彩子さんに紹介してもらった、フィシュテルの『私家版』を読んだ。
彼女は映画版を推していたのだが、そちらは入手が難しかったので(価格の問題もあるし、懇意のレンタル屋にもなかった)、原作小説の翻訳版を読むことにしたのだ。
キャッチ・コピーは「本が凶器になる完全犯罪」。
冒頭の数ページを読むと大筋の手口は予想できてしまい、実際その予測もはずれない。
とはいえ、主人公を殺人に決意させるに至った因縁、完全犯罪達成までの用意周到な準備、断片的なピースを見事につなぎ合わせる文章構成と、三拍子が見事に揃っている。派手な客寄せシーンがあるわけでもなく、比較的淡々と物語が進行するのだが、退屈せずに読まされる(ただし、翻訳文のクセが僕好みじゃないところがあって、最初の1章を過ぎるあたりまでは少々の忍耐力が必要とされた)。