NHK『純と愛』第2回

昨日のまとめ記事で「宝塚のオバQ」と言った際、頭に浮かんでいたのは『機動戦士のんちゃん』(YouTubeで見る)に出てくるQちゃんのことであって、藤子不二雄のオリジナルではなかったことに思い至った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第2回めの放送を見ましたよ。

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第1週「まほうのくに」

純(夏菜)は大阪のオオサキプラザホテルの前にいた。これまでの就職活動はことごとく失敗し、もうこのホテル以外に望みはなかった。今日の最終面接にかける気合は十分であった。

面接会場であるオオサキプラザホテルに入ろうとした時、人ごみの中をよそ見しながら歩いてくる男(風間俊介)とぶつかり、純は転んでしまった。
男は純の顔をじっと見た。勝気な純は睨み返してたしなめるが、男は目をそらそうとはしなかった。
「初めてだったから、つい・・・」
などと不可解なことを言うばかりであった。
やっと男は去って行ったが、少し離れた所に立ち止まり、再び純のことを凝視した。薄気味悪くなった純は足早に離れてホテルへ向かった。

最終面接は、志望者5人の集団面接だった。面接官はホテルの重役らしい5人であった。
それまで順調に面接は進んでいたが、純の前の志望者(黒木華)が話している時に、いきなり面接官・米田(矢島健一)の携帯電話がけたたましく鳴った。さらに別の面接官・露木(や乃えいじ)が遠慮のない大きなくしゃみをした。そのせいで彼女は動揺してしまい、言いたいことがほとんど言えずに終わってしまった。純は彼女のことを少々気の毒に思ったが、この場では情けをかけるわけにはいかなかった。

続いて、純の番である。
志望動機を聞かれるや否や、単刀直入に
「社長になりたいから」
と高らかに言い放った。その一言に場が凍りついた。

しかし、そんな純に興味を持った者が一人だけいた。
その男(舘ひろし)は面接官の後ろに控えて座っていた。彼は社長になってどうするつもりかと尋ねた。
純の答えは「魔法の国」を作りたいというものだった。宿泊客が笑顔になって帰るホテルを作りたいというのだ。そのための秘訣は、経営者の愛が溢れていることであり、自分がそうしたいというのだ。

純は自分の祖父(平良進)が作ったホテルのことを話した。元々は自動車整備工場を経営していたのだが、祖母が不治の病にかかった時にホテルを作った。それまでは仕事が忙しくてろくに旅行に連れ出すこともできなかった反省から、そこにいるだけで世界中を旅している気分になれるようなホテルを作りたかったのだという。
そこには、祖父の祖母に対する愛が溢れていたのだという。それが純の理想なのだ。

その時、再び米田の携帯電話が鳴った。遠慮することなくメールを読んではニヤニヤしている。露木も二度目の大くしゃみをした。まったく悪びれるところがなかった。
純は腸が煮えくり返った。しかし、他に就職できるあてがないので我慢しようとした。

しかし、できなかった。
携帯電話やくしゃみのことを純は激しい口調で避難した。そのせいでペースを乱された別の志望者のことを弁護した。司会役の面接官・中津(志賀廣太郎)にやんわりとたしなめられるが、純の勢いは止まらなかった。
中津が「時間がないので穏便に」と言ったその一言でますます激昂した。

志望者側は、この短い時間に自分の一生をかけている。その瞬間を良い物にしたいと願っている。それを台無しにしたのは、面接官側であると食ってかかった。
そもそも、ホテルの理念は短い滞在期間で客を満足させるというものだ。相手との短い時間の交流を大事にしないことは、ホテルで働く者として失格である。重役がこのような体たらくでは、このホテルは遅かれ早かれ潰れてしまう。
そう啖呵を切った。

面接は終わった。もうオオサキプラザホテルへの就職は叶いそうにない。

広場で落ち込んでいると、面接前にぶつかった男がまだそこにいた。そして、じっと純のことを見つめている。気味悪く思った純は慌てて立ち去るが、男はずっと追いかけてきた。慣れないヒールで転んだ拍子に男に追いつかれてしまった。

男は、純の顔をまじまじと見つめ、
「どうしてももう一度確かめたくて。でも、それがなんなのか、説明してもわかってもらえないと思う。」
などと、意味不明なことを言うばかりであった。

純の怒りは頂点に達した。
失礼な面接官に対する怒り、面接で自重することのできなかった自分自身への怒り。そこへ、この不気味な男への怒りが加わった。
今にも暴れだしそうだと言って、男に警告した。しかし、彼はなかなか立ち去ろうとしない。

焦れた純は自ら立ち去った。
純の背中に対して、男は
「あなたはそのままでいてください。ずっと、そのままでいてください。お願いします」
などと、ますます意味不明なことを言うのであった。

純は混乱した。

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NHK『純と愛』第1回

彼女に恨みは全くないのだけれど「げっそり痩せたオバケのQ太郎が宝塚歌劇の男役として登場したような感じだ」などといきなりdisってしまう当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第1回めの放送を見ましたよ。

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第1週「まほうのくに」

那覇に住む大学3年生の狩野純(夏菜)は、久しぶりに実家のある宮古島(Google mapsで場所を確認)に帰ってきた。
就職活動シーズンが始まる前に、純は自分の進路についてある決意をしていた。彼女は、自分の実家のホテルを継ごうと思っているのだ。

実家のホテル・サザンアイランドは、母方の祖父・真栄田弘治(平良進)が開いたホテルだ。10年前、大阪で仕事を失った父・善行(武田鉄矢)は逃げるように宮古島にやって来て、母・晴海(森下愛子)の実家に一家で世話になることになったのだ。
当時幼かった純(安養寺可蓮)は、初めてホテルを見た時のことをよく覚えている。まるで「魔法の国」だと思ったのだ。一歩建物に入ると、全てのものが輝いて見えた。どんなにふさぎ込んでやって来た宿泊客であっても、祖父のもてなしを受け、帰る頃には満面の笑みになっていた。それがまるで魔法のようで、純は大いなる憧れを抱いていたのだ。
ロビーの中央には昔ながらのジュークボックスがあり、それがひときわ光り輝いていた。

しかし、祖父が亡くなった後、父が跡を継ぐやホテルはすっかり様変わりしてしまった。
建物の中は薄暗く、辛気臭い。宿泊客はどこか憮然とした表情で帰って行く。それを送り出す父もまったくやる気がない。
その現状を知っている純であったが、目のあたりにすると、ますますやり切れない思いになった。憧れの「魔法の国」はもう存在していなかった。ジュークボックスはもう壊れて動かない。

純は祖父の言葉を思い出していた。
「人の運命なんて最初から決まっていない。人生の一つ一つの選択が運命になる。」
その言葉を胸に秘め、純は父に直談判するのだった。

純はホテルを継ぎたいと申し出た。「ホテル・サザンアイランド再生計画」という手書きのノートを携え、自分なりの経営方針を披露した。しかし、父・善行はノートを数ページめくっただけで、それを放り投げてしまった。
そもそも純と折り合いの悪い善行は、ホテルの経営がうまくいかないのは自分のせいではないと責任転嫁した。地元の連中が観光客へのもてなし方やインフラの整備を進めないのが原因であって、自分はそのわりを食っているだけだと言い訳した。今のやり方を変えるつもりは全くない様子だった。その上、ホテルは長男の正(速水もこみち)に継がせるつもりであり、純がその下で指示に従うなら雇ってやってもいいと居丈高に言った。

父と純のやり取りを、他の家族は聞こえないふりをするばかりだった。跡取りとして指名された兄・正は、積極的な意思は見せなかったが、他にすることもないので受け入れるという風だった。大学を2浪中の弟・剛(渡部秀)は自分の飯を食うのに熱心で、やり取りを全く聞いていなかった。
母は心配して成り行きを見守っていたが、表立って純を援助する立場にはなかった。

ついに純は喧嘩腰になった。
祖父の遺したホテルがダメになるのを見ていられない、やる気のない善行が全てをダメにしているのだとはっきりと言ってしまった。
その言葉に善行は激昂した。二度と家の敷居を跨ぐなと言い捨て、純を追い出してしまった。
失望した純は父に見切りをつけた。
「うちよりデカいホテルの社長になってやる」
と啖呵を切り、家を出ていった。

外まで追いかけてきた母・晴海(森下愛子)であったが、純を引き止めることはしなかった。そのかわり、自分の気持ちを代弁してくれたと感謝した。晴海も祖父の作り上げた「魔法の国」が消滅したことを苦々しく思っていたのだ。
母が同じ気持ちでいることがわかって安心したものの、純は悔しくてならなかった。半べそをかきながら、一度も振り返ることなく家を去った。そして、二度と宮古島には帰ってこないことを決意した。

そして半年が経った。
本格的に就職活動が始まり、純は大阪にいた。オオサキプラザホテルという大阪でも一二を争う大きなホテルの就職面接を受けに来たのだ。

会場に入ろうとした時、人ごみの中でよそ見をしながら歩いている男(風間俊介)とぶつかって、純は転んでしまった。

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NHK朝ドラ関連ネタ3つ

【『おひさま』10月より再放送開始】
2012年10月のBSプレミアム番組表(PDF)を見たところ、『おひさま』の再放送が始まるようです。
現在(2012年4月-9月)は『ゲゲゲの女房』が再放送されている7:15-7:30の枠です。

しかも驚くべきことに、『おひさま』は7:15に加えて、19:00からも放送されるという。なんと1日2回。
名作と呼ばれる『ゲゲゲの女房』ですら1日1回だけだったのに、2回もやるとは。

2012年10月BSプレミアム番組表の一部

ていうか、『おひさま』は(以下自粛)。

なお、昨日、『おひさま』の舞台である長野県安曇野市までドライブしてきた当方ですが、その時は再放送のことを知りませんでした。


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NHK『梅ちゃん先生』第1回

習慣とは面白いもので、『カーネーション』が終わったのだから少し起床時間を遅くして朝はゆったりと準備して出勤する生活に戻ろうと思っていたのに、適当な時間になれば目が覚めるし、自然にBSプレミアムにチャンネルを合わせるし、気づけばテキストエディタも起動していた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』の第1回目を見ましたよ。

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第1週「あたらしい朝が来た」

1945年(昭和20年)8月15日朝。
東京・蒲田に住む16歳の女学生・下村梅子(堀北真希)は夢を見ていた。軍事工場で勤労奉仕を行う自分が旋盤機を壊してしまい、みんなに迷惑をかけてしまうという夢だ。しかし、そんな酷い夢を見ても、目をさますことはなかった。
梅子はいつものように朝寝坊をした。梅子の家族も、梅子の寝坊の癖はもう直らないと諦めており、あまり真剣に起こそうともしない。梅子は朝食を抜いて出かけざるを得なくなった。これもいつものことである。

梅子ら下村家の隣には、旋盤職人の安岡家が住んでいる。朝も早くから、梅子の幼馴染で息子の伸郎(松坂桃李)と父の幸吉(片岡鶴太郎)が怒鳴り合いの喧嘩をしている。伸郎が仮病を使って仕事を休もうとしているので、幸吉が激怒しているのだ。幸吉に追い掛け回され、伸郎は下村家の中に逃げ込んだ。
ふたりが喧嘩をするのはいつものことで、下村家の者たちは特に気にしない。唯一、梅子の父で大学の医学部教授である建造(高橋克実)だけは、念のため医師の診察を受けることを勧めた。医学者として、万が一の事場合を心配するからだ。一方、昔ながらの職人である幸吉は病気など気合で治ると考え、診察の時間がもったいないと答える。そのような時間があったら、国のために働くべきだという考えた。建造と幸吉は隣同士だが、あまりウマが合うようには見えなかった。

梅子の兄・竹夫(小出恵介)は医学生である。本来なら徴兵されて戦地に行ってもおかしくない年頃であるが、医学生として徴兵免除されているのだ。竹夫は少し悩んでいた。国民が一丸となって敵国と戦っている中、自分だけ徴兵や勤労奉仕を免れ、勉強だけしていていいのかと呵責の念があるのだ。
そんな竹夫に対して、建造は医学の勉強こそ国への奉仕だと諭した。立派に医術を身につけ、人々の役に立つ人物となることが医学生の奉仕だと話すのだった。

梅子の母・芳子(南果歩)と祖母・正枝(倍賞美津子)は、梅子におにぎりとさつまいもを弁当として持たせてくれた。それを持って、梅子は軍事工場へ出かけた。その工場では姉・松子(ミムラ)も同じく勤労奉仕している。

寝坊した梅子だったが、朝食の時間を省略することで、工場には遅刻せずに着いた。しかし、根っからの不器用さと空腹のせいか、またしても失敗してしまった。縫製に使う手縫針を折ってしまったのだ。今日の夢で見たように、いつも失敗ばかりの梅子は工場の監督官(徳井優)に目を付けられており、失敗がすぐに露呈した。監督官にこっぴどく怒鳴られ、梅子は小さく縮こまってばかりだった。

そうしているうちに、昼になった。今日は正午に、ラジオで天皇陛下から特別のお言葉あるということで、女学生たちは広場に整列した。腹の減ってしかたのない梅子は、外に出る前にこっそりとおにぎりを頬張った。急いで食べたつもりだったが、他の女学生たちよりも大きく遅れてしまった。一人だけ遅れて出てきたせいで、またしても監督官に見とがめられ、怒鳴られた。
恐縮して小走りになった梅子は、ラジオのコードに足を引っ掛けてしまった。そのせいでコードが切れてラジオが壊れてしまった。予備のラジオを持ってきて事無きを得たが、梅子は監督官にひどく叱られた。

放送が始まった。梅子たち女学生は、言葉の意味がわからなかった。しかし、監督官が日本が戦争に負けたのだと説明したのを聞いて、みなその場で崩れ落ちるように泣いた。

そんな中、姉の松子が列を飛び出して建物の陰に隠れた。その姿を見た梅子は、すぐに後を追った。
他の女学生たちが泣き悲しむ中、松子だけは静かに喜んでいた。戦争が終われば、松子の婚約者のサトシが帰ってくるというのだ。サトシは父・建造の教え子で、軍医として従軍しているのだ。松子は戦争が終わって嬉しいのだ。

梅子は、戦争が終わったことの意味を考えた。梅子には、喜んでいい事なのか、悲しむべきことなのかわからなかったのだ。梅子は竹槍の軍事教練やバケツリレーによる消火訓練が苦手で、いつも失敗ばかりだった。それをしなくて済むようになったのは嬉しいことかもしれない。姉も婚約者の帰国を待ち望んでいる。一方、周りの人々を見ると、どの顔も皆、悲しみに沈んでいる。
ますます、自分と周囲と、どちらの感情が普通なのかわからなくなるのだった。

3月に行われた東京の大空襲で、梅子の住む蒲田も焼け野原となっている。あちこちに瓦礫が散乱し、土砂が山盛りになっている。
帰路に着いた梅子は、今朝仮病で騒いでいた伸郎が土を掘り返しているのを見つけた。土砂から大きな時計が覗いているのを見つけたので、それを掘り出して売るのだという。勝手にそんなことをしてはいけないと思った梅子は、やめるように言った。しかし、伸郎は耳を貸さない。

かわりに伸郎は
「新しい時代を掘る」
などとうそぶいた。

その言葉に何かを感じた梅子は、伸郎を手伝って一緒に掘った。
しばらくして土を取り除くことができたが、それは本物の時計ではなく、単なる看板に書かれた絵だった。ふたりの苦労は水泡に帰した。

けれども、伸郎はめげなかった。すぐに別の場所を掘り返し始めた。

梅子は「新しい時代を掘る」という言葉を胸のうちで反芻した。その言葉に誘われるかのように、自分も手近な場所を掘り始めた。

戦争がやっと終わった。しかし、梅子の「人生」という新しい戦いが今始まろうとしていた。

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NHK『カーネーション』最終回(第151回)

「ついにこの日です。長いと思ったけれど、あっという間でした。最後は一部グダグダなところもありましたが、思い返せば総じて楽しい思い出です。本当にありがとうございました。」とひとりごちている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の最終回(第151回)を見ましたよ。

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最終週(第26週)「あなたの愛は生きています」

2010年(平成22年)9月。
今年も岸和田ではだんじり祭が行われている。
糸子が2階に作ったサロンには大勢の客が集まった。どの顔も笑顔で、明るく賑やかな雰囲気に包まれた。

サロンには糸子(夏木マリ)の肖像写真が飾られている。優しい笑顔をたたえた糸子は、まるでそこにいて、大勢の客をもてなしているかのようだった。

その喧騒の中、優子(新山千春)が直子(川崎亜沙美)と聡子(安田美沙子)を部屋の隅に呼びつけた。
テレビ局の職員が挨拶に来て、糸子のことを朝ドラにしたいと申し込んできたのだという。直子と聡子は大喜びした。糸子は朝ドラが大好きだったので、自分が主人公になることはとても喜ぶだろうというのだ。しかし、優子は、当然自分達も登場することになり、全国に恥を晒すのではないかと不安になるのだった。

糸子は死んだが、魂はまだこの世にあった。この世にあって、娘や親しい人達をいつも見守っている。
娘たちが朝ドラについて相談しているときにもそばにいた。彼女らに声は聞こえないが、糸子はしきりにオファーを受けろと説得するのだった。

2011年(平成23年)10月3日8時1分。
ある病院の待合室で、車椅子に乗った高齢の老婆がテレビを見ていた。彼女は以前からこの日を楽しみにしていたという。黙って画面に見入った。

尾野真千子という女優と、二宮星という子役が歌を歌っていた。


時は大正、岸和田に、生まれた一人の女の子。
名前を小原糸子と申します。
着物の時代にドレスに出会い、夢見て、愛して、駆け抜けた。
これはそのお話。

第1回に続く)

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NHK『カーネーション』第150回

英詞の意味がさっぱりわからなかった中坊の頃から、とにかく the Beatles の “Golden Slumbers; Carry That Weight; The End” のメドレー(アルバム”Abbey Road”に収録) が大好きで、かつ、いつ聞いてもしんみりしてしまう当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第150回目の放送を見ましたよ。

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最終週(第26週)「あなたの愛は生きています」

糸子(夏木マリ)の入院生活は明るかった。多くの見舞い客が訪れ、彼らの持ってくる花で病室内がいっぱいになった。糸子は人が来るのを何よりも楽しみにし、いつも化粧をして綺麗に装った。看護師長・相川(山田スミ子)に顔色がわからなくなるから化粧はやめろといわれても、糸子には馬の耳に念仏だった。

入院する前よりも若返って見える糸子について、吉岡(茂山逸平)は恋をしているようだと軽口を叩いた。糸子は静かに笑うだけで何も答えなかったが、それを図星だと思った。

ただし、糸子は特定の誰かに恋をしたのではない。世の中の全てのものが美しく綺麗に見えるのだ。
意識を取り戻した朝、糸子に変化が訪れた。カーテンの隙間から漏れる陽の光、外から聞こえてくる小鳥のさえずり、横で穏やかに眠っている娘たち。それらが綺麗に思えてしかたがなくなった。それからというもの、何もかもが綺麗に思えるようになったのだ。

糸子は穏やかな入院生活を送った。綺麗なものを愛で、周囲の人々のどんな小さなことにも感謝するばかりだった。

2006年(平成18年)3月26日。
糸子は息を引き取った。

奇しくもその日は、イギリスにおける母の日だった。聡子(安田美沙子)のパートナーのミッキー(エリオット・クロプトン)はカーネーションのブーケを買ってきて、楽しげにしている。まさにその時、聡子は糸子の訃報を知った。

日本では、遺族が糸子の家に帰ってきた。
孝枝(竹内都子)は、優子(新山千春)と直子(川崎亜沙美)を2階のサロンへ案内した。2人がそこを見るのはこれが初めてだった。
2人はサロンを見て歓声を上げた。酒がたくさん収蔵されており、家の前を通るだんじりがよく見えるような作りになっていた。糸子の好きなものが全て揃ったサロンなのだと感心した。

直子は、壁に作り棚があるのを見つけた。その棚の前にはテーブルが置いてある。今はどちらも空いているのだが、直子はそこに糸子の意図を感じ取った。自分が死んだ後は、そこに自分の大きな写真と花を飾って欲しいという意味なのだ。無言の遺言を伝えた糸子の手腕に、優子と直子は自分達はまだまだ敵わないと舌を巻くのだった。

翌日、聡子が帰国した。イギリスから持参したカーネーションのブーケを棺に収め、糸子の亡くなった日はイギリスの母の日だったと話しかけた。そして、見送ることができなかったことを深く謝るのだった。

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NHK『カーネーション』第149回

Crazy Ken Bandの「ある晴れた悲しい朝」が1年ぶりに頭の中でぐわんぐわんと鳴り響いている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第149回目の放送を見ましたよ。

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最終週(第26週)「あなたの愛は生きています」

2006年(平成18年)3月ひな祭り。
糸子(夏木マリ)は店の者に言って、雛人形を店に飾らせた。春は糸子の好きな季節だ。何度来ても嬉しいと言う。平和で穏やかで豊かな時間だった。

糸子は軽いめまいを覚えた。水を飲もうとキッチンに向かい、そこで倒れた。
すぐに救急車で病院の集中治療室に搬送された。意識不明となり、命も危ない状態となった。

糸子の娘たちは連絡を受けるやいなや、岸和田に帰ってきた。
ロンドンで暮らしている聡子(安田美沙子)の到着は当然遅れた。糸子が倒れた翌日の夜にやっと関空に着き、そこから急いで病院に駆けつけた。ところが、聡子が糸子の病室に入ろうとすると、中の様子がおかしいことに気づいた。姉たちの笑い声が漏れ聞こえてくるのだ。
訝しみながらドアを開けると、優子(新山千春)と直子(川崎亜沙美)がパジャマ姿で簡易ベッドに寝転がり、冗談を言い合っていた。互いのすっぴん姿を見るのは久しぶりで、その姿がおかしくて仕方ないと言うのだ。そして、いつものように優子と直子が言い争いを始めた。優子は仕事の都合がつかずに、糸子が倒れた翌朝にならなければ来ることができなかった。その日のうちにやって来た直子は自分が一番手柄だといって優子をバカにするのだった。
緊張感のない姉たちの様子に腹を立てる聡子であったが、すぐに姉たちの雰囲気にのまれた。糸子は意識不明のままであるが、こうして親子がひとつの部屋で寝るのは子供時代以来なので、自然と嬉しくなってしまうのだ。

しかし、糸子の容態の話になると、3人とも暗く沈んだ。糸子は今夜がヤマなのだという。そんな話をしているうちに、姉妹はベッドの中でさめざめと泣いた。

ところが、翌朝、糸子が目を覚ました。それに気付いた3人姉妹は、嬉しくなって大声で騒ぎ始めた。糸子は自分が倒れた事情を思い返すよりも先に、娘たちを黙らせるのに躍起にならざるを得なかった。
糸子が無事に峠を越えたことで、3人姉妹は安堵し、すぐに仕事に戻ることにした。彼女らはすでに糸子の事を忘れたように、仕事の情報交換を始めた。糸子は完全に蚊帳の外に置かれたが、悪い気はしなかった。娘たちが活き活きとしている姿を頼もしく眺めていた。
そして、娘たちが明るく去っていくのを微笑みながら見送った。

ひとりになった糸子は、娘や店の従業員、病院スタッフの一人ひとりの顔を思い出しながら、心の中で感謝の言葉を送るのだった。そして、自分はなんと果報者なのだろうかとしみじみ思うのだった。

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NHK『カーネーション』第148回

Apple社のデザインや広告はそれほど好きではない中、唯一JETの”Are You Gonna Be My Girl”を使ったiPodのCMだけはチョーお気に入りだったわけだが、当のJETが活動停止すると知って落胆している当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第148回目の放送を見ましたよ。

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最終週(第26週)「あなたの愛は生きています」

2005年(H17)12月。
糸子(夏木マリ)は本業の他に地方公演などで忙しく飛び回っていた。マネージャーの孝枝(竹内都子)は、糸子の身体を心配し、できるだけ仕事を減らそうと苦心していた。

優子(新山千春)が東京の病院から講演を頼まれていたのだが、急に都合が悪くなってしまった。糸子に代理を務めて欲しいと連絡があった。電話を受けた孝枝は、その日は糸子の休養日だからと言ってきっぱりと断った。
孝枝では埒があかないと思った優子は、糸子の携帯電話に直接電話をかけて頼んだ。仕事となると後先を考えない糸子は、二つ返事で引き受けてしまった。

はたして、東京の病院での講演会は無事に終わった。
終演後、糸子は川上(あめくみちこ)という初老の女性と話し込んだ。川上は40年近く看護師として働き、この病院の前の看護師長も務めていた人物だという。若い頃に岸和田に住んでいたこともある。岸和田の知人から、糸子が病院でファッションショーを行った時の新聞記事を送ってもらって読んでいたという。それを読んでとても感動したと挨拶した。
だから、すでに病院関係者ではなくなっているのだが、裏方の手伝いをやらせてもらったのだという。

川上と話しているうちに、糸子は彼女の言葉が流暢な標準語であることが気になった。糸子の娘たちは20年弱しか岸和田に住んでおらず、その後東京で40年近く暮らしてもさっぱり岸和田弁が消えない。それに比べると、川上の言葉遣いがとてもきれいなのだ。

川上は少し言いにくそうに自分の生い立ちを語った。24歳まで岸和田に住んでいて、その後は東京で生活しているという。
そして、さらに言いにくそうに、自分は10歳まで長崎に住んでいたことがあると付け加えた。各地を渡り歩いたから、一箇所の言葉に染まらなかったのだ。

糸子は気づいた。川上の歳の頃や経歴に思い当たるふしがあるのだ。
糸子の複雑な表情を見て取った川上は、自分が周防(綾野剛)の娘だと名乗った。
糸子は黙って泣き出した。いたたまれなくなった川上は、その場を逃げ出してしまった。
別件が早く終わった優子が、病院まで糸子を迎えに来た。そして、糸子に声をかけようとした瞬間、川上の告白を聞いてしまった。優子は逃げていく川上を追いかけた。
ふたりは、生涯で2度目の対面をした。幼い頃、川上は小原家を覗きに来たことがあるのだ。その時に優子と出くわし、川上の弟が優子を突き飛ばして逃げた。口をきくのは初めてだが、両者の50年ぶりの再会である。

川上は、当時の暴力を謝った。優子も、親たちの問題とはいえ、自分の家が川上らに与えた苦しみについて謝罪した。

川上は包み隠さずに自分の心境を話し始めた。川上は糸子や小原家のことを憎んでいたという。そして、人を憎むという、自分の汚い心にも苦しめられていたという。
同時に、父の相手が糸子で良かったと思う部分もあったという。そして今日、糸子に会い、わだかまりが全て消えたのだという。糸子は今でも周防の事を思い続けているということが、糸子の目を見たらわかったという。それだけで、憎しみはすっかり消えてしまったのだと告白した。

糸子は、いつまでも泣き続けた。
糸子は歳をとり、たくさんの記憶を持っている。楽しい思い出もあれば、辛い過去もある。周防の件は、自分の心だけに潜め、このまま闇に葬り去るつもりでいた。ところがそれが、今、大きく糸子の心を支配した。それで糸子は打ちのめされてしまったのだ。
それはまるで、夜空に大きく華ひらく花火のようだった。暗い天空に一筋の記憶の尾が流れていき、ぱっと開いて大きな音がなる。次から次へと思い出の花が咲き、視覚全体を支配する。糸子はその光景から目をそらすことができないのだ。

しかし、糸子は同時に思う。
自分は、その記憶の花火を見るために生きてきたのかもしれない。

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NHK『カーネーション』第147回

ドラマの終了と共に俺のモテ期も終わる、そんな予感のする当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第147回目の放送を見ましたよ。

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最終週(第26週)「あなたの愛は生きています」

2005年(平成17年)5月。
2階の改装が終わり、パステルカラーで統一された可愛らしいサロンが完成した。糸子(夏木マリ)はだんじり祭の見物客が大勢集まった様子を想像し、一人でうっとりした。

そのうち、年に一度のだんじり祭だけに使うのがもったいない気がしてきた。そこで、和服を洋服にリフォームする教室を開催することにした。孝枝(竹内都子)は、ただでさえ忙しい糸子がこれ以上仕事を増やすことに反対したが、糸子は言い出したら聞かなかった。

生徒はたくさん集まった。どの生徒も、着物はタンスの肥やしになるばかりだが、だからといって捨てるのも忍びないというのだ。しかも、糸子のカリスマ性に憧れて集まる人もいた。糸子は、和服のリフォームは商売上の企業秘密だが、日本中で着物が死蔵されるのは大きな損失だと言い、1枚でも多くの着物が再生されれば嬉しいと、上機嫌でレクチャーを始めた。父(小林薫)が呉服屋だったことも、糸子の着物リフォームを普及させたい動機の一部なのだ。

その頃、生地問屋の河瀬(川岡大次郎)の元気がないという噂を聞いた。河瀬の父(佐川満男)が最近亡くなったことでしょんぼりしているというのだ。糸子は、河瀬の親友の吉岡(茂山逸平)に言って、河瀬を呼び寄せた。

河瀬は糸子の顔を見るやいなや泣き出した。45歳という年のせいか、父の亡くなったことが堪えるというのだ。
しかし、糸子は河瀬の言い分をきっぱりと切り捨てた。糸子の半分しか生きていない河瀬が年のせいなどと言うのはおこがましいというのだ。むしろ、河瀬が落ち込んでいるのは、自分一人の力で会社と家族を養う責任に怯えているのだと指摘した。河瀬の父は早くに妻を亡くしたが、それでもへこたれることなく責任を全うした。河瀬もそれを見習えと諭すのだった。

河瀬に話しかけつつ、糸子は自分の人生を振り返っていた。糸子自信も、早くに父が仕事を引退し、家業と家族の扶養を引き継いだという経験があったからだ。

後日、父の納骨が終わったといって、河瀬が挨拶に来た。
父の後ろ盾がなくなり、一時はメッキが剥がれたかのようになっていた河瀬だったが、今や自分ですべての責任を受け入れ、まるで別人のような良い面構えになっていた。

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NHK『カーネーション』第146回

「おはようございます!今日も、よっこいしょ。まとめ記事、ラスト1週間!」とつぶやいている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第146回目の放送を見ましたよ。

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最終週(第26週)「あなたの愛は生きています」

2005年(平成17年)4月。

病院でのファッションショーや奈津(江波杏子)との再会から2年経った。身寄りのなかった奈津は、現在老人ホームで暮らしている。それというのも、彼女のことを心配した糸子(夏木マリ)と病院長・龍村(辰巳琢郎)がしつこく説得したからだ。奈津は相変わらず気位が高く居丈高な性格だが、健康面では大過なく暮らしている。

91歳になった糸子は、新聞のインタビュー取材を受けた。そこで糸子は、相手のために何かをしてやった時は成功したが、欲深く自分のために何かをした時は失敗ばかりだったと語った。そのエピソードは「与うるは受くるより幸いなり」という聖書の言葉にまとめられ、記事の見出しを飾った。
記事を読んだものは皆、その言葉に感銘をうけた。しかし、糸子は、真に欲のない人間はそんなことは初めから考えもしない、自分の本性は欲深いからこそ言えたのだと笑い飛ばした。

それでも、糸子は平和な日常を送っていた。
朝目を覚ますと、すぐに窓を開け家の空気を入れ替える。一人でラジオ体操を行い、朝食の準備をし、仏壇にご飯を供える。NHK朝の連続テレビ小説『ファイト』を見ながら、ゆっくりと食事をする。
糸子は朝ドラの大ファンだった。毎日の展開をハラハラと見、内容を孝枝(竹内都子)に話す。興奮してくると、自分を題材した朝ドラを作ってもらうよう働きかけろと言って、彼女を困らせるほどだった。

そんな毎日と並行して、糸子は2階にしまってある古いガラクタを全て処分することにした。子供時代に祖母・貞子(十朱幸代)からもらった外国の珍しいもの、若い頃に書いたデザイン画、子育て時代に着ていた衣服等、少しもためらうことなく次々に捨てていった。
糸子は2階を改装することを決めたのだ。2階の二間をぶち抜いて、だんじり見物用のホールにしようと計画しているのだ。バーカウンターも作り、だんじり見物客をもてなしたいというのだ。孝枝や優子(新山千春)は、たった年に一度のことなのにと言って呆れるが、誰も糸子を止めることはできなかった。

すっかり片付いた2階の部屋で、糸子は思い出に浸った。黒光りする柱を愛おしく撫で、広くなった畳の上に大の字になって寝転がった。
けれども、解体工事が始まると、糸子は誇らしげな笑みを浮かべて作業を見守った。むしろ、感傷的になって涙ぐむ孝枝を薄ら笑いながら、思い出などどうでもいい、今を、そして、これからの事を考えて生きていくのだと高らかに言うのだった。

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