電車すごろくからちょうど1年、そろそろ第2弾に出かけようかなと思っている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第153回めの放送を見ましたよ。
北村(加治将樹)の頼みとは、週刊誌で鬼太郎を連載したいというものだった。現在の月刊連載に加えて、週刊連載を受け持って欲しいというのだ。茂(向井理)はその願いを受けた。
しかし、現在のアシスタント2人体制では作業が追いつかないと茂は心配する。それを見越していた北村は、若手実力派の漫画家を何人か見繕って来ており、アシスタントに採用するよう薦めた。若くて元気のよいアシスタントが来ることに、茂は目を輝かして喜ぶのだった。
その様子を見ていた最古参のアシスタント・菅井(柄本佑)はしょげ返ってしまった。自分にはロクな才能がないと思っている菅井は、若くて優秀なアシスタントと入れ替わりに、自分がお払い箱になるのではないかと心配だからだ。
菅井がひとりで仕事部屋に佇んでいると、アシスタント人選をしている茂と北村から声がかかった。いよいよ解雇を告げられるのだと思い、覚悟を決めて応接室に顔を出す菅井。
ところが、彼を待っていたのは吉報だった。菅井が漫画賞に応募していた作品が、大賞は逃したものの、審査員特別賞に選ばれたという。次回作を雑誌に掲載する機会も与えられたという。菅井は、どうせ箸にも棒にもかからないと思っていたので、みんなには秘密で応募していた。はじめて話を聞いた茂も大喜びしている。プロダクション設立から20年、唯一残った設立メンバーの躍進である。布美枝(松下奈緒)ら、茂の家族も大喜びした。
ただし、誰も気づいていなかったが、菅井は少しも嬉しそうな顔をしなかった。
周囲では、菅井の次回作に期待する声が高まる。そして、菅井が独立するものと決めてかかっている。彼の抜けた穴を埋める人選や、送別会の計画がどんどんと進んでいる。
菅井は、自分の居場所がなくなりつつあることに落胆した。
ある日、菅井から仕事を休みたいと電話連絡があった。茂は、次回作の構想を練るために集中が必要なのだろうと思い、それを許可した。思えば、菅井が欠勤するのはこれが初めてのことであった。
その翌日、ついに菅井は無断欠勤した。電話をかけても連絡が付かなくなった。作業工程が滞りはじめ、茂らは迷惑を感じるようになった。
その夜、行きつけの喫茶店から村井家に電話が入った。泥酔した菅井が店にやって来て、そのまま眠り込んでしまったという。迎えに行った布美枝とアシスタントの相沢(中林大樹)が介抱しようとするが、菅井はふたりを払いのけ、大きな声で騒ぎ始める。自分よりも実力のあるアシスタント候補はいくらでもいる、自分はプロダクションに不要な人間だ、奉公した20年は無駄だった、などとわめくのだった。
落ち着いたところをプロダクションに連れ戻され、菅井は茂の説教を受けた。デビュー直前の大事な時期に、仕事を放棄して酔いつぶれるなど言語道断だと叱った。
菅井は、自分は処女作に持てる力の全てをつぎ込んだ、あれ以上のものを描く実力が備わっていないことが自分でもわかると悲しそうに告げた。それに、自分はこれっぽっちも独立などしたくない、アシスタントとしてずっとプロダクションに勤めたいという。しかし、能力の低い自分が足手まといになっているのだとしたら、新しいアシスタントと入れ替わりに出ていくしかないと思っていると述べた。
菅井の弱音を聞いて、茂はついに激怒した。菅井が足手まといなどというのは自己卑下的誤解であり、菅井が根気よく描く点描画が水木作品の大黒柱であると説く。茂もできることなら菅井には一生手伝って欲しいが、デビューや独立の機会を潰すわけにもいかない。ゆえに、断腸の思いで菅井を送り出すつもりだったと胸の内を明かした。
菅井は、再度プロダクションに残る希望を述べた。その願いを受け、茂は菅井に留まってもらうことにした。
一息ついた茂に、布美枝はコーヒーを勧めた。夫婦で、菅井と共に過ごした苦楽の20年を思い返した。布美枝は、菅井はもちろん、他のアシスタントや編集者など、多くの人々の手を借りてきた年月だったと感慨にふける。
その言葉がヒントになって、茂はプロダクションの設立20周年謝恩パーティーを開催することを思いついた。家に入れる人数はたかが知れていると心配する布美枝を尻目に、茂はホテルの宴会場を借り切り、大勢を招待して大々的に挙行しようと張り切るのであった。