NHK『あさが来た』第120回

昨夜は@HIGUCHI_MAさんと一緒に思う存分フライデーナイトギター(金曜の夜にギターの練習をネット中継するという企画)ができて楽しかった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第120回めの放送を見ましたよ。

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第20週『今、話したい事』

萬谷与左衛門(ラサール石井)に刃物で腹部を刺されたあさ(波瑠)は意識を失い、病院に担ぎ込まれた。
手術は成功したものの、大量に出血したため危険な状態であった。あさは数日間眠ったままだった。

あさ危篤の知らせは、電報ですぐさま親族にも知らされた。
和歌山の姉・はつ(宮﨑あおい)は電報を受け取ると驚きのあまり腰を抜かして動けなくなってしまった。東京からは弟・忠嗣(興津正太郎)が駆けつけてきた。

新聞でも報道され、大隈重信(高橋英樹)も知るところとなった。大隈は、あさと会ったことで政界に復帰することを決意し、女子大学校の設立に向けて国から援助しようと思っていた矢先だった。あさを見舞う手紙を送った。

一方、加野銀行の店頭は大混乱した。あさが倒れたという噂を聞きつけ、加野銀行の経営に不安を持った顧客が殺到したのだ。
その中には、あさの容体を聞きに来た成澤泉(瀬戸康史)の姿もあった。しかし、支配人の山崎(辻本茂雄)は成澤を罵って追い返した。成澤があさへ女子大学設立をそそのかしたため今回の事態を招いたと言って恨んでいるのだ。成澤はどうすることもできず帰るしかなかった。
成澤が女子大学設立事務局に戻ると、大隈からの見舞いの手紙が届いていた。それを読んだ成澤は勇気づけられ、あさの回復を祈るのだった。

病院では、千代(小芝風花)がずっと看病していた。家族は千代の体調を心配し、一度家に帰って体を休めるように勧めたが、千代はその場を動こうとしなかった。
あさと折り合いの悪い千代ではあるが、自分の母がいなくなるかもしれないと思うとやはり悲しいのだ。千代は、これまであさが死ぬことなど一度も想像したことがなかった。その可能性を目の当たりにし、動揺しているのだ。新次郎(玉木宏)の前で泣き崩れた。

泣きつかれて眠ってしまった千代に変わって、新次郎が病室に付き添った。
目を覚まさないあさに向かって、新次郎は声をかけた。新次郎は、自分はあさに心の底から惚れていて、あさのすることは何でも応援するし、何をしても怒らないと約束した。
ただし、自分より先に死ぬことは絶対に許さないと話しかけた。話しながら新次郎は泣いていた。

そうしていると、あさは弱々しい声で「まだ死にたくない」と言った。
それを聞いた新次郎は、あさを励ますよう応えた。あさの座右の銘である「九転び十起き」と何度も声をかけた。
すると、あさはおうむ返しをした。最初は弱々しかった声がだんだんはっきりとしてきた。

そうしてついにあさは目を覚ました。
もう二度と意識が戻らないと思われていたところの奇跡の生還であった。

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NHK『あさが来た』第119回

フクロウちゃん(花粉症歴10年以上)に「今日もいっぱい花粉が飛んでますねー。木公さんも花粉症デビューしちゃいましょうよ。今日なんて目が腫れてるじゃないですか!インディーズの時代は終わりです、病院で血液検査を受けてメジャーデビューしましょう!!」とニコニコ顔で言われて切ない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第119回めの放送を見ましたよ。

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第20週『今、話したい事』

大隈重信(高橋英樹)が賛同したことで、あさ(波瑠)は東京で多くの賛同者を得ることができた。女子大学校設立へ向けて大きな弾みがついた。

喜んで大阪に帰ってきたあさであるが、大阪では大問題が発生していた。あさと加野銀行に関する悪い噂が流布していたのである。
あさは加野銀行の儲けを女子大学校につぎ込んでいるが、それが成功する見込みはない。莫大な投資が加野銀行の経営を圧迫し、銀行が倒産し、預金が返ってこないおそれがあるという噂である。このため、加野銀行には預金解約を求める人々が大勢詰めかけた。

頭取・榮三郎(桐山照史)、支配人・山崎(辻本茂雄)はこれまであさに対しては一目置いており、あさにやることにほとんど口出しはしなかった。しかし、今回の事件だけは重く見て、騒ぎが収まるまであさは表に出ないよう命じた。
根も葉もない流言ではあるが、事態は深刻である。新次郎(玉木宏)もあさを庇うことができない。あさは従うしかなかった。

あさは家の中でふさぎ込んでいた。そこへ、数日前から帰省している千代(小芝風花)が声をかけた。女学校卒業後の進路についてあさと相談したいのだという。
しかし、大阪での騒ぎに頭を痛めているあさは、まともに取り合う気力がなかった。千代は千代の好きなようにすれば良いと、力なく答えただけだった。

あさが真剣に取り合わなかったので千代は傷ついた。
あさにとって自分は足手まといであり、生まれてこなければよかったのだろうと怒鳴った。自分がいるせいであさは商売や学問に集中することができないに違いないと断じた。あさが自分に興味が無いのなら、自分は卒業後は好きな様に生きると宣言した。

その言い分にあさは気分を害した。
自分は千代のことを足手まといだなどと思ったことは一度もないと激しく反論した。むしろ、千代の相手をしてやれず申し訳ない気持ちでいっぱいだったと弁解した。千代に満足に乳を与えることもできず、千代が初めて言葉を喋ったり歩いたりした時も仕事で家を空けていた。それをとても残念に思い、辛かった話した。それでも、全ては娘のためだと思えば仕事にも精が出るのだと説明した。

あさの弁解も千代の耳にも届かなかった。
千代の立場からすれば、あさは常に娘より仕事を優先しているようにしか思えないのだ。あさがどれだけ話しても千代は受け入れなかった。
最後には互いに涙ぐみながら言い争い、物別れに終わった。

そんな折、萬谷与左衛門(ラサール石井)がまたしても加野銀行にやって来た。何度も融資を頼みに来るのだが、酒ばかり飲んで担保のあてのない萬谷に金を貸すわけにはいかず、毎回追い返している。

今日も追い返そうとしたところ、萬谷は大声でわめき始めた。加野銀行はあさが女子大学校に莫大な投資をするので直に潰れる、預金は早く引き出すべきだと叫んだ。周囲の客たちは不安になった。
さらに萬谷は、女子への教育は全くの無駄だと言いふらした。女にできることは男を悦ばせることくらいだなどと卑猥な発言をしながら、加野銀行の女子行員たちを追い回した。あさから学んだことを見せてみろというのだ。

普段は温厚な新次郎であるが、この時ばかりは激昂した。
新次郎は、男が女に乱暴することと、的はずれなあさの悪口を言うことだけは許せないというのだ。
萬谷を力づくでねじ伏せ、追い払った。

あさは、千代と和解したいと思った。
外出した千代を家の前で待ち構え、声をかけようとした。

その時、萬谷が再び姿を現した。
自分が冷遇されている仕返しとして、包丁であさの腹部を刺して逃走した。
あさはその場に倒れた。

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NHK『あさが来た』第118回

ここ数日、コンタクトレンズの調子が悪いし、全身に倦怠感があるし、鼻が少しムズムズするのだけれど、自分が花粉症だとは信じたくないので怖くて病院に行けない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第118回めの放送を見ましたよ。

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第20週『今、話したい事』

あさ(波瑠)は大学設立の助言をもらうべく大隈重信(高橋英樹)に手紙を送った。
しかし、大隈からの手紙は待てど暮らせど届かなかった。

噂によると、大隈と話をしたい人は彼の家を訪問するのだという。大隈も来る者は拒まないと聞いた。
そこで、あさは東京の大隈の屋敷へ直接出向くことにした。

大隈の家に着くと、確かに大勢の人々が集まっていた。
大隈の妻・綾子(松坂慶子)に訪問を告げると、彼女はあさの名前を知っていた。大隈はあさから届いた手紙を読んでおり、会うことを楽しみにしていたのだという。そのため、あさはすんなりと大隈に会うことができた。

大隈は、自分の教育観について語った。
女性の理想の姿は良妻賢母である。日本の女子教育が西欧に比べて立ち遅れているのは確かだが、良妻賢母となるのに必要な教育制度はすでに確立している。特に明治以降、女学校が整備され、良妻賢母教育は軌道に乗っていると言うのだ。
大隈の取り巻きたちも大いに頷いた。

あさは、雰囲気にのまれるわけにはいかないと決心した。周囲に気圧されないよう、力強く自分の考えをまくし立てた。
確かに今でもある程度の女子教育は行われているが、それで満足すべきではないと話した。それはまるで、目の前に落ちているビー玉に気を取られて、道の向こうにある宝石を見逃すようなものであるというのだ。100年先の社会を見据え、より大きな観点から教育方針を打ち立てるべきだと主張した。

確かに良妻賢母になることは重要であるが、より優れた良妻賢母になるためには世の中の動きに敏感である必要がある。そのためには高等教育が必須なのだと説得した。明治以降、女子が小学校に通えるように成り、女学校も設立された。しかし、男子に比べて就学年数は少ないし、女子向けの教科書では道徳教育に重きが置かれている。学問や実学を学ぶ機会はずっと少ないのだ。

女性も社会の一員となり、自立して生きる術や人を助ける術を身につけ、自らの幸せを追求し、国や社会の役に立つ人材となることが必要である。そのためには女子にも高等教育が必要だと説得した。
そこまで一気に話し終えると、成澤泉(瀬戸康史)の教育論を手渡し、あさは一息ついた。

大隈は終始難しい顔をして、口をへの字に曲げて黙って聞いていた。
他の訪問客たちも、あさの生意気な態度に反発した。

大隈は会合をお開きにして、あさ以外の訪問客たちを全員帰してしまった。

大隈は、あさの弁舌に心底感心したと話した。
大隈が政治家になって以来、政界を引退した今でも、周囲にはその場を言いくるめるような弁論をする者しかいなかった。それに対して、あさの主張は大局的で熱意があったので気に入ったというのだ。
そして、自分の周りには大勢が集まるが、自分の真の味方は一人もいないと嘆いた。

あさは大隈に同情した。
大隈が身を置いていた政治の世界も、あさが身を置く商売の世界も、生き馬の目を抜くような世知辛さがあると感じるのだ。

一方で、教育はそれと違っているという点であさと大久保の考えが一致した。
この世知辛い世の中において、裏表なく後世に残すことができるのは人材だけである。だから人を育てることが何よりも大切であるのだ。

ふたりは意気投合した。
そして、大隈はあさに協力すると約束した。

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NHK『あさが来た』第117回

産経ニュースに掲載されている『【異能の人・みうらじゅんに聞く】「完全に自分をなくすと、すごく爽快」「ブームはいつも誤解から生まれる…」』を読んで、内容はバカバカしいのだけれど生きる勇気が湧いてくるなと思う当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第117回めの放送を見ましたよ。

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第20週『今、話したい事』

あさ(波瑠)は、女子大学校設立へ向けた具体的な方針を立て、成澤泉(瀬戸康史)に説明した。

それには2つの重要な活動があるという。
1つは、世間の人々の女子教育への認識を改めさせ、理解を得ることである。これは成澤の得意とするところである。成澤の女子教育論を本にまとめ、配布するよう指示した。
もう1つは資金集めである。これはあさが担当すると話した。金の扱いはあさの得意とするところであり、成澤には教育について専念してもらいたいからだ。
あさは成澤の教育論の本を持ち、有名な資産家や商人、財界人から寄付を集めるべく奔走した。
しかし、応じてくれるものは皆無だった。

加野銀行の大口顧客である工藤(曾我廼家八十吉)にも相談した。
工藤は先代から加野屋を贔屓にしてくれている資産家である。娘・サカエ(横田美紀)を職業婦人にするため女学校に通わせ、今や彼女は加野銀行で立派に働いている。あさは工藤ならば趣旨に賛同してくれると思ったのだ。

しかし、工藤の反応はあさの予想の正反対だった。工藤は女子教育には反対だという。
その理由は、サカエとの関係にあった。工藤はサカエの縁談を準備し、嫁入りさせようと計画していた。しかし、サカエはそれを断ったのだという。結婚して家に留まるくらいなら、一生独身でも銀行で働き続けた方が良いと言っているのだという。工藤は、なまじ女子に学問を身につけさせてしまったせいで親の言うことを聞かなくなったと言って後悔しているのだ。
これ以上、不幸な親子を増やさないためにも、女子教育には反対だと言うのだ。工藤はあさに対して腹を立てて帰っていった。

その様子を見ていた榮三郎(桐山照史)もあさに対して憤慨した。
大口顧客である工藤との関係が悪化することは加野銀行にとって不利益となるからだ。栄三郎にこっぴどく叱られ、あさはしょんぼりしてしまった。

あさは新次郎(玉木宏)に胸の内を明かした。
世間には女子に教育を受けさせたいと思っている人がほとんどいないとわかって落ち込んだのだという。自分が子供の頃も女子への教育は必要ないと言われており、あさは望んでも勉強をすることができなかった。世間の考え方はその頃と全く変わっていないと嘆いた。

その一方で、あさには恵まれていた点もあったという。それは新次郎との出会いである。
新次郎は女子への教育に理解があり、あさを自由にさせてくれた。あさの欲しがっていた算盤を贈ってくれたことで、あさの未来が拓けた。

そのことを感謝し、今度はあさが今の女子たちの将来を拓いてやりたいと考えているのだという。
あさは新次郎から算盤をもらったが、今の自分が後世に残せることは女子大学を設立することだと話した。それが女性たちの将来への希望になると言う。

さらに、あさが女子大学を求めることにはもう一つ理由があるという。
あさは、自分ももう一度勉強をし直したいのだという。女子大学ができた暁には、自分も通いたいと述べた。できることなら、娘・千代(小芝風花)も入学させ、母子で共に学びたいのだという希望を述べた。

それらの話を聞いて、新次郎も深く感じ入った。あさをますます応援したくなった。

とはいえ、大学設立のための寄付は全く集まらなかった。
成澤は、東京の私立大学に出向き、寄付の集め方を担当者から聞き出そうとしたという。しかし、その極意が漏れると寄付者が奪われるおそれがあるので、全く教えてもらえなかったという。

現在、東京で有名な私立大学といえば、福沢諭吉(武田鉄矢)の作った慶應義塾と、大隈重信が作った東京専門学校である。

あさは、成澤が末端の寄付担当者に話を聞いたのが失敗だと思った。
そこで、大隈重信に直接手紙を書いて相談することにした。

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NHK『あさが来た』第116回

去る14日のバレンタインデーに東京在住のりえてぃちゃんから「チロルチョコ100個分」というメッセージとともにアマゾンギフト券1000円分が贈られて来たわけで、僕は早速コンビニにチロルチョコを買いに行ったわけだけれど、今日ではチロルチョコが値上がりして単価が10円ではないということにりえてぃちゃんも僕も気づいてなかったわけで、結局1000円では40個弱しか買えず、バカバカしくなって100個買い集めることは放棄したのだけれど、今日スーパーに行ってみれば偶然チロルチョコが投げ売りされていたのでせっかくなのでコンプリートしてみた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第116回めの放送を見ましたよ。
2016-02-16 18.56.49

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第20週『今、話したい事』

あさ(波瑠)は、女子大学校の設立を目指す成澤泉(瀬戸康史)にもう一度会って話がしたいと思っていた。
しかし、成澤の行方がわからなくなってしまった。あさは毎日成澤を探しまわったが、見つからない。そうしているうちに、あさは九州の炭鉱へ出かけなければならなくなった。
一日でも早く成澤に会いたいと思ったあさは、自分の留守中、新次郎(玉木宏)に成澤を探すよう頼んだ。

新次郎は、あさが成澤に執着しているのが面白くなかった。けれども、あさの頼みとあっては無視するわけにもいかず、形だけでも町を見て歩くことにした。

成澤捜索に身が入らない新次郎は、銀行支配人・山崎(辻本茂雄)と連れ立って晴花亭へビールを飲みに出かけた。
すると、店内には英語で朗々と歌う奇妙な男がいた。女将・美和(野々すみ花)の説明によれば、その男は貧乏で飲食をする金もないのだが、連れから歌を歌えば奢ると言われてその通りにしているのだという。

新次郎は成澤の顔を知らなかった。しかし、成澤のことを知っている山崎によれば、そこで歌っているのが成澤本人だという。
ひょんなところで成澤はあっさりと見つかった。

あさが九州から帰って来る日、新次郎は家に成澤を呼び寄せ、あさと対面させた。
あさと成澤は、共に感激して再開した。あさは成澤の女子教育論に心の底から感銘を受けたことを話し、成澤はあさが理解を示してくれたことをとても喜んだ。

ふたりは女子大学設立に向けた話し合いを始めた。
成澤の希望は、あさに設立賛同者として名前を連ねて欲しいというものだった。賛同者の中に著名な女性実業家がいることで箔がつくというのだ。
あさは、自分が名義貸しにだけ利用されると知って憤慨した。あさは自分も実際的な働きをしたかったのだ。

それまで成澤に対して丁寧な言葉づかいだったあさだが、急に言葉が厳しくなった。
あさ以外に何人の賛同者が集まったのか成澤に問いただすと、たった11人だという。成澤は、自分が教育界では厄介者扱いされているから賛同者がなかなか集まらないのだと言う。成澤が女子教育について学ぶためにアメリカに留学している間に、日本国内での女子教育に対する世論はかえって交代してしまったのだと話した。女に学問は必要ないという考え方が大きくなり、女学校も減っている。そのため、女学校推進を唱える自分は嫌厭されているというのだ。それと言うのも女子教育に対する政府の方針が誤っているからだと弁解した。

あさは、成澤の熱意と見識の深さは大いに認めている。しかし、実行力が伴っていないと見ぬいた。自分が支えなければ、成澤の計画は頓挫すると思った。

あさは、女子大学設立に必要な資金をざっと見積もった。その結果、およそ30万円(現代の価値で約15億円)が必要だと計算された。
成澤にどうやって資金を集めるつもりだったのかと尋ねると、彼は賛同者からの寄付で賄うつもりだったと答えた。西欧では、教育方針に賛同した人々から寄付を集めて学校を作るのが一般的なのだという。だから、成澤はその方法を踏襲するつもりだったのだ。
30万円もの寄附を集めるだけの賛同者が現れるとは思えない。そこで成澤は、とりあえず集まった寄付額に応じた規模の学校を作るつもりだと答えた。

あさは銀行から融資を受けることを勧めた。
しかし、成澤は借金はしたくないと断った。一度金を借りてしまうと、返済する責任が発生する。そうなると、学校が教育の場ではなく、金儲けのための「経営」の場になるというのだ。成澤は、自分は実業家ではなく「教育者」なのだから金は一切借りたくないと断った。

あさは、成澤の志の高さは認めるものの、学校設立の計画が机上の空論にしか思えなかった。成功する見込みが全く無いと思われた。
一方で、成澤の顔も立ててやらなくてはならない。

そこで、あさは、自分の私財の中から現金を成澤に手渡した。貸付ではなく、成澤への寄付という形にし、食うものにも困っている成澤を援助した。
さらに、同じく寄付という形で、成澤に洋服を誂えさせた。ボロボロの着物を身につけ、風呂にも入らない姿では人の信用は得られないし、加野銀行に出入りするのも具合が悪いからだ。
成澤は素直にそれを受け取った。身なりを整えた成澤はまるで別人のように見違えた。

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NHK『あさが来た』第115回

いくらしたたかに酔ったからといってヘイトスピーチは絶対に許されるべきではないと強く思うような事件が身近で起きたわけだけれど、後になってその事件を少し冷静になって思い出した時、「いくらしたたかに酔ったからといって女性の肩を抱いたり、『2000円払うから胸を触らせてくれ』って迫ったりする自分はどうなのよ?大いに反省すべきだ」と自問自答した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第115回めの放送を見ましたよ。

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第20週『今、話したい事』

あさ(波瑠)は、成澤泉(瀬戸康史)から女子大学を作りたいという話を持ちかけられた時、現実味のない絵空事だと思った。
あさが銀行を開業してからというもの、荒唐無稽な事業計画を語るばかりで成功や返済の見込みのない融資希望者を何人も見てきた。成澤の話し方や振る舞いは大げさで軽薄であった。無理な融資を頼みに来る者たちにいかにもそっくりだったのだ。

あさは成澤を体よく追い払ったつもりだったが、彼の夢に共感する部分もあった。あさ自身、幼い時から勉強をしたかったのに、男子と女子は別だと言われ叶わなかった過去があるからだ。それで、成澤から押し付けられた彼の女子教育に関する論文原稿だけは読んでみることにした。

その原稿は、あさの想像を絶する素晴らしさだった。
女子を教育し、人として、婦人として、そして国民として育成する必要性が主張されていた。女子にも高等教育を行うことで生きがいを育み、技術や能力の開発を行い、独立し自立した生活ができるようにするべきだと記されていた。社会の様々な側面で役に立つ人材として女子を教育するとともに、彼女らの能力を活かせる場や環境の整備も説かれていた。さらには、100年先の社会を見据え、将来にわたって女性が自活できるための教育方針を打ち立てる必要があるとも書かれていた。

いずれも具体的な方針が示されており、成澤が全身全霊をかけて女子教育のことを考えていることがひしひしと伝わってきた。
そして、成澤は男であるにもかかわらず、これほどまで真剣に女性の将来のことを考えているということに感激した。
あさは泣きながら原稿を読み、また、人に成澤の論考を説明する際にも涙無くしては話せなくなった。

早速あさは成澤にもう一度会って、よく話しあおうとした。
しかし、どういうわけか成澤の姿が町から消えた。成澤の家に毎日通ったり、町中を探したりしたが、成澤に会うことができなかった。
成澤は栄養失調になるほどの貧困ぶりである。どこかで行き倒れたのではないかと、あさはひどく心配した。

なんでもあさの自由にさせる新次郎(玉木宏)であったが、今回のことだけはどうにも面白くなかった。

もちろん、女子教育の充実は新次郎も望むところではあった。
男であれ女であれ、学びたいと思う者が望みのままに学べることはいいことだと思っている。あさの強い願いにも協力したいと考えている。

しかし、新次郎は成澤個人に嫉妬していた。
新次郎は成澤の姿を見たことはないのだが、成澤は若くて色男だという。そんな男にあさが執心するので、新次郎は妬いているのだ。
そろそろあさは九州の炭鉱に出張しなければならない。あさは、自分の留守中に新次郎が成澤を探すよう頼んだ。しかし、新次郎は断るのだった。

そのころ京都の女学校では、千代(小芝風花)と田村宣(吉岡里帆)が休暇中の過ごし方について話をしていた。

宣は実家に一切帰ろうとしない。
宣の説明によれば、親から卒業後の進路を聞かれるのが嫌なのだという。その面倒を避けるために、実家には帰らないのだ。

一方の千代は、休みのたびに大阪に帰省する。
千代によれば、祖母・よの(風吹ジュン)が寂しがっており、自分の帰りを楽しみにしているから頻繁に帰るのだと話した。

あさに憧れる宣は、一度千代の実家に遊びに行きたいと話した。そこであさに会って見たいというのだ。千代は歓迎し、いつでも迎え入れると約束した。
ただし、あさに会える保証はないと説明した。あさはいつも忙しく飛び回っているからだ。
さらに千代は、あさが家にいない方が気が楽だと軽口を叩いた。自分が小さい時からあさは家にいなかったので、なまじ家にいると気づまりするというのだ。

その話を聞いた宣は、あさの本に書いてあったというエピソードを話して聞かせた。
九州の炭鉱で大きな落盤事故が起きた時、あさは大阪にいたのだという。通常なら九州に詰めていたはずだが、その時は出産のために大阪にいる時間が長かったと書いてあったという。事故の後始末に関しても、子供の世話があったので現地で十分な働きができなかったと言っているという。事故の責任の多くは自分にあると反省していたと言うのだ。

千代は胸を詰まらせた。
自分のことは放っておくばかりだと思っていた母・あさであったが、家が潰れるかどうかの瀬戸際の時に全てを投げ打って自分と一緒にいてくれたと知ったからだ。

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NHK『あさが来た』第114回

オトナ扱いされているのか、コドモ扱いされているのかよくわからない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第114回めの放送を見ましたよ。
2016-02-13 09.27.42

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第19週『みかんの季節』

成澤泉(瀬戸康史)は、強引にあさ(波瑠)との面会を取り付けると、一方的に自分の意見をまくし立てた。

成澤はアメリカに留学していたことがあるという。加野銀行が女子行員を雇っている噂はアメリカにまで伝わっていたという。現金の取り扱いを女子にやらせるなど、これまでは常識はずれなことである。成澤は、どうせ客寄せに過ぎず、店の中で掃除でもさせているのだろうと思ったという。
しかし、帰国して様子を見に来たところ、成澤の予想はいい意味で裏切られたのだという。女子行員たちは接客の礼儀作法のみならず、計算も間違いなく行っている。店を華やかに見せる効果があるが、決して目立ちすぎることなく、各自が人格を持ち業務を遂行している。

成澤は、誰がここまで教育したのかが気になり調べた。すると、教育者はあさであることがわかり、ここでも女性が活躍していることに感銘を受けたのだという。

そこまで一方的に話すと、成澤は倒れてしまった。貧乏で3日間何も食べておらず、栄養失調になっていたのだ。店でしばらく休ませた後、行員に家まで送らせた。
その後調べてみたところ、成澤は女子行員・ハト(加藤千果)の通っていた女学校で教師をしていたことがあると判明した。その後、自身の夢をかなえる為、留学等で金を使い果たし、妻に愛想を尽かされ、今は貧し家で暮らしているという。

加野銀行でそんな騒動があったとき、新次郎(玉木宏)はひとりで京都の千代(小芝風花)に会いに来ていた。
千代はすっかり女学校に馴染み、寄宿舎で同室の田村宣(吉岡里帆)とはすっかり親友になっていた。今や互いに冗談を言い合って笑い合う仲だ。宣は新次郎に会うのは初めてだ。宣は、あさについて書かれた記事や千代からの話で新次郎のことはおおよそ知っていたが、実際に会って見ると想像以上に素敵な男性であり父親だと思った。宣はすっかり新次郎のことも気に入った。

新次郎は、千代にあさのことを話した。
新次郎はあさのことを尊敬し、彼女の生き方を認めているという。しかし、全ての女性があさのようになるべきであるとまでは考えていないという。ましてや、あさ自身も自分の生き方に迷っている節があると話した。あさは、千代と同じように、はつ(宮﨑あおい)のような女性になることに憧れている部分があるという。しかし、今の自分にはこの道しかないと思って前を向いて進んでいるのだと話した。
あさは、千代に家業の手伝いをして欲しいと考えているが、それも確固とした意見ではなく、今でも迷っているのだと明かした。
千代は、あさの意外な一面を知った気がして驚いた。

それからしばらくして、成澤がまたしてもやって来た。
成澤は女子教育を普及したいと考えていると語った。そのためにあさに力を貸して欲しいというのだ。

成澤はアメリカで女子教育について学び、日本の女子教育の歴史についても詳しかった。
明治維新後、女性の地位向上が語られるようになった。明治3年には横浜のヘボン療養所で日本初の女子教育が行われた。その翌年には、5人の女子がアメリカに留学した。東京や京都に女学校が作られ、明治8年には官立女子師範学校が開校した。
女子教育はめまぐるしく発展している。

しかし、成澤によれば、日本では女子に対して門戸が開かれていない物がある。それは女子大学校だ。
成澤は女子大学を作りたいと思っている。その設立のため、あさに賛同して欲しいというのだ。

あさは成澤の言うことはもっともだと思った。
しかし、成澤の身なりのみすぼらしさを見ると、単なる妄想に過ぎないと切り捨てた。彼のみすぼらしい身なりを見るにつけ、彼に理想を実現する実力はないと判断したのだ。あさは成澤を追い払おうとした。

食い下がる成澤は、自分が書いたという女子教育に関する論文原稿をあさに手渡した。それを押し付けると、成澤は帰っていった。

その夜、あさはとりあえず原稿を読んでみた。
すると、想像以上に立派な意見が述べられていた。あさは何度も読み返した。読み返すたびに涙があふれた。
この世にはなんと素晴らしいことを考える人がいるのかと感動したのだ。

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NHK『あさが来た』第113回

道産子のところには道産品が集まるのだなぁとしみじみ郷愁が湧き上がっている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第113回めの放送を見ましたよ。
2016-02-11 15.44.44

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第19週『みかんの季節』

加野銀行支配人の山崎(辻本茂雄)は、迷惑な客の名前と似顔絵を書き出して、行員たちの机に貼っていた。業務遂行の妨げになるので、来店したら追い返すように指示していたのだ。

それには4人の男が記されていた。
1人目は、萬谷与左衛門(ラサール石井)だった。昔は立派な商家だったが、維新後は没落して困窮している。今では酒ばかり飲んで、泥酔しては加野銀行へやってくる。いくら断っても、担保無しで金を貸せと喚くのだ。

2人目は山屋与平(南条好輝)だった。山屋はあさ(波瑠)や新次郎(玉木宏)と親しい知人であり、大阪を代表する商人の一人である。あさは驚いて山崎に事情を聞いた。
山屋は近頃代替わりして、隠居したのだという。隠居した途端、跡取りの妻が山屋のことを邪険に扱うようになったのだという。家に居づらくなり、かと言って他に行く所もないので暇さえあれば加野銀行に顔を出すのだという。そして、顔見知りの行員に声をかけて話し込むため、業務の妨げになっているという。そのため、要注意人物として閻魔帳に載せたのだという。

3人目は、大口顧客の工藤(曾我廼家八十吉)だった。工藤の娘・サカエ(横田美紀)は職業婦人になることを希望しており、縁あって今では加野銀行で働いている。
工藤は娘が可愛くて仕方がなく、娘の働きぶりを頻繁に見に来るのだ。特に他人に迷惑をかけるわけでもないが、当のサカエがやりにくくて仕方ないのだという。そのようなわけで要注意人物にした。

最後の1人は氏名不詳の男だった。名前は分からないが、ワカメがふやけたような染みのついた羽織を着た、汚い身なりの男だという。
何をするわけでもなく、店の中でニタニタと女子行員を眺めてばかりいるのだという。そして、しきりに女子行員への指導方法について尋ねてくる気持ちの悪い男だった。気味が悪いので、この男も要注意人物とした。

そして、1894年(明治27年)の夏となった。
親の許しを得て和歌山からやってきた藍之助(森下大地)は行員見習いとして加野銀行で働いていた。女子行員よりも序列は下で、掃除などの雑用しかさせてもらえていなかったが、藍之助は誰よりもいきいきと働いていた。

また、この頃、日清戦争も始まった。
戦争前の世論では戦争に反対する論調が多かったが、いざ開戦してみると戦争に賛成する声が大きくなった。江戸時代までは戦は武士のみが行うものだったが、近年の戦争では国民が誰でも兵隊になることができた。暴力を好まないあさは、どこか気分が暗くなるのだった。
一方、戦争による好景気で日本の経済は加熱していた。たとえば、東京では缶詰工場が繁盛しているという。

好景気による需要の増加と労働者需要の増加で人手不足となり、新次郎が社長を務めていた尼崎の阪神紡績は工員不足が深刻化してきているという。
そのような重要な時期にもかかわらず、新次郎は突然、阪神紡績の社長を辞任したと打ち明けた。自分のこれからの人生を考えなおした時、紡績業は自分のやるべきことではないと思い至ったのだという。
自分に向いていることは、経済や経営のことを考えることではなく、身近な人の悩みを聞くことだと思いだしたのだという。これからは、弟・榮三郎(桐山照史)やあさの愚痴を聞く「相談役」としてやっていくと勝手に決めた。
あさは落胆し、呆れた。抗議したが新次郎は全く聞く耳を持たなかった。

そんなある日、閻魔帳の「ワカメ男」(瀬戸康史)がまたしてもやって来た。行員たちは彼を追い払おうとするが、その男はあさに面会することを要求し、一歩も動こうとはしなかった。
彼の態度に気圧され、あさは彼を面会室に通してしまった。

その男は、成澤泉と名乗った。

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NHK『あさが来た』第112回

Goose houseの男子チームが「365日の紙飛行機」をカバーしている映像を見た当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第112回めの放送を見ましたよ。

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第19週『みかんの季節』

女学校の寄宿舎で千代(小芝風花)と同室の田村宣(吉岡里帆)は田村宣はあさ(波瑠)に憧れている。
あさのことを紹介した新聞記事を大事に保管しており、あさについて書かれた書物も全て読んでいるという。千代があさの娘だと知らない宣は、あさがどんなに立派な女性であるかを説明し始めた。

宣の説明:

  • 加野屋には遊んでばかりの頼りない跡取りしかいなかったが、あさが嫁入りして実権を握り、商売を立て直した
  • 加野銀行の頭取と加野商会の社長を兼任している
  • 言うことを聞かない鉱夫たちを常にピストルで脅し、従わせている
  • 洋装と化粧でいつも美しい姿でいる
  • 座右の銘は「七転び八起き」

千代は宣の言っていることが全て間違いだと指摘した。

千代によるあさの説明:

  • 加野屋の跡取りは遊び人ではなく、今では立派な経営者となっている
  • 加野銀行の頭取は榮三郎(桐山照史)、加野商会の社長は新次郎(玉木宏)であり、いずれもあさではない
  • あさは一度だけ誤って銃を暴発させた。それ以来は恐ろしくなって拳銃に触れようともしなくなった
  • 身なりを整えるのは写真撮影の時だけ。いつも髪を振り乱し、スカートを履いても大股で歩き回っている
  • 座右の銘は「九転び十起き」

一気にまくし立てた千代であったが、どうしてあさのことでムキになったのか自分でもわからなかった。

その週末、千代は大阪の実家に帰省した。
その日は、ちょうどあさが和歌山から帰ってきた日でもあった。

はつ(宮﨑あおい)たち一家を見て親子のあり方を考えなおしたあさは、優しく千代に話しかけた。
あさの豹変ぶりに戸惑う千代であったが、千代自身も宣とのやり取りを通じてあさに対する態度に変化の兆しが見えていた。

千代は、寄宿舎で宣と友だちになったことを話した。
ただし、宣があさに憧れているということは話さなかった。その代わり、宣が巴御前に憧れていると紹介した。良妻賢母を理想とする千代とは気が合わず、初めは喧嘩ばかりしていたが、いつの間にか仲良くなってしまったと話した。
あさは、自分の娘に友だちができたことを素直に喜んだ。

ある日、加野銀行に萬谷与左衛門(ラサール石井)がまたやって来た。泥酔しており、店の中で「金を貸せ」と言って騒いだ。
あさは前回と同じように、担保や返済の見込みのない者には融資できないと言ってきっぱりと断った。男たちに指示を出し、萬谷を抱えて店から追い払った。
萬谷はあさを恨んだ。

騒ぎが起きたことで支配人・山崎(辻本茂雄)は行員たちを叱った。
彼は事前に、問題のある客の名前と似顔絵を記した閻魔帳を作り、行員たちの机に貼っておいた。そのリストには萬谷も掲載されている。それなのに萬谷を応接間にまで通してしまったことを叱ったのだ。

あさはその閻魔帳のことを知らなかった。山崎の手腕に感心した。
そして、閻魔帳を確認していると意外な人物が掲載されていることに驚いた。

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NHK『あさが来た』第110回

田村宣役の吉岡里帆さんについては、劇中のメイク・衣装はもっさりしていて全然魅力的ではないのだけれど、googleで画像検索すると水着の刺激的な写真がいっぱい出てきて鼻の下の長さがが20%増量(当社比)してしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第110回めの放送を見ましたよ。

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第19週『みかんの季節』

和歌山県有田のはつ(宮﨑あおい)を訪ねたあさ(波瑠)は、みかんの収穫を見学した。
一家総出で収穫に当たらねばならず、それは大変そうであった。

藍之助(森下大地)も不平を言わず、まじめに働いている。
藍之助の本心は、商売で身を立てることであり、みかん農家で一生を終えたくはないと思っている。その希望を知っているあさは、複雑な思いで藍之助が働く様子を見ていた。

畑での収穫が一段落すると、はつはみかんの出荷準備にとりかかった。あさはその様子を見物しながら、はつとふたりきりで話をしていた。

するとそこへ菊(萬田久子)がやって来た。そして、藍之助を加野銀行で正式に雇ってくれるようあさに頼むのだった。
藍之助は学業優秀で、商売の才能も希望も持っている。庄屋の息子たちよりも優秀なのに、彼らばかりが村を出て勉強を続け、藍之助が村に残るのはおかしいというのだ。また、藍之助に村の将来を背負わせるのも筋違いだと主張した。藍之助は有田のために生まれてきた子ではなく、山王寺屋のために生まれてきた子だというのだ。本人もそのつもりだ。周囲の期待を過度に背負わせ、一生をみかん農家として埋もれさせるべきではないと訴えた。

しかし、あさは自分の一存では決められないと言って、やんわりと断った。
すると菊は怒って出て行ってしまった。

はつは、藍之助が家出する直前の出来事を語った。
藍之助は、惣兵衛(柄本佑)が大阪での両替商を廃業し、和歌山でみかん農家になったことを惣兵衛本人に対して詰ったのだという。惣兵衛は黙って聞いていたが、はつが叱ったのだという。
はつの考えは、惣兵衛は軽い気持ちで両替商を辞めたのではなく、熟考の末の決断だった。みかん農家になった後も、苦労して山を開墾してきたのだ。そのような惣兵衛を侮辱するのは許せないというのだ。
はつが藍之助を殴ろうとしたら、惣兵衛が止めに入った。その直後に藍之助は家出をしたのだ。

その時のことを思い出すと、はつは今でも悔しいのだという。今の暮らしは惣兵衛がやっとの思いで選んだ道である。それを我が子がバカにすることが悔しくてならないのだ。藍之助が実業家に憧れるのは、幼い時から菊に山王寺屋の栄華を聞かされて育ったせいもある。はつは、母親である自分が藍之助へ十分な影響力を与えられなかったことも悔しいのだ。

藍之助は、あさにも憧れているのだという。明治維新期の危機を乗り越えて家を守っただけではなく、その後は事業を次々に拡張していった。その手腕は素晴らしいし、はつも認めるところだ。
しかし、はつは、自分たちの暮らしもあさに負けず劣らずだと自信を持っているのだという。特に、一家総出で収穫するのが何より楽しみなのだという。1年間手塩にかけて育ててきたみかんが立派に実り、1年間の苦労をみんなで語り合いながら出荷する。家族としてこれほど楽しいことはないのだという。
その気持を藍之助にも理解してほしいのに、藍之助はわかろうとしない。それも悔しいことであると話した。

あさとはつは、自分の心に起きることは自分でどうにでも変えることはできるが、人の心を動かすのはどんなに難しいことかと話し合うのだった。

その頃、外出していた新次郎(玉木宏)と惣兵衛も藍之助のことを話題にしていた。

藍之助から、みかん農家になった自分をバカにされた時、惣兵衛自身はなんとも思っていなかったのだという。むしろ、はつの剣幕に驚いてしまったのだという。
惣兵衛は、親の引いた道から自ら外れて楽になった身分である。親から自由になることの楽しさを人一倍知っているのだ。だから、藍之助の気持ちがよく分かるのだという。
惣兵衛自身は、金の貸し借りで身を削る苦労よりも、畑で体を動かして汗を流す苦労のほうがよほどマシだと思っている。しかし、藍之助も同じように思うという道理はないのだ。だから、藍之助の自由にさせてやる必要があると思っている。
ただし、頭では藍之助を自由にさせた方がいいとわかっていても、みかん栽培の日常を思うと藍之助には村に残って欲しいと思っていると話した。父・栄達(辰巳琢郎)は年をとって体の自由が効かなくなってきた。次男・養之助(西畑大吾)はまだ幼く、働き手としては心もとない。貴重な男手として藍之助が手放せないというのだ。
惣兵衛は、子を思う親心と農家の世帯主として板挟みになっているのだった。

同じ頃、京都白川高等女学校の寄宿舎に入った千代(小芝風花)は、同室の田村宣(吉岡里帆)に頭を痛めていた。
宣は一日中本ばかり読んでいて、部屋に千代がいても全く口を利こうとはしない。おしゃべり好きの千代はつまらない思いをしていた。

宣がやっと口を開いたかと思えば、堅苦しい話しかしなかった。
宣は、女の新しい生き方を身につけるために学校に入ったと話し始めた。これまでの女性は男に頼らなければ生きていられなかったが、これからの女性は学問を身につけ、独立する必要があると話した。そうして、国家に尽くす人物になる必要があるというのだ。

そして、いつも着物や髪型にばかり気を配り、花嫁修業のために学校に来たと言う千代のことをバカにした。
女らしいものが好きな千代ではあるが、負けず嫌いな点だけは母親譲りである。すぐさま宣に反論した。天下国家のために働く中心は今も昔も男であり、女はそれに従い支えるための淑女の徳を身につけることが最優先だと反論した。

宣は自分の理想の女性像を語り始めた。
彼女のあこがれは、新聞記事に掲載されていた女性実業家なのだという。
千代がその切り抜きを見てみると、それはあさの記事だった。

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