おかげさまで食あたりの件は、お粥をたっぷりと食べたり、コーラを少し飲んだり、散髪に行ったりする程度には回復してきた当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第144回めの放送を見ましたよ。
少し具合の良い修平(風間杜夫)は、布美枝(松下奈緒)と話をしている。
修平のおじは、絵かきをしていたが30歳くらいのころパリで夭折した。奇妙なことに、彼が亡くなった日に茂(向井理)が生まれた。修平は、茂こそおじの生まれ変わりではないかと考えている。絵の才能を引き継いだ証拠に、今は立派な漫画家になっていると言うのだった。
布美枝が茶の用意をしている間に、修平は再び寝入ってしまった。
修平は夢を見ていた。広い映画館の中に、自分ひとりだけが座っている。「第三丸の爆発」という題の無声映画が始まったのだが、活動弁士は若い頃の修平自身であった。映画の主人公も修平で、前半は自分自身の半生記であった。東京の大学に通ったのに映画や演劇に熱中したこと、境港に映画館を作ったこと、いつ書き上がるともしれないシナリオを書き続けている姿などが映し出された。いよいよ「第三丸の爆発」の本編が始まろうかというとき、”The end” という字幕と共に映画は終わってしまった。
修平があっけに取られていると、場内が騒がしくなった。さっきまで無人だったはずの映画館は、いつの間にか満席になっており、割れんばかりの拍手が送られていた。見渡すと、修平の両親、パリで亡くなったおじ、旧知の活動弁士・一学(鈴木綜馬)など、古くに死に別れた人々ばかりがそこにいた。
「なんだ、もう終わりか。あー、面白かったなぁ」
そうつぶやくと、修平は映画館の座席で眠り込んでしまった。
数日後、修平は眠ったまま息を引き取った。
修平の亡骸を前に、絹代(松下奈緒)が最初にしたことは隠していた香水の瓶を持ってくることだった。修平はこの香りが好きだったと言いながら、絹代は遺体にたっぷりと香水を振りかけた。家族はその行動の理由がわからなかった。しかし、その香水は、修平が川西一学の孫娘(入山法子)と出かける時にも使っていたもので、真相を知らなかった絹代が嫉妬して隠してしまっていたものだった。好きなだけ使わせてやれば良かったと、謝りながら何度も何度も香水を振りかけた。
初七日の法要も終わった頃、絹代は茂に修平の形見を見せた。修平がシナリオ執筆に使用していた万年筆を茂に持っているよう命じた。その万年筆は、パリで亡くなった絵描きのおじからもらったものだという。修平はそのペンで傑作シナリをを書くと息巻いており、絹代も期待するところがあったのに、結局できなかったと寂しそうに言った。
修平は茂がおじの生まれ変わりだと言っていたが、絹代は口では否定していた。しかし、絹代もそれはあながち間違いでもないと思うところもある。生まれ変わりの茂こそが、おじのペンを持つにふさわしいと考えているのだ。村井家の芸術の血筋を、おじ、修平を経て茂に伝えていくことこそ、修平の願いであると言うのだった。