NHK『ブギウギ』第95回

今日も人間ドック2日目で夜までお預けとなった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第95回めの放送を見ましたよ。

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第20週『ワテかて必死や』

靴磨きの少年・達彦(蒼昴)が商売敵の少年たち(池田龍生宮崎奏太)に暴力を振るわれ怪我をした。鈴子(趣里)は達彦を助けて家まで送って行った。そこで、達彦が大親友の幼馴染・タイ子(藤間爽子)の息子だと知った。

鈴子はタイ子との奇跡的な再会に感激した。しかし、タイ子は赤の他人であるかのように振る舞った。今やすっかり落ちぶれ、母と子ふたりきりで貧乏な暮らしをしている。その上、自身は病気で働けず、一人息子を学校にも行かせずに働かせている。そのような姿を鈴子に見られたことをこの上なく恥じているのだ。
タイ子は鈴子を追い返した。鈴子もそれ以上引き下がるわけにもいかず、渋々退散した。

後日、鈴子は街で靴磨きをしている達彦に声をかけた。達彦は初めこそ母に気を遣って鈴子を無視しようとしたが、鈴子が屈託なく明るく話しかけたことで態度を軟化させた。
これまで鈴子は歌手をやっているとは話していたが、名乗ってはいなかった。けれども、達彦は目の前の人物が福来スズ子だと見抜いた。母・タイ子は以前から『東京ブギウギ』など鈴子の歌を大変嫌っていた。鈴子はタイ子の幼馴染だと言って声をかけたのに、タイ子が激しく拒絶する様子を見て勘付いたという。
達彦によれば、彼の父は戦死したという。親戚もみんな死んでしまっており、父が戦死した時も、母・タイ子が病気になった時も助けてくれる人はいなかった。鈴子は、子供の頃タイ子とどんなに仲が良かったか話して聞かせた。特に、鈴子に歌劇団の存在を教えてくれたのはタイ子であり、いわば福来スズ子の生みの親だと話した。達彦はそれを聞いて喜んだ。

別の日、鈴子はパンパンの元締め・おミネ(田中麗奈)にタイ子のことを話して相談した。
おミネは、タイ子が貧乏で病気までした姿を幼馴染に見せたくないのは当然だろうと話した。鈴子がいくら助けたいと思っても、施しなど受けたくないと言うのも当然だと説明した。おミネたちパンパンも誰かに施しを受けるのではなく、自分の力で生計を立てたい気持ちは同じである。だから、人々から後ろ指を刺されても売春を続けるのだと話した。

おミネの話を聞いているうちに、鈴子はタイ子と達彦が自分たちの力で生きていく方法を思いついた。それは、パンパンたちを達彦に紹介するということであった。パンパンたちは客引きのために派手なハイヒールを履いており、その美しさが売上に結びつく。達彦にとっても労せず多くの客を得ることができる。
おミネはそのアイディアに賛同し、多くの女性たちを達彦のところへ連れてきた。パンパンたちはこれまで利用していた老人の靴磨きよりも達彦の方が上手だと褒めそやした。しかも、以前の老靴磨きはどさくさに紛れてスカートの中を覗き込んでくるという。そのようなスケベ心のない達彦をますます気に入ったのだ。
その様子を見た商売敵の少年たちがまたしても達彦に難癖をつけようとしたが、おミネは彼らも追い払ってくれた。おミネが付近を仕切っているヤクザの名前を出すと少年たちは恐れ慄いて逃げて行ったのだ。

その日、達彦は過去に例がなかったほど多額の売上金を手にした。タイ子の治療費にはまだまだ足りなかったが、この調子で続けていけば近い将来には治療の目処が立ちそうだった。
帰宅した達彦は、喜び勇んで売上金をタイ子に見せた。しかし、タイ子は達彦のことを叱りつけた。今までに見たことのない売り上げだったので、達彦が盗みをはたらいたと思い込んだのだ。

外から様子を伺っていた鈴子だったが、タイ子の一方的な誤解を正すために家に飛び込んだ。もちろんタイ子は赤の他人を装い、鈴子を追い返そうとした。
我慢のならなくなった鈴子は、子ども時代の思い出を次から次へと捲し立てた。鈴子自身の本名、鈴子の実家の銭湯、転校生の鈴子にはじめに声をかけてくれたのがタイ子だったこと、それから大親友になって毎日一緒に遊んだこと、タイ子の母は綺麗な人で芸者だったこと、その母から二人一緒に日舞を習っていたこと、タイ子の初恋相手に鈴子がラブレターの代筆をして騒動になったこと、そんなラブレター事件もタイ子が優しく許してくれたことなどである。
タイ子は泣き叫びながらやめさせようとした。しかし、鈴子は止まらなかった。いつしか鈴子も目に涙を浮かべ、ふたりは抱き合った。

タイ子はついに本音を話し始めた。
芸者だった母が空襲で死に、夫も戦死した。他に身寄りもなく、自分は病気で寝たきりである。年端もいかない一人息子を働かせなければ生きてけない。自分は不幸のどん底にいるのに、あちこちから鈴子の歌が聞こえてくる。自分はギリギリ生きてくのに精一杯なのに、鈴子は自分の夢を叶えて活躍している。鈴子と自分は天と地の違いがあると嘆いた。

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NHK『ブギウギ』第94回

今日は人間ドックのため7時半に家を出なければならなかったので朝の放送を諦めた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第94回めの放送を見ましたよ。

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第20週『ワテかて必死や』

鈴子(趣里)のインタビュー記事が雑誌に掲載されたのだが、記者・鮫島(みのすけ)が勝手に手を加え、あたかも鈴子がパンパンたちの庇護者を自認しているかのような内容になってしまっていた。
パンパンの元締め・おミネ(田中麗奈)は日陰者の自分たちを勝手に悪目立ちせさるなと言って鈴子の楽屋でひとしきり騒いで帰って行った。

鈴子はおミネの誤解を解こうと、パンパンたちの根城である有楽町へ単身出向いた。鈴子はたちまちパンパンたちに捕まり、彼女らの寄合所に連れて行かれた。
鈴子は誤解を解くために来たと説明したが、おミネたちはまったくの喧嘩腰だった。

おミネは、鈴子と自分たちでは立場が違うのだと話した。
鈴子は好きでもない男に抱かれた経験はないだろうから、パンパンの気持ちがわかるはずがないと言う。彼女らは戦争で家族や夫を亡くし、金も食べ物もなかった。体を売らなければ到底生きていけなかったのだ。しかも、その戦争だって彼女らが始めたものではない。知らない誰かが勝手に始めて、勝手に負けたのだ。彼女らは知らないうちに巻き込まれて不幸な目にあったのだ。それなのに世間は冷たく、彼女らは口汚く罵られ、石まで投げられる。
世間の人々は自分たちを見下す一方で、流行歌手・福来スズ子に熱狂している。同じ世間なのに、扱いが全く違う。
ましてや、鈴子自身はお気楽に歌っているだけであり、パンパンの生活を想像できるはずがないと言うのだ。

はじめは小さくなって聞いていた鈴子だが、「お気楽に歌っている」と言われて頭に来た。堰を切ったように反論した。
自分は全く気楽ではなく、パンパンたちと同じように死に物狂いだと主張した。母を病気で亡くし、弟が戦死し、最愛の夫は結核で死んだ。生きていく気力を無くしかけたが、夫との間に生まれた子どものことを思うと必死に生きて守らなければならない。寂しい悲しいなどと泣き言を言っている暇はないし、辛くてへこたれそうな時も笑顔を振りまいて歌うしかないと訴えた。
仕事の内容こそパンパンたちとは違うものの、必死なのは同じだと主張した。最後は涙声になっていた。

おミネは、鈴子の楽屋へ怒鳴り込んだ時、そこに赤ん坊がいたことを思い出した。鈴子が必死に子育てしているという話に嘘はないとわかった。他のパンパンたちも、鈴子と同じように夫や家族を病気、戦争などで亡くしていた。互いに同じ境遇にあるということを理解した。
鈴子は、自分の芸名・福来スズ子は亡き母が「福が来るように」という願いを込めて付けてくれたと説明した。おミネはそれに感じ入り、希望を抱いて自ら笑うことが幸せに生きる秘訣なのだと悟った。
こうして、鈴子とおミネたちパンパンは和解した。

ある日、鈴子は顔馴染みの靴磨き・達彦(蒼昴)が他の少年たちに因縁をつけられているのを目撃した。縄張りを荒らしたとして暴行を受け、売上金を全て巻き上げられたところだった。
達彦は足に怪我をしてうまく歩けなくなってしまったので、鈴子は彼の家まで送ってやることにした。

達彦の家は粗末なものだった。鈴子は家の前まで達彦を送り届けると、そのまま帰ろうとした。その時、中から咳き込む母親の声が聞こえてきた。鈴子は気になり、ガラスすらはまっていない窓から中を覗いてみた。

そこから見えたのは、息子の帰宅を迎えるためにせんべい布団から体を起こした母親の姿だった。彼女は屋外の気配に気づき、鈴子と目があった。
その母親こそ、鈴子の幼馴染のタイ子(藤間爽子)だった。鈴子は意外な再会に嬉しくなり、断りもなく家の中に飛び込んだ。もう何年も音信不通だったのだ。

しかし、タイ子は鈴子のことを知らない、帰って欲しいと言い張った。自分を思い出させようと粘る鈴子であったが、タイ子は布団から立ち上がると、ふらつく足で鈴子を家の外に押し出そうとした。最後には、知らない人に施しを受ける義理はないと呟いた。

その剣幕に、鈴子は引き上げるしかなかった。
鈴子がタイ子に最後にあったのは、母・ツヤ(水川あさみ)の葬式の時だった。当時のタイ子はすでに妊娠していて、近いうちに東京で暮らすと言っていた。そして、鈴子の実家のような楽しい家庭を作りたいと明るく離していたのだった。

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NHK『ブギウギ』第93回

朝から書く話題でもないけれど僕は足の裏フェチなんですが、それはいったん置いて田中麗奈の話をしたいわけで、そもそも僕は山瀬まみに代表されるように童顔女性が大好きなんだけれど、そんな中にあって田中麗奈だけは「オトナ美人顔部門」として田中麗奈のことが気に入っていたんですよ、ところが映画『夕凪の街 桜の国』で田中麗奈の足の形を見たときに想像と違っていて恋が覚めてしまって、勢いでそのことをブログ記事にまでしてしまったこともある当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第93回めの放送を見ましたよ。

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第20週『ワテかて必死や』

日帝劇場の楽屋にパンパンの元締め・おミネ(田中麗奈)
が怒鳴り込んできた。
鈴子(趣里)の記事が雑誌『真相夫人』が掲載され、そこには鈴子がパンパンガールの味方を自称しているかのように書かれていた。それを見たおミネは、勝手に自分たちの味方を名乗るなと怒っているのだ。ただでさえパンパンは世間からの鼻つまみ者である。このように雑誌などで悪目立ちすると困るという。ましてや、鈴子の人気取りに利用されるのが気に入らないと言うのだ。
実際の取材で、鈴子はパンパンガールにも生きるための事情があり良いとも悪いとも言えないと話したに過ぎない。しかし、記者・鮫島(みのすけ)が拡大解釈して扇動的な見出しにしたのだ。そう弁解したがおミネはまったく聞く耳を持たない。鈴子が悪いと一方的に決めつけて帰って行った。

鈴子はあまりの剣幕に恐れ慄いた。しかし、時間が経って落ち着いてくると、恐怖のあまり自分の言いたいことが少しも言えなかったと思うようになった。もう一度おミネに会って、双方が納得するまで話し合いたいと思った。
マネージャー・山下(近藤芳正)たちはなんとか押し留めようとした。パンパンたちに深入りしていることが鮫島にバレたら、次も何を書かれるかわからず、鈴子のイメージに傷がつくかもしれない。ましてや、パンパンたちが商売している有楽町は特に治安が悪い。鈴子が行くには危険すぎるというのだ。
それでも鈴子の決意は変わらなかった。愛子を背負ったままで有楽町へ行くと脅すと、さすがの山下も折れた。山下は愛子を預かり、鈴子に安全第一で行動し、危なくなったらすぐに逃げるよう念押しした。

鈴子は夜の有楽町へ到着した。周りはパンパンガールとその客が大勢おり、鈴子は驚くとともに恐ろしくなった。おミネを探すことを諦め、早々に帰ろうとした。
しかし、その矢先、複数のぱんぱんガールに取り囲まれてしまった。見知らぬ女である鈴子が勝手に商売を始めようとしているか、そうでなければ、面白半分で冷やかしに来た人間だと思われたのだ。鈴子は自分は福来スズ子だと名乗り、おミネに会いに来たと説明した。けれども取り囲んだパンパンガールたちはその言葉を信じなかった。福来スズ子ほどの大スターが一人でこんな場所に来るはずがないからである。鈴子は『東京ブギウギ』を歌って証明して見せようとしたが、緊張のあまり声がうわずってしまった。ますます信用されなくなった。

そこへ、騒ぎを聞きつけたおミネが現れた。

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NHK『ブギウギ』第92回

あいみょんの『裸の心』をヘビロテ中の当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第92回めの放送を見ましたよ。

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第20週『ワテかて必死や』

1948年(昭和23年)4月。
『東京ブギウギ』の明るいブギのリズムが人々の心を掴み大ヒットした。戦後の混乱が続く中、多くの日本人に生きる希望を与えたのだった。
しかし、いくつかの社会問題には解決の兆しが見えないままだった。貧しい子どもたちは学校に行けずに街で働いていたり、有楽町にはパンパンガールと呼ばれる街娼が蔓延っていた。

ある日、鈴子(趣里)は雑誌『真相夫人』の記者・鮫島(みのすけ)の取材を受けた。彼は妊娠中の鈴子を「腹ボテ」と呼んだり、出産後は職場に必ず愛子を連れてくる鈴子のことを「コブ付き」と書いて発表するなど、あまり好意的な記者とは言えなかった。それでも、『東京ブギウギ』やワンマンショーのさらなる宣伝に繋げるために取材に応じたのだ。実際、子連れで仕事をしているという鈴子の記事は、新しい女性の生き方として読者の喝采を受けており、鈴子の人気や売り上げにも貢献していた。

鮫島は、鈴子に社会問題であるパンパンガールのことを質問した。たとえば、自分の娘がパンパンになっても構わないかと具体的に聞いた。
鈴子は、一般論としてパンパンガールにも事情があるのだろうから良いとも悪いとも言えないと答えた。戦争を生き延びた自分としては、人は生きてこそだと思った。だから、生きるためにしていることを他人がとやかく言えないのだと説明した。ただし、自分の娘には胸を張って生きて行ってほしい話した。
当たり障りのない回答に鮫島は面白くなさろうな顔をしたが、こうして取材は終わった。

帰り道、鈴子はマネージャー・山下(近藤芳正)に取材がうまくいかなかったのではないかと不安を打ち上げながら歩いていた。

その時、山下は道にあった水たまりにはまってしまい、靴が汚れた。すると、靴磨きの少年・達彦(蒼昴)がすぐさま近づいてきた。
あまりの都合の良さに、山下は不審に思った。考えてみれば、ここしばらくは雨など降っていない。達彦が人通りの多いところにわざと水溜りを作ったのではないかと疑った。
達彦はごまかすでもなく、あっさりと作為を認めた。その理由として、病気の母を助けるために金が必要なのだと説明した。母が病気だと聞いて同情した鈴子は自分の靴も一緒に磨くよう頼もうとしたが、山下が遮った。母が病気だというのも嘘に違いないというのだ。山下はインチキをして稼いだ金は身につかないと説教した。
達彦は捨て台詞を吐いて逃げて行った。

鈴子と山下には知る由がなかったが、達彦の母・タイ子(藤間爽子)は本当に病気で寝込んでいた。達彦が母と暮らす掘建小屋に帰ると、タイ子は達彦にばかり働かせて申し訳ないと謝った。達彦は意に介さず、病院にかかる金もすぐに貯まるだろうと明るく話した。
母の前で上機嫌になった達彦は『東京ブギウギ』を口ずさみ始めた。するとタイ子は、その歌は大嫌いだなどと激しい口調で歌うのを止めさせた。
タイ子は、幼馴染である鈴子の栄光を直視できないのだ。

その翌週、係員の静止を振り切って、一人の女が鈴子の楽屋に怒鳴り込んできた。
その女は、有楽町のパンパンガールの親玉・おミネ(田中麗奈)だという。

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NHK『ブギウギ』第91回

曇天のなかドラクエ記念碑みてきた in 淡路島、荒谷朋美さん好き感はんぱない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第91回めの放送を見ましたよ。

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第19週『東京ブギウギ』

新曲『東京ブギウギ』を披露する場であり、出産後の復帰舞台である福来スズ子ワンマンショーの稽古が続けられていた。
鈴子(趣里)は自分の歌で日本の人々を元気づけようと力が入っていたし、羽鳥(草彅剛)をはじめとしたスタッフたちも思いは同様だった。

ただし、鈴子がまだ赤ん坊の娘・愛子を稽古場に毎日連れてくることがトラブルの種になり始めていた。鈴子は愛子と一時たりとも離れたくなかったのだ。自分が生みの母(中越典子)と離れ、育ての親(柳葉敏郎水川あさみ)にもらわれてきたことが関係しているのだった。
稽古場で愛子が泣きだすたびに稽古は中断された。鈴子自身が授乳したり、オシメを替えたりするからだ。
共演者の中には鈴子に聞こえないと思って陰口を言うものも出てきた。鈴子は自分のわがままに非があると認め、陰口には反論せず、じっと我慢していた。

羽鳥は、自分の妻・麻里(市川実和子)に預けるよう提案した。しかし、鈴子は遠慮した。麻理にはこれまでさんざん世話になったし、彼女はまだ小学生以下の子どもを3人も育てているという事情もある。これ以上の迷惑はかけたくないというのだ。
あまりに頑なな鈴子の態度に、稽古場の雰囲気は最悪になってしまった。

そこへ、茨田りつ子(菊地凛子)が現れ、自分が子守りをすると買って出た。ちょうど一切の仕事を休んでいて、いつでも鈴子のそばで愛子の面倒をみれるから安心だろうというのだ。
鈴子は、りつ子は出産経験者であり、その子は半ば捨てるように実家に預けっぱなしであることを知っていた。彼女がその贖罪をしたがっていることもわかった。それで鈴子はりつ子に任せることにした。

1948年(昭和23年)1月、いよいよワンマンショーの初日を迎えた。
りつ子は今日も子守りに来てくれている。開演時間なのに鈴子は愛子をあやしてばかりである。りつ子と羽鳥に急かされ、やっと鈴子はステージに向かった。

ステージで披露された『東京ブギウギ』の歌と踊りは観客たちを魅了した。
ここに「ブギの女王・福来スズ子」が誕生した。

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NHK『ブギウギ』第90回

昨夜は Queenのライブに行ったのだけれど、序盤の”Another one bites the dust”でちゃんと「ハゲの矢印」と空耳が聞こえた(下のビデオでは0:38あたり)ので、Adam Lambertのボーカルはイケてると認めた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第90回めの放送を見ましたよ。

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第19週『東京ブギウギ』

羽鳥(草彅剛)が新曲『東京ブギウギ』を書き上げた。彼はこの曲に大きな自信を持っており、鈴子の復興ソングであると同時に日本の復興ソングなのだと豪語した。

『東京ブギウギ』の歌詞も完成した。作詞家・佐藤が譜面を見るなり、10分で歌詞を書いたという。あっという間に書いたわりには、今までに見たことのないような素晴らしい出来だった。
レコード会社社員・佐原(夙川アトム)もその出来栄えを高く評価し、ヒット間違いなしだと確信した。より大きなヒット曲とするため、佐原は羽鳥とともにマネージャー・山下(近藤芳正)を呼んで発売戦略を練った。一般的な方法としては、レコードを発売して世間に知らしめた後、舞台で披露して観客を呼び込むという方法である。

山下は新たな試みとして、アメリカ兵をスタジオに呼んで彼らに聞かせながらレコーディングすることを提案した。羽鳥も賛成した。ブギの本場はアメリカであり、彼らはそのリズムが大好きである。彼らが気に入れば『東京ブギウギ』は大ヒット間違いなしである。そのテストを兼ねて実施しようというのだ。
佐原は、そのようなレコーディングは前例がないと言って渋った。しかし、羽鳥に押し切られ、手配を始めた。

その後、やっと完成した歌詞が鈴子(趣里)にも渡された。それと同時に米兵の前でのレコーディングも知らされた。
鈴子もそのレコーディング方法を嫌がった。ただでさえ久しぶりの歌唱であることに加え、外国人の前で歌ったことがないからだ。復帰作としてもっと落ち着いた状況での録音を希望した。
しかし、羽鳥はそれを聞き入れなかった。これまで鈴子はいくつも奇妙なことをやってきた。米兵の前で歌うことだって、それらに比べれば大したことがないというのだ。そして、本場のアメリカ人を驚かせるくらいの意気込みが必要だと説得した。

鈴子は改めて『東京ブギウギ』の歌詞を眺めた。そこには「ズキズキ ワクワク」と書かれていた。そのフレーズに鈴子も気持ちが昂った。生前の愛助(水上恒司)に、鈴子の歌には力があり生きる希望になると言われたことも思い出した。
その結果、鈴子は米兵の前でのレコーディングを受け入れることにした。

1947年(昭和22年)9月、『東京ブギウギ』のレコーディングが行われた。
計画通り、スタジオには10名ほどの米兵が呼ばれた。彼らは何を聞かされるのかきちんと理解しておらず、どこか不満げな様子だった。
彼らの姿を見た鈴子は久しぶりにひどく緊張したが、歌詞の通り楽しく歌い始めた。
するとそれまで仏頂面だった米兵たちは笑顔になり、リズムに乗って体を動かし始めた。録音は大成功だった。

レコーディングに満足した佐原は、レコードの発売と間髪を入れずに鈴子のワンマンショーを開催すべきだと主張した。通常ならレコードを発売して売れ行きの様子を見てから会場を予約するところだが、佐原は『東京ブギウギ』のヒットを確信してレコーディング前から日帝劇場を抑えていたという。いつもは前例踏襲主義の彼には珍しいことだった。

鈴子はワンマンショーの開催にあたって気がかりなことがあった。稽古中の愛子の世話である。鈴子はやれる限り自分の手で愛子を育てたいと思っている。どんなに大事な仕事でも愛子と離れたくないと思っている。子守りに預けるようなことはしたくないと言うのだ。
そこで、毎日稽古場に愛子を連れてきて、世話をしながら稽古に参加することを条件として出した。前例踏襲主義の佐原は子育てしながらの稽古など聞いたことがないと渋ったが、羽鳥の鶴の一声で鈴子の言い分が認められた。

その帰り道、鈴子は靴磨きの少年・達彦(蒼昴)に声をかけられた。付近ではあまり見ない良い靴を履いているから金持ちに違いない、ぜひ靴を磨かせてくれと言うのだ。鈴子は警戒することなく靴を磨いてもらうことにした。
作業中、鈴子が尋ねると、彼は8歳だという。学校には行ったことがなく、毎日路上で働いているのだ。
靴磨きの代金は6円だった。鈴子は10円札しか持っておらず、釣りをもらおうとした。しかし、彼は釣りの分は次回にサービスすると言って返さず、逃げるように立ち去った。

鈴子は腹を立てなかった。
むしろ、今の日本には貧困に苦しんでいる人がまだたくさんいることに心を痛めた。
羽鳥が『東京ブギウギ』のことを日本の復興ソングだと言っていた意味がわかったような気がした。

そして、鈴子のワンマンショーの稽古が始まった。鈴子は熱心に稽古に励んだ。

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NHK『ブギウギ』第89回

某あいこちゃんが夢に出てきて目覚めの良かった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第89回めの放送を見ましたよ。

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第19週『東京ブギウギ』

香川から父・梅吉(柳葉敏郎)がやってきた。
彼は鈴子(趣里)を休ませるためだと言って、愛子の子守りを始めた。ところが、梅吉はろくにオシメも替えられない。鈴子は愛子から解放されて楽になるどころではなく、梅吉の世話まで増えてしまってイライラするのだった。

その夜、愛子を寝かしつけると、鈴子と梅吉はゆっくりと語り合った。鈴子は、昔の梅吉にも今日の梅吉にも散々迷惑をかけられっぱなしであったが、やはり自分にとって大切な父親である。いつしか鈴子の態度もやわらくなっていた。
梅吉は、確かに愛子もかわいいが、自分にとっては鈴子の方がよりかわいく思うのだと話した。それが親というものであるという。
さらに、配偶者を早くに亡くした者同志として鈴子に同情した。梅吉は妻・ツヤ(水川あさみ)を失って何年も経つのに、いまだに彼女のことを思い出し、立ち直れないと話した。鈴子は黙って聞いているだけだったが、その気持ちがよくわかった。

現在の梅吉は香川で写真館をやっているという。持参したカメラで鈴子と愛子の写真を撮ってくれた。鈴子には愛助(水上恒司)の写真を持たせ、親子三人が収まるようにしてくれた。
こうして、一泊だけすると梅吉は香川に帰って行った。

その頃、羽鳥(草彅剛)はピアノの前にじっと座っているばかりだった。鈴子から新曲の依頼を受けたものの、彼女の復帰第一作として最高のものを作ろうとすればするほど、なにも浮かんでこなくなってしまった。ぼんやりとこれまでの鈴子との付き合いを思い返すばかりだった。

出かける用事のあった羽鳥は汽車に乗った。
車内は復員兵や父を亡くしたらしき家族などでごった返し、満員だった。羽鳥は吊り革に掴まりながら人々の様子を見るともなく眺めていた。どの顔も疲れ切っているように見えた。
羽鳥は、今再起しなければならないのは鈴子だけではなく、日本中の人々も同じだとぼんやり考えた。

羽鳥は列車の走行音に合わせて、なんとなく足でリズムをとった。その時、我知らずに鼻歌も歌った。その瞬間、一気に新曲のメロディが浮かんできた。慌ててメモを取ろうとしたが、あいにく紙を持っていなかった。列車が駅に停まると喫茶店に駆け込み、注文を聞きにきた店員を無視して、店の紙ナプキンに一心不乱に楽譜を書きつけた。

書き終えると、羽鳥は大急ぎで鈴子の家に来た。
紙ナプキンの新曲を鈴子に渡し、これからすぐに作詞家を探しに行くと言って慌てて出て行った。

羽鳥によれば、この曲は鈴子の復興ソングだけでなく、日本の復興ソングだという。
まだ歌詞のない曲ではあるが、タイトルだけは「東京ブギウギ」と記されていた。

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NHK『ブギウギ』第88回

読者には全く関係のないことだけれど、ていうか今までも記事のマクラが読者に関係のあったことはほとんどないのだけれど、今朝はいつもと朝のルーティンが違っていていろいろヒーヒー言っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第88回めの放送を見ましたよ。

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第19週『東京ブギウギ』

鈴子(趣里)は羽鳥善一(草彅剛)の家を訪ねた。

そこで、自分のために新曲を書いてほしいと依頼した。
鈴子はいつも羽鳥の歌に助けられたという。東京に出てきてすぐの時、梅丸楽劇団が解散になった時、弟・六郎(黒崎煌代)が戦死した時など、いつも羽鳥の曲を歌うことで危機を乗り越えてきた。今、歌に復帰したいという気持ちが高まっており、どうしても羽鳥に助けてもらいたいと話した。

羽鳥は言葉を失うほど驚いた。今まで鈴子から直接曲作りを頼まれたことはなかったからだ。当然のように依頼を引き受けた。
羽鳥はそれ以上何も言わなかったが、実は鈴子が自分から歌いたいと言うまで何もしないと決めていた。ようやく鈴子がその気になり、自分のところへ来てくれたことが何より嬉しかった。全力で歌を作ると密かに誓った。

羽鳥の妻・麻里(市川実和子)は鈴子の体調のことをひどく心配した。ひとりで子育てをしている鈴子を案じ、いつでも助けに行くと約束した。鈴子はその気持ちをありがたく頂戴したものの、具体的な助けは求めなかった。

その晩、愛子が高熱を出した。
村西医師(中川浩三)の病院に駆け込んだが、それほど心配はいらないという。赤ん坊は元々平熱が高く、体温調節もまだうまくできず、このようなことはよくあると言うのだ。鈴子はひとまず安心した。
連絡を受けた麻里も病院に駆けつけてきた。鈴子が一人で抱え込んでいる姿を見てますます心配になった麻里は、翌日に鈴子の家に手伝いに行くと一方的に決めた。

あくる日、麻里は本当に鈴子の家に押しかけてきた。愛子の世話をしようとする鈴子を押し留め、愛子を奪った。そして、鈴子にはゆっくり休めと言うのだった。鈴子が昼寝をしている間、麻里は愛子の世話のみならず、掃除や食事の支度など手際よく行った。これまで3人の子どもを産み育てている麻里にとっては簡単なことだったのだ。

鈴子は麻里のおかげで久しぶりにぐっすり眠ることができた。実家で飼っていた亀をめぐって亡き母・ツヤ(水川あさみ)と愛助(水上恒司)の母・トミ(小雪)が喧嘩をし、周囲の人々も巻き込んだ大騒動になる夢を見た。
鈴子は、まるでコメディ映画を見たような楽しい気分で目を覚ました。いい匂いにつられて台所へ行くと、麻里が夕食の支度をしていた。その後ろ姿はまるで自分の母親かのようだった。鈴子は夢の続きを見ているようで、ますますいい気分に浸った。

鈴子と一緒に夕食を摂りながら、麻里は母乳に良いとされる食事や赤ん坊の寝かしつけについてアドバイスした。そして、子育ての最大のコツは自分一人で抱え込まないことだと話した。鈴子は元来、自分一人で頑張らなくてはいけないと思うタイプだ。しかし、一人でこなすことなどそもそも無理なのである。いつでも自分を頼ってほしいと改めて言った。むしろ、曜日を決めて定期的に手伝いに来るとまで言い出した。
鈴子は、麻里が自分の母親のように思えると話し深く感謝した。

麻里は羽鳥の様子も話した。羽鳥は楽譜に一音も書けずに唸っている。あんな姿を見るのは初めてだという。本人も、今では目の前にパーっと音符が広がってきたのだけれど、今回は違うと言っているという。どうすれば鈴子を最高に輝かせることができるのか、そればかり考えているとなかなか進まないのだという。
その羽鳥の姿は、麻里が鈴子に嫉妬させるほどのものだという。自分は音楽にまったく興味がないとはいえ、これまで羽鳥は自分のために1曲も書いてくれたことがない。羽鳥があんなに苦しむほどの曲を書く相手である鈴子が羨ましいと冗談混じりに話した。

鈴子は、羽鳥がどんな歌を作ってくれるかこれ以上なく楽しみになった。

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NHK『ブギウギ』第87回

昨夜は鳥水炊き鍋を食べた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第87回めの放送を見ましたよ。

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第19週『東京ブギウギ』

愛助(水上恒司)がこの世を去り、愛子が生まれてから3ヶ月が経った。
鈴子(趣里)は一人で子育てに奮闘していた。愛子はきっかり3時間ごとに泣き出し、鈴子はすっかり疲弊してしまっていた。時にはひとりで涙を流すこともあった。それでも、前向きに元気に母子で生きると愛助に誓ったことを事あるたびに思い出し、自分を奮い立たせた。

ただし、仕事はまったくできる状態ではなかった。
マネージャー・山下(近藤芳正)も鈴子の収入が心配になったが、鈴子の様子を目の当たりにすると無理に仕事をさせる気にもなれなかった。鈴子自身も今は仕事ができる状態ではないと断り続けていた。

そんなある日、村山興業の坂口(黒田有)から会社に出向いてほしいと頼まれた。トミ(小雪)が大阪からやって来て、鈴子に話があるのだと言う。
鈴子はそれに応じることにしたが、出がけに愛子が泣き出してしまい、なかなか家を出ることができなかった。

すると、逆にトミが鈴子の家にやってきた。トミは、同行している坂口を叱った。母親とはとかく忙しいものであり、鈴子を会社に呼びつけるなんてあってはならないことだと言うのだ。この日のトミは、会社の部下に向かってはいつも通り厳しい態度だったが、鈴子と愛子には優しい表情を向けた。こうして鈴子はトミと二人きりで話をすることになった。

トミはしばし愛助の思い出を語った。愛助は最期まで鈴子との結婚を望んでいた。しかし、愛助と鈴子の結婚はトミの考える夫婦観や家族観とは異なっている。だから許さなかった。それは間違いだったかもしれないと話した。
鈴子は、トミを否定しなかった。愛助も間違ってはいなかったと答えた。家族や夫婦の在り方はそれぞれで、正解も不正解もないというのが鈴子の意見だと話した。

トミは居住まいを正すと、愛子を引き取りたいと申し出た。愛助の子だから手元に置いておきたいと言うのだ。
鈴子は即座にきっぱりと断った。

トミには鈴子が断ることは初めからわかっていた。鈴子に拒絶されても顔色を変えなかった。むしろ、鈴子自身のことを心配した。
トミは、鈴子と同じく、夫を早くに亡くし女手一つで愛助を育てたのだ。しかも、村山興業の社長として働きながらである。父のいない親子に対して世間がどんなに冷たいのか身に染みているという。だから鈴子のことが心配だと言うのだ。

そこまで言って、トミは笑い出した。鈴子はトミに匹敵するほどの負けず嫌いだから、そもそも心配する必要はなかったと冗談を言った。もし鈴子に困ったことがあればいつでも助けると約束した。自分と鈴子は、愛助という同じ男を愛した仲だから助けは惜しまないと言うのだ。
そして最後に、鈴子にまた歌ってほしいと願った。今まで黙っていたが、自分も福来スズ子の歌のファンなのだと言う。ただし、あくまで歌のファンであって、鈴子本人に対してはそれほどでもないなどと再び冗談を言った。
こうして、トミは機嫌良く帰っていった。

鈴子は、そろそろ仕事を再開して歌わなければならないと思った。それが愛助の願いでもあるからだ。

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NHK『ブギウギ』第86回

ドラマ『パパはニュースキャスター』で田村正和が演じていた、あちこちの女に子どもを産ませながら必ず「”愛”と書いて”めぐみ”」と名づけさせる男を思い出した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第86回めの放送を見ましたよ。

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第18週『あんたと一緒に生きるで』

鈴子(趣里)が女の子を生んで2日が経った。
鈴子はずっと赤ん坊を抱き、幸せの頂点だった。あとの望みは、早く愛助(水上恒司)が帰ってきて、彼に娘の名前をつけてもらうことだった。

しかし、鈴子の出産とほぼ同じ頃、愛助は大阪の病院で事切れていた。
そのことを知っている坂口(黒田有)と山下(近藤芳正)であったが、なかなか鈴子に言い出せずにいた。

坂口と山下は病院で鈴子に付き添っている。赤ん坊と一緒で有頂天の鈴子であったが、さすがにふたりの様子がおかしいことに気づき始めた。ついに山下は意を決して愛助が亡くなったことを伝えた。
鈴子は一気に不幸のどん底へと突き落とされた。ベッドに座って窓の外を見つめたまま、一昼夜をこえても動かなくなってしまった。食事も一切摂ろうとしない。赤ん坊は別室で看護師・東(友近)らが面倒をみた。

大阪から社長秘書・矢崎(三浦誠己)が報告に来た。鈴子は相変わらず窓の外を見るばかりで、矢崎が喋っても背を向けたままだった。
矢崎は通帳と手紙を持ってきた。通帳は鈴子の名義になっており、将来の結婚生活のために愛助が貯金していたものだという。手紙は愛助が最後に書いたものである。それだけ伝えると矢崎は帰っていった。

それからさらに一夜が過ぎたが、鈴子は同じ姿勢のまま沈み込んだままだった。やっと口を開いたかと思えば、自分の大切な人はみんな早くに亡くなる、自分も死にたいと口走るようになった。
山下は鈴子を激しく叱った。愛助は多くの人に愛されており、辛いのは鈴子だけではない。山下自身もそうだし、坂口、矢崎も同様である。そして何より、彼を溺愛していた母・トミ(小雪)の悲しみは想像を絶する。残された者にできることは、彼の分まで生きることだと話した。愛助の分まで生きられるのは鈴子の他にいないのだから、軽々しく死ぬなどと言ったら許さないと怒鳴った。
坂口は興奮した山下を連れて部屋を出ていった。

再び一人きりになった鈴子は、愛助の手紙を開いた。そこには、元気になって帰るという約束が守れなくなったことへの謝罪が記されていた。
さらに、子どもの名前の案が書かれていた。男の子だったら愛助のような弱い子にならないよう力強い「カブト」という名前、女の子だったら「愛子」にしてほしいと書いてあった。娘の場合、自分の名前から一字取るのは気恥ずかしいが、愛に溢れる子になってほしいという願いを込めてつけられた名だと説明してあった。
それから、鈴子に辛いことがあったら歌うようにと書いてあった。また、生まれてきた子は自分たちの宝であり、その子がいれば何があっても生きていけるはずだと書かれていた。

部屋の外から、赤ん坊の鳴き声が聞こえてきた。
鈴子は早速「愛子!」と呼んだ。東から愛子を受け取ると、鈴子はその子を抱きしめた。
そして、一緒に生きていくと愛子に言って聞かせた。

鈴子は愛子を横に寝かせ、久しぶりに眠った。
夢の中では、愛助が愛子を抱いていて、3人で仲良く暮らしていた。

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