NHK『ブギウギ』第69回

我が最愛の山瀬まみが『居酒屋新幹線2』の放送開始(昨夜)を楽しみにしていると言っていたので、僕も録画しておいたものを見ようと思っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第69回めの放送を見ましたよ。

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第15週『ワテらはもう自由や』

終戦から3ヶ月、日帝劇場が再開され、スター歌手たちを集めた公演が行われることになった。

鈴子(趣里)と楽団員たちは久しぶりに事務所に集まり、演目の相談をした。
当然のように満場一致で『ラッパと娘』を演奏することになった。福来スズ子の代表曲であるものの、派手な歌や踊りであるため戦争中は自粛していたのだ。戦争が終わって思う存分やれることとなり、鈴子も楽団員たちも大いに盛り上がった。

鈴子は自宅で家事をしながら、『ラッパと娘』の稽古をした。久しぶりに歌うのでメロディーや踊りを忘れているところがあったのだ。
その様子を見た愛助(水上恒司)は大いにはしゃいだ。そもそもが彼女の大ファンだった愛助は、往年の福来スズ子が帰ってくることが嬉しいのだ。

ところが、鈴子は不安になっていた。戦争があったことで、人々が変わってしまったのではないかと思うのだ。ましてや、今は戦後復興に必死な時である。以前のように自分の歌と踊りを楽しんでくれるかはわからない。
愛助は、福来スズ子の歌には力があるので心配はいらないと話した。鈴子はほんの少しだけ気が楽になったが、それでもまだ不安は拭えなかった。

いよいよ公演当日。鈴子は久しぶりに派手な衣装を身につけ、昔のように巨大なつけまつ毛を付けた。それでもまだ不安で落ち着かなかった。
すると楽屋へ、茨田りつ子(菊地凛子)が現れた。久しぶりの再会に鈴子は大いに喜んだ。

しかし、りつ子は沈み込んだ様子だった。東京の家が空襲で焼けてしまったのだと言う。そればかりか、特攻隊員の慰問に行ったことがずっと心に引っかかっているのだと話した。
特攻隊員たちは自分の歌を聞き、勇気づけられて出撃した。りつ子は、最終的に自分の歌が隊員たちの背中を押して死に追いやったのではないかと悩んでいるのだ。歌は人を生かすためにあるものなのに、それと反対のことをしてしまったと悔やんだ。

その話を聞いた鈴子は、戦争が終わった今こそ、自分たちの歌で人々を生かさなければならないと述べた。今はどん底なので、あとは良くなるばかりだ。歌えば歌うだけ人々は元気になるはずだから、好きなように歌おうと話した。
りつ子にそう話しているうちに、鈴子は自分の抱えていた不安が吹き飛んだ。溌剌としてやる気に満ち溢れた。
ひとりで興奮している鈴子を見て、りつ子は苦笑いした。それでも、りつ子の気持ちも少し軽くなった。

本番が始まり、最初はりつ子の出番だった。
りつ子は人気曲『別れのブルース』を歌った。歌いながら特攻隊員たちのことを思い出してしまったが、それがかえって歌の情感を高めた。観客たちは涙を拭いながら聞き入った。舞台袖で聞いていた鈴子も涙を止めることができなかった。

歌い終えたりつ子も頬を涙で濡らしていた。
舞台袖に引き上げてきたりつ子に、鈴子は賛辞を送った。
そして、次は鈴子の出番だった。雰囲気を入れ替えるかのように、大きく手を振りながら元気よくステージに躍り出た。

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NHK『ブギウギ』第68回

昨夜は我が最愛の山瀬まみの夢を見て、夜中に一度目が覚めた時に「よし、この夢を明日のマクラに書こう」と決めたのに、今朝目が覚めると山瀬まみが登場したということ以外は内容を全てすっかり忘れてしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第68回めの放送を見ましたよ。

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第15週『ワテらはもう自由や』

1945年(昭和20年)11月、終戦から3ヶ月が経った。世の中の混乱は続いており、鈴子(趣里)には公演の機会がなかった。

一方で、愛助(水上恒司)はみるみる体調が良くなっていた。ついに彼は大学に復学することを決めた。自身が結核になったことや戦争で、いつでも勉強できるのが当たり前ではないと気づいた。できるうちに学業に取り組みたいと言う。鈴子も大賛成した。

鈴子は、愛助の復学を祝うため、その日の夕食はいつもより豪華にしようと考えた。そこで、小夜(富田望生)を伴って闇市に出かけた。
闇市は客の足元を見ているのか、どれも値が張った。米少々のほか、大根とシシャモ、醤油などを手に入れるのが精一杯だった。

帰り道、腹を空かせた子どもたちが道に座り込んでいるのを見かけた。鈴子は胸を痛めて立ち去り難くなったが、小夜は空腹なのは自分たちも同じだと言って鈴子になるべく気にしないよう諭した。

そこへ、アメリカ兵がやってきた。彼らは子どもたちにチョコレートを配って歩いた。
小夜は自分もチョコレートが欲しいと言って、子どもたちに混じってチョコレートをねだった。小夜は、どこかで手に入れた英会話手帳で少しだけ勉強したのだという。カタコトの英語でなんとかチョコレートをもらうことができた。分けてもらった鈴子も、久しぶりに食べるチョコレートに感激した。

さらに歩くと、宝くじ売りに出くわした。鈴子は夢を買うつもりで、1枚だけ購入した。

その日の夕食は、いつもよりほんの少しだけ豪勢だった。愛助はとても喜んだ。
さらに鈴子は、買ってきた宝くじを愛助に見せた。1等が当たれば10万円もらえると言う。闇市では米1合が7円ほどのところ、その宝くじを1枚10円もした。それでも、10万円が当たった時のことを想像して楽しむだけの価値はあると話した。

愛助は、10万円あれば海外の有名な喜劇役者を日本に呼ぶことができると話した。良い芝居や音楽で日本の人々を元気づけたいのだという。
小夜は、毎日うなぎを腹一杯食べたいと話した。うなぎそのものを食べたことはないが、奉公していた時に主人が食べ終わったうなぎの器に残ったタレを舐めてみたことがあるという。その美味さを忘れることができないと言うのだ。
喜劇役者を呼ぶか、うなぎを食べるかで、愛助と小夜は意見が対立した。鈴子はそれを笑いながら仲裁した。ただし、鈴子は少しだけ小夜の方に肩入れした。日々腹が減っているのは鈴子も同じだったからだ。

翌日、小夜は自分のへそくりを持って、宝くじを買いに行った。
小夜は宝くじを3枚買おうとした。しかし、宝くじ売りは4枚買った方がいいと勧めてきた。はずれクジが4枚あればタバコと交換できるので、少しだけ得だと言うのだ。しかし、どうかき集めても、小夜は宝くじ3枚分の金しかもっていなかった。小夜と宝くじ売りは押し問答になった。

その様子を見ていた1人のアメリカ兵が近寄ってきた。
彼は宝くじを1枚購入すると、それを小夜にくれた。そして「Good luck」とだけ告げて立ち去った。
その言葉の意味を調べた小夜は、キザな男だと思った。

その頃、家にいた鈴子のところへ、マネージャーの山下(近藤芳正)が駆け込んできた。日帝劇場が再開され、鈴子にも公演依頼があったという。複数のスター歌手を集めたショーを行うもので、茨田りつ子(菊地凛子)などに声がかかっているとのことだった。
鈴子は二つ返事で承諾した。

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NHK『ブギウギ』第67回

7時に目が覚めて休みの日だから二度寝しようか迷ったけれど、寝直すにしてもちゃんと日課をこなしてから寝ようと決めた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第67回めの放送を見ましたよ。

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第15週『ワテらはもう自由や』

1945年(昭和20年)8月15日、日本が負けて戦争が終わった。

海軍基地で特攻隊員を目の当たりにした茨田りつ子(菊地凛子)は鹿児島の旅館に滞在したまま、放心状態で畳に寝転がったままだった。終戦の知らせを受けても、感情が沸くことなく、淡々と事実を受け入れるのみだった。

上海に滞在していた羽鳥(草彅剛)は危機に陥っていた。現地住民は日本軍に対して領土返還の抗議運動を始め、大きな騒ぎになっていた。羽鳥は帰国する目処も立たず、滞在先の室内でじっとしているしかなかった。いつも泰然自若としているはずの羽鳥も先行きが不安になり、深刻な表情をしていた。
中国人音楽家・黎錦光(浩歌)が訪ねてきた。彼は羽鳥の顔を見るなりめでたいことだと言った。音楽家の国境がなくなり、敵味方の区別なく音楽家同士が付き合うことができるようになったのは良いことだと説明した。そう指摘されて、羽鳥は納得した。ふたりは抱き合い、この後も変わらない友情を確かめ合った。

羽鳥は心配することをやめ、音楽に没頭することにした。部屋に一人で楽譜に書き込みをしていた。
突如、銃を持った中国人が踏み込んできた。羽鳥はそのままどこかへ連れ去られてしまった。

鈴子(趣里)は慰問先の富山で終戦を迎え、急いで東京に帰ることにした。
戦争に勝つことだけを信じていた従業員たちは気を落とし、これから進駐してくるアメリカ兵たちに蹂躙されるのではないかと不安がっていた。鈴子は、何があっても生きていくしかないのだと明るく彼らを励まして出発した。

汽車は満員で、鈴子たちは座ることもできず、ずっと立ちっぱなしだった。そればかりか、混雑した車内にはスリもいて、気を抜くことができなかった。
やっとのことで東京の家にたどり着いたが、戸はきつく閉められており、開けることができなかった。愛助(水上恒司)は病気がちであるし、終戦の混乱もあり、鈴子はにわかに不安になった。

しばらく声をかけていると、やっと愛助(水上恒司)が勝手口から現れた。国中が混乱し、人々も殺気立っているので警戒していたのだという。それでも、互いの無事を確認し、鈴子と愛助は抱き合って喜んだ。

鈴子は、香川に帰った父・梅吉(柳葉敏郎)や自分の故郷である大阪の人々の安否がわからず心配だった。しかし、自分は生きているし、愛助や楽団メンバーは全員無事である。安否不明な人々のことは考えたところでわかるわけでもなく、無事であると信じるのだと話した。
日本はめちゃくちゃになったが、自分たちが生きているだけで十分だと明るく言った。その言葉に愛助は勇気づけられた。

しかし、家には食料が一切なかった。
鈴子は、付き人・小夜(富田望生)と共に近所の野草を摘んで食料にすることにした。愛助は、庭に畑を作ってジャガイモを植えることにした。
その日の夕食は、野草の味噌汁とおひたしだけだった。何もないよりはマシだったが、食卓は貧相だった。そればかりか、採ってきたきた野草は思いのほか不味かった。鈴子と愛助、小夜の3人はジャガイモの収穫が楽しみだと話しながら食事をした。さらに、ジャガイモの収穫後に新たに栽培する野菜についても話し合った。
素人の家庭菜園ではロクな作物はできそうになかったが、野草を食べるよりは良いし、今なら何を食べてもご馳走に思えるなどといって笑い合った。

敗戦で暮らしはますます混迷し、人々は不安に苛まれた。しかし鈴子は、明るく前向きに生きようとしていた。

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NHK『ブギウギ』第66回

昨日から頭の中で “Give Peace a Chance” の鳴り続けている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第66回めの放送を見ましたよ。

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第14週『戦争とうた』

慰問公演のため、富山県高岡市の旅館に宿泊している鈴子(趣里)たち一行。

鈴子はそこで働く女中・静枝(曽我廼家いろは)と知り合った。彼女の夫は南方で戦死したという。静枝は夫の死を少しも悲しいと思っていないという。むしろ、命を投げ打って国のために奉仕した夫を誇りに思うと話した。鈴子たちの浮ついた様子に対しても、いささか忌避感を抱いているようだった。
鈴子は口にこそ出さなかったが、静枝が無理に強がっているように思えた。鈴子も弟・六郎(黒崎煌代)を同じように南方の戦場で亡くしているので、静枝の複雑な心境がわかるような気がした。自分の歌で彼女の気を楽にしてやりたいと思った。

翌朝、慰問会場へ出かける前に、鈴子は静枝に声をかけた。ぜひとも公演を見にきて欲しいと頼んだ。
しかし静枝は、鈴子に素っ気ない態度だった。仕事があるので行くことはできないと断った。
もう一度念押しして、鈴子は出かけた。けれども、公演が始まっても、やはり静枝の姿はなかった。

同じ頃、鹿児島の海軍きでは、茨田りつ子(菊地凛子)の慰問公演の本番が始まっていた。
指揮官・横井少佐(副島新五)から軍歌を歌えと命じられて一度は断ったものの、死の約束された若い特攻隊員たちの姿を目の当たりにし、彼らを見過ごすことができなくなってしまったのだ。自ら進んで軍歌は歌いたくないが、隊員たちからの要望があれば歌うと約束した。

舞台上のりつ子が募ると、特攻隊員は『別れのブルース』をリクエストした。初めは上官の目を気にして一人が小さな声で言っただけだったが、次第に他の隊員たちも同調し、全員の総意となった。指揮官・横井少佐は、聞こえないふりをして会場を出て行った。それを黙認の合図と受け取り、りつ子は『別れのブルース』を歌った。

特攻隊員たちは涙を浮かべながらそれを聞いた。りつ子が歌い終えると、特攻隊員たちは立ち上がり、口々に威勢よく礼を述べた。思い残すことがなくなった、勇気づけられた、晴々しく出撃できるなど、全員が死を受け入れたことは明らかだった。会場の外にいた横井少佐も、彼らとの根性での別れを思い、密かに泣いた。
特攻隊員たちの賛辞が止まぬ中、りつ子は舞台袖に急いで戻った。そこでりつ子は泣き崩れた。

富山県高岡市での鈴子の公演は、いよいよ残すところ1曲のみとなった。するとそこへ、静枝が現れた。
彼女を見つけると、鈴子は最後の歌『大空の弟』の紹介をした。南方で戦死した弟の歌であると説明し、客にも自分の大切な人のことを思いながら聞いて欲しいと頼んだ。
『大空の弟』は、戦地から手紙が届くという内容である。静枝も、戦地の夫から届いたハガキを肌身離さず持っていた。静枝はそれを取り出し、涙ぐみながら鈴子の歌を聞いた。

慰問公演を終えた鈴子たちは、旅館に戻って夕食をとっていた。
すると、前夜と同じように静枝の幼い娘・幸(眞邊麦)が入ってきて、鈴子に甘えた。前の晩は、客から食事をもらうと幸の癖になるといってやめさせた静枝であったが、今夜は何も言わなかった。

静枝は、鈴子の『大空の弟』の感想とともに、夫との思い出を語った。
夫は頻繁に手紙を書いてくれて、とても嬉しかったという。しかし、静枝は一度も返事を書いたことがない。なぜなら、夫の字は印刷物のようにきれいだったのに、静枝の字はとても下手だったからだ。夫は普段はめったに笑わないのだが、静枝の粗末な字を見た時だけは腹を抱えて笑ったという。それが悔しいやら恥ずかしいやらで、静江はついぞ夫に手紙を書かなかったという。

そのような内容を静枝は微笑みながら話した。
鈴子は、つい涙をこぼしてしまったが、つとめて笑顔を作った。彼女のために歌って、本当によかったと思った。

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NHK『ブギウギ』第65回

年明けから大事件がいろいろ起きているけれど、淡々と朝ドラ仕事をしていこうと思う当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第65回めの放送を見ましたよ。

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第14週『戦争とうた』

慰問巡業を再開した鈴子(趣里)は富山県高岡市の旅館に到着した。
数日前、近くの富山市が大空襲に襲われ、高山市のその旅館は多数の被災者を受け入れていた。惨状を目にし、鈴子は自分の慰問公演が役に立つのだろうかと不安になった。

宿には女中・静枝(曽我廼家いろは)と、その幼い娘・幸(眞邊麦)がいた。幸に遊び相手がいないのを見てとった鈴子は、彼女の子守りを買って出た。静枝は恐縮し遠慮したものの、鈴子は自分も楽しいのだなどと言って半ば強引に引き受けた。幸も鈴子によく懐いた。

その日の旅館の夕食は貧相なものだった。しかし、昨今の時局はもちろん、富山市に大空襲があった直後だと思えば誰に文句を言えるわけでもなかった。その少ない夕食の中から、鈴子は幸に食事を分けてやった。幸も喜んで食べていた。
その様子を見た静枝は、慌てて幸を連れ去った。客の食事に手をつけるなど言語道断だというのだ。鈴子は自分は満腹であるから問題ないのだと説明しても静枝は聞く耳を持たなかった。それどころか、贅沢を慎まなければならない状況なのに、幸の癖になっては困ると言って強硬に断った。

食後、鈴子が一人で夕涼みをしていると、静枝が通りがかった。静枝は先の騒動で、スズ子の親切を無下にしたことを謝った。鈴子も同様に自分の勝手な行為を謝った。
鈴子は静枝の夫のことを尋ねた。静枝の夫は高岡で教師をしていた真面目な人だったが、南方に出征して戦死したという。鈴子は口にこそ出さなかったが、同じく戦死した弟・六郎(黒崎煌代)のことを思い出しながら話を聞いた。
静枝は、国のために命を捧げた夫のことを誇りに思っていると話した。だから、悲しい思いはしていないという。夫に託された娘・幸を立派に育てることが残された自分の使命であるとも話した。そして、このまま日本は勝つと信じていると述べた。日本が勝たねば、夫の死は無駄になると話した。

その頃、茨田りつ子(菊地凛子)は鹿児島の海軍基地を訪問していた。翌日に基地の兵隊向けの慰問公演を行うのである。
基地の横井少佐(副島新五)は、りつ子の洋服を見て難癖をつけた。自分の服装が槍玉にあがることに慣れているりつ子は、今着ているのは普段着で、公演ではもっと華やかな衣装を身につけるので心配はいらないなどと涼しい顔で言ってのけた。
さらに横井少佐は、りつ子に『海ゆかば』や『同期の桜』などを歌うよう要請した。しかし、りつ子は軍歌は性に合わないと言ってきっぱり断った。

りつ子は、自分では慰問の役に立ちそうにないと言って、そのまま帰ろうとした。
その時、若い兵たちが部屋を覗いているのに気づいた。彼らは本物の茨田りつ子を見たと言って騒いでいる。しかし、それが見つかって一括されると、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
横井少佐の説明によれば、彼らは特攻隊員だという。命令が出ればすぐに出撃せねばならず、りつ子の公演中に中座することになっても許して欲しいというのだ。そして、一度出撃したら二度と戻ってこない。他に何も持たせてやることができないので、せめて歌を聞かせてやって欲しいと頼まれた。
りつ子は、隊員たちが望む歌ならばなんでも歌うという条件で慰問公演を行うことに同意した。

同じ頃、上海では作曲家・羽鳥(草彅剛)が軍の命令による音楽会を行なっていた。
羽鳥は検閲されないのをいいことに、自分のやりたいことを全て盛り込んだ。中国人音楽家・黎錦光(浩歌)の作った曲を、日本人の羽鳥が編曲し、アメリカのブギのリズムをのせた。完成した曲を世界中から集まった聴衆に聞かせた。現在の日本では演奏できないような曲を、上海では自由に演奏できた。こうして羽鳥は自分の好きな音楽を思う存分やったのはもちろん、時代や権力には縛られず、音楽は自由であることを証明してみせた。

中でも、李香蘭(昆夏美)の歌った『夜来香ラプソディ』は大好評だった。これも黎錦光が作曲し、羽鳥がアレンジしたものである。
羽鳥はこの曲こそ、自由の象徴であり、世界中の人々が一つになったことの証明であると感じた。大満足であった。

そのような上海での活況を知る由もなく、鈴子やりつ子は日本の現状や行先に気分が沈んでいた。

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NHK『ブギウギ』第64回

今日の12時からテレビ東京系列で放送される『バクタン』は、俺界隈では「山瀬まみ以外に見るべきところがない」と言われているわけだけれど、今回は天下一品のスープ誕生秘話が紹介されるらしく、いつもよりは興味を持って見れそうだなと思っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第64回めの放送を見ましたよ。

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第13週『今がいっちゃん幸せや』

鈴子(趣里)が慰問先の京都から帰ってくると、東京中心部は焼け野原になっていた。
ただし、鈴子の自宅のある三鷹周辺は空襲を逃れていた。愛助(水上恒司)も無事だった。鈴子は安堵した。

しかし、情報が集まってくると、多くの人々の安否がわからなかった。大阪も大空襲に襲われたというが、はな湯の人々やUSKの仲間たちがどうなったのか鈴子にはわからないままだった。愛助の母・トミ(小雪)は芦屋の別邸に滞在していて無事だという。ただし、村山興業の社員や芸人の多くと連絡が取れないままになっているという。東京支社長・坂口(黒田有)は無事であるが、会社は一からやり直しだと言って肩を落とした。

それからは、頻繁な空襲警報に怯えつつも、鈴子と愛助は毎日を大切に仲良く暮らした。
鈴子は、愛助と一時も離れたくなかった。母・ツヤ(水川あさみ)や弟・六郎(黒崎煌代)の死に目に遭えなかったことを後悔しており、万が一の時に必ずそばにいたいと思うからだ。
地方巡業の依頼もいくつかあったが、鈴子はそれらを全て断ってしまった。

ある晩も空襲警報が鳴り、鈴子たちは防空壕へ避難した。
赤ん坊が泣き出したことで、ある男が怒鳴りつけた。敵機に見つかるから泣き止ませるか、防空壕から出て行けと言うのだ。もちろん、赤ん坊の鳴き声が上空の飛行機まで届くわけがない。男は連日の空襲にイライラして八つ当たりしただけだった。

鈴子は愛助に促され、防空壕の中で「アイレ可愛や」を歌った。場をわきまえた控えめな声だったが、防空壕の中の雰囲気が和やかになった。歌い終えるや否や拍手が起こり、もう一度歌うよう頼まれた。
鈴子はもう一度同じ歌を歌った。しかし、今度はより大きな声であった。人々も大きな手拍子を打った。人々はみんな大喜びした。

警報が解除され、人々はそれぞれの家に帰って行った。ただし、みながみな、鈴子に礼を言ってから立ち去った。
愛助は、鈴子の歌には力があると話した。愛助が病気で徴兵されず、自分は役立たずだと思っていた時、鈴子の歌に勇気づけられたのも同様だと言う。
そして愛助は、こんな状況だからこそ、鈴子には歌い続けてほしいと頼んだ。戦争に怯えながらも懸命に生きている人々にとって、鈴子の歌は希望になると言うのだ。

鈴子は、昨夜の防空壕で自分の歌を聞いてくれた人々ばかりか、慰問で各地を訪問した時のことを思い出した。確かに誰もが笑顔になり、喜んでくれていた。愛助の言う通りだった。
こうして、鈴子は再び地方への慰問公演に出る決意を固めた。

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NHK『ブギウギ』第63回

今日が仕事納めな当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第63回めの放送を見ましたよ。

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第13週『今がいっちゃん幸せや』

村山興業の元社員であり、愛助(水上恒司)の父親代わりでもあった山下(近藤芳正)が、正式に「福来スズ子とその楽団」のマネージャーに就任した。戦況の激しくなった現状では、通常の公演依頼は一切なかった。しかし、地方への慰問公演ならばいくつかアテがあった。

地方公演では、まともな会場とは思えない場所で演奏した。工場の一角や、ゴザを敷いただけで壁や天井もない広場などである。
それでも人々は慰問を楽しんでくれたし、鈴子(趣里)も手を抜くことなく、精一杯歌った。

鈴子は地方での慰問公演を終えると東京に戻り、愛助の看病を行う。そしてまた地方へ出かける。その繰り返しで忙しい日々だった。
鈴子は、母・ツヤ(水川あさみ)が病気になった時に何もしてやれなかったことを悔やんでいた。弟・六郎(黒崎煌代)も鈴子の知らない場所でいつの間にか死んだ。そのような後悔は二度としたくないと思い、全力で愛助の看病をした。
その甲斐あって、愛助の結核は順調に回復した。もう咳が出ないし、腹を下すこともない。医者(要冷蔵)からも、再発の恐れはあるものの、症状は落ち着いたと診断された。

それから鈴子と愛助は病人と世話係としてではなく、まるで夫婦のように仲良く暮らした。
アメリカ軍の空襲が東京にも及ぶようになったが、まだそれは鈴子たちの住む三鷹からは遠い場所だった。赤く燃える夜空を不安げに見つめていたが、ふたりにとってはどこか違う世界の出来事のようにも感じられた。それくらい、鈴子と愛助はふたりで一緒にいることが幸せだった。これまでの人生で一番幸せだと思うほどだった。

その日、鈴子は京都の繊維工場で慰問公演を行なっていた。
開演直前、東京が大空襲に襲われたとの知らせが入った。あたり一面が焼け野原になっているとのことだった。主催者や楽団員たちは慰問公演を延期してすぐに帰郷すべきだと考えた。
もちろん鈴子も、愛助のことが心配で、胸が潰れそうなくらい不安になった。しかし、慰問を行うと言って聞かなかった。せっかく集まった客をそのまま帰すわけには行かないと言うのだ。
こうして、鈴子はいつも通りに快活に歌った。

慰問公演が終わると、急いで東京行きの汽車で帰った。
するとそこは、一面瓦礫ばかりで、すっかり様子の変わってしまった東京だった。

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NHK『ブギウギ』第62回

今朝はどうしても起きることのできなかった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第62回めの放送を見ましたよ。

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第13週『今がいっちゃん幸せや』

鈴子(趣里)と愛助(水上恒司)は、村山興業東京支社長・坂口(黒田有)が手配した三鷹の一軒家で生活を始めた。
鈴子は姉さんかぶりと割烹着姿で、愛助の看護と家事を甲斐甲斐しく行った。そのおかげで、愛助の結核は快方に向かっていた。

鈴子は歌を歌い、軽快に踊りながら家事を行う。その姿は心底楽しそうであった。
しかし、愛助は心苦しく思いはじめた。愛助は福来スズ子の大ファンだからこそ、彼女が歌って踊ることが大好きであることを知っている。それなのに、自分の看護のために舞台から降ろさせてしまったと思われてならないのだ。思い切ってそのことを打ち明けても、鈴子は愛助の体を治すのが一番だし、愛助のことも歌や踊りと同じくらい好きだと答えるだけだった。

実際には、鈴子は仕事をしたくもできない事情があった。
マネージャーだった五木(村上信悟)が出奔してしまい、新しく仕事をとってくることができなくなっているのだ。

一度は、村山興業の元社員で愛助の子守り役でもあった山下(近藤芳正)を新マネージャーとして仕事を再開するつもりだったが、愛助の母であり村山興業社長のトミ(小雪)に露見し、山下がマネージャーに就任することができなくなった。トミは鈴子と愛助が交際することに猛反対しており、山下を介して鈴子と愛助が接点を持つことのないようにしたのだ。
坂口は、鈴子が愛助と一緒に暮らしていることについて、トミには秘密にしていた。「専属の世話係が見つかった」と言うにとどめ、その世話係の素性については一切を伏せていた。世話係の件はそれでうまく誤魔化せたが、山下のマネージャー就任はどうしても叶わなかった。

愛助は、見舞いにきた坂口にも、鈴子が表舞台から消えてしまう懸念を話した。なんとか山下をマネージャーにできないかと相談した。しかし、坂口の返答はつれないものだった。山下をマネージャーにすることは、トミが愛助と鈴子の交際を認めるのも同然であり、トミがそれを許すわけがないと言うのだ。
焦れた愛助は、自分が大阪に行ってトミに直談判すると言い出した。もちろん坂口はそれを止めた。戦時中で何が起きるかわからない状況なのに、結核で衰弱している愛助を大阪に旅行させるわけにはいかないからだ。
愛助の熱意に押され、坂口は自分がトミに相談すると口走ってしまった。ちょうど業務報告で大阪本社へ行く用事があるからちょうどいいという。愛助は目を輝かせ、坂口に任せることにした。
帰り道、坂口は勢いで安請け合いしたことを後悔した。トミはこの世で一番恐ろしい相手だからだ。

大阪本社に戻った坂口は、まずはトミに業務報告を行なった。最近、東京支社の業績は芳しくない。悪い報告を聞かされて、トミは機嫌が悪くなった。業績低迷の原因は、ライバル会社の芸人たちの人気が高まっているせいだと説明した。トミはますます機嫌が悪くなった。坂口が言い訳ばかりして、自社の魅力を高める努力を怠っているように見えたからだ。不機嫌な態度で坂口を部屋から追い出そうとした。

その時、坂口は愛助との約束をやっと切り出した。山下を鈴子のマネージャーにさせたいという相談である。
もちろん、トミは即座に拒否した。山下が鈴子のマネージャーになれば、愛助とより戻す可能性が高いからだ。やっと別れさせたのに、どうしてそんな危険な真似ができるのかと、面白くなさそうに毒づいた。

そこで坂口は、愛助の世話係が鈴子だと打ち明けた。トミはその日一番の不愉快な気分になった。
坂口は、鈴子を見直したと話し始めた。普通ならば、感染を恐れるあまり結核患者の世話係をしたがる人間はいない。それなのに、鈴子は連日連夜の看病を行なっている。それなのに偉そうにすることもなく、愛助のことを思って身を尽くしている。それでいて、ちょっと抜けているところもあって愛嬌がある。愛助でなくても鈴子に惚れるのも当然だ。自分も鈴子に惚れた、と話した。
だから、鈴子の力になりたいのだと力説した。

ついに、トミは山下を鈴子のマネージャーにすることを認めた。坂口は、帰京するとまっすぐに愛助の家に向かって報告した。
ただし、これは鈴子が愛助の世話をしていることへの恩返しだという。トミはふたりの交際を認めたわけではないと釘を刺されたという。

それでも鈴子と愛助は喜んだ。
こうして、鈴子の楽団は活動を再開することになった。

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NHK『ブギウギ』第61回

今朝も寒くて、さっきからずっと「寒い、寒い」と独り言を言っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第61回めの放送を見ましたよ。

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第13週『今がいっちゃん幸せや』

愛助(水上恒司)が喀血した。愛助は過去に結核になったことがあり、それが再発したようだった。
往診に来た医者(要冷蔵)によれば、結核には特効薬や治療法がなく、栄養をとって安静にするかないという。鈴子(趣里)は、愛助の下宿では満足な療養ができないと考え、なんとか頼み込んで愛助を入院させてもらうことにした。

入院したものの、これといった治療があるわけではなく、もっぱら鈴子が四六時中つきっきりで看病した。愛助は結核がうつることを心配したが、鈴子は意に介さなかった。それどころか、病室でふたりきりであるのをいいことに、より体の距離を縮めた。鈴子は疲れると、ベッドの愛助に体を預けて居眠りした。

入院から数日経って、村山興業の坂口(黒田有)が病室に現れた。鈴子は看病に忙殺されて連絡しなかったが、彼はどこからか話を聞きつけたようだ。一大事にもかかわらず報告のなかったことで、坂口はカンカンに怒っていた。
その時、鈴子は愛助にもたれかかり、大いびきをかいて寝ていた。結核患者に密着している鈴子の様子に、坂口は心底驚いた。
坂口の気配に気づくと目を覚まし、きまり悪そうにした。

坂口は、愛助に大阪の療養所に移ることを強い口調で提案した。病院にいてもこれといった治療が施されるわけではなく、金ばかりかかる。それならば、過去に利用したことのある施設で療養するのが一番だと言うのだ。しかし、愛助は頑なに拒んだ。
埒が開かず、また、結核患者と同じ部屋に長時間滞在したくなかった坂口は、その日はそのまま帰って行った。

それからもしばらく、愛助は病院で療養を続けた。
愛助は、病気のおかげで鈴子がずっとそばにいてくれるのだと喜んだ。鈴子も一緒にいられて幸せだと感じていた。
愛助は、病気が治ったら結婚して欲しいとプロポーズした。鈴子は承諾した。

数日後、坂口が再度やってきた。
坂口は、三鷹に家を借りてきたという。退院して、そこで療養生活を行うべきだと主張した。
愛助と一緒に、鈴子も住んでよいという。坂口は、鈴子の献身的な態度を大いに認めたのだと話した。これまでの数々の無礼を謝罪し、愛助のことを任せると話した。

こうして、鈴子と愛助は三鷹の一軒家で暮らし始めた。
付き人・小夜は、その近所に新たな下宿を見つけ移った。

坂口は村山興業の大阪本社に出張し、トミ(小雪)に愛助の病状を報告した。三鷹に借りた家は坂口の家から近いので、いつでも様子を見に行けるから心配はいらないと説明した。トミは一度様子を見に行くと言い出したが、坂口は結核はうつる可能性があるから避けるべきだと説得した。
坂口は、トミに対して嘘はつかず、全てを報告した。ただし、鈴子と同居することだけは巧妙に誤魔化した。曰く、「専属の世話係」をつけることにしたと話した。トミは、結核患者の世話係をやるなど、珍しい人もいるものだと思ったものの、それ以上詮索しなかった。

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NHK『ブギウギ』第60回

10年くらい前に買ったうちのHDDレコーダーはしばらく前から挙動が怪しいし、もうすぐクリスマスだから新調しようかなと思うのだけれど、せっかくなら4Kチューナー付きにしようかとも思うけれど、そうするとテレビも4K対応にしなきゃならないし、結構な出費だなと思って決められずにいる当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第60回めの放送を見ましたよ。

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第12週『あなたのスズ子』

村山トミ(小雪)が上京し、愛助(水上恒司)は会社に呼ばれた。
トミには、すでに全てバレていた。愛助に鈴子(趣里)と別れるよう命じた。同時に、愛助が紹介した元村山興業社員・山下(近藤芳正)を鈴子のマネージャから解任しろと求めた。山下が間にいると、愛助と鈴子の関係が続くからだという。
愛助は、応じられないと反発した。自分は鈴子を好きだという一点張りだった。
埒が開かないので、トミは鈴子に直接会わせるよう要求した。

こうして、鈴子はトミと会うことになった。鈴子は隠し事が嫌いなので、トミに説明できる機会は大切だと考えていた。一方、芸能界の大物で、恐ろしい人間だと噂を聞いているので、会う前はひどく緊張した。

会うなり、トミは鈴子のことを褒めてくれた。いい歌手として認識しているという。梅丸少女歌劇団での下積みもあって今の立場があるのだろうと話した。
そして、下積みの苦労を知っている人間は分別があるはずだと話した。愛助は村山興業の後継ぎになる人間だということを理解して欲しいと告げた。それだけ話すと、あとは愛助と鈴子のふたりで話し合えと言って部屋を出ていってしまった。

面会があっという間に終わってしまい、愛助は戸惑った。トミの言葉の真意もよくわからなかったものの、自分たちにチャンスが与えられたと思った。
しかし、鈴子はトミの真意がわかっていた。短い会話の中で、言外に別れろと言っていたのだと説明してやった。自分のような歌手では、村山興業社長夫人は務まらないと宣告されたのだ。

愛助は、やはり反発した。鈴子のことが好きだから、このまま交際を続けたい。結婚の段階になれば、必ず自分が母に認めさせてみせる。鈴子には歌手を続けて欲しい。母になんと言われても鈴子を好きだと強情を張った。
鈴子も同じだけ愛助のことが好きだと応えた。
こうして、ふたりは別れることなく、これまで通りの生活を続けた。むしろ、鈴子は以前よりも愛助と一緒の時間が増えた。自分の下宿に帰る日よりも、愛助の下宿に泊まる日の方が多くなるほどだった。

1944年(昭和19年)の暮れになると、東京にもたびたび敵機が襲来するようになった。空襲警報が鳴り響くと、人々は防空壕へ避難する。

ある夜に警報が鳴った時、鈴子はやはり愛助の下宿にいた。ところが、鈴子は腹痛を感じてトイレにこもっていた。愛助が早く避難するよう声をかけても、鈴子は先に行けと言うばかりでなかなかトイレから出なかった。愛助は鈴子を見捨てるわけにもいかず、出てくるまで声をかけながら待った。やっと出てくると、鈴子を抱き抱えて防空壕へ走った。虚弱体質の愛助には珍しい姿だった。

空襲警報が解除され、ふたりは部屋に戻ってきた。
今まで愛助は鈴子のことを「福来さん」と呼んでいたが、これからは「スズ子」と呼んで欲しいと頼んだ。さっき、早く逃げるよう催促する時、愛助は思わず「スズ子」と呼び捨てにした。鈴子はそれにときめいたのだと言う。
そう話して、鈴子は愛助にキスをした。愛助のことが本当に好きだと述べた。

キスを終えると、愛助は咳き込んだ。珍しく思いっきり走ったせいで調子が悪くなったのかと思われた。
しかし、愛助は喀血した。

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