NHK『ゲゲゲの女房』第131回

 アニメ・マンガの日本語という外国人向けに日本の口語を説明するサイトの中で、「関西人」があまりにスゴくて笑いの止まらない当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第131回めの放送を見ましたよ。

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「おかあちゃんの家出」

 貴司(星野源)の葬儀も終り、布美枝(松下奈緒)が東京へ帰る日となった。
 布美枝は、母(古手川祐子)とゆっくり話をする時間を持った。家族の前では平気なふりをしているが、母のリウマチはかなり悪化しているようだ。それにもかかわらず、とても丁寧な仕上がりのドテラを縫った。孫たちへのプレゼントだという。本当は布美枝と茂(向井理)の分も用意したいのだが、まだできていないという。おそらく、指が痛むために作業がはかどらないのだろう。

 あらためて貴司の思い出を話し合うふたり。貴司のことを思い浮かべると、笑っている姿しか思い出すことができない。彼は小さな時から、いつも朗らかな笑顔を浮かべていた人物であり、周囲を明るくしてくれた。海で死んだ理由も、釣りの最後に、子供の好物の岩のりをどうしても採ってやりたいと岩場に出た時に波にさらわれたのだ。村井家には、喜子(松本春姫)のために手作りの鬼太郎ハウスを送ってくれる優しさもあった。

 布美枝と母は悲しみの底にあったが、貴司の笑顔を思い出し、自分たちも笑って、強く生きていかなければならないと約束するのだった。
 父(大杉漣)は相変わらず寡黙だった。布美枝らには一言声をかけるだけで送り出した。

 布美枝は調布に帰宅した。
 少し見ない間に、子供たちが少しだけたくましくなったように思った。その姿を見て、気持ちが楽になった。
 さらに、茂も仕事で忙しい中、布美枝の顔を見に来た。後で藍子(菊池和澄)から聞いたことだが、茂はずっと布美枝のことを心配していたという。大変なときに付き添ってやれなかったことを悔やんだり、布美枝が家にいないことを寂しがったりしていたという。間接的であれ、茂の自分に対する気持ちがわかって、布美枝は嬉しかった。

 義父母(風間杜夫、竹下景子)に帰宅の挨拶をした。いつもガミガミと口うるさい彼らであったが、今日ばかりは優しく布美枝のことをねぎらってくれた。一時は、同居生活を貴司に心配されるほどであったが、こうして親切にされることはとても嬉しかった。

 家で落ち着いた布美枝は、いつまでも悲しんでいるのではなく、貴司のように笑顔をつくろうと決意を新たにした。しかし、根の部分ではまだ悲しみを乗り越えることはできていなかった。死がどういうものかわからない喜子は、死者の姿は見えなくても、声は聞こえると信じている。喜子が電話ごっこで貴司を会話をしている様子を見た途端、布美枝は我慢ができずに泣き崩れてしまった。

 数日後。布美枝へ手紙が届いた。懐かしい人が上京してくるのだという。

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NHK『ゲゲゲの女房』第130回

 来週はテレビ視聴の難しいスケジュールと地域へツアーに出かける予定であり、NHKオンデマンドを利用しないと連載が難しいかもしれないなぁと思っている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第130回めの放送を見ましたよ。

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「おかあちゃんの家出」

 3日間寝続けて、茂(向井理)はすっかり快復した。
 浦木(杉浦太陽)が見舞いに来た。しかも、茂を煩わせていた粗悪な鬼太郎グッズの製造業者と掛け合って、不誠実な商売をしないよう念書も取ってきたという。茂と布美枝(松下奈緒)は、珍しく殊勝な態度の浦木のことを一瞬見なおした。しかし、彼の本心は、競合相手を牽制して、自分が茂に取り行って儲けるという点にあった。茂らは呆れ返ってしまった。

 布美枝は、安来で教師をやっている長兄・哲也(大下源一郎)から電話で訃報が伝えられた。一番仲の良かった弟・貴司(星野源)が高波にのまれて水死したという。婿入り先のミシン販売にやっと余裕が出てきて、休日に釣りに出かけた時に事故にあったという。
 悲しみながらも、すぐに帰郷する準備を始める布美枝。茂は仕事の都合で行くことはできないが、布美枝には実家でゆっくりしてくるよう言ってやるのだった。

 同じく東京に住んでいる長姉・暁子(飯沼千恵子)と一緒に実家に着いた時、貴司の遺体は既に焼かれていた。事故後3日間経って発見されたため損傷が激しく、通夜を前に火葬することになったという。
 父・源兵衛(大杉漣)は誰よりも落胆しているように見えた。しかし、涙を見せることなく気丈に振舞っていた。その姿を見て、家族は誰も声を掛けることができないでいた。

 姉妹4人は、実家の1室に布団を並べて寝ることになった。長女・暁子と四女・いずみ(朝倉えりか)は年が離れすぎているせいで、一緒に寝るのは初めてだとはしゃぎ始める。父に反発して東京に出、茂のアシスタント・倉田(窪田正孝)との恋愛沙汰もあったいずみだが、見合いですぐに結婚を決めてしまい、今は子供もいる。彼女は倉田のその後の活躍もよく知っており、彼のことは良い思い出となっていた。

 はじめは楽しくやっていた姉妹であったが、話が死んだ貴司の思い出話に移るにつれて、しんみりとしてきた。特に布美枝は、年も近く、一緒に実家の酒屋を手伝っていた時期もあるのでその思いも強烈だった。

 夜中、布美枝はなかなか寝付けず、店に降りていった。
 そこには、父が紋付袴のまま、じっと座っていた。布美枝の姿を認めるやいなや、親より先に死ぬのは親不孝だと言って、堰を切ったように泣き出した。

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NHK『ゲゲゲの女房』第129回

 午前8時には小田原付近を新幹線で走行中でワンセグの電波が受信できず、12:45には某ビルの中心部でワンセグの電波が届かず、23時前に帰宅してHDDレコーダーを再生した当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第129回めの放送を見ましたよ。

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「おかあちゃんの家出」

 布美枝(松下奈緒)が子供たちを連れて買い物に出てたのを家出だと誤解し、茂(向井理)は狼狽していたという。それを聞いて、自分のことも心配してもらえるのだと、布美枝は少し気を良くした。エプロンを着けて家事を始めようとしたとき、茂のゴミ箱から回収してきた手紙がなくなっていることに気づいた。

 布美枝は知らぬことなのだが、藍子(菊池和澄)がこっそりと茂に返していたのだ。布美枝が家を飛び出した間に、藍子はエプロンをつけて食器洗いをしていた。その時に偶然見つけたのだ。
 一度はムシャクシャしてゴミ箱に捨てた布美枝の本音の手紙を改めて読み返す茂。今度はそれを机の中にしまった。

 数日後、浦木(杉浦太陽)が数年ぶりに尋ねてきた。図々しく失礼な態度は相変わらずだ。彼が現在手がけていると言って大仰に見せびらかしたのは、子供だましの電卓だった。どこからか、水木プロダクションの資金繰りが苦しいという噂を聞きつけて、鬼太郎のキャラクターグッズを作って売りだそうと話を持ちかけてきた。しかし、昔から浦木に煮え湯ばかりを飲まされている茂は、全く聞き耳を持たない。

 茂は、いつものように浦木を小突いて家から追いだそうとする。しかし、今日に限って、うまく浦木を捕まえることができない。それどころか、目がかすみ、ついにはその場に倒れこんでしまった。
 原因は過労だった。あまりのハードスケジュールのために、身体が言うことを聞かなくなったのだ。医者からは数日間完全休養するよう言われた。

 水木プロダクションの面々は、締め切り直前の大事な時期に大黒柱を失い、士気が低下する。そんななか、一番の古株のくせに仕事は半人前の菅井(柄本佑)が珍しく奮い立ち、仲間を鼓舞した。締め切りを数日延ばしてもらうなどして、急場をしのぐだけの体制は整った。

 プロダクションの緊張感や、茂の焦燥感を尻目に、布美枝はどことなく嬉しそうだった。茂の体のことを心配していた布美枝は、すでに倒れた後とはいえ、茂に休養期間が与えられたことを喜んでいるのだ。また、仕事を離れて、しっかりと二人で向き合う時間ができたことも幸せに感じている。

 茂は、布美枝の言うことには耳も貸さず無理をしすぎていたと、反省とも謝罪ともつかない話をはじめた。投資していた出版社が倒産し、資金繰りが苦しいのは事実だ。その穴埋めをするために、過剰とも思える仕事を請け負っていた。
 茂は、アシスタントや家族など多くの人々の運命を握っていると思い、気負っていたのだ。マンガ業界は浮き沈みが激しく、少しでも仕事が途切れると、二度と復活できないと思い込んでいる。だから、無理をしてでも仕事を続けていたのだ。
 しかし、自分ひとりが張り切っても空回りするばかりで、周囲と足並みを揃える必要があると、今回のことで思い知ったという。

 布美枝は、貧乏生活に戻りたくないという点では茂に同意すると言う。しかし一方で、最近の茂に笑顔がないと指摘する。貧乏時代には、茂は楽しいことをいろいろ思いついて、布美枝と一緒に笑い合っていた。そのことで、布美枝は随分と助けられていたという。
 しかし、今の茂は全く笑わない。貧乏でいることよりも、笑顔のない茂を見ている方がとても辛いと布美枝は感じているのだった。そのことをはっきりと伝えた。

 夫婦のわだかまりは解消された。

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NHK『ゲゲゲの女房』第128回

 昨日、水木しげるの『敗走記』を読んでみたくなり、押熊の某書店へ探しに行ったのだが売っておらず、おいおいドラマがこれだけ人気なのだからチャンスを逃すなよと小さく突っ込んだ当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第128回めの放送を見ましたよ。

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「おかあちゃんの家出」

 締切りがいくつも重なり、ろくに寝ることもできず、疲労困憊している茂(向井理)。それに加えて、夕食中も黙って新聞を読むばかりである。家族は不満に思いながらも、仕事の状況を考えれば仕方ないと納得するしかない。
 布美枝(松下奈緒)は茂の身体を気遣い、あまり無理はしないように優しく語りかける。それに対して茂はイライラとしながら、仕事の事に口出しをするなと言い返す。布美枝の態度が一気に硬化した。

 茂は、次の日曜日に富士山の別荘に一家で出かけると、急に宣言した。子供たちですら、あまりに突然ことで、他に用事があるなどと言って賛成しかねている。
 布美枝は不機嫌な態度で食器を片付け始め、自分は絶対に行かないと反抗した。自分に従わないことに腹を立て、怒鳴りつける茂。
 いよいよ感情的になった布美枝は、自分の話を全く聞いてくれないのが辛いと不満をさらけ出した。そして、そのまま家を飛び出してしまった。

 同居している茂の両親は、たまたま夜遅くまで芝居を見に行っており不在だった。泣き叫ぶ喜子(松本春姫)のことを、藍子(菊池和澄)が気丈に面倒をみた。
 茂は子供たちすら放っておいて、すぐに仕事に戻らねばならなかった。仕事をしながら、ちらりと布美枝のことが頭をよぎるが、彼は自分の何が悪いのか全く理解できないでいた。

 布美枝は、気づけば深大寺そばの社に座り込んでいた。貧乏だけれど笑顔の溢れていた頃を思い出し、今はいったい何が変わってしまったのかと考えこむのだった。
 我に返った布美枝は、おずおずと帰宅した。子供たちは落ち着いて帰りを待っていた。その様子を見て、頼もしく思う布美枝であった。

 台所の様子を点検していると、茂が姿を表した。目が合うふたりだったが、茂は即座に仕事に呼び戻された。何も言葉を交わすことなく、茂は去っていった。

 翌日、布美枝はふたりの子供を連れて、昼から夕まで長時間買い物に出た。帰宅すると、家では大騒ぎになっていた。茂は布美枝が子供たちを連れて家を出ていったのだと誤解し、大慌てしていたという。無事に帰って来たことを確認すると、茂はバツが悪そうな素振りを見せながらも、特に何も言わずに仕事に戻ってしまった。

 勘のよい絹代(竹下景子)が、夫婦に何かあったのかと無遠慮に聞くが、布美枝は何も無いとごまかすのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第127回

 実はほんのちょっとだけ、本当に少しだけ「まとめ記事もめんどくさくなってきな」と思った当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第127回めの放送を見ましたよ。

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「おかあちゃんの家出」

 貴司(星野源)から大きな荷物が届いた。藁で手作りした鬼太郎の家の模型だった。いつも鬼太郎の人形で遊んでいる喜子(松本春姫)は大喜びした。茂(向井理)によれば、喜子は想像力が豊かな子供である。想像力を働かせて人形遊びをしているし、おもちゃの電話で貴司にお礼を伝える芝居をしたりしている。
 幼稚園で描いた茂の似顔絵には、本来は生えていない髭が描きこまれていた。絵は自由に描くのが良いと考える茂は、褒めてやるのだった。

 一方で布美枝(松下奈緒)は、茂が忙しすぎて喜子とろくに顔を合わせないために、喜子が茂の顔を思い出せなくなっているのではないかと心配するのだった。

 喜子だけではなく、布美枝自身も茂とのすれ違い生活が顕著になってきていた。布美枝が夜食やお茶を仕事場に持って行こうとすると、出前の方が手軽だ、アシスタントが茶を準備するなどと言って茂は手伝いを断るようになっていた。水木プロダクションの役員に名を連ねている、茂の兄弟らが集まって何やら経営上の深刻な議論を行っているが、布美枝には何も教えてくれなかった。

 そんな時、元『ゼタ』の編集員で深沢(村上弘明)の秘書でもあった加納(桜田聖子)が、他誌の記者として茂の取材に来た。事情通の彼女から、布美枝は水木プロダクションの危機について教えてもらった。ある出版社が倒産し、滞納されていた原稿料を受け取れなくなったばかりか、漫画映画作成に投資していた資金も回収できないという。何も知らされていなかった布美枝は動揺するのだった。

 茂はますます仕事が忙しくなっており、周囲の人々に対しても余裕のない対応をし始めていた。
 鬼太郎のおもちゃに不具合が発生したのだが、購入者は製造元と連絡が取れないという。そのため、水木プロダクションに大量の手紙が届き始めている。しかし茂は、業者が勝手に作っているのだから、自分には関係無いことだと全く取り合わない。
 出版社倒産による損失のことについて、布美枝は茂に慰めの言葉を掛ける。しかし、茂は仕事の事に口出しをするなと頭ごなしに拒絶して、ぷいと出ていってしまった。

 話をする時間が全く取れないので、布美枝は手紙に自分の気持を記して茂の机に置いた。家族なのだから自分も仕事を手伝いたい。むしろ、そうできないことが寂しい。茂の過労が心配でならない。無理はしないで欲しい、など。

 しかし、茂はその手紙を一瞥すると、ゴミ箱に捨ててしまった。翌朝、仕事部屋の掃除に来た布美枝は無造作に捨てられた手紙を発見してしまった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第126回

 中高生の時によく遊んだTRPG『RuneQuest』最新版のPDFがダウンロード販売されていることを知って買おうと思ったが、誰と遊べばいいんだ?と考え込んでしまった当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第126回めの放送を見ましたよ。

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「戦争と楽園」

 藍子(菊池和澄)は元気に登校した。クラス内にはまだ少しだけシコリが残っていたが、藍子は祖母(竹下景子)の教え通りに気を強く持って立ち向かうのだった。

 布美枝(松下奈緒)は、絹代が藍子を励ましたと知って礼を言い、自分の至らなさを反省するのだった。絹代は、子供は自分の両親には悩みを言いにくいものだ。その代役として祖父母が一緒に暮らしているのだと冗談めかし、深刻に受け取らないようにした。

 『ゼタ』編集長の深沢深沢(村上弘明)が、珍しく自分で原稿を取りに来た。受け取った『近藤勇: 星をつかみそこねる男』のタイトルにあるように、深沢は自分も星をつかみ損ねていると自嘲するのだった。『ゼタ』の経営はまったく良い所がなく、茂(向井理)をはじめ、ほとんど全ての作家に原稿料を支払えない状態にあるという。自分のやり方は時代錯誤であり、そろそろ廃刊すべきだと考え始めていた。

 茂は、自分の戦争体験を綴る『総員玉砕せよ!』の構想を話した。惨めで滑稽な兵隊の日常を描くことで、戦争のバカバカしさを浮かび上がらせたいという。それも戦争。土木作業中にケガで死ぬ、マラリアで死ぬ、川に落ちてワニに食われる。
 「もっと生きたい」という当然の欲求が満たされない状況は不条理である。その思いを全てぶつけて描くと力強く宣言した。

 茂の熱い思いに心打たれた深沢は、自分も『ゼタ』を継続することを宣言する。商業的には失敗し、いろいろな人に迷惑をかけている。しかし、茂のように全身全霊をかけ、骨太な漫画を描く人材がどこかに埋れているかもしれない。それを発掘するという自らの使命を改めて思い知ったのだ。

 『総員玉砕せよ!』は翌年出版され、大きな反響を呼んだ。

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NHK『ゲゲゲの女房』第125回

 昨日は、とても刺激的な研究会に参加させていただき、関係者の皆様どうもありがとうございましたと、ここでこっそりお礼を述べる当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第125回めの放送を見ましたよ。

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「戦争と楽園」

 ラバウルの玉砕は大本営に報告され、国民の士気高揚の道具として喧伝された。玉砕命令に逆らった三井(辻萬長)らは山に篭ってゲリラ作戦を展開していたが、公式には生きているはずのない兵士と位置づけられる。後に他の守備隊に合流したが、辻褄を合わせるために次回の戦闘で真っ先に突撃して死ぬよう求められた。しかし、幸いなことに終戦まで大きな戦闘も発生せず、三井は生きて帰ってくることができた。

 茂が自分の部隊が全滅して逃げ帰った時も、敵前逃亡だとなじられ、戦って死ぬように命じられた。当時の日本軍は「生きていることが罪」という異常な状況にあったのだ。多くの仲間達はそれを素直に受け入れて死んでいったが、茂や三井は今でもそれを納得できないでいる。
 最近、茂は死んでいった戦友たちの夢を頻繁に見る。そして、彼らは決まって自分たちのことを漫画に描いて欲しいと訴えるのだという。

 藍子(菊池和澄)は祖母・絹代(竹下景子)に自分の悩みを打ち明けた。
 赤木(藤崎花音)を鬼太郎に登場させることはできないと告げると、彼女は「約束したはずだ」といって激しく怒りだした。藍子は「聞いてみる」と言ったにすぎず、約束はしていないと言い返すが、水掛け論になった。クラスメイトたちも赤木の味方をし、藍子は孤立してしまった。誕生会に行くこともできず、母から預かったプレゼントを捨ててしまおうとしていた時に、絹代に出くわしたのだという。

 絹代は、他人がなんと言おうと自分が間違っていなければそれでいい、と励ました。自分は戦時中にも、竹槍やバケツリレーの訓練には一度も参加しなかった。そんなもので戦争に勝てるはずがないのは自明で、バカバカしかったからだと体験談を話した。もちろん隣組の組長が怒鳴りこんできたが、自分の考えは間違っていないと言って追い返した。藍子もそのように振舞えと言うのだ。

 ただし、絹代はひとつだけ藍子の落ち度を指摘した。嘘をつくことは悪い。街で時間を潰し、プレゼントを捨てることで誕生会に行った振りをし、布美枝(松下奈緒)に嘘をつくことは許されることではない。布美枝に告白し、プレゼントを返すことが必要であると諭した。
 藍子は、祖母の言い分に納得し、元気も取り戻した。

 話しを聞いた布美枝は、自分がもっと親身になって藍子の気持ちに耳を傾ければ良かったと反省するのであった。藍子は誕生会の朝にプレゼントを用意しておらず、それは誕生会には行かないというサインだったのだ。強引にプレゼントを持たせて送り出したのは布美枝だった。
 一方の藍子も、自分の歯切れの悪さを反省した。赤木を鬼太郎に出演させるなど、無理なことは分かっていたのだから、始めからはっきりと断れば良かった。また、布美枝に嘘をつく寸前であったことも謝った。

 それに加えて、学校でからかわれても言い返す度胸がないことを反省した。布美枝はそういうところは自分と一緒だと言って、娘の負担を少しだけ軽くしてやろうとした。布美枝は小さい頃から背が高く、「電信柱」とからかわれるがままだったのだ。

 さらに布美枝は、茂から聞いた話をそのまま藍子に伝えた。
 茂は戦争で左腕をなくしたが、そのおかげで後方部隊に配属され、生きて帰ってこれた。腕をなくしたことを悲観しても生きていけない。弱みは誰にでもあるが、工夫して人並み以上に仕事ができるようにしている。
 くよくよせずに前に進むことが重要だという茂の言葉でもって、藍子を励ました。

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NHK『ゲゲゲの女房』第124回

 いまだに、ふと気を抜くと「♪ 口笛吹いて~ 空き地へ行った~ 知らない子がやって来て~ 遊ばないかと笑って言った~」などと歌ってしまう当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第124回めの放送を見ましたよ。

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「戦争と楽園」

 今日の放課後は、藍子(菊池和澄)の友達・赤木(藤崎花音)の誕生会が開かれる。藍子は、彼女から宿題を見せてもらった見返りに、赤木をテレビの鬼太郎に出演させるよう茂(向井理)に頼むよう言われている。茂に仕事の口出しをしてはいけないことになっており、藍子は茂と赤木の板挟みに悩んでいた。

 布美枝(松下奈緒)は、またしても藍子の気持ちを分かってやれない。藍子が学校のない南の島で暮らしたいと入ったことを、彼女流の冗談だと受け取った。誕生会に行きたくないと言うのは、プレゼントとして編んでいたリリヤンが間に合わなかったからだと、勝手に解釈する。
 布美枝は、密かに作っておいた端布の巾着袋をきれいに包装し、誕生日プレゼントとして藍子に持たせた。

 学校が終わったが、藍子は誕生会に行かないつもりだった。母に渡されたプレゼントを家に持って帰るわけにもいかず、商店街のゴミ置き場にこっそり捨てようとした。偶然、祖母の絹代(竹下景子)が通りがかり、声をかけた。藍子は緊張の糸が切れ、商店街の真ん中であることも顧みず、絹代に抱きついて泣き出すのだった。

 村井家には、茂の戦友だった三井(辻萬長)が、笹岡(井之上隆志)を伴ってやって来た。笹岡は、病気と負傷で弱っていた茂を熱心に看てくれた軍医である。終戦以来会っていなかったが、笹岡は『敗走記』を読んだときに、水木しげるの正体に気づいていたという。笹岡も茂も、飄々として型にはまらない落ちこぼれ軍人同士で、昔から気が合ったという。

 楽しい思い出話は、「楽園」の話題になった。「楽園」とは南方の傷病兵収容所のそばにあった、現地民の村である。茂は笑顔というノンバーバル・コミュニケーションだけで、そこの住民達と仲良くなった。彼らの親切な態度や、自然の中でゆったりと暮らしている様子に大きな憧れを抱いたという。それに対して、日本軍の上官は、茂が勝手に現地民と交流していることに激怒した。あやうく営倉に入れられそうになったところを、軍医の笹岡が必死の思いでとりなしてくれた。笹岡に感謝しつつも、茂はしゃちほこばった日本社会の生き方よりも、現地民の人間らしい生き方への憧憬を深める結果となった。
 そのエピソードを聞いて、布美枝は気持ちが少し分かった。

 もちろん、戦地での暮らしは楽しいことだけではなかった。茂らの所属していた部隊は、敵軍に包囲され、終戦の4ヶ月前に玉砕した。新しく赴任してきた隊長は、若く血気盛んな人物で、潔く散ることこそ帝国軍人の美学だと信じていたのだ。村井家に集まった戦友達は、当時の人々の考え方のバカバカしさを改めて認識するのだった。

 茂は、大怪我を負っていたことで後方部隊に配属され、難を逃れた。人生では何が幸いするかわからないということも、改めて思うのであった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第123回

 「イトーさん、どうもお世話になっております。あれはいい仕事ですね。」と突然挨拶をする当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第123回めの放送を見ましたよ。

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「戦争と楽園」

 布美枝(松下奈緒)は、『敗走記』を初めて読んだ。それは、茂(向井理)が2年前に雑誌に発表したもので、自身の戦争体験に基づくものだ。見せながら、茂はラバウル島で経験した悲惨な体験を話して聞かせる。

 本隊から100km離れてた前線に、茂らは10人の小隊で送り込まれた。早朝、茂が歩哨に立っている時に突如敵に襲われ、味方は全滅した。茂は装備を全て捨て、生きるか死ぬかの逃避行を始めた。
 途中、崖にぶら下がって、敵をやり過ごすことがあった。手もしびれ、死を覚悟し、心のなかで両親に別れの言葉を送った。その夜、母・絹代(竹下景子)は茂が敵から逃げて崖にぶら下がっている夢を見た。茂の窮地だと知った絹代は、あの世に行ってしまわないように、夫(風間杜夫)と一緒に寝室から大声で茂の名を呼び続けた。その声は茂にも届き、力が蘇って、窮地を脱することができた。とても不思議な出来事であるが、復員後、双方の話を突き合わせると、間違いなくそのようなことがあったのだ。

 その後、何日もジャングルの中を抜けて、やっと本隊にまで帰ることができた。しかし、本隊では茂の帰還は歓迎されなかった。命より大切な銃を捨て、敵前逃亡をしたことは恥ずるべき行為だというのだ。次の戦闘では、戦闘で突撃するよう命じられた。あまりの理不尽さと疲労により、茂はその場で倒れてしまった。
 そして、ジャングルで大量の蚊に刺されたこともあってか、マラリアにかかって寝こんでしまった。高熱で寝ているときに空襲に遭い、流れ弾で茂は左腕を失うこととなった。

 一通り、自分の体験を話して聞かせると、茂は引き出しから未発表の漫画作品を取り出して、布美枝に見せた。それは、復員直後にどこに発表するわけでもなく、茂自身の記録として描いた戦争体験漫画であった。
 貸本漫画時代に、茂は戦争活劇漫画を描いていた。しかし、いつかは自分の体験に基づいた「本物の戦争」を漫画にしたいと考えている。先日、ラバウル島を再訪したのもそのための取材の一環だったと打ち明ける。松川(杉本有美)から『敗走記』を大急ぎで仕上げて欲しいと言われたのを断ったのは、全身全霊をかけて描くためには十分な余裕が必要だからである。今は、他の仕事が忙しくて、自分の納得する『敗走記』が描けないのだ。

 ある朝、布美枝は家に客を迎える準備に忙しかった。茂の戦友の三井(辻萬長)が尋ねてくるのだ。彼は宝塚の遊園地の関係者で、1年前に茂が仕事で行った際にばったり再会した。その後、一緒にラバウルに行くなど、親しく付き合っている。ただし、調布の村井家に来るのは初めてのことである。

 ラバウルの話が出たことで、藍子(菊池和澄)は自分もそこで暮らしたいと言い始めた。学校も試験もない生活はきっと素晴らしいものだろうと言うのだ。藍子の心境の変化を布美枝は不思議に思うのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第122回

 放送直前まで某所でガンダム話の添削をしていたので、あぶなく見逃すところだった当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第122回めの放送を見ましたよ。

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「戦争と楽園」

 藍子(菊池和澄)は明るくなった。小学校で新たに赤木(藤崎花音)という友達ができ、彼女の誕生会に招待されたのがうれしいのだ。その様子を見て、布美枝(松下奈緒)も安心する。

 喜子(松本春姫)は、茂(向井理)に左腕がないことを意識し始め、布美枝にそのことを聞く。戦争の話を聞かせるのはまだ早いと考えた布美枝は、大怪我をして失ったと言うに留めた。

 翌日、担当編集者の松川(杉本有美)がやって来た。美人を前にして、アシスタントの菅井(柄本佑)と茂の父(風間杜夫)は舞い上がる。

 松川は、『敗走記』を夏中に仕上げて欲しいと頼みに来た。しかし、茂はいつになく厳しい表情と口調で、そんなに早くは仕上げられないと断るのだった。心に何かを抱えているのであろう茂に対して、周囲はそれ以上何も言えなくなってしまった。

 小学校では、宿題をやり忘れた藍子の窮地を赤木が助けた。自分の宿題を見せて、書き写させてくれたのだ。しかし赤木は、宿題の引き換えとして、テレビの鬼太郎に自分をモデルとした人物を登場させて欲しいと頼んだ。茂は家族から仕事の指図を受けることを何よりも嫌う。藍子はそのことを懸命に伝えようとするが、赤木は決まったも同然だと思って立ち去ってしまった。

 困惑したまま藍子は帰宅した。宿題のカンニングを伏せたまま、友達をテレビに出せるかどうか布美枝に相談した。藍子の板挟みに気づいていない布美枝は、そんなことは茂が許さないだろうと、のんきで通りいっぺんの返事をするのみであった。

 夜、仕事部屋では、茂が一人で敗走記を読んでいた。

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