僕たちは、殺人者は残虐非道であり、相手が誰であっても躊躇することなく殺してしまう、となんとなく思い込んでいる。小説や映画でそのような登場人物をたくさん見ているせいかもしれないし、マスコミ報道などで凄惨な犯人像が日常的に伝えられているせいかもしれないし、センセーショナルでおどろおどろしい事件は茶飲み話で取り上げられやすいせいなんかもあるかもしれない。
しかし、法社会学を専門とし、公的な統計資料を調べたり、刑務所を訪問して聞き取りを行っている著者によれば、実際の殺人者像は大きく異なるらしい。
日本の殺人数は年間1400件ほどだそうだ(未遂-人殺しを実行したが死ななかった- と予備-殺すつもりで準備した- を含む)。人口10万人あたりに換算すれば 1.2件となる。他国と比較すれば、アメリカで5.6、イギリスで3.5であり、日本は他の先進国に比べてずいぶんと殺人が少ない。このあたりは、「日本は治安がいい」ということなので、今さら騒ぐほどのことでもないが。