NHK『おちょやん』第13回

2021年2月から放送の始まるNHK大河ドラマ『青天を衝け』に橋本愛さんが主人公・渋沢栄一の妻役で出演するわけだけれど、その役名も千代だと知ったし、みんなの予想に反して杉咲花よりも橋本愛さんの方が好きな当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の第13回めの放送を見ましたよ。

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第3週『うちのやりたいことて、なんやろ』

夜店見物の途中、シズ(篠原涼子)は歌舞伎俳優・早川延四郎(片岡松十郎)に偶然出くわした。今回の公演を最後に廃業しようとしている延四郎は、千秋楽の翌朝にもう一度会いたいと願うのだった。
直後、シズの夫・宗助(名倉潤)と娘・みつえ(東野絢香)が迎えに来た。シズは何も答えず立ち去った。

その一部始終は、ライバル芝居茶屋・福富の女中たち(丹下真寿美沢暉蓮藤本くるみ)が盗み見していた。彼女らは尾ひれをつけて、シズが延四郎と逢い引きしていたと街中に噂を流した。
道頓堀では、芝居茶屋の女中と役者の色恋はご法度である。特定の役者や芝居小屋を贔屓している見られ、信用を失うからである。福富の女中らの目論見は見事にあたり、シズの芝居茶屋の客がみるみる減った。

シズへの誹謗が大きな結果を生んだのには遠因があった。当時を知る岡安の女中頭・かめ(楠見薫)によれば、20年前にもシズと延四郎との間には一悶着あったという。

シズが岡安を引き継ぐために女中修行をしていた時分、延四郎と恋仲になった。延四郎は東京に進出することになり、駆け落ち同然でシズを連れて行こうとした。シズもその気になり、道頓堀での興行の千秋楽の翌朝に待ち合わせをしていた。
しかし、すんでのところで先代女将・ハナ(宮田圭子)に止められ、それきりになったのだという。

家中の騒ぎを鎮めるために、シズは自ら皆に語った。
過去にしきたりを破って延四郎と恋仲になりかけたのは事実であると認めた。そのせいで現在、岡安の看板に泥を塗る形になって申し訳ないと深く謝った。
そしてシズは、今まで隠し持っていた延四郎からの手紙を全て焼いてしまい、未練を断ち切った。

岡安への客足が遠のいたとはいえ、皆無ではなかった。千代(杉咲花)は残った客のために芝居小屋の座席を整えていた。そこで、噂の出どころである福富の女中たちと出くわした。
千代は、街の事情通である乞食・小次郎(蟷螂襲)から仕入れた情報を語った。曰く、福富の女中たちも二枚目俳優などとこっそり会っているのだ。それを聞かされた福富の女中たちは大いに慌てた。

仕返しをして気の晴れた千代は岡安に戻ろうとした。その道中、延四郎に捕まった。彼は、これが最後だと言ってシズへの手紙を千代に託そうとした。しかし、千代は頑として受け取らなかった。
その代わり、延四郎に請われ、現在のシズの様子を話してやった。シズが夫と娘に囲まれ、幸せに暮らしていると聞いて延四郎は満足した。

逆に千代は、延四郎が廃業する理由を尋ねた。
延四郎によれば、歌舞伎界は名のある家に生まれないと出世できないという。自分は生まれが悪いため、大阪ではうまくいかなかった。それで東京に行ったが、そこでも苦労が多かった。もう潮時なのだと話した。

そうして寂しそうに立ち去ろうとした延四郎を千代が呼び止めた。

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NHK『おちょやん』第12回

今朝はコンタクトレンズを付けずに裸眼で書いてるので誤字脱字がたくさんあったらごめんなさいと先に謝る当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の第12回めの放送を見ましたよ。

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第3週『うちのやりたいことて、なんやろ』

千代(杉咲花)は、街で見つけた高城百合子(井川遥)を岡安に匿った。彼女は何かから逃げている様子であり、また、千代が演劇に憧れるきっかけとなった女優だったからだ。

千代は知らないことだったが、百合子は会社と揉めて飛び出したのだった。
会社は、百合子に映画女優に転向するよう説得していた。しかし、映画は舞台よりも格下だと考えられており、百合子のプライドがそれを許さなかったのである。

岡安で安心した百合子は、千代にお茶子になった理由を聞かれた。
しかし、千代は明確に答えられなかった。親に売られ、これ以外に道はなかったのである。他にやりたいことはないのかと聞かれたが、それも特に思いつかなかった。

逆に、千代は百合子が女優になった理由を尋ねた。
まず百合子は、男に負けたくなかったと答えた。血縁者に頼ることができない境遇であったので、自分ひとりの力で生き抜くために女優になったという。
そして、それよりも大きな理由として、自分自身の内なる声がそう告げたのだと話した。その答えは、千代には想像もつかないことで、よくわからなかった。

千代はよくわからなかったものの、今の百合子には女優を辞めろという内なる声が聞こえているのかお尋ねた。不躾な質問をする千代に対して、百合子は気分を害した。それ以上喋らなくなった。

困った千代は、「私は、ただ、しようと思うことは是非しなくてはならいと思っている」と言った。すると百合子は「神聖な義務を思い出した。私自身に対する義務です」と答えた。
それは、演劇『人形の家』の中のセリフであり、過去に百合子が演じたものだった。その台本を持っている千代はそれを読むために字を覚え、今ではすっかり全て暗記してしまったのだ。百合子も過去の出演作でありながら、セリフをしっかりと覚えていた。ふたりでしばし掛け合いをした。

そのやり取りを通じて百合子はすっかり立ち直り、帰ることにした。
百合子は、芝居が好きなら自分でやってみるべきであり、人は一生に一度は本当にやりたいことをやるべきだと言葉を残して去っていった。

その夜、女将・シズ(篠原涼子)は家族と夜店を覗いていた。髪飾りを探しに言った宗助(名倉潤)とみつえ(東野絢香)を待つ間、石段に座って休んでいた。

その時、同じく夜店見物に来ていた歌舞伎役者・早川延四郎(片岡松十郎)に声をかけられた。20年ぶりの再会であった。
延四郎は何度も手紙を書いたのだが、シズは一度も返事を書かなかった。シズは、今でもそれらを持っているが、延四郎には全て読まずに捨てたと嘘を言った。

延四郎は、自分の興行の千秋楽の翌朝、もう一度ここで会いたいと言った。

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NHK『おちょやん』第11回

スター・ウォーズのスピンオフ連続ドラマ『マンダロリアン』を一気観したせいか、自分がマンダロリアンの一員になる夢を見てしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の第11回めの放送を見ましたよ。

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第3週『うちのやりたいことて、なんやろ』

大正13年(1924年)秋。千代(杉咲花)は数え歳で17になり、岡安で奉公をはじめてから8年が経った。

千代はすっかり一人前のお茶子となっていた。得意客の好物をほとんど暗記しているなど、先輩お茶子よりも秀でているところもあった。岡安の本家ではあるが今や勢いの衰えつつある芝居茶屋・福富のお茶子たちに嫌味を言われることもあるが、千代は口先も達者で逆に言い負かすほどである。

岡安は、先代女将・ハナ(宮田圭子)が夫と共に開いた。その夫は早くに亡くなった。ハナは女手一つで店の切り盛りと一人娘・シズ(篠原涼子)の養育を行った。
店の得意客だった宗助(名倉潤)がシズに惚れ込み、婿養子となった。シズと宗助の間には一人娘・みつえ(東野絢香)が生まれた。千代と同い年のみつえは、岡安を継ぐつもりでいる。ハナと宗助はそれを喜んでいるが、シズはどこか面白くなかった。

千代は忙しい仕事の合間を縫って、芝居を盗み見するのが常だった。
今日は、早川延四郎(片岡松十郎)の芝居である。興行の中日を過ぎ、役者たちが疲れて精彩を欠いているのがわかった。そんな中、延四郎だけは張り切っているように見えた。聞けば、この興行は延四郎の最後の公演なのだという。彼は役者を辞めて故郷に帰るのだという。

その日の夜、千代はシズに呼ばれた。
岡安では数え歳で18になると年季明けという決まりになっているという。あと数ヶ月で年が明ければ、千代も年季明けである。身の振り方を考えろというのだ。千代は即座に女中として引き続き働きたいと申し出るが、シズは安易に決めるなと言って受け入れなかった。よく考えずに決めてしまうと後悔する結果になるというのだ。
それで千代はしばらく考えることにした。しかし、自分が本当は何がしたいのかなど考えたことがなかったので困ってしまった。これまではその日を生きることが精一杯で、将来の展望など考える暇もなかったのである。

千代は、道頓堀の乞食たちとも仲良くやっている。余った弁当を彼らに分け与えたりしているのだ。
その日も乞食たちの所へ行くと、頭からボロ布を被った見慣れない乞食がいた。その者は施しなど受けないと言って弁当を受け取ろうとしない。

不審に思って千代がしつこく声をかけると、それは千代の憧れの役者・高城百合子(井川遥)だった。

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NHK『おちょやん』第10回

河内弁の「しくさる」と「けつかる」の違いを学んだ当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の第10回めの放送を見ましたよ。

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第2週『道頓堀、ええとこや~』

大切な使いをしくじった千代(毎田暖乃)は女将・シズ(篠原涼子)の逆鱗に触れ、岡安から追い出されることになった。
千代の実家が夜逃げし帰るところがなくなっているという情報は、千代がひとりで出ていった後に岡安に知らされた。クビにしたとはいえ放っておくわけにもいかず、警察に捜索願いを出した。

行き場のない千代は道頓堀の街をさまよった。ついには雨が降り出し、千代は人気のない寺の山門で雨宿りをした。亡き母・サエ(三戸なつめ)の写真と芝居小屋で貰った『人形の家』の台本を眺めながらうずくまっていた。

千代の所在は、岡安の先代・ハナ(宮田圭子)がすぐに見つけた。道頓堀に通じている彼女は、乞食たちを使って捜索させたのだ。警察よりもよほど早かった。
そうして千代は、ハナの仲介で岡安に戻った。

シズは、千代が無事だったことに安堵した。しかし、千代をクビにした手前、冷たい態度を貫いた。
千代は自分の身の上を全て話し、もう一度奉公させてくれるよう懇願した。5歳の時に母が死んだこと、それから家事を全て行っていたこと、学校に行けず読み書きができないこと、父が博打と酒ばかりで苦労させられたこと、継母が妊娠して自分が邪魔者になったこと、残していく弟の世話をしっかり行うことを条件に奉公に出たことを一気にまくし立てた。自分がこうして身を粉にしているのに、父は自分を売った金で博打をして借金をこさえたに違いない。実家の家族の行き先もわからず、自分にはもう帰る場所がないと訴えた。
言いつけられた仕事は全うするし、口答えもしないので助けて欲しいと深く頭を下げた。

さすがのシズもこれ以上放っておくわけにもいかなくなった。こうして、千代はもう一度岡安で雇われることになった。
シズの夫・宗助(名倉潤)も歓迎し、千代に字を教えることを約束してくれた。

一方、座長である天海天海(茂山宗彦)を亡くした天海天海一座は、彼の抜けた穴を埋めつつ公演を続けていた。天海の右腕であった須賀廼家千之助(星田英利)が、天海の役と自分の本来の役を両方演じるというハチャメチャな演出であった。しかし、舞台上で衣装を取り替えて老婆と息子の両方を演じる様子が滑稽で、かえって客席が沸くほどだった。
天海の息子・一平(中須翔真)も父の跡を継ぎ、役者として生きていくことを決意した。舞台の上でも見違えるようになった。客から見てもそれが一平の天職に思われた。

千代の騒動から数日後、天海天海一座は道頓堀での公演を終え、次の巡業先へと旅立っていった。

それから8年後。
千代(杉咲花)は相変わらず岡安のお茶子として懸命に働いていた。

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NHK『おちょやん』第9回

ストレスにさらされると過食気味になるというよりは、少食&睡眠過多になる当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の第9回めの放送を見ましたよ。

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第2週『道頓堀、ええとこや~』

33歳で急死した喜劇役者・天海天海(茂山宗彦)の葬儀は、劇場を利用して盛大に行われた。喪主を務めたのは、道頓堀の興行を取り仕切る鶴亀株式会社の社長・大山鶴蔵(中村雁治郎)だった。彼は、天海の死も利用して鶴亀の名をあげようとしているらしかった。

同時に大山社長は、故人の一人息子・一平(中須翔真)を二代目天海天海に襲名させるよう一座にはたらきかけた。
座員たちは、一平が父や芝居のことを嫌っていることはよく知っていた。一平は舞台に上がってもやる気がないし、仮病で休んだりする。襲名させることは普通に考えればありえないことである。しかし、道頓堀の主である大山社長に逆らっては、今後同地で興行を行うことができなくなる。なんとか一平を説得しようと試みることにした。

千代(毎田暖乃)は、女将・シズ(篠原涼子)から使いを命じられた。両手に収まるほどの小さな品物を届けるだけの簡単なものである。

しかし、千代は仕事に身が入らなかった。
故郷の村の小林(烏川耕一)から、実家が夜逃げしたと聞かされたからだ。父・テルヲ(トータス松本)は借金をし、激しい取り立てに苦しめられた末のことだという。
千代は、実家の家計を助けるために奉公に出たはずである。それなのに借金で夜逃げしたとあっては、自分がなんのために家を出たのかわからなくなったのだ。

気落ちしたまま道頓堀川のほとりを歩いていると、一平が橋の上から大きな石を川に投げ込もうとしているところに出くわした。
一平によれば、死んだ父からは絶対に道頓堀川に石を投げ込んではならないと言いつけられていたという。道頓堀川は船で観劇客を連れてくるありがたい川だと言ったそうだ。一平は、父がもう何も言えなくなったのをいいことに反抗しようとしているのだ。
一平は千代に手伝わせ、なんとか二人で石を持ち上げ、川に投げ込んだ。景気のいい水しぶきが上がった。

千代は、自分が居合わせた天海の最期の様子を語った。倒れる直前、天海が気にしていたのは一平のことだったと話してやった。
一平はそれを信じようとはしなかった。母がいないのも、学校に行けないのも、友達がいないのも全て父のせいだと恨み言を述べた。しかし、一平はこみ上げてくるものを抑えることができなくなった。

一方、千代は一平のことが羨ましいと話した。
千代の父・テルヲが、千代に知らせないまま借金を膨らませ夜逃げしたことに比べたら、最期に心配してもらった一平の方が恵まれていると思ったのだ。
そうしているうちに、ふたりは橋の上でおいおいと泣いた。

そんなことがあって、千代の使いはすっかり遅れてしまった。使い先から品物の受け取りを拒否され、千代はそれをそのまま持ち帰るしかなかった。その結果は、シズを激怒させた。
シズが届けさせたものは、珍しい煙管だった。使い先の主人は、その煙管をある人物に餞別として渡すつもりだった。その人物とは、今日限りで廃業する役者であった。今生の別れを惜しんで煙管を渡すつもりだったという。しかし、千代の到着を待つ間に役者は旅立ってしまい、もう行き先はわからないという。
岡安は大きな恨みを買うことになる。

シズは千代を追い出すことを決めた。

翌朝、千代は誰よりも早く起きて出発の準備を整えた。かまどの火を熾し、湯を沸かしておいた。
女中頭・かめ(楠見薫)が現れると別れの挨拶をし、入れ替わりにひとりで家を出た。

身元を引き受けるはずの口入れ屋(藤吉雅人)が岡安に到着した時には、千代はどこにも見当たらなかった。
口入れ屋は、シズにある噂話を告げた。

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NHK『おちょやん』第8回

ジョン・レノンが死亡したのはアメリカ東部標準時の12月8日の23時ころであり、それは日本時間の9日13時ころに相当するため、今日追悼するのがスジだという説をとっている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の第8回めの放送を見ましたよ。

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第2週『道頓堀、ええとこや~』

道頓堀にやって来た天海天海一座は、岡安に寝泊まりしていた。彼らの公演は連日大入り満員であり、特に子役の一平(中須翔真)は客に大ウケだった。

ある日の昼興行を終えると、一平は寒気がすると言って岡安で休むことになり、夜の興行を休むことになった。座長であり彼の父でもある天海天海(茂山宗彦)は、親が死んでも泣かずに舞台に出るものだなどと言ってたしなめるものの、息子には甘かった。

千代(毎田暖乃)が一平を様子を見に行くと、彼は悪びれることもなく仮病だと打ち明けた。自分は好きで旅芸人の家に生まれたわけではないし、学校には行けず、父は芝居以外では酒を飲んで女遊びばかりである。役者は嫌だと話した。
千代は、自分と境遇の似た一平にほのかな親近感を得た。

そこへ、岡安の一人娘・みつえ(岸田結光)がやって来た。彼女は甲斐甲斐しく看病しながら、一平に頼まれていたという本を買ってきて仲良く一緒に読んだ。
字を読むことのできない千代は疎外感でイライラした。

千代は、鶴亀座に使いに出かけた。そのついでに、少しだけ舞台を覗かせてもらった。そこには、今の日本で一番勢いがあると言われている新劇女優・高城百合子(井川遥)が出演していた。千代はすっかり魅せられてしまい、なかなか仕事に戻ろうとしなかった。
そんな千代を見かねた鶴亀座の熊田(西川忠志)は、上演中の『人形の家』の台本を千代にくれた。そして、しっかり働いて稼ぎ、今度は正式な客として来るように言うのだった。

台本を貰ったことは嬉しかったが、千代は字を読めなかった。
そこで、一平からひらがなを習い、台本にふりがなをふってもらうことにした。嫌がる一平であったが、仮病で休んでいることをバラすと千代から脅され、渋々ながらも応じた。
千代はふりがな付きの台本を夜遅くまで夢中で読んだ。

ある夜、千代は天海天海を迎えに行くよう命じられた。
公演を終えて酒を飲み、千鳥足で歩く天海の姿は千代に父・テルヲ(トータス松本)を思い出させた。千代は気に入らなかった。

一方で天海は、千代に満員御礼の祝儀袋をくれた。天海が言うには、千代が一平と仲良くしてくれている礼も兼ねているという。一平に母も友達もいないのは、自分が旅芸人であるせいであり、一平に寂しい思いをさせているのはいつも申し訳ないと思っていると言うのだ。一平のことをよろしくと頼んだ。

その直後、冷たい風が吹き付けると、天海は道に倒れた。そのまま年の暮れに天海は33歳で亡くなった。

天海の葬式は岡安で取り仕切ることになった。すっかり仕事を覚えた千代は、女中頭・かめ(楠見薫)に言いつけられる前に先回りして座敷の支度を整えることができた。

そうやって時間をやりくりし、千代は故郷から尋ねてきた小林(烏川耕一)に会うことができた。彼は千代の実家の隣に住んでいて、竹籠を問屋に卸すついでに様子を見に来てくれたのだ。

しかし、小林が言うには、テルヲの一家は夜逃げしたという。

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NHK『おちょやん』第7回

底抜けにぃ~朝起きれなくなった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の第7回めの放送を見ましたよ。

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第2週『道頓堀、ええとこや~』

千代(毎田暖乃)は、女中頭・かめ(楠見薫)から2件のお使いを命じられた。

ひとつめは、岡安の一人娘のみつえ(岸田結光)の学校まで弁当を届けることだった。
みつえが自分と同い年だと知り、千代は友達になろうと持ちかけた。しかし、お嬢様育ちのみつえは、使用人と友達になることはできないと無下に断り、早く仕事にもどれと追い返すのだった。

ふたつめの使いは、芝居茶屋・福富に付け届けをすることだった。
そもそも、千代が奉公する岡安は、福富から暖簾分けした店だった。しかし、近年は岡安の商いが福富をしのぐほど大きくなり、本家である福富は面白いはずがなかった。福富の女将・富川菊(いしのようこ)は付け届けを受け取ろうとはせず、千代をそのまま追い返そうとした。
千代は、そのまま持ち帰ると叱られ、追い出されるに違いないと思い途方に暮れた。日が暮れるまで福富の前で座り込んでいたが事態は好転しなかった。

諦めて岡安に帰ると、女将・シズ(篠原涼子)は当然の成り行きだと話した。本家に対する儀礼的な行為であり、受け取らないことははじめから分かっていたという。さっさと諦めて帰ってくればよかったものを、店の前に座り込むなどという無礼な行動で岡安の看板に泥を塗ったと言って怒るのだった。

やっと1日の仕事が終わった。
奉公しているお茶子は、店に寝泊まりし、食事も与えられる。ただし、給金は支払われない。お茶子たちは客からのチップが唯一の現金収入である。まだ初日の千代には現金収入がなかった。

先輩のお茶子たちは、風呂屋に出かけようとしていた。千代もついて行こうとするが、貧乏で今までほとんど風呂に入っていなかった千代はたいそう薄汚れていた。風呂に入るのは一番最後にすべきだと言って、後から来るように言いつけた。時間を待つ間、座布団のほつれを全て修繕しておくよう命じられた。

なんとか座布団の修繕を終えて風呂屋に向かったが、すでに閉店していた。千代のそばを歩いた人からは、体が臭うと悪態をつかれた。
千代は、通りにあった防火用水桶から水をくんで頭からかぶり、ひとまずその場をしのいだ。

全身びしょ濡れで歩いていると、知らない男の子からからかわれた。千代のことをまるで河童のようだと言うのだ。しかし、一瞬目を離したすきにその男の子はいなくなっていた。

翌朝、道頓堀に天海天海[あまみてんかい]一座がやって来た。
天海天海一座は喜劇団であるが、喜劇界で日本一と言われている万太郎一座を追い越そうかという実力と人気のある劇団であった。事実、初日から一座の公演は満員売り切れとなった。

座長・天海天海(茂山宗彦)は岡安を贔屓にしており、真っ先に岡安へ挨拶に来た。
その一同の中には、千代のことを「河童」と読んだ男の子・一平(中須翔真)がいた。彼は座長・天海の息子であった。

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NHK『おちょやん』第6回

2週目も頑張るんだぞと自分に言い聞かせている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の第6回めの放送を見ましたよ。

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第2週『道頓堀、ええとこや~』

千代(毎田暖乃)は家を出て、道頓堀の芝居茶屋へ奉公することになった。継母・栗子(宮沢エマ)が子を宿し、追い出されることになったのだ。ただし、千代は自分が自ら家を捨てたのだと思うことにした。

千代が道頓堀に来るのは初めてである。多くの芝居小屋が立ち並ぶ娯楽の中心地で、そのにぎやかな様子はまるでおとぎの国のようであった。千代は自分の境遇を忘れて舞い上がった。

千代の奉公先は、芝居茶屋の岡安である。
千代はまだ知らないが、芝居小屋とは得意客相手に芝居関連の万事を引き受ける店である。席の確保や食事・酒の手配など、業務は多岐にわたる。

千代が芝居茶屋・岡安の前に立つと、中から働く女性たちが飛び出してきた。彼女らは座布団を抱え、忙しくたち振る舞っていた。千代とぶつかるが、謝ることもなく去っていった。
千代は腹を立て、河内弁で怒鳴り立てたが、相手にされなかった。

その様子は、岡安の女将・岡田シズ(篠原涼子)に見られていた。シズの千代に対する第一印象は最悪だった。

シズは、千代が親孝行な子かどうか訪ねた。千代はシズに取り入ろうとして、自分は親孝行であると嘘をついた。ここで一生懸命働いて、両親に恩返しをするつもりだと述べた。
しかし、それはシズの期待する回答ではなかった。シズによれば、親孝行な子は親の病気や怪我ですぐに里帰りしたがるという。そのため、使い物にならないと言うのだ。
しくじった千代はすぐに本当のことを言った。親に疎まれており、二度と家に帰らない決意であることを述べ、岡安に置いてほしいと頭を下げた。しかし、シズには千代が嘘つきに映り、ますます印象が悪くなった。

そこへ、シズの夫・宗助(名倉潤)とハナ(宮田圭子)が帰ってきた。ふたりは神社にお参りしてきて、ハナがおみくじを引いたところ大吉だったという。そこには「待ち人来る」と記されており、これも何かの縁だと受け入れることを促した。
母の言葉に、シズは渋々承諾した。ただし、1ヶ月だけと期間を決め、口入れ屋にはその間にもっとおとなしくて賢い子を見つけてくるよう言いつけるのだった。

千代は、シズの気が変わるよう、仕事をしっかり覚えるよう決意した。1ヶ月で使い物になれば、ずっと置いてもらえるだろうと考えたのだ。
さっそく女中頭・かめ(楠見薫)に仕事を教わろうとするが、彼女も親切ではなかった。どうせ1ヶ月でいなくなる子に仕事を教えている暇はないと言うのだ。単純な仕事として、炊飯用の釜を洗うよう命じられた。

千代は、釜や流しに残っているご飯粒を食べてよいか、かめに許可を求めた。いつも腹を空かせていた千代はそれを粗末にしたくなかった。
その様子に感心したかめは、千代に他の仕事も言いつけた。ただし、それは家の掃除や選択、家人のお使いなど覚えきれないほどたくさんあった。それでも文句を言わずに、千代は取り組んだ。

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NHK『おちょやん』第5回

宮沢喜一の縁者という話題にはちょっと思うところのある当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の第5回めの放送を見ましたよ。

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第1週『うちは、かわいそやない』

継母・栗子(宮沢エマ)が自分たち姉弟を方向に出して追い払うつもりであることを知り、千代(毎田暖乃)と栗子の関係は完全に冷え切っていた。
そんな中、父・テルヲ(トータス松本)は栗子の肩を持つばかりであるし、「母親」というものを知らなかった弟・ヨシヲ(荒田陽向)は栗子のことを慕うようになっている。加えて、村人たちは栗子の小唄を聞きたがり、鼻の下を伸ばして家に集まるようになった。
千代は孤立無援でだった。

その矢先、千代は栗子がテルヲとの子を宿していることを知った。そのため、テルヲは栗子を追い出さないばかりか、彼女に頭が上がらなくなっていたのである。食い扶持を減らしつつ金を得るために千代たち姉弟を奉公に出すことは、テルヲの中でほぼ心が決まっていた。
栗子は、血の繋がらない子供と一緒に暮らすのは御免だと本人たちの前で隠すことなく言い放った。

千代は、家を出ていく心が決まった。
ただし、ヨシヲだけは家に置いてくれるよう、手をついて深く頭を下げた。彼に対してだけは良い母親になってくれるよう栗子に頼み込んだ。栗子も不承不承ながら、それを聞き入れた。

こうして、千代は道頓堀の芝居茶屋に奉公に行くことが決まった。

出発の日、千代は生まれた初めてきれいに髪を結い、晴れ着を身に着けた。荷物は小さな風呂敷包みひとつきりだったが、母の形見のガラス玉は大事に懐にしまった。
テルヲとヨシヲが見送る中、千代は後ろを振り返ることもなく、足早に駆け出した。

栗子の手前、冷静に堪えていたテルヲであったが、辛抱たまらず千代を追いかけた。そして、家に唯一の亡き母・サエ(三戸なつめ)の写真を差し出した。

千代はそれを受け取ると、一筋の涙を流しながら捨て台詞を吐いた。
「うちは捨てられたんやない。うちがあんたらを捨てたんや。」

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NHK『おちょやん』第4回

とりあえず今週だけは頑張ってみようと決意した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の第4回めの放送を見ましたよ。

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第1週『うちは、かわいそやない』

遠くの街で観賞用の鶏を売り、千代(毎田暖乃)とテルヲ(トータス松本)は帰宅した。しかし、弟・ヨシヲ(荒田陽向)の姿が見えない。
栗子(宮沢エマ)も退屈しのぎに近くの街まで出かけていたので、ヨシヲの行方は知らないという。
そのまま翌朝になってもヨシヲは帰ってこなかった。村人たちが総出で捜索することになった。

千代も一人で山道を探していると、ヨシヲの草鞋が落ちているのを見つけた。声をかけると道の下からヨシヲの声が聞こえてきた。彼は滑落し、足を痛めた上、昨夜の雨に濡れて弱りきっていた。千代はヨシヲを背負い、家路についた。

しかし、いつも腹をすかせている千代は思うように力が出ない。
その時、どこからかいい匂いが漂ってきた。それにつられていくと、カゴいっぱいに見たことのない食べ物があった。おそるおそる口に入れてみるとたいへんな美味で、千代は夢中で貪り食った。

そうやって食べていると、山で暮らす彦爺(曾我廼家文童)が現れた。どうやらそれは彼の持ち物らしかった。彦爺によれば、それは豚の飼料とする食パンのミミだという。千代は、自分が豚と同じものを美味しく食べたことを恥ずかしく思った。
彦爺は、ヨシヲに向かって、一人で山に入ってはならないと注意したはずだとたしなめた。

ふたりは無事に帰宅し、父・テルヲのみならず、村人たちは全員喜んだ。
ただし、栗子だけは面白くなかった。

栗子は、テルヲとふたりきりになると、子供たちを家から追い出すように迫った。そうでなければ、テルヲと別れると脅した。
栗子は、子供たちもこの家にいていつも腹を空かせているよりは、奉公に出て腹いっぱい食わせてもらったほうがよほど幸せなはずだと説得した。最初は渋っていたテルヲであったが、そう言われるとまんざら悪い考えではないように思われてきた。
その場で結論は出なかったが、一部始終は千代が盗み聞きをしていた。

その後、テルヲは鶏を何羽か売りにでかけた。千代は、彼の留守中に栗子に意地悪をして追い出す算段を立てた。しかし、その目論見は栗子に見抜かれ失敗に終わった。

そうしていると、彦爺が山で採れた薬草を持って訪ねてきた。聞けば、それは腹痛に効く薬草であり、行方不明になった日にヨシヲが探していたものだという。
ヨシヲはそれを受け取ると、栗子に差し出した。栗子が痛そうに腹をさすっていたのを見たから、それが治るように薬草を探しに行ったのだという。

その様子を見ていて、千代はハッとした。
千代は実母・サエ(三戸なつめ)の記憶を持っているが、まだ小さかったヨシヲには母の記憶が皆無である。栗子がいかに性悪であったとしても、ヨシヲにとっては初めて接する「母」なのである。

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