「太陽の塔」(森見登美彦)

太陽の塔

もう一度、もう二度、もう三度、太陽の塔のもとへ立ち帰りたまえ。
バスや電車で万博公園に近づくにつれて、何か言葉に尽くせぬ気配が迫ってくるだろう。「ああ、もうすぐ現れる」と思い、心の底で怖がっている自分に気づきはしまいか。そして視界に太陽の塔が現れた途端、自分がちっとも太陽の塔に慣れることができないことに気づくだろう。
「つねに新鮮だ」
そんな優雅な言葉では足りない。つねに異様で、つねに恐ろしく、つねに偉大で、つねに何かがおかしい。何度も訪れるたびに、慣れるどころか、ますます怖くなる。太陽の塔が視界に入ってくるまで待つことが、たまらなく不安になる。その不安が裏切られることはない。いざ見れば、きっと前回より大きな違和感があなたを襲うからだ。太陽の塔は、見るたびに大きくなるだろう。決して小さくはならないのである。

(森見登美彦 『太陽の塔』 p.116)

太陽の塔を前にした時に我々が感じる畏敬の念を、これほど見事に捕らえた文章は、僕が知る限り他にはない。

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「友情」(武者小路実篤)を読んだ

クサくて、プラトニックな恋愛物語の大好きな当方である。

漫画なら「タッチ」や「めぞん一刻」であり、歌謡曲なら「木綿のハンカチーフ」や「Blue Moon Stone」をよく口ずさむし、テレビドラマなら「同級生」とか「男女7人夏物語」を挙げるし、文学作品なら「ノルウェイの森」とか「智恵子抄」だったりするわけである。

そんな当方のお気に入りリストに、「友情」が加えられた夜。

わが愛する天使よ、巴里へ武子と一緒に来い。お前の赤ん坊からの写真を全部おくれ。俺は全世界を失ってもお前を失いたくない。だがお前と一緒に全世界を得れば、万歳、万歳だ。

「友情」 下篇 9章

クサい、クサすぎる。
でも、いい!
ゾクゾクする。

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