NHK『さよなら私』第1回

本日、永作博美さんの44回めの誕生日であることを全身全霊をかけてお祝い申し上げる当方が、NHKドラマ10『さよなら私』の第1回めの放送を見ましたよ。

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第1回「彼だけはやめて」

41歳の星野友美(永作博美)は幸せな毎日をすごす主婦である。
都市計画に関わるエリートで優しくてハンサムな夫・洋介(藤木直人)、および天真爛漫な5歳の息子・健人(高橋來)と3人で穏やかに暮らしている。

息子の出産以来、夫とセックスレスであることが唯一の欠陥ではあったが、それすらも些細な事だと思えるほどであった。

息子・健人を寝かしつけるのも友美の役目であった。息子は友美の髪を掴んだまま寝入ってしまう癖があった。息子を起こさないよう、そっと彼の手を解いて髪を抜く一瞬に友美は幸せを噛みしめるのだった。

ある日、同窓会が開かれることとなり、友美は出席することとした。
友美が通っていたのは女子校であったが、特に仲の良い親友がいた。彼女に久し振りに会うのが楽しみで仕方なかった。

彼女の名は早川薫(石田ゆり子)という。
友美と薫は、性格も育った環境も正反対だった。大人しくて優等生タイプの友美に対して、薫は快活で気っ風のよい性格だった。友美が大学卒業後早くに結婚して家庭に入ったのとは逆に、薫は映画プロデューサーとして第一線で働いている。多数の男性部下たちに向かって、歯に衣着せぬ物言いでバリバリと仕事をしている。自由奔放に生き、今でも独身である。

友美が薫に会うのは久しぶりのことであった。子持ちの主婦とキャリアウーマンでは生活習慣が異なり、なかなか会う機会が設けられないからだ。しばらくぶりの再会で、話に花が咲いた。

ところが、ふと薫が気になることを言った。友美は、息子が自分の髪を掴んだまま眠ることを誰にも言ったことはなかった。なぜかそれを薫が知っていたのである。
友美が問い詰めると、薫は以前に友美から聞いたと言い張るのみだった。

ふたりの仲が険悪になりかけると、もう一人の友人・三浦春子(佐藤仁美)が場を和ませた。昔から、ふたりが言い争いそうになると春子が緩衝材になるのが常だった。少女時代から全く変わらない友人関係を懐かしく思い、その場は収まった。

しかし、帰宅後もう一度思い返してみると、やはり友美には納得がいかなかった。息子が友美の髪を握りながら寝るという事実は、自分を除けば夫・洋介しか知らないはずである。夫がどこかで薫に話したのではないかと疑い始めた。

ある夕、洋介から友美へメールが届き、帰りが遅くなるという。疑いを抱いた友美は、薫のマンションの前で張り込みをした。
自分の思い過ごしであることを祈る友美であったが、そこへ洋介が実際に現れた。そして、薫のマンションへと入っていくのだった。友美は激しいショックを受けた。

ある日、友美は薫を神社の境内へ呼び出した。
そこは参道に長い石段のある神社で、人気が少ない。少女時代によくふたりで秘密の話をした場所である。

友美は、遠回しかつ辛辣に話を切り出した。
友美から見れば、薫は自分に嫉妬しているように思えるのだという。幸せな結婚と出産を経て女性の幸せを謳歌している自分に対して、薫は劣等感を感じているのだろうと指摘した。だから、友美の夫を奪うことで復讐しているのだろうと言うのだ。

薫はもちろん、一方的に言われるがままにするような性格ではない。
友美の人を見下したような態度が昔から気に入らないと反撃した。そして、友美から洋介を奪うために交際しているのではなく、一人の男として愛していると述べた。ましてや、友美の夫だと知ったのは付き合い始めた後であると述べた。
それに加えて、はじめにアプローチしてきたのは洋介の方からだったという。自分から洋介のことを好きになるなどということは、友美の後塵を拝することを意味するので、知っていれば関係は持つつもりはなかったと付け加えた。

さらにダメ押しで、薫は友美たちがセックスレスであることを嘲笑した。自分と洋介はいつも楽しくセックスしていると言って嗤うのだった。

ついに友美は逆上し、薫に掴みかかった。もみ合ううちに、ふたりは石段から転げ落ちた。

しばらく気を失い、目を覚ました時にふたりの心は入れ替わっていた。友美の精神が薫の体に収まり、逆もまた同じだった。

しばし呆然とするふたりであったが、ひとまず、それぞれの体で相手の生活を継続させることとした。つまり、薫の体を持った友美が一人暮らしをはじめ、友美の体を持った薫が夫と息子の家へ帰るのである。

友美(本物)は、薫と会う前に知人宅へ息子を預けていた。友美(入れ替わり)が息子を迎えに行く様子を、友美(体は薫)は物陰から観察していた。
友美(心は薫)がぎこちないながらも息子を迎え入れると、何も気づかない息子は普段通りに接していた。その姿を見ながら、友美(姿は薫)は息子の名を呼びながら崩れ落ちるのだった。

友美(心は薫)が帰宅すると、夫の洋介はまだ帰っていなかった。ばかりか、帰りが遅くなるとメールが届いた。薫(姿は友美)は洋介と逢引する約束だったことを思い出したが、今の姿ではどうすることもできなかった。
息子・健人を寝かしつけると、何も知らない健人はいつものように母の髪を掴んで眠りにつくのだった。
薫(姿は友美)は、複雑な思いに涙を浮かべた。

その頃、友美(姿は薫)は、薫の家で一人塞ぎこんでいた。
そこへ、洋介が訪ねてきた。躊躇する友美(姿は薫)であったが、洋介がなかなか帰ろうとしないので、仕方なくドアを開けた。玄関に入るやいなや、洋介は情熱的に薫(心は友美)を抱きすくめ、熱烈なキスをした。
抗う友美(姿は薫)であったが、洋介の勢いは止まらなかった。服に手をかけられ、拒絶したい心と受け入れたい心とが葛藤した。
そして、ついに体を許すのだった。

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NHK土曜ドラマ『55歳からのハローライフ』 第1話「キャンピングカー」

リリー・フランキーの3大傑作といえば『東京タワー』と『グラビアン魂』と『ロックン・オムレツ』(森高千里)のPVだと考える当方がNHK土曜ドラマ『55歳からのハローライフ』第1話「キャンピングカー」を見ましたよ。

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大手家具メーカーの敏腕営業マン・富裕太郎(リリー・フランキー)は早期退職制度を利用し、50代でリタイアした。彼は仕事一筋だった半生を振り返り、残りの人生は自分の夢と家族のために使おうと考えたのだ。
自宅のローンは完済済みだった。娘の美貴(市川実日子)と息子の(橋爪遼)はまだ独身で実家ぐらしだが、ふたりともすでに就職している。早期退職による特別加算金も貰えるため、当面経済的な心配がない。妻・凪子(戸田恵子)も太郎の早期退職に反対しなかった。

太郎の趣味は美味いコーヒーを飲むことだった。手動のミルで豆を挽き、ネルドリップで自ら淹れて飲むことを好んだ。退職後の夢は、キャンピングカーで悠々自適に全国を回り、先々でコーヒーを楽しむことだ。妻とふたりきりで旅に出ることを望んだ。
早期退職の特別加算金がちょうどキャンピングカーの価格と同等だったので、退職を決めるとともに手付金を支払っていた。ただし、家族を驚かせるためにそのことは秘密にしていた。

退職日の夕食で、太郎はキャンピングカーのことを家族に打ち明けた。家族は確かに驚いたが、歓迎よりも冷淡な雰囲気で迎え入れられた。反対を明言する者はいなかったが、太郎は微妙な空気に戸惑った。

同伴を指名された妻・凪子もいい顔をしなかった。夫婦仲が悪いわけではなく、むしろ関係は良好であったが、突然のことに困惑したのである。
いくら経済的に困窮していないとはいえ、キャンピングカーは決して安いものではない。今後、年金を受給するまでは収入が無い。ふたりの子どもたちの結婚資金も準備しておきたいと考えている。生活が心配になるもの当然であった。また、凪子は趣味で絵画をやっている。教室に通ったり、絵画仲間と写生旅行に出かけたりすることもある。長期旅行に出てしまうと、それらの活動に支障をきたすのだ。

太郎とふたりきりになった時、凪子はあくまで控えめに、上記の懸念を表明した。しかし、太郎にとってはそれが妻のわがままに聞こえてしまうのだった。

娘・美貴も反対だった。特に経済的理由から反対した。キャンピングカーを購入するなら再就職し、その収入を購入費に充てるよう提案した。

娘の言い分にも一理あると思った太郎は発奮し、就職活動を始めた。
家具メーカーの営業マン時代の人脈に片端から連絡をとり、自分を雇ってくれるよう頼んだ。しかし、業界の景気は悪く、太郎を雇い入れる余裕のある会社はなかった。そればかりか、太郎が昔の勤め先の威光をかざし、居丈高な態度でいることで反感を持たれる結果となった。太郎は自分を採用しない人々の陰口を叩くのだった。

人脈の伝手が途切れた太郎は、人材派遣会社に登録することとした。その待合室には覇気のない中高年が大勢おり、太郎は仄暗い気分になった。その上、面接担当者は自分よりずいぶんと若い者であった。昔ながらの営業手法しかしらない太郎は、パソコンや外国語、女性社員の扱い方など、現代の企業で必要とされるスキルを全く有していなかった。若い面接担当者に憐れむような態度で接しられ、太郎は落ち込むのだった。

その頃から、太郎は精神に不調をきたし始めた。
喉に違和感を感じ、咳が止まらなくなり、大好きなコーヒーも飲めなくなった。不眠に苦しめられたり、近所の犬の鳴き声に激しく苛立つようになった。

その上、現実と区別の付かない夢を見るようになった。
夢の中で太郎は、キャンピングカーを手に入れ、凪子とともに旅をしていた。凪子が草原にイーゼルを立てて写生しているのを、太郎はコーヒーを飲みながら眺めていた。

そこへ、阿立(長谷川博己)と名乗る男が近づいてきた。彼は黒いフードを被った不審な姿をしていたが、太郎の話を真摯に聞いてくれた。太郎は会社時代の自分のこと、早期退職を決めたきっかけ、キャンピングカーや妻とのふたり旅に対する憧れなどを話した。

それから阿立が道連れとなったが、しばらくすると彼の姿が消えた。
ところが、太郎と凪子が人気のない露天風呂に入っていると、どこからともなく阿立が現れ、ふたりの入浴姿を眺めていた。妻の裸を覗かれたことに怒った太郎は、阿立を追いかけた。
すると、阿立はキャンピングカーを盗んで走り去った。

太郎はますます怒り狂った。自分の全てをつぎ込んだキャンピングカーを盗まれ、もう自分には何も残っていないと思ったからだ。自分の何よりも大切な物が盗まれたと声をあげて嘆いた。

その叫び声を聞いていた凪子は冷淡に言った。太郎はモノやスタイルを大切にするばかりで、妻である自分を顧みないと言うのだ。結局太郎は、家族や妻を自分の理想のライフスタイルの一部としか見ていなかったと批判したのだ。
夢の中で。

悪夢ばかり見て、気分が塞ぎこむばかりの太郎は、自ら心療内科を受診した。カウンセリングを担当した医師は、身なりこそ異なったが、夢に出てくる阿立と同じ顔をしていた。
太郎から話を聞いた阿立は、「誰でもが、自分だけの時間を持っている」ということを諭した。太郎が自分の夢を実現したいと思い、そのために自分の時間を使うのと同様に、凪子も自己実現のために自由に使う時間を持っていることを確認した。そして、太郎がそのことに気付き始めていると指摘した。自分と他人がそれぞれ固有の時間を持っているという事実を知ることは脅威である。太郎はそれに気づくとともに、その事実を拒否しようとしている。だから精神的に不安定になっているのだと説明した。それを受け入れることが今の太郎には必要だと言うのだ。

ある夕、太郎はコーヒーを保温瓶に準備した。それを携え、丘で写生している凪子を迎えに行った。
太郎の姿を見つけると、凪子は帰り支度を始めた。精神的に不安定な夫を心配するのはもちろん、長年の主婦生活の習慣から、家事に戻る時刻だと思ったからだ。夫を支えることが自分の義務だと考えているのだ。

そんな凪子を、太郎は押しとどめた。もう少し絵を続けて良いと言うのだ。そして、家から持ってきたコーヒーを差し出した。

太郎は、こうして時々コーヒーを持ってきたいと言うのだった。少しずつ始めていって、ずっと先にふたりで共通の夢が持てたら嬉しいと話すのだった。

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『アオイホノオ』実写ドラマ化: テレビ東京系2014年7月

近年の当方のお気に入り漫画である『アオイホノオ』(島本和彦)が実写ドラマ化されるって言うじゃありませんか!

【ドラマ24】アオイホノオ(テレビ東京)

テレビ東京公式サイトより

テレビ東京公式サイトより

『アオイホノオ』とは、1980年代初頭の美術大学を舞台とした著者の自伝的漫画。当時流行したマンガやアニメに対して主人公が興奮する様子が面白い。その時代を知っている読者なら絶対に楽しめる。
その時代をよく知らない人でも、庵野秀明(ヱヴァンゲリヲンの人)や岡田斗司夫(レコーディングダイエットで激痩せした人)など現在活躍中の人さえ知っていれば楽しめる。彼らが実名で出てくるので。彼らは著者と同世代であり、大阪で活動をし始めた時期も一緒なのだ。
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DVD『たぶらかし ~代行女優業・マキ~』

実力派ブサカワ女優ナンバーワン、谷村美月主演で、2012年4月から6月に放送されたytv制作のドラマ『たぶらかし ~代行女優業・マキ~』のDVD vol.1を見た。販売されているのはBOXセットのみのようだが、僕はレンタルで1巻めを借りて見た次第。

先日、某所での飲み会において、某オッサンから「去年、深夜に放送していた谷村美月のドラマ見た?え、見てないの!?谷村美月好きを自称するならあれ見なきゃ。すごく面白かったよ。」などと挑発されたので、悔しくなって見たのである。

初めは、そんなドラマ聞いたことがなかったし、深夜枠ドラマなのだからクソつまらないドラマだろうと高をくくっていたのだが、実際に見てみると、なかなか。軽いミステリー風のドラマで、テンポの良い明快なストーリーで、気軽に見て楽しめた。1話30分くらい。
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僕の中で『てっぱん』は終りました。

先週の土曜日まで、NHKの朝ドラ『てっぱん』を欠かさず見ていました。

うっかり寝坊して見逃したりしないように、会社が休みの土曜日にもちゃんと目覚まし時計をセットしていました。それでも、万が一寝坊してしまった時のために、HDDレコーダーで自動録画もセットしていました。ドラマ開始から1ヶ月、幸いにして見逃したことはありませんでした。

毎週月曜日は、仕事の都合上、朝早く家をでなければなりません。月曜日だけは、帰宅してから録画したものを見ていました。

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NHK『てっぱん』 第2週「18歳の決断」

 前回のまとめ記事で「『てっぱん』の日々まとめは今日で終了」と宣言したことのミソは「週刊にしてみてはどうだろうか」という意味だったとネタばらしする当方が、NHK連続テレビ小説『てっぱん』の第2週放送を見ましたよ。

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第2週「18歳の決断」

【7】
 大阪の初音(富司純子)にトランペットを押し付け、あかり(瀧本美織)は尾道に帰ってきた。ところが、初音に尾道の家族を大事にしろと言われたことが心に引っかかっていた。

 翌朝、なんと兄の鉄平(森田直幸)が初音のところからトランペットを取り戻してきていた。彼はあかりの後を追って大阪に行っていたのだ。あかりが楽しそうにトランペットを吹いていたという話を大阪で聞き、トランペットはあかりが持っているべきだと判断したのだ。

 うろたえるあかりであった。そして彼女は、音楽で生きていくことは諦め、高校卒業後は尾道に残って就職すると言い出した。

【8】
 家族はそれぞれに悩んでいた。それを取り繕い、以前と同じように明るく振舞った。しかし、どこかちぐはぐな雰囲気が漂っている。

 ある日、あかりと真知子は一緒に買物に出かけた。真知子は唐突に旧フェリー乗り場に向かった。18年前、真知子が千春(木南晴夏)と初めて出会った場所だという。千春は妊娠6ヶ月の体で、トランペットケースを抱えてベンチにうずくまっていた。

【9】
 当時、真知子は千春を家に連れて帰った。腹ペコだと言う千春にお好み焼きを振舞った。その食べっぷりに、真知子はいっぺんで千春のことを好きになったという。
 産みの母親の話を唐突に聞かされ、あかりは頭に来た。真知子を残して、一人で家に帰って行った。初音と出会ってから、人生の歯車が狂ったと苛立たしく思うのだった。
 ところが、夕食の準備をする頃には、あかりはすっかり平常心に戻っていた。すぐに怒るところは父親似、楽観的なところは母親似だなどと明るく話し始めるのだった。

 あかりは本格的に就職活動を始めた。何社も面接を受けたが、なかなか尾道での採用には繋がらなかった。本人も周囲も焦り始めてしまった。1ヶ月以上、面接を受けては不採用の連続だった。

 いよいよ、あかりの高校生活最後の演奏会の日になった。
 真知子はあかりの髪を結ってやった。今日くらいは就職活動のことを忘れて、楽しく演奏してくるようにと言って送り出した。

 ところが、あかりは演奏会場へは向かわなかった。
 演奏会と同じ日程で採用面接が行われることになっていたのだ。あかりは誰にも相談せずに、採用面接へ行ってしまった。

【10】
 錠と真知子はあかりの最後の演奏会を見に来た。しかし、あかりの姿が見えないことに驚き、落胆してしまう。

 あかりが帰宅した。あかりも家族も、互いに腫れ物に触れるかのような態度をとっていた。
 その中で唯一、真知子だけは激しい態度であかりに向き合った。大阪に行ってから様子がおかしいと指摘し、初音に変なことを言われたのではないかと問いただした。
 あかりは、みんなの前でこそ強がって否定した。しかし、ひとりになると全て初音のせいだと、彼女を恨むのだった。

 翌朝。真知子の姿が消えた。
 真知子は誰にも告げずに、一人で初音を訪ねた。

【11】
 真知子は、初音があかりに何かおかしなことを言ったのではないかと問い詰めた。しかし、初音は心当たりがないと答える。その代わり、自分の行動がきっかけで、あかりが出生の秘密を知ってしまったことを謝罪し、深く頭を下げた。

 真知子はその日があかりの18回目の誕生日だと伝えた。それはすなわち、千春が母親になった日でもある。真知子は小さなケーキを2つ差し出した。

 その時、真知子の所在を探しているあかりから電話がかかってきた。真知子に頼まれ、彼女は来ていないと答えた。
 そして、電話を切る間際に、尾道に残って両親に恩返ししろと言った。

 それを聞いていた真知子は反発を覚えた。自分は親として当然のようにあかりを育てた。恩返しを強制するのは筋違いである、と。そう言い残して真知子は尾道に帰った。

 初音は2つのショートケーキを仏前と自分とで分けて食べた。

 夜。真知子は大きなケーキを用意して、あかりの誕生日を祝った。

 どうして尾道での就職にこだわるのかと聞かれたあかりは、自分には引け目があるのだと正直に打ち明けた。自分はよその親から生まれた子供であり、尾道や村上家とは明確な絆がない。自分がこの家の娘であるという証とするため、尾道に残りたいのだという。

 それを聞いていた真知子は、恩返しのつもりか。自分は見返りが欲しくて育てたわけではないと怒りを顕にした。「恩返し」というキーワードは、あかりと初音しか知らないはずだった。あかりには真知子が大阪に行っていたのだとわかった。

 あかりは、どうして自分を育てる気になったのか聞いてみた。
 真知子が答えた。錠が初めて赤ん坊のあかりを抱いたとき、とても優しい顔で「かわいいのぉ」と言った。自分の子供として育てるのには、その一言で十分であったと答えた。

 あかりは突然、大阪で就職することを決めた。尾道ではさっぱり仕事が見つからないが、大阪ならばいくらでも就職口があるからだ。
 そして、それよりも大きな理由があった。初音に自分は尾道でした生きていけないと言われたのが悔しかった。大阪に乗り込んで見返してやろうと決意した。

【12】
 大阪での就職が決まり、あかりは無事に高校を卒業した。

 明日はいよいよあかりの出発の日だというのに、父は素っ気無い態度である。翌日は進水式に参列することになっており、あかりの見送りに行くことができないと言う。尾道で過ごす最後の夜も、進水式の準備のために家に帰ってこれないという。

 次兄・鉄平は高校卒業後も仕事が決まっていなかった。この日、父に頭を下げて弟子入りすることになった。長男・欽也(遠藤要)は信用金庫に勤め、融資担当として進水式に出席することになっている。ふたりの兄たちも進水式の手伝いに行ったまま帰ってこなかった。
 あかりは、真知子とふたりっきりでお好み焼きを食べて最後の夜を過ごした。

 出発の日、真知子から真新しい携帯電話を手渡された。父からの贈り物だという。以前に携帯電話をねだった時、就職するまで必要ないと断ったことを錠は覚えていたのだ。そして、その約束を果たしたのだ。あかりが大阪で就職することには猛反対で、見送りにも来なかったが、ちゃんと門出を祝福しようという気持ちは持っていたのだ。

 真知子と鉄平に見送られて渡船に乗り込んだ時、新しい携帯電話が鳴り出した。出てみると、父の声が聞こえた。彼は自分の娘の旅立ちを祝福するスピーチをしていた。

 推進式で、錠はスピーチを頼まれた。不慣れな錠は舞い上がってしまい、自分の子供達の話を始めてしまった。ふたりの息子について話した後、あかりに言及した。呆れ始める列席者であったが、欽也は自分の携帯電話からあかりに電話をかけ、錠のスピーチを中継した。

 前後の分からなくなった錠は、あかりのために「瀬戸の花嫁」を歌い出した。その歌声を聞きながら、あかりは大阪へと旅立っていった。

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本日の『てっぱん』(7) 萌ポイント

 まとめ記事の連載をやめることにした当方が、NHK連続テレビ小説『てっぱん』の第7回めの放送を見ましたよ。

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 朝。洗顔を終えたばかりのあかり(瀧本美織)は首にタオルを巻き、Tシャツに膝丈ジャージというラフな格好。大阪から買ってきた冷凍たこ焼きを電子レンジで温めている。
 電子レンジのブザーが鳴り、調理が終わったことを知らせた。

 その時のあかりのセリフに萌えた。

「あ、たこ焼きできた!食べよ♪ 食べよぅ♪」

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NHK『てっぱん』第6回

 山瀬まみが朝ドラに出演することはあるだろうかと考え、年齢や容姿的にヒロインは絶対に無理っぽいので、せめてヒロインの母親役はどうだろうか、ヒロインの母役っつーのはいつもわりと意外な女優がやっていてそれはそれで楽しみだしな・・・などと思うのだが、芸能界におけるキャラ/立ち位置的にあと10年くらいは山瀬まみにドラマの仕事が回ってくるとは思えず、それだけ経てば山瀬まみも50歳を超えてしまうので、母役っつーよりは祖母にキャスティングされてしまう可能性が高く、それを見てみたいような見たくないような気がするのだが、冷静に考えれば「ヒロインの近所に住む、噂好きで何かと口うるさく、お節介なおばちゃん」役が山瀬まみにぴったりっぽいよな、みんなもそう思うよね?・・・とつらつら考えた当方が、NHK連続テレビ小説『てっぱん』の第6回めの放送を見ましたよ。

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第1週「ばあちゃんが来た!」

 遺品のトランペットを吹くことは、自分の産みの母親(木南晴夏)のことを認めることになる。逡巡するあかり(瀧本美織)。
 しかし、腹をくくって演奏を始めた。

 トランペットを吹きながら、あかりは尾道の育ての家族の顔が次々に思い出された。それはとても不思議な感覚だった。
 そして何よりも、演奏することが楽しくて仕方なかった。

 初音(富司純子)も同じだった。あかりの吹くトランペットの音色を聞くと、死んだ娘のことばかりが思い出された。その音は、まさしく死んだ千春の音だった。
 あかりはその音色を会ったことのない母親の音だと感じるのだった。

 1曲終わると、初音は背中を向け急ぎ足で立ち去ってしまった。

 演奏会の打ち上げはお好み焼き屋で行われた。
 あかりは大阪のお好み焼きを見て驚いた。広島地方では具とタネを別々に焼いて重ねる食べ方が主流だ。しかし、大阪では具と小麦粉を最初によく混ぜあわせてから焼くらしく、初めての経験に興味津々だった。

 いよいよ食べ始めようという時に、バンドの顧問の音大講師・岩崎(柏原収史)から声をかけられた。使用したトランペットとあかりの相性は抜群だという。演奏中のあかりはとても気持よさそうだった。楽器の方も気持ちいいと思っている、もっとあかりに吹かれたいと思っているに違いないと言うのだった。
 その話を聞いて、あかりは居ても立ってもいられなくなった。焼きあがったお好み焼きには手をつけず、慌てて店を飛び出してしまった。

 あかりは一目散に初音の家に向かった。初音と顔を合わせると、胸を張って「トランペットを吹いた!」と叫んだ。遺品のトランペットを吹いたことで、モヤモヤしていた気持ちは全て吹っ切れたと言う。
 あかねは自信満々にトランペットを初音に突き出した。返すというのだ。

 初音が受け取るのを躊躇していると、あかりの腹が鳴った。初音はちょうど昼食の用意をしていて、奥からは美味しそうなにおいがする。そういえば、朝早くに尾道を出てきて、まだ何も食べていなかったことを思い出した。
 初音は、ぶっきらぼうな態度は改めなかったが、あかりを家にあげてやって食卓に付かせた。

 あかりは初音の作った親子丼を一口食べて、満面の笑みを浮かべた。その様子を見た初音はこっそりと、かつ、微かにうれしそうな顔をした。
 家のことを聞かれた初音は、自分は親戚縁者がなく、モデルのジェシカ(ともさかりえ)を下宿人でお置いているだけであると話した。夫にも一人娘にも先立たれたというのだ。
 初音は、家出した娘が尾道で孫を産んだことの因果を恨めしく言いながらも、あかりには尾道の育ての家族に感謝しろと説いた。

 腹の膨れたあかりは、すぐさま尾道に帰ることにした。トランペットは丁寧にケースにしまって、初音のところに置いていくことにした。

 立ち去る時、あかりは「最後のお願い」があると言い出した。何があってもトランペットは捨てないで欲しいと懇願した。初音は呆れ顔を作りながらも、最後の願いなら仕方が無いと請け負った。
 あかりは一本とった気持ちで得意になった。

 逆に初音は、食事は美味しかったかと尋ねた。あかりはとても美味しかったと答えた。満腹になったと答えた。
 初音は「音楽みたいなものでは腹は膨れない」と言った。それは、尾道でふたりが最初に出会ったときに、初音があかりに言い放ったのと同じ言葉だった。

 初音は勝ち誇った表情を浮かべ、ピシャリと戸を閉めた。
 あかりは家の前で地団駄を踏んだ。

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NHK『てっぱん』第5回

 明日は山瀬まみの誕生日であるので、壁紙が変わっていたりすることをご了承くださいと言っている当方が、NHK連続テレビ小説『てっぱん』の第5回めの放送を見ましたよ。

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第1週「ばあちゃんが来た!」

 あかり(瀧本美織)は、初音(富司純子)にトランペットを返すために大阪へ向かった。

 無事に初音の家にたどり着いた。しかし、初音はトランペットを受け取ろうとしない。

 あかりは、自分がトランペットを続けてこれたのは、育ての家族の応援が会ったからだと話し始める。しかし、トランペットを好きになったきっかけは、母から引き継いだ血筋かもしれないとも思う。このトランペットを持っていると、育ての親と産みの親との間で心が乱れると言うのだ。

 イライラし始めた初音は、そこまで言うなら一度目の前でトランペットを吹いてみろと言う。娘の千春(木南晴夏)は反対を押し切って音楽をやるために家を出て行った。ずっと反対していたから、トランペットの演奏を聞いたことがないと言う。
 しかし、あかりはこのトランペットを吹くことはできないと答える。それを吹くことは、育ての親を裏切るような気がすると言うのだ。
 話は平行線のままだった。

 その時、モデルのジェシカこと西尾冬美(ともさかりえ)が現われた。彼女は初音の家の下宿人だ。
 ジェシカは商店街のブラスバンド演奏会の司会を頼まれている。しかし、バンドのトランペット担当者が急に来れなくなった。このままでは演奏会が中止になり、ジェシカの仕事もキャンセルになる。
 ちょうど目の前にトランペットがあったので、ジェシカはあかりを強引に連れ出してしまった。

 バンドと合流したあかりであったが、自分の持っているトランペットでは吹きたくないと主張した。そして何よりも、初音との押し問答の拍子にマススピースがはずれてしまっていて、どの道演奏は不可能であることがわかった。

 そこへ、マウスピースに気づいた初音が届けに来た。初音は、トランペットを吹かないなら捨てろ、今ここで吹くなら一生自分のものにしろと告げる。
 そしてそれは、あかりが自分で決断しなくてはならないことだと言った。

 演奏会が始まる直前、あかりは尾道の母・真知子(安田成美)に電話で相談した。具体的な内容は一切明かさず、「寄り道をして帰ってもいいか」と聞いた。真知子も細かいことは聞かずに、自分で決めたことならすれば良い、と答えた。
 それで、あかりはステージに立つことを決めた。

 いよいよ演奏会の幕が開いた。それでもまだあかりは迷っていた。
 客席の背後の商店街に、初音の姿が見えた。初音は演奏会には興味がない素振りで買い物をしていた。
 その姿を見つめながら、あかりは自分自身を奮い立たせた。

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NHK『てっぱん』第4回

 NHKおはよう関西の木南晴夏のインタビューで、彼女が演じる千春と母・初音(富司純子)とのシーンがあると聞いた当方が、NHK連続テレビ小説『てっぱん』の第4回めの放送を見ましたよ。

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第1週「ばあちゃんが来た!」

 あかり(瀧本美織)の進路について、次男・鉄平(森田直幸)は音大に進学することを勧める。あかりにはそういう血が流れていると言うのだが、あかりが今の家族と血が繋がっていないと言われているようで、内心苦しくなった。
 鉄平以外の家族は、あかりの出生については腫れ物に触れるようにしている。長男・欽也(遠藤要)は鉄平と喧嘩をしてしまった。あえてオープンにすることで明るくしようとする鉄平と、何事もなかったかのように今まで通りにすることが一番だと思う欽也との間に意見の対立起きたのだ。あかりが生まれたとき、まだ小さかった鉄平は事情を何も知らなかった。しかし、当時物心のついていた欽也は全て知っていた。欽也は、自分も何も知らなければ、こんなに苦しい思いはせずにすんだのにと捨て台詞を吐いた。

 あかりは、夏休みの吹奏楽部の練習のため学校に向かった。彼女は家族の前では明るく振舞っているが、彼らの態度がどこかよそよそしくなっていることに気づいており、ムシャクシャするのだった。

 部活の仲間で、親友で、音大への推薦入学が決まっている加奈(朝倉あき)から、一緒に音大に進学しようと誘われた。彼女が言うには、あかりの家族の中に音楽の才能のある者はいない。その中であかり一人が音楽好きで、トランペットに一生懸命打ち込んでいるのは、天賦の才があるに違いないと言うのだ。
 事情を知らない加奈の偶然の発言とはいえ、自分と家族との血の繋がりを否定されているようで、あかりは心苦しくなった。

 合奏練習が始まったが、あかりはトランペットを吹くことができなくなった。トランペットを吹くと、今までの自分とは違う誰かになってしまうような気がしてしまうのだ。彼女は急に練習部屋を飛び出して、寺へ向かった。

 人気のない寺でうっぷんを晴らすように叫び声を上げているところを、住職の隆円(尾美としのり)に見つけられてしまった。あかりは隆円も自分の母のことを知っていたのかと詰め寄った。きまりの悪い隆円は、とぼけた素振りを見せながらも肯定した。
 あかりは、自分はこれからどうすればいいかと相談した。すると隆円は鐘を撞けと言う。鐘を撞けば煩悩は消えるのだと言う。半信半疑ながら2度、3度と鐘を撞くと、あかりは確かにスッキリした。

 家に帰ったあかりは、自分がトランペットを好きになったのは今の家族の応援のおかげだと言い出した。血筋は関係ないと胸を張って宣言した。

 自室に篭って、初音(富司純子)からもらったトランペットを丹念に磨き、手入れをした。家族の前では見栄を切ったが、自分が変わりつつあることを自覚していた。これまでは単なるトランペット好きの少女であって、難しいことは考えずに済ませてきたのに、と思うのだった。

 翌朝、あかりは大阪に行ってくると言い出した。初音にトランペットを返しに行くという。このトランペットは、自分の物ではないし、自分の人生とも関係の無いものだ。だから、本来所有すべきである初音に返しに行くのだ。郵送ではなく、直接手渡して返す必要があると言い切った。

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