NHK『カーネーション』第66回

よしながふみの『きのう何食べた?』について調べようと思って Google 検索したのだが全くヒットせず、どうしたことだろうかと不思議がっていたら、検索キーワードが「今夜何食べたい?」になっていたという当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第66回目の放送を見ましたよ。

* * *
第11週「切なる願い」

1943年(昭和18年)4月。長女の優子(花田優里音)が小学校に入学することになった。

この頃、善作(小林薫)はずいぶんと回復して元気になっていた。
寝たきりの状態を脱し、居間で優子を膝に乗せながら新聞を読んだり、登校する優子を家の前で立って見送ることなどもできるようになった。さらには、配給切符の整理係として店の手伝いもできるほどになっていた。

同時に、以前のようにわがままで口うるさい態度も復活した。
糸子(尾野真千子)は「すぐに体が大きくなる」と言って、大きめのセーラー服を作った。優子を贔屓してかわいがっている善作は、洋裁屋のくせに手を抜くなと言って糸子を叱った。また糸子は、優子のおさげを毎日結うのが面倒で、オカッパにしてしまいたいと思っている。けれども善作は、次女の直子(心花)をオカッパにしても、優子にだけは絶対に許さないのだった。

糸子は、善作が元気になったことを心の底から喜んだ半面、彼のやかましさに腹を立てたし、すぐに無理をしてしまう様子も心配であった。

そんな頃、隣の履物屋の木岡(上杉祥三)が、石川県の温泉の噂話を持ってきた。それを聞いているうちに、善作はすっかり乗り気になって、湯治に行くと言い出した。長旅は無理だといって周囲は猛反対した。

しかし、温泉の資料を集めて楽しそうにしている善作の様子を見た糸子は、止め切れなくなって温泉行きを許してしまった。
出発前に、糸子は真心を込めて新しい国民服を作ってやった。それは、今では入手困難な純毛の生地を使った上等なものだった。出発の日、それを身につけた善作は上機嫌になってみんなに見せびらかした。
一人台所で出発準備を手伝っている糸子の所へ行き、善作は言いにくそうに、素っ気なく新しい服の礼を言った。糸子も、神妙な表情の善作を前に照れてしまい、まともに受け合わなかった。それでも、善作の喜びはひしひしと伝わってきた。

糸子から善作へ、もう一つの贈り物があった。秘蔵しておいた酒を水筒に入れて善作に持たせてやった。味見した善作は満面の笑みを浮かべ、素直に何度もスラスラと礼を述べた。服にはまともな礼がなかったのにと、糸子は苦々しく思うのだった。
それでも、気持ちよく善作の出発を見送った。善作も、仲間たちと一緒に機嫌よく元気に旅立って行った。

糸子が店で大福帳を調べていると、善作の見事な字で「オハラ洋装店 店主 小原糸子」と書かれているのを見つけた。それは、善作が糸子のことを一人前の商売人だと認めた証拠だとわかった。糸子は嬉しくなって、何度もそれを見返していた。

その日の夜、糸子の元へ電報が届けられた。善作が危篤状態に陥ったので、すぐに来て欲しいという内容だった。

糸子は、冷静に自分を落ち着かせた。まずは旅館の住所を調べるために、善作と同行している木岡の家に行って、彼の妻(飯島順子)から聞こうとした。

ところが、家を出ると、木岡の妻も表に出てきていた。
彼女は雨の降る中、傘もささずに寝間着のままで呆然と立っていた。糸子が声をかけると、今しがた善作に会ったのだという。温泉に行っているはずの善作がここにいるのは不思議だが、「糸子をよろしゅう頼む」と言っていたのだという。

はっとした糸子が道の先を見ると、そこに善作の姿が見えた。
雨にけぶってぼんやりとした姿であったが、彼は何も言わず優しい笑顔で立っていた。その姿はみるみるうちに薄くなってしまい、程なく完全に消えた。

糸子は道に崩れて号泣した。
1943年4月27日、善作は59歳で生涯を終えた。
* * *


リアリティを重視する本作にあって、善作の死に関しては幻想的場面を用いてきました。
そこだけ異様なシーン作りになっているので、とても印象的でした。ヒロイン以上に存在感と人気のあった善作の最期として、よくできていたと思います。

なお、他に幻想的(空想的)シーンとしては僕が覚えている限り、第7話で糸子が初めてミシンを知った時にそれをだんじりだと見立てて糸子自身が乗ってしまうシーンと、第59話で勝の浮気に関して男たちが全員グルになっていると糸子が想像するシーンくらいのものでしょうか。前者はあまりに滑稽な絵柄に笑えてしまう場面でしたし、後者は明らかに笑いを誘いに来た場面でした。
それらに比べて、今日の場面はお涙頂戴のための幻想場面として、本作としては特に珍しいものだったと言えるかもしれない。

さらに一筋縄でいかないと思ったのは、善作の幻に最初に対面したのが、身内ではなかったということ。これまで善作との交流がそれほど多くなかった、木岡の妻が最初に気づくという脚本に意外性を感じました。並の脚本なら、善作の妻(麻生祐未)や実母(正司照枝)、もしくは一番可愛がられていた孫の優子あたりが気づくという展開になるところでしょう。そこをあえて外してきたところに唸ってしまいました。
普段チョイ役の木岡妻が、いきなり悲壮感たっぷりで出てくるもんだから、驚く、驚く。しかも、糸子ともあまり交流のない彼女に、糸子のことを託すなど。すごいシナリオだよねぇ。

ていうか、そうか。
オハラ洋装店の周囲の商店主といえば、履物屋の木岡と電器店の木之元(甲本雅裕)。彼らは商売そっちのけで、善作とつるんで遊んでばかりいる(当然、彼らも今回の温泉旅行に同行している)。特に、履物屋に関しては、木岡の妻がしっかりと商売の手綱を握っているという描写が何度かあった。
これまで、糸子の商売上の困りごとは、善作に相談していた。けれども善作がいなくなった後、商売のことで気軽に相談できるのは、木岡の妻であるという意味が込められているのかもしれない。
善作は、大福帳に書き記した文字で糸子のことを一人前の商売人と認めた。けれども、彼女が障害にぶつからないとも限らない。その時に、木岡の妻が糸子のことを見てやってくれるといいなぁと思って、彼女に託したってことか。
うむ。

あと、来週の予告を見て、一言。
どうやら優子がオカッパになってるっぽいね。優子のオカッパ化反対委員長の善作が死んだ途端、優子はオカッパになってしまうのか、と思った。
これは、糸子が善作の遺志を無視するということであるのだが、ついに善作の庇護を抜けて名実ともに独り立ちしたというメタファーなのか。

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コメント (1)

  1. あ、土曜のまとめ放送が始まったのでチラチラ見てるんだけど、月曜日の放送分(61回)で、消火活動でびしょ濡れのまま病院に行った糸子のために気をきかせて着替えを持ってきてくれたのも木岡の妻だ。
    このあたりでも、ちゃんと木岡の妻が糸子の面倒を見てるという。ほほぉ。

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