NHK『ゲゲゲの女房』第141回

 知人R氏と神宮丸太町付近で会った時、「京阪の駅の自販機で、炭酸入りのアクエリアスを見た」(確か、東福寺駅だったと思う)と言うので、そんなのあるわけ無いじゃん、白昼夢でも見たんじゃないの?と馬鹿にしたところ「やっぱりあるっしょ」とメールで商品情報のURLを送り付けられて降参するよりなかった当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第141回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 修平(風間杜夫)が女性と銀座を歩いていたという話を持ち込んだ浦木(杉浦太陽)はきつく口止めをされた。しかし、なかなか帰らず、家の中で一人でブツブツ言っていたところを絹代(竹下景子)に捕まってしまった。そして、全て白状させられた。

 その日は、村井家の3世代が揃って食事をする約束になっていた。上機嫌の修平に対して、絹代は不機嫌なままだ。布美枝(松下奈緒)は絹代の様子がおかしいことに気づくが、絹代が修平の秘密を知ってしまったことは知らなかった。

 場の雰囲気を変えようと、布美枝は娘たちの進路に話題を変えた。次女の喜子(荒井萌)は、とりあえず短大志望ということにしたようだ。

 一方の藍子(青谷優衣)は教師になりたいという。すでに教員採用試験の準備も始めているという。
 家族には初耳だった。茂は急に怒り出す。自分の会社の手伝いをさせたいと考えていたこともあるし、なによりも、今まで何の相談もなく黙っていたことが許せなかった。
 絹代の不機嫌さと茂の怒りで、その日の夕食は惨めなものになった。

 数日後。またしても修平がめかし込んで出かけようとしていた。ヤキモチを焼いた絹代が香水を隠してしまったために、ふたりは激しい言い争いになる。その様子から、布美枝は浦木が秘密を漏らしてしまったのではないかと疑い始めた。

 アシスタントの相沢(中林大樹)が近々結婚式を挙げる。仲人を務める茂と布美枝は、相沢から式次第の説明を受けていた。相沢の妻となる女性は、専門学校の事務員をしているという。本来は教員志望だったのだが、教師は転勤が多く、夫婦が一緒に暮らせなくなるおそれもあるので事務員になったという。それに、教師の初任地は僻地になることが多く、それを嫌った部分もあるという。

 教師が僻地に赴任させられると聞いて、茂は藍子のことを思った。茂は彼女を手放したくないのだ。僻地に行って、そこで結婚でもしたら、調布には二度と帰ってこないのではないかと狼狽した。
 さらには、藍子の進路問題について落ち着き払っている布美枝の態度も気に入らない。その様子を見て、布美枝だけは以前から相談を受けていたのではないか、自分だけが蚊帳の外だったのではないかと、布美枝に食ってかかった。布美枝も珍しく対抗し、ふたりは夫婦喧嘩を始めてしまい、口を聞かなくなった。

 相沢は先輩アシスタントの菅井(柄本佑)と連れ立って喫茶店に来た。相沢は結婚生活に希望を持っていたはずなのに、茂ら夫婦の様子を見て自分の将来を不安視してしまった。

 質屋の主人(徳井優)が、修平の噂をアシスタントたちの耳に入れた。ちょうどその時、修平が女性同伴で喫茶店に現われた。
 まずい場に来てしまったと慌て、説明をしようとした瞬間、修平はめまいを覚え、その場に倒れてしまった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第140回

 昨日のまとめ記事にはメモ書きがそのまま残り、意味不明な箇所があったことについさっき気づき、赤面しながら修正した当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第140回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 警察に保護されていた絹代(竹下景子)が帰宅した。店の前に座り込んで邪魔になっていた若者たちを叱りつけ、杖を振り回したところ相手に軽いけがを負わせたという。相手にも非があり、絹代の歳も勘案し、事件にはせずに済ませてくれた。
 絹代は「悪いことを悪いと言わないから、世の中はおかしなことになっている」と主張し、家族は同意しかける。

 しかし、修平(風間杜夫)が横槍を入れたせいで、絹代はますます興奮し始めた。若い頃の修平の失敗談を次々に挙げ連ねるのだった。強盗警戒の宿直中に恐ろしくなって逃げ帰り銀行をクビになったこと、難解な外国映画ばかりかけたために映画館の経営に失敗したこと、腕白な3人の息子を絹代一人に任せて大阪へ単身赴任に行ったことなど。
 ついに修平は、絹代との結婚は失敗だったと言ってしまった。東京に暮らしていた当時、下宿屋の娘との婚姻話もあったのだが、実家の家族の誤解によって絹代と結婚することになってしまった。それを後悔しているというのだ。
 ふたりは家の中で冷戦状態になった。

 喜子(松本春姫)は、高校卒業後の進路についてまだ悩んでいた。藍子(青谷優衣)に相談を持ちかけてみたものの、藍子は自分の勉強に忙しくてまともに話を聞いてくれなかった。
 茂(向井理)の仕事は再び忙しくなりそうな気配だ。プロダクションの仕事も弟の光男(永岡佑)ひとりでは手に負えなくなりつつある。大学を卒業したら藍子に会社を手伝わせてはどうかと、布美枝(松下奈緒)に相談する。布美枝もいい考えだと賛成した。

 数日後、修平に誰かから手紙が来た。その直後から、修平は人が変わったように元気になった。めかし込んで銀座の歌舞伎座に芝居を見に行ったり、喫茶店では周囲に自分は死なないような気がしてきたと話すほどである。絹代も、オーデコロンが急に減っているのを見つけていぶかしく思った。

 修平が芝居を見に行った日、浦木(杉浦太陽)が久しぶりにやって来た。広告代理店の事務所を銀座・歌舞伎座の裏に構えたのだという。ただし、雑居ビルの地下倉庫の片隅を借りたというのが真相ではあったが。
 そんな浦木が、銀座で修平を目撃したという。しかも、絹代ではない妙齢の女性と親しげに歩いており、ただならぬ様子であったという。

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NHK『ゲゲゲの女房』第139回

 先日、「カバンの薄さは、知能の薄さ: 80年代後半~90年代前半を回顧するブログ」を読んだものの、自分も周囲も革の鞄を使っていなかったのであまりピンとこなかった当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第139回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 昭和59年4月。茂(向井理)の初期作品の復刻出版計画が持ち上がるなど、仕事は再び順調になりはじめていた。

 茂の父・修平(風間杜夫)の様子がおかしい。首に原因不明の瘤ができ、眠ったまま起きなくなってしまった。茂は南方民芸人形を掲げて神頼みを行った。すると修平は目を覚ました。修平が言うには、夢のなかに茂の民芸人形が現れて救ってくれたという。
 修平や家族は日常生活に戻ったが、修平は元気がなく、ずいぶんと弱ってしまっていた。

 ある日、小劇団の劇団員がプロダクションを訪ねてきた。『悪魔くん』をモチーフにした芝居を行うのだという。
 芝居好きの修平は、呼ばれもしないのに話に首を突っ込んだ。戦前の芝居業界の様子や、自分のおじが俳優だったことなどを披露するが、若い劇団員たちにはピンとこない話ばかりだった。

 布美枝(松下奈緒)は、修平が茂の著した『あの世の辞典』を眺めているのを見つけた。修平は自分の昔話が今の若者達に伝わらないのが寂しいという。あの世に行ったら、昔の知り合い達と昔話に華が咲くのにと言う。俳優だったおじは、修平と年も近かったが、30歳ほどで夭折したという。布美枝は、修平が死ぬにはまだ早過ぎると、通りいっぺんの励ましをするしかなかった。

 この年、藍子(青谷優衣)は大学4年、喜子(荒井萌)は高校3年生になっていた。ふたりとも次の進路を考えなければならない時期になっていたが、布美枝は本人たちの好きにすればよいとのんびり構えている。
 しかし、喜子は自分が何をしたいのか、もしくは、すべきなのかわからずに困っていた。獣医への漠然とした憧れはあるが、数学ができないので獣医学部の入試に合格しそうにないというのだ。

 交番から電話があって、呼び出された。絹代(竹下景子)が保護されたので、迎えに来て欲しいというのだ。布美枝と喜子はすぐさま駆けつけた。

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NHK『ゲゲゲの女房』第138回

 1週間ぶりにいつものペースを取り戻した当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第138回めの放送を見ましたよ。

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「妖怪はどこへ消えた?」

 茂は(向井理)、川で「小豆洗い」(声: 泉谷しげる)に会った様子を布美枝(松下奈緒)に詳しく聞かせた。
 小豆洗いが言うには、妖怪は人を驚かせることが商売なのに、最近は誰も存在に気づかない。このままでは、人々に忘れ去られ、消えてしまう。茂を見込んだ小豆洗いは、妖怪のことを絵に描くよう命じると姿を消した。

 茂は妖怪事典を作りたいと布美枝に相談した。仕事の注文がなくて苦しい時に、出版の見通しのない仕事を始めてよいものかどうか、意見を聞きたかったのだ。
 布美枝は文句を言うでもなく、茂の計画に賛成した。それどころか、日本の妖怪だけではなく、世界中の妖怪を全て書き終わるまで続けるべきだと、背中を押して応援するのだった。
 茂はついにスランプを脱した。

 喜子(荒井萌)が修学旅行から帰って来た。彼女は同室のクラスメイトと一緒に、障子にたくさんの目が浮かび上がるのを見たという。茂によれば、それは妖怪「目目連」だという。茂がイラストを描いたところ、喜子が見たものと一致していた。
 喜子は、早速クラスメイトにも教えてやるのだと明るく話している。彼女は、修学旅行で少しだけ友達たちと仲良くなれたようだ。

 茂や喜子の様子を見た藍子(青谷優衣)は、ふたりは家の雰囲気を良くするために、自然に口裏を合わせているのではないかと布美枝に耳打ちする。布美枝も本当のところはわからないと言いつつも、妖怪が彼らに前向きに生きる力を与えてくれたのだろうと信じるのだった。

 茂はプロダクションのスタッフを集めて、妖怪事典の制作を発表した。まともに注文もなく、プロダクションの経営も危険な時期にそのような仕事をやって大丈夫かと、スタッフ達は動揺する。しかし茂は、このような時だからこそ丁寧な仕事を行い、納得が行くまで打ち込めるとみんなを説き伏せた。
 どんなに苦しくなっても、仲間を見捨てることはないと約束し、プロダクション一丸となって妖怪事典の制作に取り組んだ。

 夜遅く、茂は久しぶりに民芸品の片付けを再開した。そこに布美枝が現われたのを捕まえて、茂は今後の方針を話した。
 妖怪辞典を作るかたわら、以前から断り続けていた自伝漫画を描くことに決めたという。プロダクションを支えていくためには妖怪漫画だでは無理であり、他のジャンルも必要だと割り切ったのだ。その第一歩として自分の貧乏生活を描く。それにあたっては、布美枝のことも赤裸々に描く必要があるが、それで良いかと訪ねた。
 布美枝は、もちろん構わないと答えた。

 その秋、『水木しげるの妖怪事典』が出版された。茂は活躍の場を大きく広げた。

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NHK『ゲゲゲの女房』第137回

 南明奈のことを「胸が小さい」の代名詞としている(参考)当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第136回めの放送を見ましたよ。

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「妖怪はどこへ消えた?」

 河合はるこ(南明奈)が村井家を訪ねてきた。彼女は少女漫画家を目指して状況したが失敗し、田舎に帰っていった過去がある(第89回参照)。その後、教員になるべく何年も努力を続け、やっと春から本採用の小学校教師になれたという。
 漫画の道は挫折したが、本質的な部分で教師も漫画家も変わるところがないとはるこは考えている。漫画を描くか、授業をするかの違いはあるが、世の中の面白いことを表現し伝えることに違いはないのだという。そのはるこの表情は、活き活きとしていた。
 また、今の自分があるのは茂(向井理)のおかげだという。挫けそうになるたびに、茂の「漫画家魂」という言葉を思い出して自分を励ました。真剣に漫画に打ち込んだ姿勢は、将来何かの形で実を結ぶ、それが言葉の意味だ。

 順風満帆に見えるはるこの教員生活だが、心を痛めている問題もあるという。子供同士での揉め事が起きて、胃潰瘍になる者まで出てしまった。子供たちをのびのびさせるにはどうすればいいか悩んでいる。
 そこで、子供たちに楽しい話をしてやって欲しいと茂に頼み込んだ。教室に閉じ込めて点取り競争させるのではなく、山や川で好きなように遊ばせたい。そこに茂にも来てもらって、河童や妖怪など、怖いけれど面白い話を聞かせてやりたいというのだ。
 そのアイディアに賛成はするものの、茂は自分が出ていって話をすることにはあまり乗り気になれなかった。

 帰り際、はるこは布美枝(松下奈緒)にだけこっそり打ち明けた。茂には妖怪の話だけではなく、「漫画家魂」の話もしてやって欲しい。自分はその言葉に何度も勇気づけられた。子供たちもそうなるに違いないと考えているのだ。

 はるこが帰った後、布美枝は茂が子供たちに話をすることを勧める。茂は、今時の子供は河童などの話に興味はないだろうと、はじめから諦めている。開発が進んで環境が変わってしまったせいで、雰囲気のある川も存在していない。子供たちにピンとくるはずがないというのだ。

 布美枝は、環境が変わってしまっても河童いる。川の底でじっと呼んでくれるのを待っている。茂が出かけていって呼びかけるべきではないかとほのめかす。
 さらに、河童の住みにくい世の中は、人間にとっても住みにくい世の中ではないかと茂に問いかける。その言葉は、奇しくも、学校生活に馴染めない喜子(荒井萌)が茂へ間接的に悩みを打ち明けた時と同じものだった。

 そこで茂は悟った。自分自身が「漫画家魂」をなくしていた。売れるかどうかの点取り競争にはまり込んでしまって、漫画を描く楽しさや、眼に見えない妖怪たちの存在を見失っていた。
 河童や妖怪はもちろんだが、子供たちの住みにくい世の中は良くない。それを再認識した茂は、はるこの教え子たちに話をしてやることに決めた。

 そして、茂が子供たちに会いにいく日。
 その日は、喜子の修学旅行の出発日でもあった。クラス内で孤立してしまっている喜子はなかなか寝床から出ようとせず、できることならこのまま家にいたいと思っている。起こしに来た布美枝の背後から、茂が騒いでいる声が聞こえてくる。いつもは寝坊の茂が、朝早くから起きていることが喜子には不思議だった。布美枝は、茂も張り切って頑張っているのだから、喜子も頑張れと発破をかけて送り出した。
 茂は、子供たちと川遊びをしながら河童の話をした。最初は半信半疑だった子供たちもだんだんと興が乗ってきて、自分が聞いた妖怪の話を披露し始める。彼らと触れ合うことで、茂はますます元気を取り戻してきた。

 その時、茂は藪の向こうにただならぬ雰囲気を感じた。その方向に行ってみると、川に妖怪「あずきあらい」を見つけた。
 泊まる予定を急遽キャンセルし、茂は家に帰って来るなり、時分が見たものを楽しそうに布美枝に報告するのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第136回

 明日はゲゲゲ仕事をしてから(本来の)仕事に行くか、(本来の)仕事に行ってからゲゲゲ仕事をするか迷っている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第136回めの放送を見ましたよ。

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「妖怪はどこへ消えた?」

 直接話したわけでもないのに、茂の両親(風間杜夫、竹下景子)は茂(向井理)の不調に気づいた。ふたりは別々に、布美枝(松下奈緒)に対してアドバイスをした。
 義母の絹代は、気を抜くと人はダメになるという。忙しい時こそ人は張り合いを感じて生き生きとするが、仕事がなくなると一気に萎んで危険な状態になる。だから、茂には栄養のあるものをどんどん食べさせて元気づけるのが良いと言う。
 一方、義父の修平は真逆の助言をする。茂が売れっ子になったことこそ異常なことであり、今は休息が必要な時だと言う。茂はそもそも絵を描くことが好きな人間だから、のんびりやれば良いのだ、と。
 どちらの意見が正しいのか判断のつかない布美枝であったが、両親が各々の方法で気遣ってくれるのがとても嬉しかった。

 喜子(荒井萌)は中学校でますます孤立していた。修学旅行のしおりの表紙を作る係になり、古都・京都にちなんだ妖怪を多数配置したイラストを描いたところ、同級生たちにひどく馬鹿にされた。さらには、感性がズレている、一緒に修学旅行に行きたくないなどと陰口を言われているのを聞いてしまい、深く傷ついた。

 神社の境内で落ち込んでいた喜子は、偶然に茂と出くわした。父の前では明るく振舞おうとし、妖怪の話をするよう茂にせがんだ。茂は文明化された世の中をさし、日没後も電灯で明るいせいで妖怪たちは登場のタイミングが分からなくなっているのだ、妖怪の住みにくい世の中になったと言った。
 それを引き取った喜子は、妖怪の住みにくい世の中は、人間にとっても住みにくい世の中なのだろうとつぶやいた。茂は娘の異変に気づいたが、それ以上は何も言わず、優しく静かに語らいを続けるのだった。

 ふたりが家に帰ると、戌井(梶原善)が茂を待っていた。戌井は、再度漫画文庫の出版をする計画があり、茂に協力を求めに来たのだ。
 戌井の妻(馬渕英俚可)は苦しい経営状況の中、経費を削減し、漫画文庫出版の費用を捻出した。彼女は、元気のなかった戌井に予算表を叩きつけ、夫を激しく鼓舞したのだ。そしてついに、戌井もその気になった。
 貸本漫画時代の茂の漫画を復刻させる計画であるという。戌井によれば、当時の茂の漫画は熱いのだという。力強い画、面白いストーリー、眼に見えないものを見せる表現力、どれをとっても一流のできだという。それを現代に蘇らせたいのだ。

 しかし、茂はあまり乗り気ではなかった。出版するのは戌井の勝手だが、「水木しげる」の名では本は売れずに失敗すると言うのだ。最近の自分は、漫画の注文が皆無になるほど人気が凋落していると自嘲した。

 その点は戌井も気になっており、最近の茂の漫画は物足りないとハッキリ告げた。
 しかし、茂の将来は明るいと信じていると付け足した。茂は売れない時代にも努力して力作を描き続けた。そしてついに大成功を掴んだ。茂の漫画は本物であり、不死身である。いつか再び突破口が開けると、本心から励ますのだった。

 その言葉に茂は活力を取り戻した。まずは、自分の古い漫画を読み返し、自分が見失ったものを見つけようとし始めるのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第135回

 出張先で80-90年代アイドルの話で1時間以上も盛り上がってしまった当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第135回めの放送を見ましたよ。

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「妖怪はどこへ消えた?」

 一切仕事がなくなったのと歩調を合わせるように、茂(向井理)はかつてないほどの大きな鬱状態に陥った。
 大事にしていた民芸品をガラクタだと言って見放してしまったり、この先収入が一切なくなるかもしれないと弱音を吐いたりしている。ついには、妖怪など本当は存在していないとまで言い出す始末だった。

 茂は時代が変わったと思っている。子供たちはロボットに夢中で、大人たちは金儲けにしか興味がない。鬼太郎のような妖怪物は受けないと思い込んでいる。一方、茂の貧乏時代の自伝漫画の注文は来ている。豊かになった現代、貧しかった日本を懐かしむ機運が高まっているようだ。しかし、その仕事にも茂は乗り気になれない。

 ここまで落ち込んだ茂を見るのは、布美枝(松下奈緒)も初めてのことだった。娘たちも動揺しはじめている。特に喜子(荒井萌)は、茂から妖怪はいないとハッキリ聞かされ、ショックを受けた。

 茂はこれまで何度も窮地を脱してきた。布美枝はそれを信じて見守ることしかできなかった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第134回

 某美人人妻のblogを読んで「えぇー!『ゲゲゲの女房』は YouTube で見れるのぉ!」と驚きの声をあげつつ、決して彼女を非難するわけではなく、「自分はNHKオンデマンドで正直に見よう。たった105円で良心の呵責と戦いたくはない」となんとなく弱々しい声を吐いた当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第134回めの放送を見ましたよ。

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「妖怪はどこへ消えた?」

 布美枝(松下奈緒)は、商店街の喫茶店で戌井の妻(馬渕英俚可)に会った。今日はテレビの取材で自宅は慌ただしいので、外で会うことにしたのだ。
 現在、戌井(梶原善)とその妻は千葉に住んでおり、4年ぶりの再会だった。戌井が手がけていた漫画出版事業は失敗した。今は名刺やチラシなどの印刷で生計を立てている。漫画出版でうまくいかなかったことに大ショックを受け、一時は漫画を全く読まないほど気落ちしていたという。しかし、最近は元気を取り戻し、少しずつ漫画も読んでいるという。やはり、漫画を読んでいる時の戌井が一番生々していると、妻は言う。

 戌井の妻は、戌井が気になることを言っていたという。最近の水木漫画は何かが物足りないという。布美枝は、確かに原稿の注文が減っていることを認めたが、特に変わった様子はないと告げた。

 その頃茂は、(向井理)は自宅でテレビ取材を受けていた。漫画の注文はなくなってしまったが、妖怪の専門家としてマスコミに取り上げられているのだ。
 取材では、人々に利益をもたらす妖怪について話すよう頼まれる。しかし茂は、それは妖怪の本来の姿ではないと言い切る。妖怪とはそこにある気配のようなもので、必ずしも利益の象徴ではないのだという。

 取材を終えたテレビスタッフは、帰りの道中で茂の考え方が時代遅れだと、ひとしきり愚痴った。視聴者は、自分の得になる情報を求めているのに、茂の談話はそれから外れており、ほとんど使い物にならないと言い切ったのだ。
 布美枝は、自宅に帰る途中で、彼らの陰口を偶然聞いてしまった。

 布美枝が家に帰ると、茂は今日の取材について話し始めた。布美枝は世間の人々は妖怪のことを誤解している、正しい情報を伝えるべきだ、と主張した。しかし、茂は、人々の求めるものに迎合する必要もあるのだと力なく答えた。

 そして、茂への漫画の注文は完全になくなった。

 何もすることがない茂は、自宅の民芸品を整理していた。ところが突然、大切にしていた民芸品をさして、それらは全て何の価値もないガラクタだと言い始めるのだった。
 家族は困惑した。

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NHK『ゲゲゲの女房』第133回

 NHKオンデマンドを初めて利用した当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第133回めの放送を見ましたよ(見逃し番組 105円)。

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「妖怪はどこへ消えた?」

 昭和56年4月。藍子(青谷優衣)は大学1年生、喜子(荒井萌)は中学3年生になっていた。

 喜子は茂(向井理)の気質を強く引き継いでいた。朝寝坊しながらも、朝食だけは必ず食べてから学校に行く。遅刻などへっちゃらなのだ。
 周りの友達たちはアイドルに興味津々なのだが、喜子だけは妖怪や魔法といった不思議なものにしか興味がない。クラスでも一人で妖怪の本を眺めてニタニタ笑っている。同級生から浮いた存在になっていたが、本人は少しも気にする素振りがなかった。

 茂が人気漫画家になって15年ほど経っていた。茂は相変わらず仕事に没頭する日々を過ごしていた。
 しかし、最近になって仕事が激減した。水木プロ始まって以来の仕事の無さであるが、理由はわからない。マネージャーを務める茂の弟・光男(永岡佑)は少々心配になり、茂や布美枝(松下奈緒)に相談するが、彼らはそのうち仕事も増えるだろうと、あまり真剣に取り合わなかった。
 翌月以降の仕事の予定が白紙であるのだが、光男はそのことを言い出せなくなってしまった。

 茂は仕事のないことを謳歌していた。大好きな南方民芸品を喜子と一緒になって整理していた。平日に茂が仕事をしていない姿は珍しく、喜子も楽しんだ。
 その時、喜子は民芸品の影から何か黒い物が飛び去るのを見た。

 その後、仕事場に置きっぱなしになっていた光男のスケジュール帳を見てしまった。茂は、先の仕事が一つもないことを知った。

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NHK『ゲゲゲの女房』第132回

 某知人(♂)から、3年間交際している女性と結婚すべきかどうか悩んでいると相談を受けたのだけれど、「36歳にもなって独身の俺にそんなこと聞くなよ。ていうか何か、それは俺に対する皮肉か?」と心の中で思いつつ、同時に「いや、もしかして彼は結婚などしたくはないので、36歳にもなって独身の俺に結婚しないよう言って欲しいのか?」ということも考えたりしたのだが、結局
「とりあえず、結婚してみりゃいいんじゃねーの?イヤになったら離婚すりゃいいんだし。相手も専業主婦になるつもりはないんでしょ?仕事している人なら経済的に過度に依存することもないから、離婚も比較的簡単かもよ」
と身も蓋もなさそうなアドバイスをしてしまったのだが、そのことが今読んでいる山本文緒・伊藤理佐『ひとり上手な結婚』と関係あるのかないのか、よくわからない当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第132回めの放送を見ましたよ。

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「おかあちゃんの家出」

 現在は千葉に住んでいるが、以前は商店街で貸本漫画屋を開き、布美枝(松下奈緒)の良き相談相手でもあった美智子(松坂慶子)が調布にやって来た。深大寺にある息子の墓を千葉に移すことに決めたのだという。その途中で、布美枝に会いに来てくれた。
 親しい人との再会で、布美枝はますます明るくなった。弟・貴司(星野源)の急逝以来ふさぎ込んでいたのが嘘のようによく笑った。

 一方で布美枝は、貧乏時代のことを懐かしく思うと打ち明けた。それに比べて、最近は生活に張り合いがないと言うのだ。美智子は、布美枝の誤解をやんわりと指摘する。布美枝が懐かしいのは貧乏生活ではなく、一生懸命頑張った時間であるのだろうと。そして、現在でも子育てなどに奮闘している。将来にはきっと、今のことも懐かしく思い出せる時が来ると予言するのだった。茂(向井理)の仕事が忙しくてすれ違いになる事情は察するが、そのことで茂本人を見失ってはいけないと、美智子は加えてアドバイスをした。

 話は、貴司のことに及んだ。それに対して美智子は、人は死んでもいなくなるわけではない、目には見えないが近くで見守ってくれていると話す。それは、布美枝の祖母(野際陽子)や茂がいつも言っていたことと同じであった。それを思い出して、布美枝の心は平穏を取り戻した。

 茂は過労から回復し、順調に仕事をこなしていた。茂が倒れたとき、古株アシスタントの菅井(柄本佑)がみんなを奮い立たせて、危機を乗り切った。彼の漫画の技術はまだ半人前だが、リーダーシップについては一人前以上であると茂は褒めるのだった。

 その夜、一人仕事部屋に篭っていた茂は、布美枝からもらった手紙をもう一度見直していた。自分の体を気遣った内容を読み返し、仕事に対する取り組み方を変える必要があると決意した。

 朝食を摂りながら、茂は布美枝に自分の決意を明かす。今後は仕事の量を大幅に減らすという。収入が減るので楽はできなくなるが、人間らしいのんびりとした生活に切り替える。仕事は1日3時間に制限し、それ以外の時間は楽しく談笑して過ごすのだという。

 布美枝は、茂が仕事せずにいられるわけがないと笑い飛ばすのだが、心底嬉しそうだった。

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