NHK『マッサン』第6回

今は「まつ(木公)」だの、「きこう(木公)」だの、「あるむ(alm)」だの、「あるもあ(almore)」だの、「市長(もしくは艦長)」だの、「朝ドラ評論家」だの、あだ名の一定しない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の第6回めの放送を見ましたよ。

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第1週『鬼の目にも涙』

政春(玉山鉄二)が酒蔵で父・政志(前田吟)と語り合っていた時、エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)は早苗(泉ピン子)とふたりきりになっていた。

早苗は、自分がどれだけ政春を愛しているかを感情に訴えて語った。26年前の雪の日に腹を痛めて産んだこと、小学2年の政春が屋根から滑り落ちて鼻に大怪我を負った時には心配で一晩中眠れなかったことなどを聞き、エリーは早苗の深い愛情を知った。
加えて早苗は、周囲から祝福されない結婚は幸せになれる可能性がないと指摘した。しかも、エリーがどれだけ上辺を取り繕っても、性根は外国人である。生粋の日本人にはなれない。今の政春とエリーは舞い上がって幸せの絶頂だが、数年後にはひどく後悔するだろうと予言した。政春の苦労する姿は見たくないと言うのだ。

早苗の政春を思う気持ちを聞くにつけ、エリーは自分の母・ローズマリー(インゲ・ムラタ)との関係を思った。エリーも母から結婚を猛反対された。埒の明かなくなったエリーは夜中に家を抜け出すこととし、母に別れの挨拶を出来なかったし、母からの祝福の言葉ももらっていない。
唯一、家を出る前に、母の寝室の前で別れを告げた。自分は駆け落ちするが、どんなに離れていても親子であることには変わりがないと扉に向かって話した。

エリーがどれだけ自分の母のことを思っているかを考えれば、早苗の政春を思う気持ちが痛いほどよくわかった。自分が原因で政春と早苗の関係を壊すことはどうしても避けなければならないと思い至った。それで、エリーは政春に別れも告げず、亀山家を去った。

政春が父との語らいを終え、母屋に戻ってくると、エリーの姿がどこにも見えない。早苗の空々しい態度を見て、彼女がエリーを追い出したのだといっぺんに悟った。政春は家を飛び出してエリーを追った。

エリーを乗せたバスはすでに出発してしまっていた。政春がバスのりばに到着した時には、バスは彼方に小さく見えるだけだった。それでも諦めず、政春は走ってバスを追った。人だけが通れる近道を使って、なんとかバスに追いついた。

バスの前に飛び出して止めると、政春は英語で『蛍の光』を歌い始めた。
それはふたりの思い出の歌だった。スコットランドでエリーが駆け落ちを決めた夜、彼女は政春の下宿へ向かった。窓の下から『蛍の光』を歌い、エリーは政春を呼び出した。そして「私を日本に連れて行って」と懇願した時の思い出なのだ。
日本語の『蛍の光』は別れの歌となっているが、原曲は親しい人との再会を祝う歌なのである。この場で『蛍の光』を歌う政春の気持ちがエリーには伝わった。

政春は、エリーはエリーのままで良いと言った。無理をして日本人らしく振る舞う必要は無いと言うのだ。そして、エリーのいない人生は考えられない、だからそばに居てくれと懇願した。

ふたりは人目も憚らず抱き合い、互いの愛を再確認した。

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NHK『マッサン』第5回

大学生から大学院生の頃のあだ名は「まつ」もしくは「まっつ」だった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の第5回めの放送を見ましたよ。

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第1週『鬼の目にも涙』

親戚たちが集まった法事で、エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)はみなに受け入れられた。しかし、早苗(泉ピン子)だけは苦々しく思っていた。

翌日、早苗は政春(玉山鉄二)とエリーを自室に呼び出した。そして、エリーは政春の嫁として相応しくないと再び言うのだった。亀山家の跡継ぎの嫁は、作法と品格を備えた日本人でなければならないと言うのだ。たとえば、エリーは政春の名を呼び捨てにしている。外国ではそれが常識であっても、日本の嫁がすることではないとあげつらった。

それでも折れない政春を見て、早苗は最大の妥協案を提案した。それは、政春は別途日本人の正妻を迎えて、エリーを妾にするというものだった。

政春は激怒した。勘当を覚悟で家を出ることにした。すぐに大阪へ出て、世話になっている酒造会社に行くことを決めた。
エリーは、政春が家族との縁が切れることに反対した。政春が実家の家族をどれだけ愛しているかをよく知っていたのだ。政春にとって大切な人を失うことはよくないことだと助言した。しかし、怒り心頭の政春は聞く耳を持たなかった。

ただし、政春にも一つだけ心残りがあった。それは父・政志(前田吟)である。
帰国してから一度だけ父とふたりきりで話す機会があり、エリーとの結婚とウィスキー造りのことを話した。しかし、父はそれらに対して何も言ってくれなかった。きっぱりと否定されたわけではなく、黙認されたと解釈はできたが、政春にはどうもスッキリしないのだ。

父・政志は、法事が終わるや、すぐに酒蔵で一人黙々と仕事をしていた。政春は、そこへウィスキーを携えて話に行った。政志は生まれて初めて飲むウィスキーに眉を潜めた。焦げ臭く感じ、美味さがさっぱりわからなかったのである。
それでも、政春がそれに情熱を傾けていることは理解していた。エリーへの愛情も理解していた。不器用な政志は、政春が喜ぶような言い方でそれを表現することができなかった。

一応の承認を得た政春は立ち去ろうとした。政志はその背中に声をかけ、相撲を取ろうと言った。政春はそれに応じた。
政春が小さな頃からよくふたりで相撲を取っていたが、政春は一度も勝ったことがなかった。それは今日も同じだった。政春は父に投げ飛ばされてばかりである。それでも、政春は何度も父に挑みかかった。そうするうちに、ふたりの力が拮抗した。

組み合いながら、父は政春に語りかけた。
自分が尻拭いをするから、政春はやりたいことに挑戦しろというのだ。日本で初めてウィスキーを作るという夢を実現することを応援した。ただし、泣き言を言うくらいなら全てを諦めろと突き放した。

その言葉に、政春は発奮した。美味いウィスキーを作って父に飲ませると約束し、その言葉とともに初めて政志を投げ飛ばした。
政志は自分が相撲で負けたことをとても喜んだ。

エリーは一人で箸の練習をしていた。法事で煮豆を摘むことに失敗し恥をかいたからだ。日本人として認められるためには、箸が使えなくてはならないと考えたのだ。
そこへ早苗がやって来た。早苗は、エリーに手本を見せてくれた。いつもと違う柔和な態度だった。

しかし、早苗の態度と発言内容は全く別だった。
早苗は、深々と頭を下げ、これまでエリーが聞いたことのない丁寧な口調で「あの子の将来を考えるなら、国へ帰ってください」と言うのだった。

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NHK『マッサン』第4回

高校生の頃のあだ名は「山瀬くん」、「ジョン」、および「まつさん」だった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の第4回めの放送を見ましたよ。

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第1週『鬼の目にも涙』

政春(玉山鉄二)の祖父の17回忌法要が催された。政春は親戚一同、および長老役である和尚(神山繁)に取り入って、なし崩し的にエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)との結婚を認めてもらおうと画策していた。みんなを味方につければ、結婚に猛反対している早苗(泉ピン子)も折れざるを得ないと目論んだのである。

政春はエリーに日本風の嫁の立ち居振る舞いや法事の作法を教えこんだ。しかし、しょせんはにわか仕立てであり、すぐに馬脚を現してしまった。長時間の正座で足がしびれてしまい、焼香のために立ち上がった際に和尚にもたれかかって倒れてしまった。

後の宴会で、政春と共に改めて挨拶をした。三指を付いた礼を行い、率先して和尚に酌をすることで、うまくやり通せたかと思えた。しかし、和尚は箸で煮豆を摘むことを命じた。挑戦するエリーであったが成功させることはできなかった。それを見た和尚は化けの皮が剥がれたと言って、日本人の嫁になることは無理だと断じた。
集まった親戚たちもエリーに対して冷たい視線を送った。

その時、幼い姉弟が会場で暴れ周り、すみれ(早見あかり)にぶつかった。その拍子に、すみれは運んできた徳利を床に落として割ってしまった。責任を感じた姉(眞鍋歩珠)が破片を片付けようとして、手を傷つけてしまった。弟(宮崎航平)はその場を逃げ出した。

エリーは誰よりも先に駆け寄って姉の切り口を手当してやった。それから弟を呼びつけ、姉とすみれに謝るよう諭した。
和尚は、そんなエリーの機転にいたく感心した。そして、日本の作法や服装などの「形」にこだわるのではなく、エリー自身が持っている内面や「心」を大切にするよう助言した。和尚の表情から、彼がエリーを認めたことは明らかだった。集まった親戚たちもその意見に同意しそうになった。

すかさず、早苗は大声を上げた。誰がなんと言おうと、自分は結婚を認めないと言うのだ。伝統ある亀山家の嫁が外国人に勤まるわけがないと吐き捨てた。エリーに出て行けと怒鳴りつけるのだった。

政春とエリーは宴会場を去った。

エリーはスコットランドでも同じようなつらい思いをしたことを思い出した。
政春がエリーとの結婚を申し込んだ時、母・ローズマリー(インゲ・ムラタ)やおじのデイビッド(マイケル・ビアード)に「日本人は出て行け」と罵られたことがあるのだ。

悲しくなったエリーは、スコットランド民謡 “Auld Lang Syne” を歌った。
すると、それを聞きつけたさっきの姉弟が駆けつけてきた。彼らはその歌を「蛍の光」として知っていたのだ。実は、「蛍の光」の原曲はスコットランド民謡だったのである。エリーはその歌を英語や日本語で歌った。それで子どもたちとすっかり打ち解けた。

彼らの大きな歌声は宴会場まで届いた。集まった人たちは、エリーの歌声に感心した。
しかし、早苗はたいそう面白くなかった。

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NHK『マッサン』第3回

中学生の時のあだ名は再び「まっちゃん」に戻った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の第3回めの放送を見ましたよ。

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第1週『鬼の目にも涙』

家族の夕食の時間となった。しかし、エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)の食事だけが準備されていなかった。母・早苗(泉ピン子)は、エリーは家族ではないのだから女中と一緒に後で食べろというのだ。
政春(玉山鉄二)は怒り、自分も食事を摂らずに席を立った。

エリーは、故郷スコットランドで自分の母・ローズマリー(インゲ・ムラタ)に結婚を反対されたことを思い出した。エリーが日本へ行くと、外国人だということで差別やいじめを受けると言うのだ。文化や習慣が異なり、エリーがどんなに努力したところで日本人にはなれないと諭されたのだ。

しかし、そんなことで挫けるエリーではなかった。たとえ国籍が違っても、人と人は分かり合えると信じていた。愛する政春を助けるため、何としてでも彼の妻として認めてもらうよう頑張った。誰よりも早く店の前の掃き掃除を行ったり、たわしで鍋の焦げを擦るなど、人一倍努力した。

組合の視察旅行へ行っていた政春の父・政志(前田吟)が帰宅した。彼はほとんど日本酒造りにしか興味がなく、エリーに会っても特に何も言わなかった。早苗から相談を受けても適当に聞き流し、日本酒用の米を作っている田んぼに出かけてしまった。

政春は幼い頃から、日本酒造りに生活の全てを注ぎ込む父の背中を見て育った。灘や伏見に負けない酒を作ろうと、地元の人々と協力して工夫に工夫を重ねていた。その姿に憧れ、政春も何か新しいことに挑戦したいと思うようになったのだ。その結果、政春は日本で始めてのウィスキー造りを自分の目標と定めることになったのである。

政春の祖父の法事の日を迎えた。
今日は親戚一同が集まる。母・早苗にエリーのことを認めさせるため、周囲の人々を自分の味方に付けるというのが政春の目論見である。特に、和尚は長老と目されており、早苗も彼には頭が上がらない。和尚を真っ先に取り込むことがキモだと政春は考えていた。

エリーは和服に着替え、政春から日本風の作法の手ほどきを受けた。それはどれも難しいものばかりであったが、愛する政春と一緒に頑張ることはエリーにとって幸せなことであった。

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NHK『マッサン』第2回

小学校高学年の時のあだ名は「まささん」だった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の第2回めの放送を見ましたよ。

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第1週『鬼の目にも涙』

スコットランドでの2年間のウィスキー修行を終え、政春(玉山鉄二)はエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)を連れて実家の広島県竹原に帰ってきた。エリーは、政春の母・早苗(泉ピン子)がふたりの結婚を祝福してくれていると聞いていたので、希望に胸を膨らませていた。

しかし、実際に会った早苗の態度はひどく冷淡だった。亀山家は酒蔵であり、早苗は政春を家の跡取りにするつもりでいた。家の伝統を守るのに外国人の嫁では不適切だというのが早苗の考えなのだ。政春のスコットランド行きを認めたのも、一時的に自由を謳歌した後は、きっぱりと跡取りにするつもりだったからだ。

政春は、自分は自分は日本酒造りを継ぐつもりは無いと反論した。自分の夢は日本で初めての国産ウィスキーを造ることであり、留学費用を負担してくれた大阪の会社社長の手前、それをなかったことには出来ないと主張した。すでに結婚している姉・千加子(西田尚美)の夫、もしくは妹・すみれ(早見あかり)に新たに婿を取って、その者を跡取りにすれば良いと提案した。実際、女きょうだいしかいなかった母・早苗も婿養子として父・政志(前田吟)を迎えたという前例がある。

しかし、早苗は全く聞く耳を持たなかった。翌日に祖父の17回忌があり、その準備に忙しいと言って早苗は席を立ってしまった。エリーは、政春と早苗の日本語でのやりとりをほとんど理解できなかったが、とにかく早苗がひどく怒っていることだけは理解できた。

そもそも、政春が早苗から受け取った手紙には、ふたりの結婚を祝福すると書いてあると聞かされていた。しかし、それは政春の嘘だったのだという。早苗は外国人を嫁にすることは絶対に認めないと書いていたが、政春は母もエリーに実際に会えば考えを改めるだろうと期待していたのだ。だから、エリーを実家に連れてきたのだ。しかし、そのアテは全く外れてしまった。

政春の次なる手段は、親戚一同を味方につけるというものだった。翌日に行われる祖父の法事には多くの親戚が集まる。彼らにエリーを認めさせれば、早苗も折れる他ないと考えた。妹・すみれと番頭・島爺(高橋元太郎)に協力を仰ぎ、エリーの和装の準備を進めた。

その準備の最中、すみれはエリーからふたりの馴れ初めを聞かせてもらった。それは以下の様なものだった。

ふたりは2年前、エリーの家で行われたクリスマスパーティーで知り合った。エリーの妹・ヘレン(アナンダ・ジェイコブズ)が政春と同じ大学で学んでおり、ヘレンが政春を家に招待したのだ。

みんなでクリスマス・プディングを切り分けて食べていると、政春のケーキから銀貨が出てきた。一方、エリーのケーキからは銀の指ぬきが出た。スコットランドの言い伝えによれば、銀貨の男と指ぬきの女は結婚する運命なのだという。周囲は二人のことをはやし立てた。しかし、ふたりは照れるばかりか、迷信だと言ってそれを否定しようとした。

それから、政春はエリーの弟・ウィリアム(タクマ・ウォーレン)に柔道を教えることとなり、頻繁にエリーの家に出入りするようになった。そうするうちに互いに惹かれ合って行き、ふたりきりで会うようにもなった。
日本で初めての国産ウィスキーを作るという政春の夢を聞き、エリーはそれが実現するよう心から願った。

しかし、ついに政春が日本へ帰ることとなった。エリーは政春に後ろ髪を引かれながらも、きっぱりと別れを決意した。
ところが、政春はスコットランドに残ると言い出した。エリーに結婚を申し込み、共にスコットランドで永住したいと言うのだ。

政春の夢を応援したいエリーは、それを否定した。結婚することに異存はないが、自分の方が政春に付いて日本へ行くと決意した。こうして、ふたりの結婚と日本行きが決まった。

しかし、話は簡単ではなかった。エリーの母・ローズマリー(インゲ・ムラタ)が猛反対したのだ。エリーが日本へ行くなら、親子の縁を切ると言い放った。

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NHK『マッサン』第1回

生涯で初めて付けられたあだ名は小1の時に「まっちゃん」だった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の第1回めの放送を見ましたよ。

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第1週『鬼の目にも涙』

1971年(昭和46年)。
亀山政春(玉山鉄二)の作ったウィスキーが名誉ある賞を獲得し、北海道余市で祝賀会が開かれていた。
そのウィスキーは、政春の亡き妻の名を取り「スーパーエリー」と名付けられていた。
年老いた政春は自身の来し方を思い出すのだった。

受賞を遡ること50年、1920年(大正9年)5月。
政春はスコットランドでの2年間のウィスキー修行を終え、日本へ帰国する船上にいた。

彼の傍らには、妻のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)がいた。政春はウィスキーの技術だけではなく、スコットランドの美しい女性をも娶っていたのである。まだ国際結婚の珍しかった時代、ふたりは恋に落ちて結婚した。

政春が日本でのウィスキー造りという新しい人生の始まりに胸を膨らませるのと同様に、エリーは初めて見る日本への期待と好奇心でいっぱいだった。政春の元に届いた手紙によれば、彼の両親はふたりの結婚を祝福してくれているという。エリーは政春の母に会うことを特に楽しみにしていた。

50日間の船旅を終え、さらに汽車とバスを乗り継いで、やっと政春の故郷である広島県竹原へ到着した。政春の実家は古くから続く造り酒屋であった。政春は早速エリーを酒蔵に案内し、日本酒や日本酒造りのしきたり(酒蔵は女人禁制など)を説明するのだった。

ところが、実家に着くやいなや政春の態度がおかしくなりはじめた。政春はエリーを実家の人々から遠ざけようとするのだ。特に、母と会うことを避けているようだった。実は、実家から届いた手紙の内容について、エリーに嘘をついていたのだ。

けれども、いつまでもそうしているわけにもいかなかった。番頭の島爺(高橋元太郎)が政春の母を呼びに行った。父・政志(前田吟)は組合の視察旅行で留守なのだという。

いよいよエリーが政春の母と対面することとなった。
どれだけ歓迎されるかと期待でいっぱいのエリーだったが、母・早苗(泉ピン子)の態度はまったくの予想外のものだった。

不機嫌な表情の早苗は、外国人の嫁は絶対に認めないと言い切るのだった。

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DVD『スジナシ 其ノ八』

スジナシとは、中部日本放送(CBC)が1998年から制作している番組。笑福亭鶴瓶がホストを務め、毎回1人のゲストが登場し、2人で15分程度の即興劇を行う。
本格的なセットと衣装が準備されるが、役割や台本は一切用意されない。鶴瓶とゲストが行き当たりばったりで物語を作っていく。演技を終えた後は、撮影したばかりの映像を見ながらツッコミを入れるというトークショーになっている。

ちょっと前にこの番組の存在を知ったのだけれど、僕の住んでいる地域では放送されていない。調べてみるとDVDが何枚か出ているとわかったので、レンタルで少しずつ楽しんでいる次第。

DVDは選りすぐりを集めたものなのでどれも面白いのだけれど、8巻は感動的な素晴らしさだった。僕のツボにははまった。
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NHK土曜ドラマ『55歳からのハローライフ』 第1話「キャンピングカー」

リリー・フランキーの3大傑作といえば『東京タワー』と『グラビアン魂』と『ロックン・オムレツ』(森高千里)のPVだと考える当方がNHK土曜ドラマ『55歳からのハローライフ』第1話「キャンピングカー」を見ましたよ。

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大手家具メーカーの敏腕営業マン・富裕太郎(リリー・フランキー)は早期退職制度を利用し、50代でリタイアした。彼は仕事一筋だった半生を振り返り、残りの人生は自分の夢と家族のために使おうと考えたのだ。
自宅のローンは完済済みだった。娘の美貴(市川実日子)と息子の(橋爪遼)はまだ独身で実家ぐらしだが、ふたりともすでに就職している。早期退職による特別加算金も貰えるため、当面経済的な心配がない。妻・凪子(戸田恵子)も太郎の早期退職に反対しなかった。

太郎の趣味は美味いコーヒーを飲むことだった。手動のミルで豆を挽き、ネルドリップで自ら淹れて飲むことを好んだ。退職後の夢は、キャンピングカーで悠々自適に全国を回り、先々でコーヒーを楽しむことだ。妻とふたりきりで旅に出ることを望んだ。
早期退職の特別加算金がちょうどキャンピングカーの価格と同等だったので、退職を決めるとともに手付金を支払っていた。ただし、家族を驚かせるためにそのことは秘密にしていた。

退職日の夕食で、太郎はキャンピングカーのことを家族に打ち明けた。家族は確かに驚いたが、歓迎よりも冷淡な雰囲気で迎え入れられた。反対を明言する者はいなかったが、太郎は微妙な空気に戸惑った。

同伴を指名された妻・凪子もいい顔をしなかった。夫婦仲が悪いわけではなく、むしろ関係は良好であったが、突然のことに困惑したのである。
いくら経済的に困窮していないとはいえ、キャンピングカーは決して安いものではない。今後、年金を受給するまでは収入が無い。ふたりの子どもたちの結婚資金も準備しておきたいと考えている。生活が心配になるもの当然であった。また、凪子は趣味で絵画をやっている。教室に通ったり、絵画仲間と写生旅行に出かけたりすることもある。長期旅行に出てしまうと、それらの活動に支障をきたすのだ。

太郎とふたりきりになった時、凪子はあくまで控えめに、上記の懸念を表明した。しかし、太郎にとってはそれが妻のわがままに聞こえてしまうのだった。

娘・美貴も反対だった。特に経済的理由から反対した。キャンピングカーを購入するなら再就職し、その収入を購入費に充てるよう提案した。

娘の言い分にも一理あると思った太郎は発奮し、就職活動を始めた。
家具メーカーの営業マン時代の人脈に片端から連絡をとり、自分を雇ってくれるよう頼んだ。しかし、業界の景気は悪く、太郎を雇い入れる余裕のある会社はなかった。そればかりか、太郎が昔の勤め先の威光をかざし、居丈高な態度でいることで反感を持たれる結果となった。太郎は自分を採用しない人々の陰口を叩くのだった。

人脈の伝手が途切れた太郎は、人材派遣会社に登録することとした。その待合室には覇気のない中高年が大勢おり、太郎は仄暗い気分になった。その上、面接担当者は自分よりずいぶんと若い者であった。昔ながらの営業手法しかしらない太郎は、パソコンや外国語、女性社員の扱い方など、現代の企業で必要とされるスキルを全く有していなかった。若い面接担当者に憐れむような態度で接しられ、太郎は落ち込むのだった。

その頃から、太郎は精神に不調をきたし始めた。
喉に違和感を感じ、咳が止まらなくなり、大好きなコーヒーも飲めなくなった。不眠に苦しめられたり、近所の犬の鳴き声に激しく苛立つようになった。

その上、現実と区別の付かない夢を見るようになった。
夢の中で太郎は、キャンピングカーを手に入れ、凪子とともに旅をしていた。凪子が草原にイーゼルを立てて写生しているのを、太郎はコーヒーを飲みながら眺めていた。

そこへ、阿立(長谷川博己)と名乗る男が近づいてきた。彼は黒いフードを被った不審な姿をしていたが、太郎の話を真摯に聞いてくれた。太郎は会社時代の自分のこと、早期退職を決めたきっかけ、キャンピングカーや妻とのふたり旅に対する憧れなどを話した。

それから阿立が道連れとなったが、しばらくすると彼の姿が消えた。
ところが、太郎と凪子が人気のない露天風呂に入っていると、どこからともなく阿立が現れ、ふたりの入浴姿を眺めていた。妻の裸を覗かれたことに怒った太郎は、阿立を追いかけた。
すると、阿立はキャンピングカーを盗んで走り去った。

太郎はますます怒り狂った。自分の全てをつぎ込んだキャンピングカーを盗まれ、もう自分には何も残っていないと思ったからだ。自分の何よりも大切な物が盗まれたと声をあげて嘆いた。

その叫び声を聞いていた凪子は冷淡に言った。太郎はモノやスタイルを大切にするばかりで、妻である自分を顧みないと言うのだ。結局太郎は、家族や妻を自分の理想のライフスタイルの一部としか見ていなかったと批判したのだ。
夢の中で。

悪夢ばかり見て、気分が塞ぎこむばかりの太郎は、自ら心療内科を受診した。カウンセリングを担当した医師は、身なりこそ異なったが、夢に出てくる阿立と同じ顔をしていた。
太郎から話を聞いた阿立は、「誰でもが、自分だけの時間を持っている」ということを諭した。太郎が自分の夢を実現したいと思い、そのために自分の時間を使うのと同様に、凪子も自己実現のために自由に使う時間を持っていることを確認した。そして、太郎がそのことに気付き始めていると指摘した。自分と他人がそれぞれ固有の時間を持っているという事実を知ることは脅威である。太郎はそれに気づくとともに、その事実を拒否しようとしている。だから精神的に不安定になっているのだと説明した。それを受け入れることが今の太郎には必要だと言うのだ。

ある夕、太郎はコーヒーを保温瓶に準備した。それを携え、丘で写生している凪子を迎えに行った。
太郎の姿を見つけると、凪子は帰り支度を始めた。精神的に不安定な夫を心配するのはもちろん、長年の主婦生活の習慣から、家事に戻る時刻だと思ったからだ。夫を支えることが自分の義務だと考えているのだ。

そんな凪子を、太郎は押しとどめた。もう少し絵を続けて良いと言うのだ。そして、家から持ってきたコーヒーを差し出した。

太郎は、こうして時々コーヒーを持ってきたいと言うのだった。少しずつ始めていって、ずっと先にふたりで共通の夢が持てたら嬉しいと話すのだった。

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『アオイホノオ』実写ドラマ化: テレビ東京系2014年7月

近年の当方のお気に入り漫画である『アオイホノオ』(島本和彦)が実写ドラマ化されるって言うじゃありませんか!

【ドラマ24】アオイホノオ(テレビ東京)

テレビ東京公式サイトより

テレビ東京公式サイトより

『アオイホノオ』とは、1980年代初頭の美術大学を舞台とした著者の自伝的漫画。当時流行したマンガやアニメに対して主人公が興奮する様子が面白い。その時代を知っている読者なら絶対に楽しめる。
その時代をよく知らない人でも、庵野秀明(ヱヴァンゲリヲンの人)や岡田斗司夫(レコーディングダイエットで激痩せした人)など現在活躍中の人さえ知っていれば楽しめる。彼らが実名で出てくるので。彼らは著者と同世代であり、大阪で活動をし始めた時期も一緒なのだ。
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『たそがれ清兵衛』を見た

「黄昏(たそがれ)」の語源は「誰そ彼」だそうで。
たとえばWikipediaには、

暗くなって人の顔がわからず、「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味である。

と説明されている。
さらに、同ページには

比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」を表す。

などとも書かれている。

当方は、先月ついに40歳になってしまったのだけれど、そろそろ人生の黄昏時に突入ということだろうか。相変わらずスッタモンダがあったりなかったりで、いろいろトホホな当方です。

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