小西真奈美さんがいつの間にかシンガーソングライターとしての活動を始めているということを知って驚いた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『わろてんか』の第10回めの放送を見ましたよ。
憧れの芸人・籐吉(松坂桃李)に会うため一人で大阪に向かったてん(葵わかな)は、ゴロツキ連中に乱暴をされた。
てんの後を追って大阪に向かった手代・風太(濱田岳)が彼女を見つけた時、騒ぎは収まっていた。
偶然通りがかった、てんの婚約者・伊能栞(高橋一生)があっという間に数人の男たちを叩きのめしたのだ。
てんは見合い写真で栞のことをよく知っていた。しかし、栞の方は てんのことを知らないでいた。
栞は薬品の貿易会社を率いており仕事が忙しい。文化芸術や大衆芸能にも興味があり、将来はそれを事業にすべく、趣味と実益を兼ねて取り組んでいるという。
そのため、自分の結婚には全く関心がない。てんの見合い写真は確かに送られてきていたが、書類の山に埋もれたままだった。てんと出会って初めてその写真を見た。
てんは大阪に来た経緯を話した。将来の夫である栞の前で、うっかりと藤吉に会って親の決めた結婚に応じる心の整理をしに来たと説明してしまった。
自分との結婚は本意ではなく、しかも別の男に会いに来たと聞かされたが、栞は意に介さず大笑いした。
そこで話は打ち切りになり、その晩は栞が手配してくれた宿に泊まり、翌朝一番の汽車で風太と共に帰宅した。
藤吉と栞の両方に会ったことのある風太は、藤吉よりも栞のほうがよほど良い人物であると評した。
てんも、藤吉はおとぎ話の登場人物のようだと言い、自分はもうおとぎ話に憧れる年でもないなどと、当吉を忘れようとする発言をした。
家では父・儀兵衛(遠藤憲一)が待ち構えていた。妹・りん(堀田真由)や女中・トキ(徳永えり)から事情を聞き、藤吉からの手紙のこともすっかりバレていた。
手紙はてんの目の前で火にくべられ、てん自身はお仕置きとして蔵に閉じ込められた。
兄・新一(千葉雄大)が独断で てんを蔵から出してくれた。彼が父に掛け合って、てんを許してくれるよう頼んでくれるという。
新一は、てんのことを糸口に、家業の状況について父に訴えた。儀兵衛は神戸港に借りていた薬品倉庫が全焼し、店が危機に陥っていることを誰にも話していなかった。新一は独自にそのことを知ったのだ。跡取りの自分に正直に打ち明けてくれなかったのが不満だという。まるで自分に期待を寄せていないように思われる。
さらには、儀兵衛が金策や店の存続のために てんを政略結婚させようとするのも納得いかないと訴えた。儀兵衛はカッとなって新一に平手打ちをするだけで口では整然と反論することはできなかった。
その時、藤岡屋の取引先の主人がこぞって押しかけてきた。
藤岡屋の倉庫の火災が噂となって広まってしまっているのだ。藤岡屋は輸入薬品に大きな投資をしていたことに加え、倉庫管理会社は夜逃げをして補償が受けられない、保険金もおりるあてが無いなど、藤岡屋にとって不利な話ばかりなのだ。債権者たちは、手形が不渡りになる前に金を回収しようとしているのだ。
商売人たちからの信用を失った儀兵衛は、遠くに住む親戚を回って金策をするしかない。しかし、儀兵衛なしでは押しかける債権者の対応ができない。
そこで留守番をかって出たのが新一だった。跡取りとして債権者への対応を立派に務めると豪語した。他の方法はないので、儀兵衛もその策を取ることに決めた。
実際、新一は見事に務めを果たした。しかし、元々体の弱かった新一である。3日目の晩に激しい喘息の発作を起こしれ倒れてしまった。連絡を受けた儀兵衛もすぐに帰ってきた。
医者によれば、肺炎を起こしており、難しい容態だという。ドイツでは特効薬が開発されたというが、それはまだ日本に入ってきていない。静養すること以外手はないというのだ。
日本に薬のないことは、誰よりも儀兵衛が一番よく知っていた。だからこそ、儀兵衛は店の命運をかけて、ドイツからの薬品輸入の道筋をつけようとしていたのだ。
儀兵衛は新一のことを高く評価していた。家に尽くすために無理をして勉学に励んでいる。実際に新一には見どころがあり、儀兵衛本人よりも世の動向をよく理解しており、将来への見通しも優れている。そして何よりも、新一が薬品流通に取り組んでいるのは、自分と同じように苦しんでいる人を助けたいという一心なのだ。
儀兵衛は、なんとかして彼の夢を叶えさせてやりたいと思っているのだ。