第21週『あなたが笑えば、私も笑う』
茨田りつ子(菊地凛子)が福来スズ子(趣里)は終わった歌手だと述べたとする記事が雑誌に掲載された。
鈴子は、雑誌記者・鮫島(みのすけ)が面白おかしく誇張して書いたと知りつつも、りつ子が何か勘違いをしているかもしれないと思った。そこを鮫島に手玉に取られ、彼の口車に乗せられて鈴子はりつ子と雑誌社主催の対談に臨むことになった。
鈴子は映画撮影の合間に、娘・愛子(小野美音)とマネージャー・山下(近藤芳正)を伴って対談会場へ到着した。
鈴子はつとめて朗らかな雰囲気を作ろうとしたが、先に席に着いていたりつ子はむっつりとしているばかりで口数も少なかった。
鈴子はなんとか対談を進めようと、「福来スズ子は終わった歌手」と言ったのは本当か尋ねた。するとりつ子は眉ひとつ動かすことなく肯定した。鈴子はにわかには信じがたかった。これまでも親友というわけではなかったが長い付き合いで、歌手として人気も二分してきた。産後直後で鈴子が困っているときには、りつ子が愛子の子守りを買って出てくれたほどである。
りつ子によれば、好意的に接していたのは鈴子のことを歌手として認めていたからだという。ところが、「ブギの女王」ともてはやされてからは浮かれてばかりいる。鈴子のことはあっという間に忘れられ、ブギの人気もすぐに終わるだろうと予言した。
それまでは穏やかな態度だった鈴子だが、ブギが終わると言われたことで頭に血が上った。りつ子はブギを歌ったこともないくせに、偉そうなことを言うなと言い返した。
りつ子の批判も止まらなかった。歌手ならば歌で勝負すべきなのに、最近の鈴子は映画出演に夢中で歌を捨ててしまったようにしか見えないと追撃した。
映画出演の話になると、主催者の鮫島もりつ子に加勢した。撮影所関係者から聞いた話として、撮影中の鈴子はスタッフに娘を預けっぱなしにしており、目を離したせいで愛子が怪我をしたと指摘した。しかも、その事故のせいで撮影スケジュールが狂って現場が大混乱、スタッフたちは大迷惑を被っていると述べた。鮫島は、明らかに話を誇張していた。
それがますます鈴子を怒らせた。思わず声を荒げ、それに驚いた愛子が泣き出してしまった。
それを潮に、鈴子は一方的に対談を打ち切り、帰ってしまった。
後日、その対談の模様が雑誌に掲載された。もちろん、鈴子をけなす内容だった。曰く「歌を捨てたブギの女王はもう終わり」。
いつもの鮫島のやり口だと分かってはいるものの、りつ子の態度も冷たかったと鈴子は思った。
映画撮影の最終日、雑誌を見たタナケン(生瀬勝久)が鈴子の楽屋を見舞った。
鈴子は、タナケンの前で少し弱気になった。りつ子が言ったり、記事に書かれている通り、自分は歌と演技との間で中途半端であったかもしれないと反省した。それに加えて、子育てまでしているのだから半端になるのだろうと話した。
タナケンは、歌手や役者は、何があっても続けるしかない職業だと話した。人々に邪魔されようが誤解されようが、自身の芸や生き方で理解してもらうしかないというのだ。それは、母親も同じである。鈴子が精一杯頑張っている姿が愛子に伝わっているはずだから、今まで通り努力を続けろと説いた。
それはタナケンなりの応援と謝罪だった。愛子が怪我をして撮影が中止になったとき、タナケンは客は役者の事情など忖度しない、出来上がった作品でだけ評価されると厳しく話した。歌手や役者は芸でのみ評価されるという意味は変わらないが、同じ話に母親という役割を加え、鈴子に受け入れやすいように話を再構成したのだ。鈴子は前向きな気持ちになれた。
最後の撮影は、喧嘩ばかりしていた長屋の夫婦が仲直りする場面だった。鈴子とタナケンは見事に演じきり、全ての撮影が無事に終わった。撮影スタッフたちも満足し、鈴子とタナケンも満面の笑みを浮かべた。
マネージャー・山下は、映画の撮影が終わったタイミングで鈴子に長期の休暇をとることを勧めた。
しかし、鈴子はそれを断った。タナケンに言われたことを思えば休んでいる暇はないというのだ。しかも、自分が歌を捨てたという悪評を吹き飛ばす必要もある。
撮影を終えた翌日、鈴子は羽鳥(草彅剛)の家を訪ね、新曲を作ってほしいと直談判した。
羽鳥は、『東京ブギウギ』、『ジャングル・ブギー』と続いたので、そろそろ目新しいことすべきだと提案した。ブギばかりでは面白みがないというのだ。
しかし、鈴子は応じなかった。次の曲もブギにしてほしいと依頼した。鈴子はブギで勝負したいのだと力説した。