NHKトップランナー 小説家 森見登美彦

2007年10月6日23:00放送のNHK トップランナーに森見登美彦が出演。

山本周五郎賞を受賞・直木賞候補にもなったファンタジー恋愛小説『夜は短し歩けよ乙女』、太宰治、芥川龍之介らの名作を独自の解釈と文法で転化させた作品集『新釈 走れメロス 他四篇』などで、今注目の小説家。
京都での自らの大学生活をモチーフに、現実と幻想を錯綜させる”マジックリアリズム”という手法でヒット作を連発している。
今も京都を創作の場とする森見の”四畳半的京都”への想いと、それを作品に昇華する手腕に迫る。

トップランナーの司会の一人は本上まなみであるが、森見は彼女のファンであることを公言している。
「太陽の塔」の主人公の自転車には “まなみ号” という名前がつけられているくらい。
森見が本上まなみにどういうカラミを見せてくれるか、ちょっと楽しみ。

なお、再放送は11月1日(木)25:05~25:49にNHK総合で。

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『鴨川ホルモー』を半分くらい読んだ

『鹿男あをによし』がたいそう面白かったので、万城目学の処女作『鴨川ホルモー』を読み始めている。

既に読んだ人への報告としては、現在、立命館大学での「衣笠ホルモー」が終了したあたり。
高村が”大切なものを失ったけれど、大丈夫”になったあたり。
ていうか、The Beatles の名作 “Abbey Road” をモチーフ(横断歩道を横切る、例のアレ)とした本書の表紙に、なぜか丁髷の男が描かれていて、なんのこっちゃと思っていたのだが、その疑問が氷解したあたり。

つーか、あの”鼻”持ちならない芦屋に彼女がいることがわかり、しかも、よりによって・・・、と俄然盛り上がってきたところで、小休止して現在に至る。

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『夜は短し歩けよ乙女』(森見登美彦)

もうお気づきのことと思うが、ここ数日、森見登美彦の作品を読みまくっている当方がいる。

『太陽の塔』→『新釈 走れメロス 他四篇』→『夜は短し歩けよ乙女』と流れてきた。
たった今、「夜は短し歩けよ乙女」を読み終えた。

近代文学のような格調高く理路整然とした文体で、実在の京都を舞台に縦横無尽に書き連ねられるバカ話!

今まで、「抱腹絶倒」という言葉を言ったことも書いたこともないし、その言葉の意味するニュアンスもよくわからなかった当方であるが、この書でその意味を心の底から理解した。
そんなことは絶対にないだろうが、京都の四条河原町を歩いていて、色白でベビーフェイスで清楚な見ず知らずの女の子に
いつも alm-ore 読んでます!サインをお願いします!
と言われたら、色紙に座右の銘として「抱腹絶倒」と書いてしまうほどの勢いである。

『夜は短し歩けよ乙女』のページをめくる度、肩を揺らし、「くくくっ」と笑い声をもらし、目からは笑い涙がとろとろと流れたほどである。

全301ページの物語、1ページ当たり1mlの笑い涙、もしくは笑ったときに飛び出した唾、腹筋の躍動による汗等が流れたとしたら、全部で296mlの水分を放出した計算になる。
296cc といえば、今朝コンビニで買って飲んだアリナミンVのおよそ4本分弱である。

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「太陽の塔」(森見登美彦)

太陽の塔

もう一度、もう二度、もう三度、太陽の塔のもとへ立ち帰りたまえ。
バスや電車で万博公園に近づくにつれて、何か言葉に尽くせぬ気配が迫ってくるだろう。「ああ、もうすぐ現れる」と思い、心の底で怖がっている自分に気づきはしまいか。そして視界に太陽の塔が現れた途端、自分がちっとも太陽の塔に慣れることができないことに気づくだろう。
「つねに新鮮だ」
そんな優雅な言葉では足りない。つねに異様で、つねに恐ろしく、つねに偉大で、つねに何かがおかしい。何度も訪れるたびに、慣れるどころか、ますます怖くなる。太陽の塔が視界に入ってくるまで待つことが、たまらなく不安になる。その不安が裏切られることはない。いざ見れば、きっと前回より大きな違和感があなたを襲うからだ。太陽の塔は、見るたびに大きくなるだろう。決して小さくはならないのである。

(森見登美彦 『太陽の塔』 p.116)

太陽の塔を前にした時に我々が感じる畏敬の念を、これほど見事に捕らえた文章は、僕が知る限り他にはない。

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