NHK『ゲゲゲの女房』第66回

 昨日、出版社の社長役で出てきたのは住田隆であり、以前に女医役で出てきたのがふせえりであり、時間差でビシバシステムが揃ったことに軽い感動を覚えた当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第66回めの放送を見ましたよ。

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「貧乏神をやっつけろ」

 大蔵省の男(片桐仁)が土地を取り上げると通知してきた来た翌日。別の役人(石黒久也)が来て、帳簿の間違いであったと謝罪した。

 安心し拍子抜けするふたりであったが、布美枝(松下奈緒)は世の中の不公平さに納得がいかなくなった。茂(向井理)に向かって、貧乏神をやっつけるような力作を描いてくれと訴えるのであった。いつになく強弁な態度に、茂はたじろぎながらも、その気になってくるのだった。

 茂は、超人的頭脳を持った少年が悪魔を呼び出して世直しをするという新作『悪魔くん』の構想を練り上げた。アイディアを見せられた戌井(梶原善)はそれをひどく気に入った。長編作として5冊出版しようと息巻いている。あまりに冒険的な計画に怖気付く茂であったが、戌井の勢いは止まらなかった。

 それからおよそ2ヶ月。ついに『悪魔くん』の初回原稿が完成した。原稿を見た戌井は、落ち着きをなくして大興奮する。彼は『悪魔くん』を傑作中の傑作だと評価し、大ヒット間違いないと考えている。しかし、茂自身はあまり喜ぶことができないでいた。本人でも良い作品ができたと思っているが、必ずしも作品の質だけで売れるかどうかが決まるわけではないと、これまでの経験で痛いほど知っていたからだ。

 それでも無事に原稿料を手に入れて、茂は帰路につくのだった。
 途中で模型屋のショーウィンドウに目が留まった。魅力的な戦艦プラモデルが売られていて、我慢できなくなった茂は貰ったばかりの原稿料でそれを買ってしまった。布美枝は後先のことを考えずに無駄遣いしてしまった茂に呆れ果ててしまうのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第65回

 昨日、戌井の妻役で出演していた馬渕英俚可がホリプロスカウトキャラバンのグランプリ受賞者(1992年)だと知って、そーか、そーか、山瀬まみ(1985年グランプリ)の直系の後輩になるのだなと目を細め、どーりで彼女の事を気に入ったわけだと合点の行った当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第65回めの放送を見ましたよ。

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「貧乏神をやっつけろ」

 茂(向井理)の原稿納品3日前、もっとも金の無い時期である。
 電気代の集金人(剣持直明)がやって来た。集金人自身も上司から目を付けられていて、村井家の滞納金を回収しないことには自分がクビになるかもしれないという。布美枝(松下奈緒)は家中の金を掻き集めるが、とうてい足りなかった。そのため、電気が止められてしまった。

 締め切り直前にも関わらず、茂はロウソクの灯りで仕事をしなくてはならなくなった。どうして自分たちだけこんなに貧乏なのかと辛くなる一方で、電気がないと星空がきれいに見えるなどと呑気なことを言い合うふたりだった。

 原稿をとある出版社に持ち込んだ。原稿料の相場は3万円なのに、そこの社長(住田隆)は3,500円しか渡してくれなかった。この出版社の台所事情も火の車なのだ。あまりの少なさに激しく抗議する茂であったが、文句があるなら仕事がなかった事にしてもいいと強気に出られると、どうしようもなくて受け入れてしまった。
 ここでも、茂には貧乏神(片桐仁)が自分を見てニヤリとするのが見えた。

 溜まっていた電気代の支払いをすると、原稿料はほとんど残らなかった。藍子が夏風邪を引いたようだが、病院代も無いのでしばらく家で様子を見ることにせざるを得ない。

 その時、誰かが訪ねてきた。茂が扉を開けると、全身黒尽くめで、大蔵省の役人を名乗る男(片桐仁)が立っていた。茂の家の敷地の半分は大蔵省が所有する土地であることが判明したという。占有している土地を買い取るか、さもなければ立ち退く必要があると申し渡すのであった。
 用件だけを伝えて帰っていく男に対して、茂は金がないからどうしようもない、勝手にするがいいと捨て台詞を吐くのだった。布美枝に対しても、世の中は貧乏人からばかり金を取る、理不尽なことだとわめき散らすのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第64回

 ちょうど1年前の今日、「日経平均が4万円を超えたら結婚する」と宣言したのに、その時よりも平均株価が下がり(2009年6月10日終値9,991円、2010年6月9日終値9,439円)、婚期が遠のいたことにショックを受けている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第64回めの放送を見ましたよ。

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「貧乏神をやっつけろ」

 藍子が生まれて半年、梅雨の時期となった。村井家の生活は少しも改善していない。

 茂(向井理)は戌井(梶原善)の出版社へ原稿を届けに来た。本を出すたびに赤字で経営の難しくなった戌井は、水道橋の事務所を引き払い、国分寺の自宅で仕事をしていた。その家も借家であり、戌井家の生活も苦しい。戌井の妻(馬渕英俚可)は、そのことで終始イライラしている。

 茂は原稿料を半分しか受け取れなかった。ところが、それを責めるどころか、無給で北西出版の顧問を努めると申し出た。茂と戌井は貸本漫画に対する熱意を共有しているし、戌井家の窮乏を救いたいと思うからだ。新人作家の発掘など、出版社の今後について夜まで話しあった。

 茂が帰ろうとすると、雨が降っていた。自転車で来ていた茂は、びしょ濡れになるのを覚悟で走りだそうとした。戌井の妻は傘を貸そうとするのだが、返しに来るのが面倒だと笑い飛ばして、茂は去っていった。茂は片腕なので、傘を差しながら自転車を運転することができない。戌井の妻は、うっかりとそのことを失念していたのだ。自分の失礼な申し出に嫌な顔をしなかった茂。そんな人柄に感化され、戌井の妻も出版社を盛り立てていく気になった。

 茂は明け方まで家に返ってこなかった。布美枝(松下奈緒)が心配して事情を尋ねると、近道のために通った多磨霊園の中で道に迷ったという。いつも通っている道のはずなのに、走っても走っても出口が見つからなかったという。放心したまま、原稿料を布美枝に差し出した。茂本人も夢うつつで自覚がないのだが、戌井から受け取ったはずの札束は、数枚の小銭に成り果てていた。
 霊園で出口が見つからないという話が、まるで自分たちの貧乏暮らしのようで、胸が苦しくなる布美枝だった。

 布美枝が商店街に来てみると、子どもたちは「鉄腕アトム」の歌を楽しそうに歌っている。その年の1月からテレビアニメが始まって、子どもたちに大人気なのだ。
 こみち書房に顔を出すと、市民団体が詰めかけていた。貸本漫画は暴力や迷信、エログロといった不健全な内容であり、子どもたちに悪影響を及ぼすというのだ。また、消毒もせずに人から人に渡るので不衛生であると難癖もつけられた。彼らは、子供に本を貸し出すなという要望書を美智子(松坂慶子)に突きつけて帰っていった。

 こういった圧力を初めて目にした布美枝は強いショックを受けた。しかし、今回が初めてではなく、美智子は慣れたものだった。貸本は今後も存続するだろうと、消極的ではあるが楽観視していた。
 けれども実際には、週刊漫画雑誌やテレビアニメが人気を集めており、貸本は時代から取り残されて行く一方であった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第63回

 当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第63回めの放送を見ましたよ。

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「貧乏神をやっつけろ」

 茂(向井理)の戦艦模型は、片手だけで作ったとは思えないほど精密だった。茂はもっと見せようとするのだが、急に締め切りの事を思い出して仕事に戻ってしまう。マンガ修行と称して、はるこ(南明奈)が無給でのアシスタントと申し出た。なんとか彼女をデートに誘おうとする浦木(杉浦太陽)は、あまりのしつこさに家からたたき出されてしまった。

 2月も半ばになった。 茂は、戌井(梶原善)の出版社へ原稿を届けに行く。彼の所から出すのはこれで3作目になる。そろそろ原稿料の値上げを交渉しようと思っていた。
 しかし、戌井の出版社の雲行きは怪しくなっていた。出した本が返品されて戻ってきており、茂の作品に対する苦情のハガキも届いていた。
 その上、少ないパイを取り合って、他の出版社との関係も悪化している。取次に圧力をかけて、戌井の会社の本を扱わないよう指示しているところもあるという。戌井は資金繰りのために、自分で描いた漫画を他社に持ち込んで原稿料を貰っていたのだが、ついに掲載を全て拒否されるようになったという。ふたりは、貸本業界が不景気だからこそ助け合う必要があると残念がる一方で、どこも経営が苦しく必死であることに理解も示すのだった。

 結局、茂は原稿料の値上げを言い出すことはできなかった。受け取った原稿料1万円は、そっくりそのまま自宅ローンの支払にあてた。しかし、すでに20万円の負債があるため焼け石に水である。不動産屋の主人(田中要次)は強硬手段に出ることをちらつかせ、脅しをかけてくるほどだった。

 戌井の出版社の状況、不動産屋とのやりとりなどを聞いた布美枝(松下奈緒)は、隠していた出産祝い金を差し出した。藍子の初節句の雛人形を買うようにと、布美枝の実家から送られて来ていたのだ。ひな祭りは来年以降もチャンスがあるが、ローンは今すぐ解決しなければならないと言って、不動産屋への負債にあててしまった。

 精一杯のひな祭り気分を出そうと、布美枝は紙を折って内裏様とお雛様の人形を作った。買い物の時に、ひなあられを一袋だけ買って帰ってきた。
 家に入ると、茂は上機嫌で布美枝を待っていた。豪華な7段のひな壇を絵に描き、襖に貼っていたのだ。一番上には、布美枝の折った人形が貼り付けられていた。絵に描いた料理や酒を前に、ふたりで飲み食いした芝居をしながら楽しむのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第62回

 DOHC(Dokusho One Hundred Club:年間百冊読書する会)を毎月楽しみにしているのだが、今月号はまだ発行されていないので残念に思っている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第62回めの放送を見ましたよ。

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「貧乏神をやっつけろ」

 藍子が生まれてから3週間が経った。
 姉・暁子(飯沼千恵子)はぎっくり腰になってしまい、家事や育児を手伝うことができなくなった。布美枝(松下奈緒)は育児書と産科医の指導の下、全てを自分ひとりで行わなくてはならなくなった。アメリカ式に則って、母乳ではなくミルクを与え、時間もきっちり厳守する。独立心を育むために、少しぐらいぐずっても放置したりしている。

 そのあまりに杓子定規な子育てに、茂(向井理)をはじめ、商店街のいつもの面々(松坂慶子、ほか)は呆れるのだった。むしろ彼らは、自然に任せた無理の無い子育てが良いと信じている。そうやって藍子に向かう人々の姿を見て、布美枝も少しずつ態度を軟化させていく。

 ある日、どこからか写真機を借り受けた浦木(杉浦太陽)が家にやって来た。家族の写真を実家に送って、喜ばせてやろうと親切心を装う浦木。しかし彼は、今日はるこ(南明奈)が村井家に来ることを知っていたのだ。彼女の写真を撮ることこそが本当の目的だった。しかし、藍子と一緒に写真に収まりたいと主張するはるこを前に、彼の目論見は水泡に帰すのだった。

 浦木は自分がプロデュースした書籍を茂に差し出した。1冊は子どもの名づけ法の本だった。すでに娘の名前は決まっており、タイミングの悪さにケチを付ける茂。しかし、その本ははるこがカットを描いた本だという。
 もう1冊は、戦艦の図録であった。収録されている図解は酷いものだった。茂は浦木がいつものように安い所へ発注して上前を跳ねたのだろうと問いただす。どうやら図星のようであったが、はるこの前で良い所を見せたいと思っている浦木は慌てる。

 茂は、戦艦図解の杜撰さをなじりつつ、仕事部屋の奥から戦艦模型を持ってきて見せた。茂の作った模型は、誰が見ても驚くほど精巧なものだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第61回

 せめて今週だけでも、チンタラ走っている車に対して舌打ちするのではなく、「彼/彼女は、安全運転を心がける優良ドライバーだ」と思って尊敬するよう心がけることにした当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第61回めの放送を見ましたよ。

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「貧乏神をやっつけろ」

 年の暮れ、12月30日。
 布美枝(松下奈緒)が退院し、娘と一緒に帰宅した。
 茂(向井理)は朝から落ち着かなかった。赤ん坊が風邪をひかないようにと、いつもは節約している灯油をふんだんに使って家を温めていた。仕事も手につかず、家の隅々を点検したり、自分の漫画の中から目玉おやじが出てくるシーンを読み返したりもしていたのだ。

 茂は、娘に藍子と命名した。筆書きしたが、紙に大きな余白が残って締まらない。茂はそこに目玉おやじのイラストを描き加えた。布美枝の姉・暁子(飯沼千恵子)や茂の兄夫婦(大倉孝二愛華みれ)は奇妙な絵に呆れる、しかし、布美枝だけは茂の意図がわかった。目玉おやじは全力で鬼太郎を守る父親である。茂の決意が見て取れたのだ。

 年が明け、昭和38年1月3日。
 漫画家仲間の戌井(梶原善)がやって来て、貸本出版社(北西社; 苗字の「戌」の方角から)を起ち上げたと報告した。貸本文化を守るために立ち上がったのだ。ただし、会社が軌道に乗るまでは漫画家も続け、原稿は他社から出版してもらうという。他社からの原稿料で、最低限の生活費だけは確保しようというのだ。
 ところが、自分の出版社から出す原稿が無い。そこで、茂にホラー物の短編を寄稿するよう願い出た。もちろん茂は友人の頼みを喜んで引き受けるのだった。

 そんな話をしていると、布美枝の姉・暁子が年始の挨拶と家事の手伝いに来てくれた。しかし、家から運んできたおせち料理を降ろした瞬間、ぎっくり腰になってしまった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第60回

 最近、当シリーズ記事を書くのに時間がかかるようになってきており、今日こそは20分以内に書きあげるぞ、と決意した当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第60回めの放送を見ましたよ。

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「こんにちは赤ちゃん」

 定期検診で布美枝(松下奈緒)は軽い妊娠中毒症だと診断された。食事の良くないことが原因のようだ。入院するよう勧められるが、金の心配からそれを断る。

 家にいると、商店街のいつもの人々が家を訪問してくれた。様子を見に来てくれたセールスレディの靖代(東てる美)がみんなに声をかけてくれたのだ。美智子(松坂慶子)は、塩分控え目でも美味しい料理を持ってきてくれた。その他、みんなは家からこども用品のお古や、安産のお守りなども持ってきてくれた。
 人々の温かい人情に触れて涙ぐみつつも、応援を受けて明るさと勇気を取り戻す布美枝であった。

 しばらくして、クリスマス・イブの日。布美枝は定期検診で病院へ向かった。徹夜で仕事をしていた茂も、ふと気が向いて一緒についてきてくれた。
 妊婦に囲まれて居心地の悪い思いをしている茂の所へ、検診を終えた布美枝が深刻な顔をしてやって来た。予定日は年明けだったはずなのに、今夜にも生まれるかもしれないという。そのまま入院することとなった。
 布美枝は仕事のことを心配し、茂に家へ帰るよう言うのだが、居ても立ってもいられない茂は入院道具を揃えると病院に詰めた。

 その日の夜、無事に女の子が生まれた。

「ごくろうさん、お母ちゃん」
「だんだん、お父ちゃん」

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まつとし聞かば 今帰り来む: 猫が帰ってくるおまじない

 本日放送のNHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で、中納言行平(在原行平)の和歌が登場した。

立ち別れ 因幡の山の峰に生うる まつとし聞かば 今帰り来む

 その歌のことを向井理演じる水木しげるが、迷い猫が返ってくるように願うおまじないであると言うシーンがあった(参考: 当方のまとめ記事)。

 今朝の放送を見た時、内田百閒の『ノラや』という本の中で読んだことがあるような気がした。その時は出勤前で余裕が無かったのだが、時間ができたので調べてみた。わかったことを以下に記す。

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NHK『ゲゲゲの女房』第59回

 今日の朝ごはんは、アピタ精華台店の「肉のげんさん」(三元フード株式会社)で買ったビーフコロッケ(5コ入り150円)であり、「チョーうまい、冷えてもうまい、よそでコロッケもう買うまい」と朝からラップ風につぶやいている・・・などと、3日前と同じことを書くことで読む人をデジャブに誘い込むため、本当にコロッケを食べた当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第59回めの放送を見ましたよ。

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「こんにちは赤ちゃん」

 倒産した富田書房に債権者が集まり、資産整理の話し合いが行われた。茂(向井理)は、人々を嘲笑うかのように眺めている貧乏神(片桐仁)の姿を見つけた。貧乏神は、集まった人々を一通り見回した後、茂に目をつけてニヤリと笑うのだった。

 村井家では、米と味噌がいよいよ底を付きそうである。金が無いので、日々やってくる集金人の影にも怯える日々だ。ハコベなど、道端の雑草を集めては食料にしているありさまである。
 茂は自分の力で何とかしようとし、他の出版社から仕事をもらい猛烈に働くが、原稿料は安くなる一方で、ますます生活は苦しくなっていく。

 ついに布美枝(松下奈緒)は、嫁入り直前に母(古手川祐子)から贈られた着物を質入するよう差し出した。この着物は、母が布美枝の結婚生活の幸せを願い、リウマチに痛む体で夜なべして縫ったものである(第17回参照。そんな事情は知らないものの、ただならぬ雰囲気を感じ、考えなおすよう勧める茂である。しかし布美枝は、自分は身重だからしばらく着ることはできない、茂は質草を一つも流したことが無い、将来きっと取り戻してくれると信じている、一時的に預かってもらうだけであり心配ない、と言い張るのだった。

 そう言われて、茂も着物を質入することを決めた。品をあらためていると、和歌をしたためた髪が挟んであった。

立ち別れ 因幡の山の峰に生うる まつとし聞かば 今帰り来む

 茂によれば、それは迷い猫が帰ってくるという俗信だが、布美枝はいろいろな物が早く戻ってくるおまじないだと思い込んでいたのだ。布美枝の勘違いに笑い出すふたり。雰囲気が一挙に明るくなった。
 しかし茂は、布美枝からの信頼に応えるため、必ず取り戻すと、その和歌に思いを込めて決意するのだった。

 布美枝の手元には、祖母(野際陽子)の形見の簪だけが残った(第8回参照)。それは、彼女の女系親族に代々伝わる、縁結びのお守りである。自分の赤ん坊の性別はまだわからないが、女の子が生まれたら引き継がなければならないと思い、手放すわけにはいかないのだった。

 村井家に、税務署の職員(水橋研二山本浩司)が調査のためにやって来た。申告所得額があまりに少ないため、申告漏れ、もしくは帳簿外の収入があるのではないかと目をつけられたのだ。初めは、自分達の貧乏な暮らしを自嘲しヘラヘラと笑っていた茂であるが、職員らの高飛車で頭ごなしの態度に腹を立た。ついに質屋の引換証の束を投げつけ、自分の貧乏暮らしを証明し、職員を追い返すのだった。

 騒動が収まり、やっと落ち着いた時、茂と布美枝は家の中のただならぬ雰囲気に気づいた。貧乏神が取り憑いて、ニヤニヤと笑っているのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第58回

 京都府城陽市が「自分おこし」という事業を始めたらしい。街おこしの根本となるべき、住民を盛りあげようという企画らしい。書道家の俵越山という人が中心で行っているらしいが、テレビニュースで見ていて、どこかで見たことのある人だなぁと思ったら、タレントの越前屋俵太だと紹介された。懐かしさと驚きでいっぱいになった当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第58回めの放送を見ましたよ。

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「こんにちは赤ちゃん」

 夏。『河童の三平』は富田書房から3巻まで刊行された。約束手形で受け取っていた1巻めの原稿料10万円は、無事に現金化することができた。
 しかし、富田(うじきつよし)は2巻と3巻の原稿料の支払いを待って欲しいと言い出した。茂(向井理)が問い詰めても、ハッキリとした理由は言おうとしない。それでも、富田に義理のある茂は言いなりになってしまった。残りの原稿料20万円は、全て11月に支払われる約束手形として受け取った。茂自身も、家のローンの支払いを待ってもらっている状況であり、不動産屋に頼み込んで、約束手形を預けることで支払いの代わりにしてもらった。

 11月になった。布美枝(松下奈緒)と赤ん坊は順調だった。金がないのは相変わらずであるが、幸せそうな布美枝。茂のセーターの毛糸をほどいて、赤ちゃんの衣類を編んでいる。

 はるこ(南明奈)が今後の作家生活の相談のために訪ねてきたのだが、茂は留守だった。不景気な貸本業界にあって、少女漫画だけは堅調であり、はるこの本は次々に出版されている。しかし、はるこは、どれも同じような少女漫画を描くことに疑問も感じており、茂のような独創的な作品を作りたいと希望を持っている。布美枝は、独創的すぎると自分の家のように貧乏暮らしをすることになると、軽口で答えるのだった。
 村井家を辞したはるこは、近所の喫茶店へ向かった。そこで浦木(杉浦太陽)と落ち合い、彼から小説の挿絵の仕事を紹介してもらった。浦木は、はるこへの下心があって仕事を紹介している。しかし、はるこはそんなことには全く気付かず、茂の幼い頃の話を聞きたいとせがむのであった。浦木は少々面白くなかった。

 茂は家の支払いのことで不動産屋の主人(田中要次)に呼び出された。預けていた手形が不渡りになったのだ。滞納していた月賦20万円を今すぐ現金で払うか、さもなければ家の立ち退きを迫られてしまった。茂はその場をとりなし、富田書房へ事情を調べに行くのだった。

 富田を殴りつけてやるつもりで事務所に到着すると、すでに他の債権者が押し寄せて暴力沙汰になっていた。それを見て茂は、つい富田をかばってしまう。ふたりっきりになって事情を聞くが、富田は泣いて謝るばかりで、どうしようもない。会社は倒産した。当然、不渡手形をどうすることもできないし、原稿料が受け取れないことも確定した。

 家の立ち退きまで迫っているのに、布美枝はまだ何も事情を知らないのであった。

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