NHK『カムカムエブリバディ』第3回

人種や出自、外見で人を判断することはよくないことだとわかっているけれど、藤本有紀さんの『ちりとてちん』では伝統的な塗箸職人として川平慈英がキャスティングされていて、その少々日本人離れしたバタ臭い造作に違和感を感じていたのだけれど、終盤になってそのキャスティングの妙が見事に解決されて唸った覚えのある当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カムカムエブリバディ』の第3回の放送を見ましたよ。

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第1週『1925-1939』

1939年(昭和14年)、14歳になった安子(上白石萌音)は尋常小学校卒業後は家の手伝いをしていた。和菓子屋の店番や配達などを嫌がることなく率先して行っていた。幼いときから家の和菓子が大好きだった安子にとってはこれ以上ない幸せな日々だった。

一方で、ちょっとした面白くないこともあった。
おしゃれにも憧れのある安子は、幼なじみのきぬ(小野花梨)に勧められ、髪にパーマをかけたいと思った。しかし、実直な性格の父・金太(甲本雅裕)には叱られるに違いない。なんとか母・小しず(西田尚美)を味方につけ、母から父を説得してくれるよう約束を取り付けた。しかし、日中戦争が激しさを増し、ノモンハン事件を契機に日本はソ連とも衝突することになった。その影響で、国内ではパーマが禁止されてしまった。安子は自分とは関係のないことでおしゃれができなくなったことに憤慨した。

しかし、それでも安子および周囲は平穏な毎日だった。安子自身は特にこれといった夢や目標を持たなかったし、持つ必要もなかった。

小学校時代の安子の同級生である雉真勇(村上虹郎)は中学校に進学し、野球に打ち込んでいた。ランニング中に安子と出会った勇は、安子のことを「あんこ」と呼んでからかった。彼は小学生の時から安子に気があるのだが、素直にそれを表すことができず、安子の前ではいつも意地悪をしたり威張ってみせたりしてしまうのだ。
勇は、野球の全国大会で甲子園に出場することが目下の目標だと話した。その後は大学に進学し、六大学野球で活躍することを夢見ていると話した。

勇の夢を聞いても、やはり安子は今の生活に何も不満や焦りを感じなかった。ただ、大好きな街で大好きな人と暮らす日々がいつまでも続けばいいと思うのだった。

暑い夏の日、安子が店番をしていると一人の大学生(松村北斗)が買い物に来た。帰省のために岡山に着いたところだが、急いで汽車に乗ったのでお土産を準備できなかったという。そこで実家に持って行く土産を探しに来たのだ。
このような暑い季節は、くず餅などが涼しげで良い。しかし、安子はあえておはぎを勧めた。店のあんこは絶品で、小さいときから食べて続けてきた安子ですら食べ飽きることがないと説明した。大学生は安子の勧めを受け入れておはぎを買うことに決めた。

別のある日、大量のおはぎを受注し、安子が届けることになった。その日はラジオで甲子園の野球大会の決勝戦が中継されており、家の者はそれに夢中になっていた。誰も配達になど行きたくないのだ。

届け先はとても大きな屋敷だった。門から声をかけてもなかなか人が出てこない。訝しんでいると、やっと門が開いた。
そこから出てきたのは、先日おはぎを買っていった大学生だった。彼の家族は安子に勧められたおはぎを体操気に入ったのだという。それで彼の父は来客の接待用に使うことを決めたのだと話した。

安子と大学生が門の前で話していると、奥から小学校の同級生だった勇が顔をのぞかせた。なんとそこは彼の家で、件の大学生は勇の兄・稔なのだという。
勇は、野球中継が佳境だと兄を呼びに来たのだ。野球に夢中な勇は、そこに安子がいるにもかかわらず、すぐに家の中に戻ってしまった。

安子はいつも自分が勇にからかわれていることを話した。それには兄・稔も苦笑いした。

そこへ、外国人が近寄ってきて、外国語で道を訪ねた。外国語のわからない安子は慌てふためいたが、稔が流暢な英語で道案内をした。安子には何も理解できなかったが、スラスラとしゃべる稔に感心した。
稔は、翌朝6時半にラジオを聞くよう提案し、家の中に引っ込んだ。

翌朝、安子は言われたとおりにラジオをつけた。すると英会話講座が始まった。
やはり安子には何を喋っているのかまったくわからなかったが、流れるような英語の調べにうっとりと耳を傾けた。

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NHK『カムカムエブリバディ』第2回

とりあえず上白石萌音が本格的に出てくるまでは様子見だと思っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カムカムエブリバディ』の第2回の放送を見ましたよ。

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第1週『1925-1939』

和菓子屋である橘家の朝はあんこ作りから始まる。
安子(網本唯舞葵)は目を覚ますと必ず菓子工房を覗く。そばに近寄ることは許されなかったが、職人たちの働く姿を眺め、あんこの香りを嗅ぐのが大好きだった。

安子の祖父であり、現役の職人である杵太郎(大和田伸也)の持論は、職人の気持ちが菓子に乗り移るということだった。食べる人の嬉しそうな顔を思い浮かべ、菓子が美味しくなれという気持ちを込めて作ることが何よりも大事だといつも言っている。安子もそれを信じていた。

安子は自分も菓子職人になりたいと思っている。しかし、家族は兄・算太(濱田岳)を跡取りと決めていた。ゆえに、安子に菓子作りを直接教えないばかりか、女の子の仕事ではないと言い含めるばかりだった。
安子は、しかたなく庭で土団子を作って遊ぶばかりだった。

その一方で、安子はときおり店番を頼まれることがあった。
その日も店番をしていると、幼なじみで親友の水田きぬ(岡陽毬)が買い物に来た。きぬは豆腐屋の末娘であるが、女きょうだいしかいない。姉は家を出て自由にすることが決まっている。そのため、きぬが婿をとって家を継ぐことに決まっているのだと話した。
きぬは自分の運命を呪っていた。安子には兄がいるおかげで、好きな人と結婚できることを羨ましいと話すのだった。

しかし、安子の兄・算太はまったく修行に身が入っていなかった。頻繁に仕事を抜け出しては映画を見に出かけていた。祖父・杵太郎は孫に甘いところがあり、父・金太(甲本雅裕)も算太にあまり厳しく接することはなかった。

ある日、算太はダンサーになりたいと言い出した。映画で見たチャップリンに憧れたというのだ。もちろん、家族は反対した。
ところが、安子だけは算太の味方だった。いつも遊びに付き合ってくれる算太のことが好きなのだ。安子は自分が婿をとって家を継ぐから算太を自由にさせてやってほしいと頼んだ。
しかし、家族は首を縦に振らなかった。むしろ、幼い妹にまで気を遣わせたことについて算太は叱られた。

庭で土団子遊びをはじめた安子のところへ算太がやって来て謝った。
安子は、菓子作りをしている算太は少しも楽しそうではないと話した。祖父の言葉を借りれば、作り手の気持ちが菓子に乗り移るはずである。しかし、算太が菓子作りを嫌がっているのがわかると言う。
一方、算太が映画を真似て踊ってみせた時は楽しそうだったと話した。

その様子を陰から見ていた杵太郎と金太は、算太のダンサー修行を認めることとした。大阪で修行し、ものにならないと分かればすぐに帰ってくることを条件に送り出した。

その後しばらくして、杵太郎は腰を痛めて隠居することになった。金太が二代目として取り仕切ることになった。

そして、安子(上白石萌音)は14歳になった。今でも、目を覚ますと菓子工房に直行し、あんこの匂いを嗅ぐ。

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NHK『カムカムエブリバディ』第1回

本作の脚本は藤本有紀さんなんだけれど、彼女が2007年に担当した朝ドラ『ちりとてちん』を今でも大好きな当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カムカムエブリバディ』の第1回の放送を見ましたよ。

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第1週『1925-1939』

1925年(大正14年)、日本でラジオ放送が開始された。
まさにその日、橘安子(網本唯舞葵)が生まれた。

安子の生家は和菓子屋だった。
祖父・杵太郎(大和田伸也)が創業し、父・金太(甲本雅裕)も共に働いている。杵太郎は厳しい人物で、金太をはじめ、住み込みで働く職人たちも彼にはまったく頭が上がらなかった。
安子の兄・算太(濱田岳)も職人見習いとして働いていたが、彼は仕事に身が入らず、父・金太の頭痛の種だった。

尋常小学校の3年生になった頃、安子は家中の者からかわいがられていた。
母・小しず(西田尚美)や祖母・ひさ(鷲尾真知子)は登校する安子に毎日おいしい弁当を作ってくれた。兄・金太は仕事をサボってブラブラしていても、安子の遊びには嫌な顔をせず付き合ってくれた。

中でも特に安子をかわいがっていたのは祖父・杵太郎だった。
菓子工房を神聖な場と考え、そこでふざけたり怠けたりすることを一切許さない杵太郎であるが、安子がつまみ食いに来ても咎めなかった。むしろ、自分の仕事の手を止めて安子に菓子を食わせてやることもしばしばだった。

その頃、ラジオは人々の憧れの的だったが、庶民にはまだ高嶺の花だった。
職人たちは、おそるおそる杵太郎にラジオ購入を願い出た。ラジオがあれば仕事の能率も上がるし、家族の余暇も充実すると言うのだ。安子もラジオが買ってもらえると期待した。
けれども、もちろん杵太郎は即座に却下した。

ところが、ある朝目を覚ますと、安子の枕元にラジオが置いてあった。そこには、杵太郎からの贈り物だという手紙も添えてあった。家中の者に知らせると、みなも大喜びした。
しかし、杵太郎本人はそんなことをしていないという。手紙を確かめると、それは杵太郎のものではない拙い文字であった。

すぐに兄・算太(濱田岳)の仕業だと露見した。商店街で唯一人ラジオを所有していたのは荒物屋・赤螺吉兵衛(堀部圭亮)であるが、彼の家から算太が盗んできたのだ。彼の妻・清子(宮嶋麻衣)が産気づき、吉兵衛はラジオを店先に置いたまま慌てて産婆を呼びに行った。そのすきに盗んだのだと言う。

算太は父・金太に連れられて、謝罪と返還に出向いた。もちろん吉兵衛は怒り心頭でなかなか許さない。
そこへ、祖父・杵太郎がまんじゅうを持って後から現れた。清子に無事に子どもが生まれた祝いだという。清子も子どもが生まれてめでたい時に怒るのはやめてほしいと取りなした。
それで、吉兵衛は今回ばかりは許してやることにした。

こんな騒動はあったが、一時でもラジオが家にあった時、家族も職人もいい顔をしていた。それは良い光景だったと思った杵太郎はラジオを買うことに決めた。
こうして安子の家にラジオがやって来た。

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NHK『おかえりモネ』第120回[終]

第1部が終わる時「最終回は50年後、百音は登米に戻る」と予想していた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第120回め(最終回)の放送を見ましたよ。

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第24週(最終週)『あなたが思う未来へ』

未知(蒔田彩珠)の大学合格祝いで幼なじみたちが百音(清原果耶)の家に集まった。みんなが笑っているのを見て、百音はとても嬉しくなった。

百音は、中学生の時以来一度も開けていなかったサックスケースをみんなの前で開けることにした。その中には、東日本大震災の翌日に行うはずだった卒業コンサートのチラシが入っていた。
百音はそのチラシの入っていることを知っていた。それを見るのが怖くて開けられなくなったのだ。地震の時にみんなと離れていて痛みを分かち合うことができなかったという事実と向き合うのが怖かったのだ。
加えて、そのチラシやサックスは、自分の無力さの象徴のようにも思われた。サックスケースを開けてしまうと、当時の無力な自分に戻ってしまうのではないかという恐ろしさもあった。だから開けられなかったのだという。

しかし、実際に開けてみたらそのような恐怖はなかった。むしろ、弱い自分に戻ってたまるものか、今の自分は何もできないわけではない、と思うことができたと話した。
こうしてやっと百音は過去と決別し、故郷に帰ってきたと思うことができた。

2020年2月になった。
ついに漁船を手に入れた亮(永瀬廉)が初めて漁に出る。地元の人々が集まり船出を祝福した。
新次(浅野忠信)はとても喜んだ。彼は亮にハッピを贈った。亡くなった美波(坂井真紀)は派手好きだったと言って、とびきり派手なハッピを用意した。亮も喜んで袖を通した。

ただし、耕治(内野聖陽)は見送りに行かなかった。耕治は亮と新次(浅野忠信)のことをずっと気にかけてきた。彼らの再スタートの象徴的な場面に立ち会うと気が抜けるに違いない。ふたりのことを応援し続けるために、今はまだ見届けたくないというのが耕治の考えだった。
耕治は自宅で出港の汽笛だけを聞き、龍己(藤竜也)とともにカキ養殖場へ出かけていった。
それからしばらくして、未知は東京へ行った。家で塾をはじめた亜哉子(鈴木京香)は子どもたちに囲まれていきいきとしていた。

2022年夏になった。
百音は気仙沼の漁船の8割に観測機器を搭載してもらい、海上の気象データを集めていた。漁船は世界中で操業しており、広範囲のデータを集めることができた。これまで海上の気象観測はあまり行われておらず、海上の気象予測にも役立つ貴重なデータである。本社の朝岡(西島秀俊)らにも褒められ、ゆくゆくは全国に展開することを勧められた。百音は未だ利益の出ていないことを心配したが、朝岡は信じて続けるよう助言した。

ある日、菅波(坂口健太郎)が島にやって来た。ふたりが会うのは2年半ぶりのことだった。
久しぶりに遠出し、海辺の太陽の光を浴びた菅波はバテてしまった。対する百音は元気いっぱいで笑顔だった。菅波は、自分と百音は違う時空で生きているのではないかと冗談を言った。
百音の答えは、自分たちの関係には距離も時間も関係ないというものだった。

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NHK『おかえりモネ』第119回

いよいよリーチな当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第119回めの放送を見ましたよ。

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第24週(最終週)『あなたが思う未来へ』

未知(蒔田彩珠)は津波が迫ってきた時、家から動こうとしない祖母・雅代(竹下景子)を置き去りにして逃げた。未知はその後悔に苦しめられており、地元に残って人々の役に立つことが罪滅ぼしだと考えている。
未知の告白を聞いた百音(清原果耶)は、未知を救いたいと思った。

過去の百音も東日本大震災での経験に苦しめられていた。地震や津波の当日に家にいなかったことに負い目を感じていたのだ。それで、高校を卒業すると逃げるように登米で働くようになった。そこで百音はサヤカ(夏木マリ)と出会った。百音は、サヤカの優しい包容力と前向きな励ましに触れたことによって立ち直れたと考えている。
今度は、自分が未知にとってのサヤカのような存在になろうと決めた。

百音は未知を浜に連れ出した。
百音は、未知は何も悪くないと繰り返し述べた。今後も未知が当時のことを思い出して自分を責める度に百音は同じことを言うと約束した。
そして、これからは百音が地元に留まってみんなを助けるとも約束した。だから未知は好きなところへ行って、自由に生きてよいと励ました。もちろん、帰ってきたくなったらいつでも歓迎すると述べた。
こうして未知は救われた。

しばらくして、未知は東京の大学に行くことを決め、無事に合格した。
百音の家に幼なじみたちが集まり、未知の合格祝いを行った。明日美(恒松祐里)も久しぶりに東京から帰ってきた。亮(永瀬廉)、三生(前田航基)、悠人(高田彪我)ら全員が揃った。親しい人々に囲まれて、未知は満面の笑みを浮かべた。

その様子を見て百音は嬉しかった。みんなが笑っていて、とても幸せそうにしているからだ。

百音は自室からサックスのケースを持ってきた。中学を卒業してから一度も触れていなかったが、今日ここで開けてみようというのだ。

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NHK『おかえりモネ』第117回

山瀬まみに帰依する直前まで南野陽子ファンだったこともあり、いまだにこの季節になると『秋からも、そばにいて』を口ずさんでしまう当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第117回めの放送を見ましたよ。

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第24週(最終週)『あなたが思う未来へ』

菅波(坂口健太郎)が百音(清原果耶)の家へ挨拶に来たものの、耕治(内野聖陽)は逃げ出して留守だった。

そのため、百音は菅波をカキ養殖の作業小屋に案内した。そこは未知(蒔田彩珠)が研究室に改装しており、最近は百音も気象の観点から養殖業の発展に貢献する研究をはじめていると説明した。菅波は、百音の試みを無謀な挑戦だと評した。
しかし、百音は簡単ではないからこそ挑戦するのだと話した。それは、耕治が銀行を辞めてカキ養殖を継ぐと決めた時に発した言葉である。百音はその言葉を心に留めていた。

しばしふたりは互いの仕事の展望について真剣に話し合っていた。するとそこへ、泥酔した耕治が帰ってきた。
耕治は呂律の回らない口で、仕事の話ばかりで色気がない、別居結婚はいかがなものか、などとふたりに絡んだ。

亜哉子(鈴木京香)が取りなして、耕治は少し落ち着いた。しかし、今度はふたりのことをそっちのけで、春から自分が始めるカキ養殖のことについて話し始めた。自作の企画書を持ち出し、緻密な計画を説明した。銀行員である耕治にとって収支計画など資金面には心配がなかった。しかし、漁業についてはまったくの素人である。自分ひとりで全てやるのではなく、百音の気象予報はもちろん、周囲の様々な人々の力を借りることが耕治の計画のキモだった。

菅波は、業種の垣根を超えた協力体制を高く評価した。医療も同様で、多様な専門家が協力することで新たなアプローチが生まれ、医療技術も発展するのだという。菅波に褒められたことで、耕治は一気に機嫌が良くなった。

菅波はそのチャンスを逃さなかった。菅波と百音の関係もそれと同じだと説明した。それぞれが違う場所で違う仕事をしながらも、同じ目標に向かっている。それは簡単なことではないが、耕治の言葉を引用すれば「簡単じゃないからこそやる」のである。これまで、菅波と百音は様々な問題に二人で乗り越えてきたし、これからもそうするつもりである。だから、二人のことを認め、見守ってほしいと頼んだ。
百音も、自分は菅波以外に同じ目標に向かうことのできる人物はいないと話した。

それでついに耕治も折れ、二人のことを認めた。初めにふたりを見たときからうまくいくと思っていたなどと調子のいいことを言った。

翌日、菅波は病院から呼び出され、予定を一日早めて東京に帰ることになった。呼吸器に関わる感染症が増加の兆しを見せており、急遽人手が必要になったというのだ。
別れ際、百音は菅波が自分の故郷にいることに不思議な感覚を覚えると話した。菅波は外部の人間だけれども、それがかえって良いことだなどと話した。

菅波は、春になったら再訪するという。その時はたっぷりと時間をとって、二人で登米の人々にも挨拶に行こうと約束をした。

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NHK『おかえりモネ』第116回

アニメ映画『空の青さを知る人よ』の主人公のベース演奏シーンは僕の大好きなバンドであるところのDrop’sのベーシスト・小田満美子さんがモデルになっているとのことで、それだけを目当てに冷やかし半分で見たのだけれど、思いの外お話も面白くてついつい熱中してしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第116回めの放送を見ましたよ。

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第24週(最終週)『あなたが思う未来へ』

菅波(坂口健太郎)と亮(永瀬廉)は、百音(清原果耶)がラジオ放送する姿を眺めながら二人で話をした。

菅波は、「19対5」とつぶやいた意味を説明した。百音が亮たち幼なじみと過ごした時間が19年で、菅波と過ごしたのは5年だけである。共有した時間が多い分、亮たちのことを羨ましく思うと述べた。
それを聞いた亮は、人を大事に思うことは怖いことではないかと訪ねた。大事な人が自分の目の前から消えてしまうことを想像すると恐ろしくてたまらないと言うのだ。菅波は、確かに恐ろしいことだと同意した。しかし、だからこそ、今目の前にいる人を最大限大事にすることで、その恐怖に立ち向かうしかないのだと説いた。

放送を終える前に、亮は約束通り未知(蒔田彩珠)に会いに行った。遅れてきた亮に対して、未知は「相手が漁師なら、待つのが仕事」と軽口を言った。それは地元ではよく言われている冗談であった。

亮は真剣な表情になって話はじめた。
未知は、自分たちの過去のことを何も知らない別の人と交際したほうがよいのではないかと言う。未知は、亮のことや自分自身のことでひどく苦しそうな表情をすることがある。いっそ、何も知らない人と一緒になったほうが楽に笑えるだろうというのだ。
未知は、楽に笑いたくて亮と一緒にいるのではないと反論した。その言葉で亮は覚悟を決めた。
亮は、未知を取り巻くしがらみや苦しみをわかってやれるのは自分しかいないと豪語した。今は苦しそうにしている未知であるが、心の底から笑えるようにしてやれるのは自分しかいないのだと言い切った。そして、先日の嵐で転覆しそうな船の中で考えていたことは未知に会いたいということだけだったと話した。
その言葉に未知は泣き出した。そしてふたりは抱き合った。

その頃、百音は菅波とともに家に帰ろうとしていた。
菅波はひどく緊張していた。気仙沼と東京で離れて暮らしている二人のことを百音の家族にどう説明すればよいのかわからないという。
百音は、菅波が過去に述べた「一緒にいるということは二人の未来をともに考えることだ」という言葉を引用した。百音はその言葉を気に入っており、ふたりの関係を表すのに最適だと話した。自分たちの関係を聞かれたら、そっくりそのまま返せば良いと助言した。百音はそういう関係を良いものだと思っているし、その相手は菅波しかいないのだと話した。

そうしてふたりは百音の実家に到着した。
亜哉子(鈴木京香)と龍己(藤竜也)は暖かく歓迎したが、耕治(内野聖陽)の姿がなかった。耕治は逃げ出すようにどこかへでかけてしまったという。

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NHK『おかえりモネ』第115回

この修業もあと1週間で終わると思うと感慨深い当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第115回めの放送を見ましたよ。

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第23週『大人たちの決着』

2020年1月13日(月、成人の日)、菅波(坂口健太郎)が百音(清原果耶)の実家を訪ねてくることになっていた。
それでも、百音はいつも通りに朝昼晩のコミュニティFMで気象情報を伝えなければならなかった。

夕方、亮(永瀬廉)にコミュニティセンターに来てもらった。先日の低気圧による漁船の遭難危機を検証するために航行記録や聞き取り調査を行うためだった。その日の夜は、未知(蒔田彩珠)が亮と会う約束をしていた。百音はふたりに迷惑をかけないためにもテキパキと話を聞いた。

聞き取りが終わると、亮は百音に過去の失言を謝った。百音が人々の役に立ちたいと故郷に帰ってきたことについて、亮が「きれいごと」であるとなじったことについてである。
その謝罪に対して、百音はそう言われて当然のことであると答えた。加えて、亮に言われたことが嬉しかったと話した。なぜなら、いつも当たり障りのないことしか言わない亮が心を開いて本音を言ってくれたと思ったからだ。亮は自嘲した。

そして亮は、あの時を境に百音にも変化があったと言いかけた。しかし、全てを言う前に会話が打ち切られてしまった。
コミュニティセンターに突如として菅波が現れたのだ。本来は19時ころに到着する予定だったが、少しでも早く来たいと思って17時前の到着となったのだ。

祝日のコミュニティセンターには、百音と亮以外の人影はなかった。
彼らがふたりきりだったのを見て、菅波は「19対5では分が悪い」と独り言を言った。

その真意を確かめる前に、百音は放送ブースへ向かった。もうすぐ17時になるので、百音は気象情報の生放送をしなければならないのだ、
菅波と亮は百音の放送をブースのガラス越しに見守った。百音はどこかやりにくそうだった。

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NHK『おかえりモネ』第114回

YouTube Music を調教した結果、Drop’sReiが交互にかかる(ただし、時々GLIM SPANKYThe Birthdayがくる)ようになった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第114回めの放送を見ましたよ。

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第23週『大人たちの決着』

新次(浅野忠信)は過去と決別し、妻・美波(坂井真紀)の死を受け入れた。その姿は、永浦家の人々にも先に進む希望を与えた。

その夜、耕治(内野聖陽)はあらためて家族の前で、銀行を辞め、カキ養殖に携わりたいと話した。

もちろん龍己(藤竜也)は首を縦に振らなかった。高校を卒業すると仙台の大学に進学し、漁師には一切興味を示さず、経験も皆無である耕治に務まるはずがないというのだ。
加えて、漁業は自然を相手にした職業である。自然の驚異に対して無力である。龍己自身、東日本大震災で設備が破壊され、大変な苦労をした。そこからやっと立ち直ったと安心していたところ、気仙沼を襲った強風で再び設備の多くを失った。まったく報われることのない仕事だというのだ。

耕治は居住まいを正して語りだした。
東日本大震災の復興において、耕治は銀行員として多くの被災者に出会ったという。ほとんどの人は希望を失い、事業をやめようと愚痴る。
ただし、そんな人々の中にも希望を捨てない者もいた。彼らは必ず龍己の話をするという。彼らによれば、龍己はどんなに大変な目に遭ってもくじけないのだ。そんな龍己を見ていると自分も事業や生活を再建させようと勇気づけられるのだと話していたという。耕治は、龍己以外にもそのような人物がおり、そんな人々の影響力で大いに復興が進んだと信じていた。
耕治は、次は自分がそのような人物になる番だと訴えた。その拠り所として、カキ養殖を継ぎたいと言うのだ。

耕治はあらためて深々と頭を下げた。その様子に、ついに龍己が折れた。耕治は3月で銀行を辞め、カキ養殖を行うことになった。

家族会議後、夕食の後片付けをしながら亜哉子(鈴木京香)は、百音(清原果耶)と未知(蒔田彩珠)に耕治の名前の由来を話して聞かせた。生前の雅代(竹下景子)から聞き、口止めされていたので今まで言わずにいたという。

耕治の名前は「畑を耕し、水を治める」に由来し、龍己が決めたのだという。漁師の長男らしくない名前である。つまり、龍己は初めから耕治が漁師になることを意図していなかったのだという。漁師のように自然に翻弄されるのではなく、自然を制御する側になるよう願ったのだという。故に、耕治が漁師ではなく銀行員になったことを特に喜んでいたという。

亜哉子は、耕治が龍己から託された思いを理解しているし、亜哉子が教師を続けることを雅代から応援されていたことにも感謝している。彼らの考えを受け継ぎ、娘である百音と未知にも好きなことをして生きて欲しいと話した。

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NHK『おかえりモネ』第113回

神野マリアンナ莉子(今田美桜)は宮城ローカルの情報番組のメインキャスターに就任したはずなのに、地元の人達は誰も見てる素振りがないどころか話題にもしていないし、百音(清原果耶)と行き来してる様子もなくて、薄情な脚本だなあと思った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第113回めの放送を見ましたよ。

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第23週『大人たちの決着』

亮(永瀬廉)は、購入予定の漁船の詳細を新次(浅野忠信)に説明した。とても良い船だが、現在の所有者は亮のことをかわいがってくれており、相場よりも安い価格にしてくれたという。新次は、亮が周囲から一人前と認められていることを嬉しく思った。

亮は、新次に一緒にその漁船に乗って欲しいと頼んだ。亮は漁師時代の新次に憧れており、新次をその時の姿に戻すのが自分の生きがいだと話した。

しかし、新次は即座に断った。新次は、もとに戻ることだけが良いことではないと話した。元に戻ろうとすると、それ以上成長できなくなってしまうこともある。また、どんなに力を尽くしても元に戻すことのできないこともある。だから新次は漁師に戻らないと言うのだ。
特に、新次が漁師をやるのは、美波(坂井真紀)の存在が大前提であると話した。しかし、彼女はもういない。美波がいなくなった日を最後に海での生活はやめたのだと話した。

新次は、亮が自分の船で自分のやりたいようにやるのが一番だと話した。新次にとっては、その姿を見るだけで十分だという。
そこまで言われて、亮は納得した。それ以上、新次を漁に誘うことをしなかった。

新次は美波の死亡届に判を捺すことにした。そうすることは、新次が彼女にとどめを刺すことにほかならない。だからこれまで9年間、頑なに拒んできたのだ。
さまざまな思いが去来しつつ、新次はついに判を捺した。見守っていた永浦家の家族たちはもらい泣きをした。

テーブルの上には、新次の携帯電話が置かれていた。それには、美波からの最期の留守電が保存されている。
亮はそれを新次に手渡し、ずっと持っているよう諭した。

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