東京でアイドルになることをほぼ諦めかけたアキ(能年玲奈)の元へ、水口(松田龍平)が直接会いに来た。アキは水口の熱意に打た、もう一度やり直そうと思いかけた。しかし、そこへユイ(橋本愛)がやって来ると、アキは作業小屋の中にひとりで閉じこもってしまった。水口は自分の出る幕ではないと思い、天野家の母屋に引っ込んだ。
ユイを避けたくて作業小屋に閉じこもったアキだったが、ユイがいつまでもガラス戸の前に立っているのに根負けし、小屋の中に入れてやった。ユイは先日の大喧嘩のことを謝った。自分が上京できなくなってしまったことはアキとは無関係なのに、アキに八つ当たりしたと認め、深く謝罪した。アキも同様に謝罪した。東京で芽が出ないのはあくまで自分のせいなのに、ユイが「アイドルなどダサい」と言われて怒り狂ったことを謝った。ユイの上京の下地を作るために頑張っていたのに、それを否定されて感情的になったと弁解した。
ユイは、アキの海女時代のことを訪ねた。海女は誰のためにやっていたのかと聞かれ、アキは自分自身が楽しいからやっていたと答えた。それを受けて、ユイは、歌ったり踊ったりするアイドル活動も自分のためにやれば良いと助言した。ユイ自身はアイドルになることを諦めてしまったけれど、アキにはそうなって欲しくないと話した。ユイはアキのことを応援すると約束し、アキ自身が楽しいようにやれば言うのだ。ユイは持参した色紙を取り出した。それにアキのサインをねだった。ふたりは和解した。
ユイと和解すると共に、アキは再上京の決意を固めた。1月10日、町の人々に惜しまれつつ、アキは東京へ向かった。ユイは、餞別として自分で手作りした琥珀のブレスレットを贈った。
列車に乗り込んだアキが何気なく荷物を整理していると、春子(小泉今日子)からの手紙があることに気付いた。アキは、春子と荒巻(古田新太)が不穏な関係にあったと疑っていた。その真相を明らかにすることを意図した手紙だった。
1985年、アイドルデビューを目指す春子(有村架純)は純喫茶アイドルでアルバイトをしていて、駆け出しスカウトマンだった荒巻と顔見知りになった。ある日、荒巻が慌てた様子で店に現れ、詳しい内容を話さないまま春子を連れ出した。大急ぎでやって欲しい仕事があるというのだ。
現場へ向かうタクシーの中で、荒巻はやっと説明を始めた。荒巻の所属する事務所から、鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)を大型新人としてデビューさせる予定だという。鈴鹿に映画の主演と主題歌を担当させ、事務所の社運をかけているという。かわいらしい清純派女優であり、ブレイク間違いなしだという。
ただし、一つ大きな問題があった。鈴鹿ひろ美は救いようのないほどの音痴だったのだ。荒巻はカセットテープを取り出すと、タクシーの運転手(森岡龍)に命じて鈴鹿のデモテープを聞かせた。想像を絶する下手さに春子は唖然とするのだった。
春子に任された仕事というのは、鈴鹿ひろ美のゴーストシンガーとしてデビュー曲「潮騒のメモリー」を吹きこむことだったのだ。荒巻は鈴鹿ひろ美のテープを止めさせ、新たなテープをかけさせた。それは荒巻の歌っている「潮騒のメモリー」であり、それを聞きながらスタジオに着くまでに歌を覚えろというのだ。
春子は躊躇したが、この仕事を断る立場にはなかった。
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