若尾文子が演じる現代の陽子は、実は陽子の元教え子であり、陽子への憧れが高じるあまり本人になりきり、本人から聞いた思い出話をさも自分のことのように話している、だからこそ井上真央が演じる若い陽子との違和感が大きいし、すべて陽子に都合のいいように話が捏造されている・・・などという妄想をした当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おひさま』の第42回目の放送を見ましたよ。
夜、陽子(井上真央)が慌てて学校に戻ると、幹太(相澤大翔)は暗い教室で泣きながらバケツの修理を続けていた。陽子は無理難題を命じたことを謝り、修理を手伝うのだった。
やっと壊れたバケツが元通りになった。幹太は陽子が持ってきてくれた握り飯を頬張りながら、陽子と一緒に下校できることがむしろ嬉しいと笑うのだった。
陽子(若尾文子)は、自分は児童たちの母親がわりだったと当時を振り返った。子供たちのほとんどは農家の子であったが、母親たちは野良仕事で忙しく遊び相手になってくれなかった。自分がその代わりとなっていたのだと。
一方で陽子は、今にして思えば、子供たちを正しい方向に導くことができなかったと反省もしていた。目先の世の流れに右往左往し、国のために死ぬことを指導していたことを悔やんでいた。
1941年(昭和16)11月。
日本の戦争は激しさを増し、陽子の同僚教師も次々と出征して行った。教え子たちの父兄も同様で、中には肉親を失う者もあった。
圭介(平岡拓真)の自慢の父が中国戦線で戦死した。本当は学校どころではなかったが、兄から「少国民の勤めだ」と言われた圭介は遅刻しながらも出席した。しかし、授業に身が入らなかった。父を失った悲しさと、動揺を抑えることのできない自分の不甲斐なさに、圭介は教室で涙を流した。陽子は彼を抱きしめて慰めてやること以外、何もできなかった。
その時陽子は、こんな時代に教師をしていることが恐ろしくなった。
ある日の帰り道、陽子は女学校時代に道草をしていた飴屋・村上堂を覗いてみた。しかし、店は休業しており、女将ら(渡辺えり)の姿もなかった。
するとそこへ、もう一人村上堂を訪ねてきた婦人(樋口可南子)がいた。彼女とは一度、陽子が女学生時代に蕎麦畠で出会って立ち話をしたことがあった。互いにその時のことを覚えていて、しばらく話し込んだ。
彼女は水飴を買いに来たのだという。また、贔屓にしている蕎麦農家も出征してしまって、少々困っていた。その上、跡取りである一人息子も戦地に送り出したという。
それでも、婦人はひとつも落ち込む素振りを見せなかった。男がいなくなった分、女がしっかりして社会を支えていかなくてはならないと論を展開した。痩せた土地でも太陽の光さえあれば成長する蕎麦を引き合いに出しつつ、「太陽の陽子」を応援するのだった。
そして、12月8日(真珠湾攻撃の日)を迎えた。
全校児童が校庭に集められ、校長(綾田俊樹)から訓示があった。日本軍の大勝利が伝えられると、教師も児童も大喜びに湧いた。誰しも、日本の強さを自慢に思い、このまますぐに戦争が終わると信じた。
明るいニュースに触れて、陽子はふと親しかった人々を思い出した。彼らに会いたいと強く願った。