NHK『ゲゲゲの女房』第144回

 おかげさまで食あたりの件は、お粥をたっぷりと食べたり、コーラを少し飲んだり、散髪に行ったりする程度には回復してきた当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第144回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 少し具合の良い修平(風間杜夫)は、布美枝(松下奈緒)と話をしている。
 修平のおじは、絵かきをしていたが30歳くらいのころパリで夭折した。奇妙なことに、彼が亡くなった日に茂(向井理)が生まれた。修平は、茂こそおじの生まれ変わりではないかと考えている。絵の才能を引き継いだ証拠に、今は立派な漫画家になっていると言うのだった。

 布美枝が茶の用意をしている間に、修平は再び寝入ってしまった。

 修平は夢を見ていた。広い映画館の中に、自分ひとりだけが座っている。「第三丸の爆発」という題の無声映画が始まったのだが、活動弁士は若い頃の修平自身であった。映画の主人公も修平で、前半は自分自身の半生記であった。東京の大学に通ったのに映画や演劇に熱中したこと、境港に映画館を作ったこと、いつ書き上がるともしれないシナリオを書き続けている姿などが映し出された。いよいよ「第三丸の爆発」の本編が始まろうかというとき、”The end” という字幕と共に映画は終わってしまった。
 修平があっけに取られていると、場内が騒がしくなった。さっきまで無人だったはずの映画館は、いつの間にか満席になっており、割れんばかりの拍手が送られていた。見渡すと、修平の両親、パリで亡くなったおじ、旧知の活動弁士・一学(鈴木綜馬)など、古くに死に別れた人々ばかりがそこにいた。

 「なんだ、もう終わりか。あー、面白かったなぁ」
そうつぶやくと、修平は映画館の座席で眠り込んでしまった。

 数日後、修平は眠ったまま息を引き取った。

 修平の亡骸を前に、絹代(松下奈緒)が最初にしたことは隠していた香水の瓶を持ってくることだった。修平はこの香りが好きだったと言いながら、絹代は遺体にたっぷりと香水を振りかけた。家族はその行動の理由がわからなかった。しかし、その香水は、修平が川西一学の孫娘(入山法子)と出かける時にも使っていたもので、真相を知らなかった絹代が嫉妬して隠してしまっていたものだった。好きなだけ使わせてやれば良かったと、謝りながら何度も何度も香水を振りかけた。

 初七日の法要も終わった頃、絹代は茂に修平の形見を見せた。修平がシナリオ執筆に使用していた万年筆を茂に持っているよう命じた。その万年筆は、パリで亡くなった絵描きのおじからもらったものだという。修平はそのペンで傑作シナリをを書くと息巻いており、絹代も期待するところがあったのに、結局できなかったと寂しそうに言った。
 修平は茂がおじの生まれ変わりだと言っていたが、絹代は口では否定していた。しかし、絹代もそれはあながち間違いでもないと思うところもある。生まれ変わりの茂こそが、おじのペンを持つにふさわしいと考えているのだ。村井家の芸術の血筋を、おじ、修平を経て茂に伝えていくことこそ、修平の願いであると言うのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第143回

 どうやら一昨日食べた刺身にあたったのではないかと思われ、ゴジラの放射熱線のようにザ・プレミアムカルピス2本分を豪快に吐き戻したりして、各方面にはご迷惑やご心配をおかけしている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第143回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 修平(風間杜夫)の体調は悪く、床に伏せてばかりいる。それでも、少しでも調子の良い日は映画シナリオの続きを書いたりしている。

 この日、茂(向井理)と布美枝(松下奈緒)は仲人として、アシスタント相沢(中林大樹)の結婚式に出かけていた。藍子(青谷優衣)は教員採用試験で留守。絹代(竹下景子)は買い物に出かけていた。
 家に一人残った喜子(荒井萌)が修平のそばについていた。

 喜子は高校卒業後の進路について、修平に相談してみた。祖父・修平は文章を書くのが得意で、父・茂は絵を描く才能に恵まれている。しかし、自分はそのどちらも苦手であり、しいて親の血を引き継いでいる点を挙げれば、朝寝坊だけであると自嘲する。
 修平は、人の一生はどんなにうまくいったとしてもたかが知れており、まるで流れていく雲のようなものだ。だから好きなことをやればいいとアドバイスする。ただし、修平は人生を雲に喩えたことに対して、自分に酔っているに過ぎなかった。そのため、喜子は役に立たない助言だと思っていた。

 結婚式から茂らが帰って来た。下戸の茂であったが、仲人の立場上、客から勧められる酒を断ることができなかった。そのため、完全に酔っ払ってダウンしてしまっていた。布美枝は、義父母にそのことを報告しながら、まるで自分たちの結婚式の時のようだと話した。茂と布美枝の結婚式でも、茂は勧められるがままに酒を飲んで、式場で倒れてしまったのだ。
 布美枝の結婚式では、茂が豪快に放屁した。それを受けて、修平が屁の講釈をした。そんなことを懐かしく話し合っていた。屁から連想して、修平は「人生とは屁である」と言い出した。大きな音を出して飛び出すが、あっという間に消えて無くなるという意だという。人に笑われたりして、取るに足らないつまらないものだが、それでもやはり面白い。それが屁であり、人生であるという。

 昭和59年10月になった。
 最近の修平は、シナリオを書く事もほとんどなく、1日じゅう寝てばかりいる。
 茂が本人から聞いたところによると、修平は自分の遺骨は境港の墓に入れて欲しいと言っているらしい。調布の茂のもとに身を寄せて20年になるが、やはり故郷は懐かしく、死後はそこに戻りたいと思っているのだ。

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NHK『ゲゲゲの女房』第142回

 夜は涼しくなり、窓を開けて寝ていたら体調を悪くした当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第142回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 喫茶店で倒れた修平(風間杜夫)は、居合わせたアシスタントらに付き添われて帰ってきた。修平は血圧を下げる薬を飲み過ぎて貧血を起こしたようだ。医者の往診を受け、彼の体調は落ち着いた。
 問題は、修平と一緒に若い女までが家に来てしまったことだ。

 彼女は、以前に茂(向井理)に会いに来た劇団員の一人、川西志穂(入山法子)だった。彼女は、自分が修平を映画に誘って連れ回したせいで大変なことになったと詫びた。以前、銀座の歌舞伎座に連れて行ってもらったお礼をしたかったのだという。

 実は、修平と志穂には奇妙な縁があったのだ。志穂の祖父・川西一学(鈴木綜馬)は、活動弁士(サイレント映画のセリフや状況説明をする職)だった。修平が運営していた境港キネマで働いたことがあり、修平と親しかった。
 志穂は祖父から修平の話をよく聞いていたという。先日、村井プロダクションを訪問し修平に会った時には気付かなかったが、後で考えてみれば祖父の親友であると思い至ったのだ。それで手紙を書き、実際に会って話を聞くようになったというのだ。

 志穂の祖父・一学はすでに亡くなったが、生前には修平が書いていた映画シナリオの続きをずっと気にしていたという。境港で第三丸という船が爆発したことを題材にしたシナリオだが、爆発事故の前で筆が止まっていたという。志穂もその続きを聞きたくなったというのが、修平に会う動機だった。

 話を聞いていた絹代(竹下景子)も昔のことが懐かしくなってきた。もちろん、一学のこともよく覚えていて、修平とふたりで夜遅くまで映画の話をしていたことなどを志穂に聞かせてやった。映画館が潰れ、戦争のゴタゴタなどもあり、一学と音信不通になってしまったことは、絹代も悔やんでいたのだ。
 修平の浮気疑惑が晴れたことと、旧知の孫に会えたことで、絹代はいっぺんに機嫌が良くなった。

 修平が志穂と出かけていたことを知らなかったはずの絹代が、近頃どうして不機嫌だったのか茂は理由がわからないままだった。一方で布美枝は、絹代が修平が女性と出かけていることに気づいていたのではないか、そのせいでヤキモチを焼いていたのではないかと、女の勘で気付くのだった。
 しかし、茂や布美枝(松下奈緒)は、やましいことがないのに、修平が志穂とのことを隠していた理由がさっぱりわからなかった。

 修平は、隠していた理由を絹代にだけ白状した。志穂と会ったことで、書きかけのシナリオを完成させる気になった。しかし、また挫折してしまうかもしれない。再開し、また途中で投げ出したと知られてしまってはきまりが悪い。だから、みんなには黙っていたのだという。
 一方で、絹代が妬いていたと気づいた修平は、彼女のことをからかう。それを認めたくない絹代は落ち着きをなくし、話題を変えようとキョロキョロする。シナリオ原稿の入った手提げ鞄をベッドの修平に押し付け、今度はしっかり書き上げるようにと発破をかける。そして、完成したものを読むのが楽しみだと付け足した。

 昭和57年7月になった。
 藍子の教員採用一次試験の日である。茂はいまだに藍子(菊池和澄)が教師になることに賛成していない。しかし、何も口出ししないのは、教員採用試験の倍率を考えれば藍子が合格するはずはないと思っているかららしい。
 喜子(松本春姫)によれば、藍子は夜遅くまで勉強していて、相当真剣に取り組んでいるらしい。そんな姉の様子を見て、喜子も自分の進路について、少しだけ真剣に考え始めるのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第141回

 知人R氏と神宮丸太町付近で会った時、「京阪の駅の自販機で、炭酸入りのアクエリアスを見た」(確か、東福寺駅だったと思う)と言うので、そんなのあるわけ無いじゃん、白昼夢でも見たんじゃないの?と馬鹿にしたところ「やっぱりあるっしょ」とメールで商品情報のURLを送り付けられて降参するよりなかった当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第141回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 修平(風間杜夫)が女性と銀座を歩いていたという話を持ち込んだ浦木(杉浦太陽)はきつく口止めをされた。しかし、なかなか帰らず、家の中で一人でブツブツ言っていたところを絹代(竹下景子)に捕まってしまった。そして、全て白状させられた。

 その日は、村井家の3世代が揃って食事をする約束になっていた。上機嫌の修平に対して、絹代は不機嫌なままだ。布美枝(松下奈緒)は絹代の様子がおかしいことに気づくが、絹代が修平の秘密を知ってしまったことは知らなかった。

 場の雰囲気を変えようと、布美枝は娘たちの進路に話題を変えた。次女の喜子(荒井萌)は、とりあえず短大志望ということにしたようだ。

 一方の藍子(青谷優衣)は教師になりたいという。すでに教員採用試験の準備も始めているという。
 家族には初耳だった。茂は急に怒り出す。自分の会社の手伝いをさせたいと考えていたこともあるし、なによりも、今まで何の相談もなく黙っていたことが許せなかった。
 絹代の不機嫌さと茂の怒りで、その日の夕食は惨めなものになった。

 数日後。またしても修平がめかし込んで出かけようとしていた。ヤキモチを焼いた絹代が香水を隠してしまったために、ふたりは激しい言い争いになる。その様子から、布美枝は浦木が秘密を漏らしてしまったのではないかと疑い始めた。

 アシスタントの相沢(中林大樹)が近々結婚式を挙げる。仲人を務める茂と布美枝は、相沢から式次第の説明を受けていた。相沢の妻となる女性は、専門学校の事務員をしているという。本来は教員志望だったのだが、教師は転勤が多く、夫婦が一緒に暮らせなくなるおそれもあるので事務員になったという。それに、教師の初任地は僻地になることが多く、それを嫌った部分もあるという。

 教師が僻地に赴任させられると聞いて、茂は藍子のことを思った。茂は彼女を手放したくないのだ。僻地に行って、そこで結婚でもしたら、調布には二度と帰ってこないのではないかと狼狽した。
 さらには、藍子の進路問題について落ち着き払っている布美枝の態度も気に入らない。その様子を見て、布美枝だけは以前から相談を受けていたのではないか、自分だけが蚊帳の外だったのではないかと、布美枝に食ってかかった。布美枝も珍しく対抗し、ふたりは夫婦喧嘩を始めてしまい、口を聞かなくなった。

 相沢は先輩アシスタントの菅井(柄本佑)と連れ立って喫茶店に来た。相沢は結婚生活に希望を持っていたはずなのに、茂ら夫婦の様子を見て自分の将来を不安視してしまった。

 質屋の主人(徳井優)が、修平の噂をアシスタントたちの耳に入れた。ちょうどその時、修平が女性同伴で喫茶店に現われた。
 まずい場に来てしまったと慌て、説明をしようとした瞬間、修平はめまいを覚え、その場に倒れてしまった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第140回

 昨日のまとめ記事にはメモ書きがそのまま残り、意味不明な箇所があったことについさっき気づき、赤面しながら修正した当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第140回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 警察に保護されていた絹代(竹下景子)が帰宅した。店の前に座り込んで邪魔になっていた若者たちを叱りつけ、杖を振り回したところ相手に軽いけがを負わせたという。相手にも非があり、絹代の歳も勘案し、事件にはせずに済ませてくれた。
 絹代は「悪いことを悪いと言わないから、世の中はおかしなことになっている」と主張し、家族は同意しかける。

 しかし、修平(風間杜夫)が横槍を入れたせいで、絹代はますます興奮し始めた。若い頃の修平の失敗談を次々に挙げ連ねるのだった。強盗警戒の宿直中に恐ろしくなって逃げ帰り銀行をクビになったこと、難解な外国映画ばかりかけたために映画館の経営に失敗したこと、腕白な3人の息子を絹代一人に任せて大阪へ単身赴任に行ったことなど。
 ついに修平は、絹代との結婚は失敗だったと言ってしまった。東京に暮らしていた当時、下宿屋の娘との婚姻話もあったのだが、実家の家族の誤解によって絹代と結婚することになってしまった。それを後悔しているというのだ。
 ふたりは家の中で冷戦状態になった。

 喜子(松本春姫)は、高校卒業後の進路についてまだ悩んでいた。藍子(青谷優衣)に相談を持ちかけてみたものの、藍子は自分の勉強に忙しくてまともに話を聞いてくれなかった。
 茂(向井理)の仕事は再び忙しくなりそうな気配だ。プロダクションの仕事も弟の光男(永岡佑)ひとりでは手に負えなくなりつつある。大学を卒業したら藍子に会社を手伝わせてはどうかと、布美枝(松下奈緒)に相談する。布美枝もいい考えだと賛成した。

 数日後、修平に誰かから手紙が来た。その直後から、修平は人が変わったように元気になった。めかし込んで銀座の歌舞伎座に芝居を見に行ったり、喫茶店では周囲に自分は死なないような気がしてきたと話すほどである。絹代も、オーデコロンが急に減っているのを見つけていぶかしく思った。

 修平が芝居を見に行った日、浦木(杉浦太陽)が久しぶりにやって来た。広告代理店の事務所を銀座・歌舞伎座の裏に構えたのだという。ただし、雑居ビルの地下倉庫の片隅を借りたというのが真相ではあったが。
 そんな浦木が、銀座で修平を目撃したという。しかも、絹代ではない妙齢の女性と親しげに歩いており、ただならぬ様子であったという。

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NHK『ゲゲゲの女房』第139回

 先日、「カバンの薄さは、知能の薄さ: 80年代後半~90年代前半を回顧するブログ」を読んだものの、自分も周囲も革の鞄を使っていなかったのであまりピンとこなかった当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第139回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 昭和59年4月。茂(向井理)の初期作品の復刻出版計画が持ち上がるなど、仕事は再び順調になりはじめていた。

 茂の父・修平(風間杜夫)の様子がおかしい。首に原因不明の瘤ができ、眠ったまま起きなくなってしまった。茂は南方民芸人形を掲げて神頼みを行った。すると修平は目を覚ました。修平が言うには、夢のなかに茂の民芸人形が現れて救ってくれたという。
 修平や家族は日常生活に戻ったが、修平は元気がなく、ずいぶんと弱ってしまっていた。

 ある日、小劇団の劇団員がプロダクションを訪ねてきた。『悪魔くん』をモチーフにした芝居を行うのだという。
 芝居好きの修平は、呼ばれもしないのに話に首を突っ込んだ。戦前の芝居業界の様子や、自分のおじが俳優だったことなどを披露するが、若い劇団員たちにはピンとこない話ばかりだった。

 布美枝(松下奈緒)は、修平が茂の著した『あの世の辞典』を眺めているのを見つけた。修平は自分の昔話が今の若者達に伝わらないのが寂しいという。あの世に行ったら、昔の知り合い達と昔話に華が咲くのにと言う。俳優だったおじは、修平と年も近かったが、30歳ほどで夭折したという。布美枝は、修平が死ぬにはまだ早過ぎると、通りいっぺんの励ましをするしかなかった。

 この年、藍子(青谷優衣)は大学4年、喜子(荒井萌)は高校3年生になっていた。ふたりとも次の進路を考えなければならない時期になっていたが、布美枝は本人たちの好きにすればよいとのんびり構えている。
 しかし、喜子は自分が何をしたいのか、もしくは、すべきなのかわからずに困っていた。獣医への漠然とした憧れはあるが、数学ができないので獣医学部の入試に合格しそうにないというのだ。

 交番から電話があって、呼び出された。絹代(竹下景子)が保護されたので、迎えに来て欲しいというのだ。布美枝と喜子はすぐさま駆けつけた。

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NHK『ゲゲゲの女房』第138回

 1週間ぶりにいつものペースを取り戻した当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第138回めの放送を見ましたよ。

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「妖怪はどこへ消えた?」

 茂は(向井理)、川で「小豆洗い」(声: 泉谷しげる)に会った様子を布美枝(松下奈緒)に詳しく聞かせた。
 小豆洗いが言うには、妖怪は人を驚かせることが商売なのに、最近は誰も存在に気づかない。このままでは、人々に忘れ去られ、消えてしまう。茂を見込んだ小豆洗いは、妖怪のことを絵に描くよう命じると姿を消した。

 茂は妖怪事典を作りたいと布美枝に相談した。仕事の注文がなくて苦しい時に、出版の見通しのない仕事を始めてよいものかどうか、意見を聞きたかったのだ。
 布美枝は文句を言うでもなく、茂の計画に賛成した。それどころか、日本の妖怪だけではなく、世界中の妖怪を全て書き終わるまで続けるべきだと、背中を押して応援するのだった。
 茂はついにスランプを脱した。

 喜子(荒井萌)が修学旅行から帰って来た。彼女は同室のクラスメイトと一緒に、障子にたくさんの目が浮かび上がるのを見たという。茂によれば、それは妖怪「目目連」だという。茂がイラストを描いたところ、喜子が見たものと一致していた。
 喜子は、早速クラスメイトにも教えてやるのだと明るく話している。彼女は、修学旅行で少しだけ友達たちと仲良くなれたようだ。

 茂や喜子の様子を見た藍子(青谷優衣)は、ふたりは家の雰囲気を良くするために、自然に口裏を合わせているのではないかと布美枝に耳打ちする。布美枝も本当のところはわからないと言いつつも、妖怪が彼らに前向きに生きる力を与えてくれたのだろうと信じるのだった。

 茂はプロダクションのスタッフを集めて、妖怪事典の制作を発表した。まともに注文もなく、プロダクションの経営も危険な時期にそのような仕事をやって大丈夫かと、スタッフ達は動揺する。しかし茂は、このような時だからこそ丁寧な仕事を行い、納得が行くまで打ち込めるとみんなを説き伏せた。
 どんなに苦しくなっても、仲間を見捨てることはないと約束し、プロダクション一丸となって妖怪事典の制作に取り組んだ。

 夜遅く、茂は久しぶりに民芸品の片付けを再開した。そこに布美枝が現われたのを捕まえて、茂は今後の方針を話した。
 妖怪辞典を作るかたわら、以前から断り続けていた自伝漫画を描くことに決めたという。プロダクションを支えていくためには妖怪漫画だでは無理であり、他のジャンルも必要だと割り切ったのだ。その第一歩として自分の貧乏生活を描く。それにあたっては、布美枝のことも赤裸々に描く必要があるが、それで良いかと訪ねた。
 布美枝は、もちろん構わないと答えた。

 その秋、『水木しげるの妖怪事典』が出版された。茂は活躍の場を大きく広げた。

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NHK『ゲゲゲの女房』第137回

 南明奈のことを「胸が小さい」の代名詞としている(参考)当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第136回めの放送を見ましたよ。

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「妖怪はどこへ消えた?」

 河合はるこ(南明奈)が村井家を訪ねてきた。彼女は少女漫画家を目指して状況したが失敗し、田舎に帰っていった過去がある(第89回参照)。その後、教員になるべく何年も努力を続け、やっと春から本採用の小学校教師になれたという。
 漫画の道は挫折したが、本質的な部分で教師も漫画家も変わるところがないとはるこは考えている。漫画を描くか、授業をするかの違いはあるが、世の中の面白いことを表現し伝えることに違いはないのだという。そのはるこの表情は、活き活きとしていた。
 また、今の自分があるのは茂(向井理)のおかげだという。挫けそうになるたびに、茂の「漫画家魂」という言葉を思い出して自分を励ました。真剣に漫画に打ち込んだ姿勢は、将来何かの形で実を結ぶ、それが言葉の意味だ。

 順風満帆に見えるはるこの教員生活だが、心を痛めている問題もあるという。子供同士での揉め事が起きて、胃潰瘍になる者まで出てしまった。子供たちをのびのびさせるにはどうすればいいか悩んでいる。
 そこで、子供たちに楽しい話をしてやって欲しいと茂に頼み込んだ。教室に閉じ込めて点取り競争させるのではなく、山や川で好きなように遊ばせたい。そこに茂にも来てもらって、河童や妖怪など、怖いけれど面白い話を聞かせてやりたいというのだ。
 そのアイディアに賛成はするものの、茂は自分が出ていって話をすることにはあまり乗り気になれなかった。

 帰り際、はるこは布美枝(松下奈緒)にだけこっそり打ち明けた。茂には妖怪の話だけではなく、「漫画家魂」の話もしてやって欲しい。自分はその言葉に何度も勇気づけられた。子供たちもそうなるに違いないと考えているのだ。

 はるこが帰った後、布美枝は茂が子供たちに話をすることを勧める。茂は、今時の子供は河童などの話に興味はないだろうと、はじめから諦めている。開発が進んで環境が変わってしまったせいで、雰囲気のある川も存在していない。子供たちにピンとくるはずがないというのだ。

 布美枝は、環境が変わってしまっても河童いる。川の底でじっと呼んでくれるのを待っている。茂が出かけていって呼びかけるべきではないかとほのめかす。
 さらに、河童の住みにくい世の中は、人間にとっても住みにくい世の中ではないかと茂に問いかける。その言葉は、奇しくも、学校生活に馴染めない喜子(荒井萌)が茂へ間接的に悩みを打ち明けた時と同じものだった。

 そこで茂は悟った。自分自身が「漫画家魂」をなくしていた。売れるかどうかの点取り競争にはまり込んでしまって、漫画を描く楽しさや、眼に見えない妖怪たちの存在を見失っていた。
 河童や妖怪はもちろんだが、子供たちの住みにくい世の中は良くない。それを再認識した茂は、はるこの教え子たちに話をしてやることに決めた。

 そして、茂が子供たちに会いにいく日。
 その日は、喜子の修学旅行の出発日でもあった。クラス内で孤立してしまっている喜子はなかなか寝床から出ようとせず、できることならこのまま家にいたいと思っている。起こしに来た布美枝の背後から、茂が騒いでいる声が聞こえてくる。いつもは寝坊の茂が、朝早くから起きていることが喜子には不思議だった。布美枝は、茂も張り切って頑張っているのだから、喜子も頑張れと発破をかけて送り出した。
 茂は、子供たちと川遊びをしながら河童の話をした。最初は半信半疑だった子供たちもだんだんと興が乗ってきて、自分が聞いた妖怪の話を披露し始める。彼らと触れ合うことで、茂はますます元気を取り戻してきた。

 その時、茂は藪の向こうにただならぬ雰囲気を感じた。その方向に行ってみると、川に妖怪「あずきあらい」を見つけた。
 泊まる予定を急遽キャンセルし、茂は家に帰って来るなり、時分が見たものを楽しそうに布美枝に報告するのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第136回

 明日はゲゲゲ仕事をしてから(本来の)仕事に行くか、(本来の)仕事に行ってからゲゲゲ仕事をするか迷っている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第136回めの放送を見ましたよ。

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「妖怪はどこへ消えた?」

 直接話したわけでもないのに、茂の両親(風間杜夫、竹下景子)は茂(向井理)の不調に気づいた。ふたりは別々に、布美枝(松下奈緒)に対してアドバイスをした。
 義母の絹代は、気を抜くと人はダメになるという。忙しい時こそ人は張り合いを感じて生き生きとするが、仕事がなくなると一気に萎んで危険な状態になる。だから、茂には栄養のあるものをどんどん食べさせて元気づけるのが良いと言う。
 一方、義父の修平は真逆の助言をする。茂が売れっ子になったことこそ異常なことであり、今は休息が必要な時だと言う。茂はそもそも絵を描くことが好きな人間だから、のんびりやれば良いのだ、と。
 どちらの意見が正しいのか判断のつかない布美枝であったが、両親が各々の方法で気遣ってくれるのがとても嬉しかった。

 喜子(荒井萌)は中学校でますます孤立していた。修学旅行のしおりの表紙を作る係になり、古都・京都にちなんだ妖怪を多数配置したイラストを描いたところ、同級生たちにひどく馬鹿にされた。さらには、感性がズレている、一緒に修学旅行に行きたくないなどと陰口を言われているのを聞いてしまい、深く傷ついた。

 神社の境内で落ち込んでいた喜子は、偶然に茂と出くわした。父の前では明るく振舞おうとし、妖怪の話をするよう茂にせがんだ。茂は文明化された世の中をさし、日没後も電灯で明るいせいで妖怪たちは登場のタイミングが分からなくなっているのだ、妖怪の住みにくい世の中になったと言った。
 それを引き取った喜子は、妖怪の住みにくい世の中は、人間にとっても住みにくい世の中なのだろうとつぶやいた。茂は娘の異変に気づいたが、それ以上は何も言わず、優しく静かに語らいを続けるのだった。

 ふたりが家に帰ると、戌井(梶原善)が茂を待っていた。戌井は、再度漫画文庫の出版をする計画があり、茂に協力を求めに来たのだ。
 戌井の妻(馬渕英俚可)は苦しい経営状況の中、経費を削減し、漫画文庫出版の費用を捻出した。彼女は、元気のなかった戌井に予算表を叩きつけ、夫を激しく鼓舞したのだ。そしてついに、戌井もその気になった。
 貸本漫画時代の茂の漫画を復刻させる計画であるという。戌井によれば、当時の茂の漫画は熱いのだという。力強い画、面白いストーリー、眼に見えないものを見せる表現力、どれをとっても一流のできだという。それを現代に蘇らせたいのだ。

 しかし、茂はあまり乗り気ではなかった。出版するのは戌井の勝手だが、「水木しげる」の名では本は売れずに失敗すると言うのだ。最近の自分は、漫画の注文が皆無になるほど人気が凋落していると自嘲した。

 その点は戌井も気になっており、最近の茂の漫画は物足りないとハッキリ告げた。
 しかし、茂の将来は明るいと信じていると付け足した。茂は売れない時代にも努力して力作を描き続けた。そしてついに大成功を掴んだ。茂の漫画は本物であり、不死身である。いつか再び突破口が開けると、本心から励ますのだった。

 その言葉に茂は活力を取り戻した。まずは、自分の古い漫画を読み返し、自分が見失ったものを見つけようとし始めるのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第135回

 出張先で80-90年代アイドルの話で1時間以上も盛り上がってしまった当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第135回めの放送を見ましたよ。

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「妖怪はどこへ消えた?」

 一切仕事がなくなったのと歩調を合わせるように、茂(向井理)はかつてないほどの大きな鬱状態に陥った。
 大事にしていた民芸品をガラクタだと言って見放してしまったり、この先収入が一切なくなるかもしれないと弱音を吐いたりしている。ついには、妖怪など本当は存在していないとまで言い出す始末だった。

 茂は時代が変わったと思っている。子供たちはロボットに夢中で、大人たちは金儲けにしか興味がない。鬼太郎のような妖怪物は受けないと思い込んでいる。一方、茂の貧乏時代の自伝漫画の注文は来ている。豊かになった現代、貧しかった日本を懐かしむ機運が高まっているようだ。しかし、その仕事にも茂は乗り気になれない。

 ここまで落ち込んだ茂を見るのは、布美枝(松下奈緒)も初めてのことだった。娘たちも動揺しはじめている。特に喜子(荒井萌)は、茂から妖怪はいないとハッキリ聞かされ、ショックを受けた。

 茂はこれまで何度も窮地を脱してきた。布美枝はそれを信じて見守ることしかできなかった。

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