昨日、安野モヨコ『還暦不行届」(Amazonで買う)が届いたから読んだわけだけれど、20年前に描かれた『監督不行届』(Amazonで買う)と同様にエッセイ漫画かと思って買ったのにほとんどが文章エッセイで最初は面食らったのだけれど(いくつか漫画やイラストはもちろんある)、夫・庵野秀明との滑稽な夫婦生活が面白おかしく書かれていて、その点では前作と雰囲気が同じなので読んで楽しかったし、むしろこの20年間に夫婦がそれぞれが辛い時期を過ごし一緒に乗り越えてきた深い愛情が随所に滲み出ていてすごく良かったし、なんならもう1週間早く入手して11月22日のいい夫婦の日に読むべきだったと激しく後悔した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第45回めの放送を見ましたよ。
梅丸楽劇団が解散してから数週間が経った。
鈴子(趣里)は何もすることがなく、下宿でぶらぶらしているだけだった。その間、一度も歌わなかった。
ふと、このままじっとしていては歌い方を忘れてしまうのではないかと恐ろしくなった。
鈴子は、楽劇団の元統括・辛島(安井順平)を訪ねた。
彼によれば、梅丸社内では鈴子を大阪の梅丸少女歌劇団(USK)に呼び戻したいという意見もあるという。そちらはまだ劇団が存続しているし、鈴子が梅丸で人気の看板歌手であることに変わりはないからだ。
しかし、鈴子はその提案をやんわりと断った。先に大阪に戻った秋山(伊原六花)からの手紙によれば、USKでも愛国ものの演目が中心となり、以前とは大きく様変わりしてしまっているのだという。鈴子はそのような状況では思う存分歌えないと言って移籍に乗り気ではなかった。
続いて鈴子は羽鳥(草彅剛)の家を訪ねた。劇団は解散したものの、羽鳥は作曲の仕事で多忙を極めているようだった。
鈴子は手短に大阪への移籍について相談した。鈴子は大阪の実家はすでに引き払われたため、特に郷愁もなくなったと説明した。そして何よりも、どちらにせよ愛国精神にのっとった演目では楽しく歌えないと話した。
羽鳥は、場所はどこでもよく、自分が楽しめる場所で歌うべきだと助言した。
その言葉に鈴子は反論した。羽鳥は今も作曲を続けるなど、どんな状況でも音楽を楽しんでいる。しかし、誰もがそうであるわけではなく、鈴子自身も現在のような状況では楽しく歌えないと訴えた。
羽鳥はいつものように飄々と、鈴子は自分と同じタイプだと思うと話した。
帰り際、羽鳥はその日行われる茨田りつ子(菊地凛子)の公演の招待券をくれた。羽鳥は仕事が忙しくなって行けなくなったので代わりに行って欲しいというのだ。
そのまま鈴子は茨田りつ子の公演に向かった。りつ子は「茨田りつ子とその楽団」という名義で、自分で雇った楽器演奏者数名を従えていた。客席数はせいぜい20-30しかなく、梅丸の劇場とは比べ物にならない規模だったが、満席だった。
警察官から検閲されていたが、りつ子は自分らしい公演をやり遂げた。鈴子は強く心を掴まれた。
終演後、鈴子はりつ子の楽屋を訪ねた。自分の感動を正直に精一杯伝えた。
しかし、りつ子はいつものように冷ややかに対応した。りつ子は独立して自分で楽団を抱えており、大きな会社に雇われている鈴子とは覚悟が違うと話した。誰からどんなことを言われようと、必死に自分の歌を歌うしかないのだという。今のような時局では、いつ歌えなくなるとも限らない。だから必死なのだと話した。
鈴子にも自分で好きなように歌えばいいと話した。
帰り道、鈴子は伝蔵(坂田聡)のおでん屋台に寄り道した。酔い潰れているだろう梅吉(柳葉敏郎)を迎えにこうと思った。ついでに、梅吉が起こした喧嘩騒ぎのことを伝造に謝らなくてはならないと思ったからだ。
はたして、梅吉はやはり屋台で酔い潰れて眠っていた。
梅吉は喧嘩の理由を一切話さない。訳はわからないが、鈴子はひとまず伝蔵に騒動を謝った。
すると、伝造が一部始終を教えてくれた。たまたま隣の席で飲んでいた二人連れが梅丸楽劇団の解散について話し始めたのだという。特に、鈴子が棒立ちで歌うようになって全くつまらなくなった、もう歌手として終わりだなどと悪口を言ったのだ。それを聞いた梅吉は激昂し、殴りかかったのだと言う。
温和で暴力を振るうような人間ではない父が、自分のために人を殴ったと聞いて鈴子は嬉しくなった。
目を覚ました梅吉は酒を所望した。ずっと酒浸りの父を腹立たしく思っていた鈴子だが、この時ばかりは酒を飲むことを許した。
そして、ふたりで亡きツヤ(水川あさみ)の思い出話をした。彼女がどれだけ鈴子の歌が好きだったかと語り合った。
ふたりは仲直りし、鈴子はツヤのためにも歌い続けることを決意した。
ある日、鈴子は梅丸楽劇団のトランペット奏者兼バンドマスターだった一井(陰山泰)を訪ねた。彼にまだ新しい所属先が決まっていないことを確認すると、鈴子は彼に新しい仕事を提案した。鈴子は「福来スズ子とその楽団」を立ち上げることにしたと説明し、そこに参加してほしいと頼んだ。
一井は二つ返事で応じた。