いまだに、ふと気を抜くと「♪ 口笛吹いて~ 空き地へ行った~ 知らない子がやって来て~ 遊ばないかと笑って言った~」などと歌ってしまう当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第124回めの放送を見ましたよ。
今日の放課後は、藍子(菊池和澄)の友達・赤木(藤崎花音)の誕生会が開かれる。藍子は、彼女から宿題を見せてもらった見返りに、赤木をテレビの鬼太郎に出演させるよう茂(向井理)に頼むよう言われている。茂に仕事の口出しをしてはいけないことになっており、藍子は茂と赤木の板挟みに悩んでいた。
布美枝(松下奈緒)は、またしても藍子の気持ちを分かってやれない。藍子が学校のない南の島で暮らしたいと入ったことを、彼女流の冗談だと受け取った。誕生会に行きたくないと言うのは、プレゼントとして編んでいたリリヤンが間に合わなかったからだと、勝手に解釈する。
布美枝は、密かに作っておいた端布の巾着袋をきれいに包装し、誕生日プレゼントとして藍子に持たせた。
学校が終わったが、藍子は誕生会に行かないつもりだった。母に渡されたプレゼントを家に持って帰るわけにもいかず、商店街のゴミ置き場にこっそり捨てようとした。偶然、祖母の絹代(竹下景子)が通りがかり、声をかけた。藍子は緊張の糸が切れ、商店街の真ん中であることも顧みず、絹代に抱きついて泣き出すのだった。
村井家には、茂の戦友だった三井(辻萬長)が、笹岡(井之上隆志)を伴ってやって来た。笹岡は、病気と負傷で弱っていた茂を熱心に看てくれた軍医である。終戦以来会っていなかったが、笹岡は『敗走記』を読んだときに、水木しげるの正体に気づいていたという。笹岡も茂も、飄々として型にはまらない落ちこぼれ軍人同士で、昔から気が合ったという。
楽しい思い出話は、「楽園」の話題になった。「楽園」とは南方の傷病兵収容所のそばにあった、現地民の村である。茂は笑顔というノンバーバル・コミュニケーションだけで、そこの住民達と仲良くなった。彼らの親切な態度や、自然の中でゆったりと暮らしている様子に大きな憧れを抱いたという。それに対して、日本軍の上官は、茂が勝手に現地民と交流していることに激怒した。あやうく営倉に入れられそうになったところを、軍医の笹岡が必死の思いでとりなしてくれた。笹岡に感謝しつつも、茂はしゃちほこばった日本社会の生き方よりも、現地民の人間らしい生き方への憧憬を深める結果となった。
そのエピソードを聞いて、布美枝は気持ちが少し分かった。
もちろん、戦地での暮らしは楽しいことだけではなかった。茂らの所属していた部隊は、敵軍に包囲され、終戦の4ヶ月前に玉砕した。新しく赴任してきた隊長は、若く血気盛んな人物で、潔く散ることこそ帝国軍人の美学だと信じていたのだ。村井家に集まった戦友達は、当時の人々の考え方のバカバカしさを改めて認識するのだった。
茂は、大怪我を負っていたことで後方部隊に配属され、難を逃れた。人生では何が幸いするかわからないということも、改めて思うのであった。