る途中で大阪に立ち寄った。
生まれ育った銭湯・はな湯や、歌手として育ててくれた梅丸少女歌劇団を訪問した。どちらでも、懐かしい人々に再会し、かれらの変わらぬ様子に安心した。迎えた面々も鈴子を熱烈に歓迎した。

こうして旧交を温めた後、鈴子は東京に帰り着いた。
すると、下宿には鈴子宛の何通もの手紙が届いていた。それは全て村山愛助(水上恒司)からのものだった。泥棒疑惑は晴れたものの、付き人・小夜(富田望生)は愛助のことをどこか怪しんでいた。全く警戒していなかった鈴子は壊れるままに彼に住所を教えたが、小夜は愛助がよからぬことを企んでいるのではないかと腹を立てた。

最初の手紙は、鈴子と知己を得たことを喜び、体調を気遣うという穏当なものだった。二通目は鈴子の生家のはな湯に行ったという内容だった。そこに集う人々の明るく穏やかな様子は、鈴子の歌の原点のように感じるなどと書いてあった。
小夜は、愛助の行動に異常なものを感じた。鈴子に対して強い執着や恋心を抱いていると感じ取った。
一方の鈴子は、彼は自分より10歳も年下だし、彼から見れば自分はオバさんである。何も間違いは起きないと笑い飛ばした。

鈴子は長旅の疲れと小夜のやかましさに辟易した。小夜を部屋から追い出して、昼寝をすることにした。
昼寝の夢に愛助が現れた。夢の中の彼は、まるで亡き弟・六郎(黒崎煌代)のようにカメを可愛がっていた。そしてそのカメを鈴子にプレゼントするという。
そこで鈴子は目を覚ました。

鈴子が昼寝から目覚めたのにはもう一つ理由があった。小夜が部屋の外から騒ぎ立てているのであった。なんと愛助が下宿に訪ねてきたという。

鈴子が表に出てみると、本当に彼はそこにいた。
愛助は、自分の家に良い蓄音機があるといって、家に来るよう誘った。小夜は、ついに愛助が本性を表し、鈴子に襲うつもりだと警戒した。愛助に食ってかかり、追い払おうとした。

鈴子は愛助がそのような考えを持っているとは思っていなかった。しかし、そのまま着いていくのも非常識なことだと思い、失礼にならないよう丁重に断った。
愛助はそれ以上食い下がることもなく、納得して帰っていった。

その背中はしょんぼりしていて、悲しげに見えた。
鈴子は彼に声をかけ、小夜も一緒ならば家に行ってもよいと提案した。
愛助は喜んでそれを受け入れた。

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NHK『ブギウギ』第52回

昨日の小倉(北九州市の方)は雨だったんだけれど、地元出身の人に案内してもらい、ほんの少しだけ遠回りになるけれどアーケード街を巧妙に通り抜けて一切傘を使うことなく資さんうどんにありつくことができて、評判通り美味しいうどんだったと感激した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第52回めの放送を見ましたよ。

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第11週『ワテより十も下や』

行きがかり上、宿で一緒になった学生は村山愛助(水上恒司)と名乗った。東京の学生だが、実家の大阪に帰るところだという。途中の愛知で鈴子(趣里)の公演があると知り、立ち寄ったのだと説明した。
小夜(富田望生)は愛助が自分たちの金を盗んだ泥棒だと疑い続け、ずっと睨んでいた。しかし、鈴子は無闇に人を疑うべきではないとし、彼と話し続けた。学生は金がないものと決めつけ、腹一杯夕食を食べるよう勧めた。

愛助はモジモジしながらも、ずっと鈴子の大ファンだったと話した。鈴子の大阪時代の公演も見ているし、自分が東京の大学に通うようになってからは鈴子の東京での活動もずっと見ていたという。話は徐々に熱を帯び、鈴子の歌も動きも素晴らしいと大絶賛した。鈴子の歌を聴いていると、とてもいい気持ちになるのだと述べた。

翌朝、鈴子たち一行が宿を出ようとすると、愛助は先に出発したという。しかも彼は、一文なしになってしまった鈴子たちの宿代の半分を置いていったという。鈴子は恐縮し、帰京後に全額送金するのっで、学生には金を返してほしいと女将に頼んだ。

鈴子たちの次の行き先は神戸だった。
汽車の座席について一息つくと、そばに愛助も乗車していることに気づいた。彼は実家の大阪に向かう途中なので、同じ汽車に乗り合わせたのだ。
愛助のことを泥棒だと疑い続けている小夜は、彼がまたしても跡をつけてきたと言って睨みつけた。しかも、学生の身分で鈴子たち一行7人の宿賃の半分を支払うなど常識では考えられない。それこそが金を盗んだ証拠であり、せめてもの罪滅ぼしのつもりで金を置いていったに違いないと考えられたのだ。
口論していると、近くに座っていた少女が愛助を弁護した。彼は腹の空いた自分にふかし芋をくれたという。優しい人なのだからいじめるなというのだ。そのふかし芋は、前夜の夕食で鈴子が分けてやったものだ。鈴子からもらったものをさも自分のものだとして少女にくれてやったと見て、小夜はますます頭にきた。

それでも鈴子は、彼のことを悪人だとは思なかった。愛助には後日宿代を返すと約束し、送金先として住所を聞いた。

そこへ、一人の軍人がやってきた。愛助の姿を認めると、腰を低くして挨拶した。その軍人によれば、愛助は有名な村山興行の御曹司だという。村山興行が多くの芸人を戦地慰問に派遣してくれて助かっているという。
芸能界の大企業の息子だと判明し、鈴子たちの宿代を簡単に支払うことのできた理由が判明した。それまで小夜と一緒に愛助を疑っていたマネージャー・五木(村上信悟)もすっかり態度が変わった。愛助にうやうやしく名刺を渡した。

鈴子は、愛助に身分を隠していた理由を尋ねた。すると愛助は、特別扱いされるのがいやだからだと説明した。鈴子もそれに共感した。鈴子自身も特別扱いされるのが苦手なのだ。鈴子は、少しも偉そうにしない愛助のことがますます気に入った。

そんな騒ぎの中、小夜は足に違和感を覚えた。足袋を脱いでみると、そこから金が出てきた。用心のために、財布ではなく旅の中に隠していたのだ。こうして、愛助の泥棒疑惑は完全に晴れた。

機嫌の良くなった鈴子は、この場で一曲歌うことを決めた。先の少女のリクエストで『ふるさと』を朗々と歌い上げた。
乗り合わせた乗客たちはうっとりと聞き入った。中でも、愛助は天にも昇る心持ちでその歌声を聞いた。

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NHK『ブギウギ』第51回

今、小倉(北九州市の方)にいるんだけど、事前に独立な何人かに名物を聞いたら、異口同音に資さんうどんを勧められ、それ以外の情報を一切得られなかったんだけれど、まだ行ってない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第51回めの放送を見ましたよ。

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第11週『ワテより十も下や』

1943年(昭和18年)6月5日、戦死した山本五十六の国葬が行われた。国内では防火訓練が繰り返し行われていた。食糧事情も悪化し、アメリカとの戦争は終わりが見えなかった。

そんな中、「福来スズ子とその楽団」は地方巡業を続けていた。地方では娯楽が少ないせいか、どこに行っても歓迎され、客も大勢やってきた。ただし、報酬は決して多いとは言えなかった。それでも鈴子(趣里)は、このようなご時世に人々の前で歌い続けられることを幸せに思った。

その日は愛知県での講演だった。
終演後、鈴子らが控室で休んでいると、主催者に連れられて一人の男子学生(水上恒司)がやって来た。彼は鈴子の大ファンだというが、モジモジしてばかりで、鈴子に話しかけられると恥ずかしそうに逃げ去ってしまった。団員たちは、迷惑なファンだと言ってバカにした。

そんな中、鈴子だけは何か感じ入るところがあった。
顔形は全く似ていないのに、死んだ弟・六郎(黒崎煌代)の面影を思い出させたのだ。

その後、一行はその日の宿に到着した。
宿泊料の支払いをしようとしたところ、全ての金がなくなっていた。付き人・小夜(富田望生)が財布を預かっていたはずだが、中身が空っぽになっていた。誰かに盗まれたのではないかと玄関先で大騒ぎになった。

そこへ、先ほどの男子学生も宿にやって来た。小夜は、彼こそが泥棒で、自分たちの跡をつけてきたのだと詰め寄った。学生は否定したが、小夜の剣幕はますます激しくなった。マネージャー・五木(村上信悟)も小夜に同調した。

しかし、鈴子だけは彼は潔白だろうと擁護した。金は見つからなかったが、宿賃を後日送金することで許してもらえることになった。
鈴子は、騒動に巻き込んだ詫びとして、学生を夕食に誘った。

宿の夕食は、ふかし芋のほか、吸い物やご飯、はては漬物まで全て芋づくしだった。それほど食糧事情がよくないのだ。それでも、件の学生を交えて楽しく始まった。鈴子は若い人にはたくさん食べてもらわなければならないと言って上機嫌だった。

学生の言葉は関西弁だった。聞けば、鈴子と同じく大阪出身で、今は東京の大学に通う2年生だという。歳は二十歳とのことだった。

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NHK『ブギウギ』第50回

『朝ドラ『ブギウギ』第49話はなぜ異例の“歌唱構成”に? 「大空の弟」の裏側をCPに聞く』(Real Sound)という記事を読んだ当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第50回めの放送を見ましたよ。

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第10週『大空の弟』

福来スズ子(趣里)と茨田りつ子(菊地凛子)の合同コンサートは大成功に終わった。

その帰り道、鈴子は梅吉(柳葉敏郎)が屋台で飲んでいるのを見つけた。ふたりはそこで語り合った。

梅吉は、六郎(黒崎煌代)のことを歌った『大空の弟』に感激したと話した。そして、今までは六郎の死を否定してきたが、ついに現実を受け入れる気になったと打ち明けた。
鈴子の歌を聞いていたら六郎のことばかりか、亡き妻・ツヤ(水川あさみ)のことも思い出された。生前からツヤには叱られてばかりで、今の自分のだらしない生活にまで小言を言われている気分になったという。
それで梅吉は、改めて生まれ故郷の香川へ帰る思いを強くしたと話した。このまま鈴子と一緒に暮らしていると、ますます
加えて、生まれ故郷の香川へ帰る決意を新たにしたと話した。鈴子と一緒に暮らしていると甘えてばかりで、ますます情けない人間になってしまう。今が生まれ変わる最後の機会だというのだ。

梅吉の香川行きをずっと反対していた鈴子だったが、ついに受け入れた。ただし、憎まれ口半分に、穀潰しの父であってもいなくなるのは寂しいと話した。梅吉は、自分たちは間違いなく親子なのだから寂しくて当然だと述べた。
鈴子は、梅吉が自分の元を離れるのは血が繋がっていないからだと言って、以前に梅吉を詰った。しかし、それは自分の思い過ごしであったと悟り、梅吉こそ無二の父親であり、彼の娘でよかったと思った。
鈴子が浮かべる涙は、梅吉が優しく拭ってくれた。

こうして、1941年(昭和16年)の年の瀬に梅吉は東京を離れ、香川へ出発した。
六郎の形見のカメは梅吉が連れて行くことになった。六郎はカメにも表情があると言っていたが、これまで鈴子と梅吉にはそれがわからなかった。しかし、この時ばかりはカメが祝福の笑顔を浮かべているように思えた。

年が明けて、1942年(昭和17年)2月になった。
警察の検閲はより厳しくなり、茨田りつ子は仕事がやりにくくなったし、レコード会社も発売禁止で返品された商品の山となった。

当然、福来スズ子とその楽団も、先の合同コンサート以来まったく仕事がなかった。そんな時、秋田県からの公演依頼が舞い込んだ。しかし、楽団員たちは旅費がかさむばかりで儲けが出ないと言って嫌がった。
しかし、鈴子は俄然やる気になった。東京では締め付けが厳しいが、地方ならマシである。歌うことができるならどこへでも行こうと快活に説得した。その熱意に押され、楽団員たちの士気も上がり、地方公演が決まった。

鈴子は羽鳥(草彅剛)を訪問し、地方公演を行う報告をした。
すると羽鳥は、餞別代わりに『アイラ可愛や』という新曲を提供してくれた。アイラとは南洋の村娘のことで、そのような人物ならば歌の中で何をしようが警察は難癖を付けづらい。鈴子がいつでもどこでも好きに歌えるというのだ。
羽鳥は、鈴子に何があっても歌い続けるのだと励ました。

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NHK『ブギウギ』第49回

昨日のマクラではSHISHAMO の『君と夏フェス』のことを書いたのだけれど、奇しくも同じく昨日、いつも使っている YouTube Music から今年僕がたくさん聞いた曲というのを知らせてきて、トップが『君と夏フェス』だったので微笑ましく思った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第49回めの放送を見ましたよ。

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第10週『大空の弟』

鈴子(趣里)と茨田りつ子(菊地凛子)の合同コンサートは、ブルースの女王・りつ子とスゥイングの女王・スズ子の共演ということで前評判が高く、チケットは完売した。
鈴子はもちろん、彼女の楽団員たちもやる気に満ち溢れた。

コンサート当日、梅吉(柳葉敏郎)も聞きに来た。彼は亡き・六郎(黒崎煌代)がかわいがっていたカメを籠に入れて持ち込んだ。

先の出番はりつ子だった。りつ子は開演の挨拶として、歌手は歌と共に生きていると話した。何があろうと、絶望に打ちひしがれようと、歌うのだと述べた。鈴子は舞台袖からその話に聞き入っていた。

りつ子が歌い終えると、鈴子の番となった。
りつ子のような前口上はなく、静かに舞台へと進み出た。ほどなく羽鳥(草彅剛)の指揮で二村(えなりかずき)がピアノで前奏を弾き始めた。

それは、鈴子たっての願いで1曲目に選ばれた新曲『大空の弟』だった。
詞の内容は、姉が戦地にいる弟の身を案じるというものだった。ただし、単に心配するだけではなく、国を守ってくれることに感謝するというものだった。
歌詞に鈴子の名は出てこないが、弟の名は「六郎」だと明示されていた。まさに鈴子の心情がそのまま表現された歌であった。客席の梅吉も感じ入りながら聞いた。

歌っている途中から鈴子の目には涙が溢れ出してきた。歌い終わると嗚咽を漏らして、舞台上に崩れて座り込んでしまった。指揮台の羽鳥からしっかりするよう声をかけられるが、鈴子はそのまま動けなくなってしまった。
ふと客席に目をやると、六郎の幻が見えた。その六郎は、穏やかで優しく笑っていた。

六郎の幻影はすぐに消えてしまったが、鈴子は気を取り直した。
立ち上がり、大きく息をつくと次の曲が始まった。鈴子の大人気曲『ラッパと娘』である。鈴子はスタンドマイクの前から動けなかったが、その場でステップを踏み、体を大きく動かした。客は大いに盛り上がり、会場全体から手拍子が鳴った。

歌い終わると客は総立ちになり、拍手は鳴り止まなかった。
鈴子は満面の笑顔で投げキッスした。

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NHK『ブギウギ』第48回

僕はチバユウスケのファンというわけではなかったけれど、今年の7月末にバンド発表会で SHISHAMO の『君と夏フェス』を演奏することになり(その時の記事)、この曲には「私の大好きなロックスター 真夏のステージでスーツを着たロックスター」という歌詞があって、僕はそれについて、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT のことを指していると思っていて、チバユウスケやアベフトシになったつもりで真夏なのに黒いスーツで発表会のステージに上がったという経緯があるので、昨日発表されたチバユウスケさんの訃報には悲しい思いをしている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第48回めの放送を見ましたよ。

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第10週『大空の弟』

羽鳥(草彅剛)が鈴子(趣里)の様子を見に来てくれた。
鈴子は自分の様子を正直に話した。世の中はアメリカ・イギリスとの開戦で熱狂状態にあり、鈴子もお祭りが来たような気分になっている。それと同時に、弟・六郎(黒崎煌代)の戦死の知らせを受けて葬式のような気分もずっと続いていると言う。
六郎の思い出話として、自分を慕っていつも後ろをついて来たのが可愛かったとか、亀が大好きだったことなどを話した。彼はかわいがっていたカメを鈴子に預けて出征した。戦地からの手紙でも亀のことばかり書いてきて、同じ空の下にそのカメがいると思うと元気が出るなどと言っていたことを話した。

後日、さらに羽鳥は、鈴子を自宅へ食事に招いた。
鈴子が喜んで出かけると、そこには茨田りつ子(菊地凛子)もいた。その場で羽鳥は、鈴子とりつ子の合同コンサート『二大歌手による銃後を鼓舞する大音楽会』の開催を提案した。彼女らが多くの興行主から敬遠されているのならば、自分たちでやればいいと言うのだ。こうして、12月23日に日帝劇場で開催することがきまり、ビラも作られた。

鈴子の楽団員たちも大喜びした。やっとまともな仕事ができるのだ。しかも、これが評判になることは間違いないと思われ、今後の仕事も増えるものと期待された。

しかし、そんな楽団員たちとは対照的に、鈴子は塞ぎ込んだままだった。六郎の戦死がまだ完全には受け入れられていなかったのだ。

そればかりか、梅吉(柳葉敏郎)が生まれ故郷の香川に帰ると言って荷造りを始めた。東京でやることもなく、大阪の家もなくなってしまった。そんな折、香川の幼馴染で繊維工場の跡取りから連絡があり、仕事を手伝って欲しいと言われたという。人生をやり直す好期だと言うのだ。
鈴子は引き留めたが、梅吉は聞く耳を持たない。母・ツヤ(水川あさみ)が亡くなり、六郎も戦死して、家族は鈴子と梅吉のふたりだけになった。それなのに別れると言うのかと詰め寄ったが、梅吉の考えは変わらなかった。ついに鈴子は、自分と梅吉は本当の親子でないから別れても平気なのかと問うたが、梅吉は無視して部屋を出ていってしまった。

せっかく合同コンサートの開催が決まったのに、鈴子は全く歌えなくなってしまった。
思い詰めた鈴子は羽鳥を訪ねた。歌おうと思ってもいろいろなことが頭に浮かんで喉が詰まるのだと話した。

すると羽鳥は、できたばかりだという新曲の楽譜を手渡し、ピアノを弾き始めた。
その曲は『大空の弟』という題名で、鈴子から聞いた六郎の思い出を歌にしたものだという。これならば、今の心境のまま歌えるのではないかと言うのだ。
鈴子は、それをいい歌だと思った。

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NHK『ブギウギ』第47回

「福来スズ子とその楽団」のマネージャー・五木ひろきってのは演歌歌手の五木ひろしにそっくりだし、それを演じている村上信悟は関ジャニ♾️の村上信五とそっくりだし、いろいろややこしいと思っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第47回めの放送を見ましたよ。

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第10週『大空の弟』

鈴子(趣里)が下宿に帰ってくると、小夜(富田望生)が困ったように無言で廊下に立っていた。梅吉(柳葉敏郎)は一人で部屋にいるようだ。
わけがわからず、鈴子は部屋に入った。

梅吉は、夕暮れの中、灯りもつけずにぼんやりと座っていた。六郎の戦死告知書が届いたのだと言う。
梅吉は何かの手違いだと思い込もうとしていた。鈴子も現実を受け入れられず、混乱した。その夜はただ茫然と過ぎていった。

翌朝、鈴子は珍しく寝坊した。
下宿大家・チズ(ふせえり)に差し出されたおむすびをぼんやりと食べ、残りを梅吉の枕元に持っていった。どういうわけか、小夜の姿はなかった。梅吉に一言だけ声をかけると、「福来スズ子とその楽団」の事務所へ出かけた。

事務所には、ひと足先に小夜が来ていた。小夜は、楽団員たちに六郎の戦死を伝えた。しばらくの間、鈴子は仕事のできる状態ではないだろうと報告した。
ところが、その矢先に鈴子が姿を現した。楽団員たちはゆっくり休むよう勧めたが、鈴子は聞く耳を持たなかった。自分の楽団なのだから、率先して仕事をするのは当たり前だとひきつった笑顔で答えた。むしろ、部屋でじっとしている方がしんどいのだと言う。しかし、楽団員たちは重苦しい雰囲気になった。
鈴子は、自分がいることでみんなに気を遣わせているのだと悟った。そう言って、帰ることにした。

帰っていく鈴子のことが心配になって、小夜は追いかけた。すると鈴子は、何もない道端に立っていた。
小夜に気づいた鈴子は、じっとしていると気がおかしくなりそうだと言って、その場で歌い出した。しかし、うまく声が出ない。体で拍子をとろうとしても、体が思うように動かない。
鈴子はその場にしゃがみこんだ。気を抜くと六郎のことばかりが頭に浮かぶのだという。彼が死ぬ時、どんな気持ちだったのか、きっと怖くて寂しかっただろう、かわいそうだと言って泣きはじめた。
小夜は鈴子を背中から抱きしめてやり、慰めた。

それから数日、鈴子は下宿の部屋で過ごした。しかし、いつまでも休んでいられないと考え、朝早くに事務所へ出かけた。まだ誰もいない事務所の掃除をした。
すると劇団員たちが次々にやってきた。

そんな中、トランペット奏者・一井(陰山泰)が興奮した様子で事務所に入ってきた。
ラジオをつけると、日本がアメリカと戦争を開始したと報道していた。その日は1941年(昭和16年)12月8日だった。
他の劇団員たちも一井につられて興奮した。

その頃、小夜は梅吉に日米開戦を知らせていた。しかし、梅吉は何も答えず、呆けたように布団で横になるだけだった。

街を歩くと、みな高揚感に包まれていた。アメリカに勝つと誰もが信じて疑わなかった。あちこちでバンザイの掛け声が聞こえた。
鈴子はそれを横目に、険しい表情で歩いていた。しかし、人々につられて一緒にバンザイを唱えた。

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NHK『ブギウギ』第46回

昨日は学生時代の同級生の@daihikoから急に難波で飲もうと誘われてしゃーねーなぁと出かけて行ってきたし、その顛末について面白おかしくここに書くことを期待されてるのかもしんないけれど書かないし、その代わりに秋山美月役の伊原六花さんがドラマの裏舞台を紹介しているYouTube動画を載せることにする当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第46回めの放送を見ましたよ。

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第10週『大空の弟』

梅丸楽劇団が解散してから半年、鈴子(趣里)は「福来スズ子とその楽団」を立ち上げた。
梅丸で一緒だったトランペット奏者・一井(陰山泰)の家を事務所として使わせてもらい、大きな看板も掲げた。

ただし、楽団員は思うように集まらなかった。あちこちに声をかけたが、一井の他に見つかったのは、ピアノ・二村(えなりかずき)、ギター・三谷(国木田かっぱ)、ドラム四条(伊藤えん魔)の3人だけだけだった。それでも念願だった楽団が立ち上がり、鈴子は満足した。

楽団のマネージャーとして五木ひろき(村上信悟)も就任した。彼は梅丸の辛島(安井順平)からの紹介だった。
辛島から紹介されたことや、本人が腕利きのマネージャーを自認していることなどから、鈴子は彼のことを信頼した。彼はあちこちの劇場に売り込みをかけており、近いうちに公演予定でいっぱいになるだろうと豪語した。鈴子は期待した。また、宣伝のためにビラを配れと言われたら、鈴子は他の楽団員の分も含めて率先して配りに出かけた。

そんな矢先、事務所に小林小夜(富田望生)が訪ねてきた。鈴子が楽団を立ち上げたと聞いて会いにきたという。
梅吉(柳葉敏郎)に酒を飲ませたかどで一度追い払った経緯はあるが、マネージャー・五木から付き人は必要だと説得され受け入れることにした。当面は、鈴子の下宿先で家事をやらせることにした。

それから時が経ち、1941年(昭和16年)12月となった。
年も暮れようとしているが、鈴子たちの楽団は一度も公演をしていなかった。鈴子は適性音楽を歌っており警察の監視対象になっているという悪い噂が流れていて、公演を受けれ入れてくれる劇場がひとつも見つからないのだ。銀行から借りた活動資金も底をつきかけていた。
マネージャー・五木も諦めかけている。鈴子に人気があったのは、梅丸という大きな組織に所属し大きな劇場で派手な演出があったからだとし、今のように小規模な楽団では見向きされないのも当然だと思うようになった。仕事のない楽団員たちの間にも暗い雰囲気が漂っていた。

それでも鈴子はひとつも暗い顔を見せず、常に前向きな態度を見せた。まったく手応えがなくても、地道にひとりでビラ配りを続けた。
それでもふとした瞬間に徒労感を感じることもあった。

ある日、下宿で梅吉と小夜が仲よくカメの世話をしていた。出征前に六郎(黒崎煌代)が大事に飼っていたカメで、今でも元気にしている。
その時、役人が訪ねてきて、六郎の戦死が伝えられた。

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