NHK『あさが来た』第17回

毎晩ギターの練習をしているし、口先や仕事は軽薄でテキトー、つまり新次郎化のリーチがかかっており(顔のつくりについては考えないこととする)、あとは若い嫁を貰ったらアガリだと思っており、若い娘さんからのご連絡をお待ちしている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第17回めの放送を見ましたよ。

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第3週『新選組参上!』

毎夜出かけていく新次郎(玉木宏)の後をつけたあさ(波瑠)。彼が見知らぬ女に招き入れられてある家に入って行くのを見つけた。
頭に来て、あさは威勢よく乗り込んでいった。

さっきの女が玄関に出てきて、静かにするように注意した。すると、奥から三味線の音色が聞こえてきた。
女は、新次郎に三味線を教えている美和(野々すみ花)だと名乗った。新次郎は優れた三味線の腕前を持っているのだが、彼の父・正吉(近藤正臣)は三味線が大嫌いなのだという。自分の家で練習ができないので、毎日ここに通って練習しているのだという。
そして今夜は、人々を集めて新次郎の三味線のお披露目会をしているのだと言う。

あさは、新次郎が立派な趣味を有していることに感心し、彼の奏でる巧みな三味線にしばし聞き惚れた。

お披露目会が終わり、あさと新次郎は夜遅くなる前に一緒に帰ることにした。
あさは、美和の美しさを思い出し、自分との違いに少々落ち込んだ。しかし、そのことはおくびにも出さず、すぐに頭から追い出した。違う話をしながら帰った。

あさが新次郎に話したことは、家の商売の事だった。加野屋は立派な両替商であるし、新次郎は跡継ぎ・榮三郎(吉田八起)の後見人という立派な役割を与えられている。やりがいのある立場なのに、仕事への熱意が無いのはおかしいと指摘したのだ。
新次郎は苦笑いした。夜遊びのことには一切触れず、女から商売の事について叱られるなど予想外の事だったからだ。とはいえ、あさの進言を受け入れるわけでもなく、飄々としていた。

夜のうちに帰宅し、ふたりは共に寝室に入った。
しかし、新次郎は何をするでもなく、並べた布団に背を向けて寝てしまった。

あさは新次郎に世の時勢について尋ねた。
新次郎によれば、薩長が新政府を樹立し、幕府と対立しているという。近いうちに戦になるという噂もあるとかいつまんで話してくれた。
ただし、新次郎は寝床でするような話ではないと言ってすぐに撃ち切った。

あさは、艶っぽい話でもすれば良いのかと尋ねた。その質問で新次郎の興はますます削がれた。艶っぽい話というのは、始めることを宣言すべきものではなく、自然に始めるべきものだからだ。新次郎は腹を立てたわけではなかったが、何もする気にはならなかった。

その時、店の方から激しく戸を叩く音が聞こえてきた。
土方歳三(山本耕史)の率いる新選組の小隊がやって来たのだ。彼らは脅迫まがいに金四百両を貸すように要求した。
新次郎の父・正吉は震え上がり、すぐに金を準備しようとした。

そこへ、あさがしゃしゃり出た。
両替商にとっては借り主の信用が第一だと言い、新選組や幕府がきちんと金を返すアテはあるのかと詰問した。いくら刀を見せつけられても金を貸すことはできない、そもそも刀と信用とは全く逆のものだと述べた。そして、この家を守ることが嫁としての自分の使命であるから、信用のできない相手に金は貸せないと言い切った。
家の者どもは震え上がり、言った本人のあさも足が震えだした。

土方は、泣く子も黙る新選組を恐れないあさの度胸を見込んだ。たいへんな嫁を迎え入れたものだと皮肉を言った。そして、自分の命がある限り、必ず金を返すと約束した。

これで落着したが、あさは恐ろしさのあまり腰を抜かしてしまった。
新次郎はあさを抱いて、寝室に戻った。

あさは出しゃばったことを言ってしまったことを反省した。
新次郎は、出しゃばりな口を塞ぐ必要があると言って、あさにキスをした。それはあさにとって初めてのキスで、なんだか不思議な気分になった。

新次郎は、今夜のあさの堂々とした態度を見なおしていたのだった。いつまでも子供だと思っていたが、実は芯のある大人の女だと見なおした。改めて惚れなおした。
新次郎は大興奮して、あさとの初めての夜を迎えた。

翌朝、目を覚ましたふたり。
新次郎は昨夜の艶っぽい雰囲気の余韻を楽しみたいと思ったが、あさは違っていた。新選組に貸した金のことばかり気にしているのだった。

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NHK『あさが来た』第16回

21時までに今日のまとめ記事を書くことを約束した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第16回めの放送を見ましたよ。


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第3週『新選組参上!』

あさ(波瑠)は大坂・堂島の米会所(米の取引所)の見物をした。男達の活況を見るにつけ、あさは心が踊った。自分も同じように働いてみたいと思った。

そこで、あさは見知らぬ洋装の男に声をかけられた。
その男は、以前に大坂の往来で衝突した薩摩藩士・五代才助(ディーン・フジオカ)だった。彼は、あさのことが忘れられず、あさの居所を探して京都の実家にイギリスから手紙を送りつけたこともある。数年ぶりに再開したあさが美しい女性になっていることに驚くとともに、喜んだ。

五代はしばらく米会所での取引の様子を説明して聞かせた。
そして、世の中はこれから大きく変わっていくだろうと予言した。大きな時代の渦に巻き込まれるが、元気に暮らせと言って去っていった。あさはもっとたくさんの話を聞きたかったが、彼は雑踏の中に消えていった。
ただ、彼の名前だけは知ることができた。

年が明けて、1867年(慶応3年)の春になった。
あさが嫁いでから半年、はつ(宮﨑あおい)が嫁いでからは1年の節目である。

ある日、はつの所へ実家の母・梨江(寺島しのぶ)が近くに用事があったと言って訪ねてきた。突然の来訪だったため、惣兵衛(柄本佑)や義母・菊(萬田久子)はいい顔をしなかった。それでも邪険に追い返すわけにもいかず、奥の座敷に案内した。

初め、はつと梨江はふたりきりで話をする機会があった。
梨江から見ると、はつは少し太って元気そうに見えた。はつも、とてもよくしてもらっているからだと答えた。ただ、子宝に恵まれないことだけが気がかりだと言う。梨江は、結婚して1年ならまだ焦ることはないと言って安心させた。

続いて梨江は、惣兵衛の家の商売について聞いた。世の中が騒がしくなって、京都も大変だが、大坂も同じように大変ではないかと聞くのだ。梨江はおおっぴらには言わなかったが、はつの嫁ぎ先の家勢が気になって様子を伺いに来たのだ。

はつが答える前に、義母・菊と惣兵衛が部屋に入ってきた。梨江の質問を盗み聞き、梨江が家の景気を探りに来たのだろうと察したのだ。菊の表情にも口調にも棘が見えた。菊は、はつを試すかのように、梨江の質問に答えるよう命じた。
はつは実母とふたりきりの時とは違って、緊張した。そして、自分は女なので商売の事は全くわからないと当たり障りのない答えをした。女が商売に首を突っ込むものではないということは、誰でもない梨江から教えこまれたものだと言うのだ。
それを聞いて、菊は満足した。そして、もう話は終わっただろうから帰るよう無遠慮に言うのだった。梨江は従うほかなかった。

その後、あさの所も訪問するつもりだったが、梨江はすっかり興が削がれてしまって、そのまま京都へ帰った。
その代わり、あさへお菓子を贈った。そこには、「風かはり 父はあらたな 風にのり」と書いた紙片を忍ばせておいた。
五代の予言を思い出し、京都の実家でも何かが変わろうとしているのではないかと想像はできたが、その真意はわからないままだった。

その頃、あさと新次郎(玉木宏)の仲は相変わらずだった。新次郎は今でも毎晩どこかへ出かけていく。

それでも、店や家の者たちとはすっかり打ち解けていた。「みんなのおかあちゃん」を自称し、誰にでも別け隔てなく接した。今日は、店の男達の衣類の繕いをしていた。大番頭の雁助(山内圭哉)などは、彼のお気に入りの襦袢に洒落た継当てをしてくれたと言って、ご機嫌だった。

それは、あさの策略の一つだった。
あさは商売や世の中の変化について興味津々だった。しかし、女は商売に口出しするものではないと言われ、それを知る機会がなかった。そこで、雁助を籠絡して商売のことを教えてもらおうと画策したのだ。
雁助は一杯食わされたことに気づいたが、あさの頼みを断るわけにはいかなくなった。あさは雁助から、長州藩や薩摩藩など多くの取引先に、合計で百万両近くの金を貸し付けていることを教えてもらった。その話はとても興味深かった。

金の話を聞きながら、あさは算盤を弾いた。雁助はあさが算盤のできることに驚いた。
また、その様子をのぞき見ていた新次郎は、化粧をして女らしくしているあさよりも、算盤を弾いているあさの方が活き活きとしていて素敵だと思った。

その日の夜も新次郎はどこかへ出かけていった。
あさはついに我慢の限界に達した。こっそりと新次郎の後をつけることにした。
すると新次郎が女の家に入っていくところをしっかりと目撃した。

頭に来たあさは、その家に乗り込んでいった。

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NHK『あさが来た』第15回

「世の中に絶えて山瀬のなかりせば 俺の心はあおい萌えまし」などとテキトーな歌を詠んだ当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第15回めの放送を見ましたよ。

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第3週『新選組参上!』

あさ(波瑠)と新次郎(玉木宏)が結婚して1ヶ月。新次郎は毎晩、どこかへ出かけて行き、朝まで帰らなかった。ふたりは一晩たりとも一緒に過ごしたことはなかった。

新次郎は、三味線の師匠・美和(野々すみ花)のところに通っていた。新次郎は美和の前で、あさはまだ子供だとボヤいていた。

あさは自分が放っておかれることを悩んだ。
しかし、実家の父・忠興(升毅)から女の勤めは嫁ぎ先の家を守ることであり、何があっても帰ってくるなと言われたことをよく思い出していた。新次郎に冷遇されようとも、家に留まった。
あさは、くよくよしてもしかたがないと割り切り、大いに食べ、大いに眠った。周囲はあさのことを心配してはいたが、彼女の元気な様子を見ると、取り越し苦労なのではないかと思うのだった。

ある日の早朝、あさはこっそりと家を抜け出し、はつ(宮﨑あおい)に会いに行った。
はつと会うことはできたが、彼女はちょうど夫・惣兵衛(柄本佑)と芝居見物に出かけるところだといい、ゆっくりと話をすることはできなかった。

惣兵衛は相変わらず無愛想で、あさに声をかける事無く歩き去った。
その態度に、はつの境遇を心配した。しかし、はつは明るく屈託がなかった。はつによれば、惣兵衛は表面では無愛想でも、たまに心の中で笑っていることがあるのだという。はつにはそれがわかるようになり、意外とかわいいところもあるのだと見なおしたのだという。自分は不自由なく暮らしていると報告し、芝居へ出かけてしまった。
あさは自分の話を聞いてもらえなかったことは残念であったが、姉の幸せそうな姿を見て多少は勇気づけられた。

あさが勝手に家を抜けだしたことで、家ではちょっとした騒動になっていた。

義父・正吉(近藤正臣)は、あさが愛想を尽かして実家に帰ったのではないかと心配していた。
あさは家に帰ると、正吉の心配は杞憂であることを説明した。実家の父からの言いつけで、婚家のために尽くすことを再優先に考えており、実家に帰るつもりは無いと力説した。むしろ、家の商売の手伝いをさせて欲しいと申し出た。昔から算盤が得意だし、実家でも手伝いをしたことがあるので役に立つはずだと自分を売り込んだ。

正吉はあさの意気込みに感じ入るものの、商売の手伝いは丁重に断った。両替商のしきたりで、女に帳簿を見せてはいけないことになっている。両替商は信用を何よりも尊重する商売であり、しきたりを破ったとなっては信用に関わる。そのようなわけで手伝いをさせるわけにはいかないというのだ。
あさはつまらなく思ったが、そう言われてはどうすることもできなかった。

義母・よの(風吹ジュン)が話を引き継いだ。
嫁に必要なことは、家業の手伝いをすることではなく、夫に惚れられる妻でいることだと言うのだ。新次郎の気を惹きつけるための努力が必要だと説得した。

よのは、白粉や口紅などの化粧道具を取り寄せていた。あさはただでさえ子供っぽい上に、全く化粧をしないから新次郎も手を出しにくいのだろうと考えたのだ。よのは、あさの顔に白粉を塗りたくり、口や頬に紅をさした。

化粧を終えたあさは、夕方になって出かけようとした新次郎に声をかけた。
しかし、あまりに厚塗りのあさを見て、新次郎はかえって不気味さを覚えた。まるで出目金のようだと感想を述べたっきり、またしても出かけてしまった。
あさはすぐに化粧を落とした。

ある日、あさは堂島に出かけた。
男達が忙しく立ち振る舞う町の喧騒を見ていると、気分が高揚するのだった。

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NHK『あさが来た』第14回

今朝は7:45までテレビを見て、7:55の電車に乗ることを目指した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第14回めの放送を見ましたよ。

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第3週『新選組参上!』

ある夜、はつ(宮﨑あおい)は家に大量の反物が並べられているのを見た。季節の変わり目なので、新しい着物を作るようにと取り寄せたらしい。しかも、惣兵衛(柄本佑)がはつのためにと発案したのだという。

はつは、突然のことに驚くとともに、心から喜んだ。
あまりにたくさんの反物があるので、はつは惣兵衛に柄選びの助言を求めた。惣兵衛はどこかぎこちない様子ではあったが、ポツリポツリとはつにアドバイスをした。そんな惣兵衛の様子も、はつにとっては嬉しいものだった。

あさ(波瑠)にとって、初夜は惨めなものだった。
抱き寄せられたことに驚いて新次郎(玉木宏)を投げ飛ばしてしまい、そのまま新次郎は外出し、朝まで彼は帰ってこなかった。

新次郎がいないこともあるし、初めの朝が重要だとも思ったあさは率先して女中たちに混じって炊事、掃除の手伝いをした。義母・よの(風吹ジュン)は家事はほとんどしないため、女中たちは若嫁が一緒に働くことに恐縮し、遠慮した。
あさは家事を手伝う名分として、新次郎が留守だからだと漏らしてしまった。その一言で、初夜に新次郎が外泊したことが家中の噂になってしまった。

両替商の店を開く頃になって、やっと新次郎が帰ってきた。彼は少しも悪びれるでもなく、いつものように飄々としていた。
幼い弟の榮三郎(吉田八起)が跡取りとして一人前になるまで、新次郎はその後見人を務めることになっている。そのため、店にいるよう命じられているが、退屈そうに決められた席に座って時間を潰した。たまに、顔なじみの客が来ると冗談を言い合うこと以外は、特に何もしなかった。

他の者たちが仕事をしている中、新次郎だけは早めに仕事を切り上げた。
やっと開放された隙に、あさは新次郎に話しかけた。昨夜、彼を投げ飛ばしてからはじめての会話である。あさは、新次郎を投げ飛ばし、指に怪我をさせてしまったことを詫びた。しかし、新次郎は何も意に介していない様子だった。笑いながら、自分の方が恥ずかしくなるから、もう忘れてくれと言うのだった。

その夜、またしても新次郎は出かけてしまった。
あさは、新次郎は顔では笑っているが、本心は違うのではないかと少々心配になった。

それから1ヶ月。
新次郎は夜になると毎日出かけてしまう。あさと一緒に過ごすことは一度もなかった。

新次郎が出かけていたのは、三味線師匠・美和(野々すみ花)のところだった。

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NHK『あさが来た』第13回

三谷幸喜脚本の大河ドラマ『新選組!』といえば、鈴木砂羽の演じる明里が艶っぽくてとても好きだったわけで、何度かネタ(アッチの意味ではなく)にさせてもらったことを思い出す当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第13回めの放送を見ましたよ。

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第3週『新選組参上!』

あさ(波瑠)の嫁入りの日、新次郎(玉木宏)はすっかり忘れていて、紅葉見物に行ってしまった。番頭の亀助(三宅弘城)が探しに行き、慌てて帰ってきた。

あさをはじめ、一同はイライラしながら新次郎の到着を待った。
新次郎は全く悪びれるでもなく、のんきに帰ってきた。自分は雨男なので、楽しみなことがあると必ず雨が降る。今日は、予定を忘れていたせいで良い天気になって良かったなどと破茶目茶なことを言い出す始末。あまりに呑気な様子に、一同の怒りにますます油を注ぐ。

そんな中、新次郎はあさの花嫁姿の美しさを褒めた。その笑顔に舞い上がり、あさは一瞬怒りを忘れるのだった。
また、ふたりの言い争いはまるで漫才のようだった。新次郎は、今日の反省を活かし、二度と祝言の日を忘れたりしないと約束した。それに対して、自分たちの祝言の日が二度あるはずがないとあさがツッコむのだった。

一同はハラハラしながら見ていたが、あさの母・よの(風吹ジュン)だけはそんなふたりを微笑ましく見ていた。言い争ってはいるが、とても仲睦まじい夫婦に見えたからだ。

結婚の宴の半ば、新次郎の父・正吉(近藤正臣)は加野屋の新しい体制を発表した。
長男(木内義一)の死去に伴い、三男の榮三郎(吉田八起)を跡取りとすると言うのだ。分家の新次郎は、その後見人とすると決めた。まだ幼い榮三郎は立派に挨拶をした。その様子に一同は感心した。
一方の新次郎は、自分はアホだから商売には一切関わらない、全てを榮三郎に任せるなど、頼りのないことしか言わなかった。

宴が終わり、あさは初夜の準備にとりかかった。
全く初めてのことで、あさはひどく緊張した。お付のうめ(友近)からは、流れに身を任せていれば大丈夫だと助言された。

そしていよいよ、寝室に新次郎が入ってきた。
ふたりっきりになると、新次郎はいきなりあさを抱きしめた。あさは身を固くするばかりで、どうしていいかわからなかった。

新次郎の手が腰に届き、帯に手がかかったところで、あさはうめの「流れに身を任せろ」という助言を思い出した。
すると、相撲が得意なあさは、思わず癖で新次郎の帯を握り返し、そのままの流れで上手投げをしてしまった。

転がされた拍子に、新次郎は右手の小指に怪我をした。
家の者たちが物音を聞きつけて集まってきたが、新次郎は新婦に投げ飛ばされたなど恥ずかしくて知られたくないと思った。適当に言い訳をして、一同を解散させた。

周囲が静かになると、新次郎は寝室を出て、外出してしまった。
あさはまだ子供で、抱くのは無理だと思ったのだ。

残されたあさは、新次郎に嫌われてしまったと心配した。
しかし、彼の後を追うわけには行かず、加えて今日一日ですっかりくたびれてしまったので、そのまま一人で眠ってしまうのだった。

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NHK『あさが来た』第12回

Wikipedia によれば「日本には明治20年頃に渡来したと言われる」とのことであり、ドラマは幕末が舞台なのでこの花はなかったはずなのだけれど、秋の嫁入りといえばどうしても秋桜(コスモス)を思い出してしまう当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第12回めの放送を見ましたよ。

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第2週『ふたつの花びら』

新次郎(玉木宏)の兄(木内義一)の死去により、あさ(波瑠)との結婚が延期となった。その謝罪に来た新次郎とあさはふたりきりで話をする機会を設けた。

あさは、新次郎が大変な時期に不躾な手紙を送りつけたことを詫た。
すると、それまで憔悴しきっていた新次郎が初めて笑った。新次郎は、あさの威勢のよい字を見て、果たし状だと思ったと冗談を言った。あのような字を書く女には今まで会ったことがないと言って笑うのだ。
あさはしょげてしまったが、新次郎はすぐに冗談を打ち消した。本心では、あさからの手紙が何より嬉しかったと告げた。

新次郎は、あさからの依頼の通り、はつ(宮﨑あおい)の許嫁・惣兵衛(柄本佑)についての情報を知らせてくれた。
現在の惣兵衛は、確かに変わり者で難儀な人物である。しかし、幼いころの彼は面白くて、いいやつだったという。今は、その時の彼が戻ってくると信じるしか無い。はつのことを励ましてやることが一番だと告げた。

新次郎によれば、本当はすぐに返事を書きたかったのだという。しかし、兄が危篤になったせいでそれもままならなかったのだ。兄は自分よりも優れていたと話した。頭の出来も顔の良さも、優しさも自分は敵わないと言う。兄の代わりに自分が死ねばよかったとすら愚痴をこぼした。

それを聞いたあさは、新次郎には誰にも負けない素晴らしい点があると答えた。
新次郎の優しさだけは、彼の兄にも引けをとらないだろうと言うのだ。だから、自分が死ねばよかったなどと言わずに、兄の分までしっかり生きて欲しいと応援した。
それを聞いた新次郎は感謝し、微笑みながら大坂へ帰って行った。

3月の末、はつが大坂へ嫁いでいった。
名残惜しいあさは、はつを乗せた船をどこまでも走って追いかけた。船が遠ざかって追いつかなくなると、その場に崩れ落ち、泣きながら姉の名前を叫び続けた。

はつは、何も答えず、毅然と船に乗っていた。
ただし、彼女も不安だったわけではない。母・梨江(寺島しのぶ)から贈られた手作りのお守り袋を握りしめ、耐えていたのだった。

それから半年後。ついにあさの嫁入りの日となった。
あさの白無垢姿は、普段の姿からは想像できないほど美しいものだった。

母・梨江は、自分で作ったお守りをあさに渡した。同じものをはつも持っているという。
母が餞の言葉を送った。あさの持ち前の根性で頑張れというのだ。そして、いつか女に生まれてよかったと、自分の運命を受け入れられる日が来る。それまで、柔らかい心を持つことを心がけて、良い嫁になれと告げた。
あさは「かしこまりました」と柔和に答えた。

父・忠興(升毅)は、あさの美しい姿に感激して何も言えなくなっていた。二度と帰ってくるなと憎まれ口を絞り出すのに精一杯だった。
昔なら口答えするあさだったが、ここでも彼女は落ち着いていた。言いつけ通り、嫁ぎ先の家をしっかり守ると約束するのだった。

あさが大坂の白岡家に到着した。白岡家の面々は、家族・使用人が総出であさを出迎えた。おてんば娘で評判だったあさが立派な花嫁になっていて、一同は息を呑んだ。

ただし、大坂で大きな問題が起きていた。
その場に新次郎がいないのである。彼は三味線の師匠・美和(野々すみ花)と連れ立って、紅葉狩りに出かけてしまったという。

あさは呆れ果てた。

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NHK『あさが来た』第11回

「なんかほんとやべぇ。近頃めっきり起きれない。あさが来ねぇ・・・。」とボヤきながら、変な時間にまとめ記事を投稿する当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第11回めの放送を見ましたよ。

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第2週『ふたつの花びら』

あさ(波瑠)とはつ(宮﨑あおい)の嫁入りの日が刻一刻と近づいてくる。
姉妹が家族と共に過ごせる時間も限りが見えてきた。当時は、よほどのことがなければ、嫁は実家に顔を出すことなど許されなかった。大坂に行ってしまえば今度いつ会えるかわからない。大坂に住むあさとはつですら、気軽には会えなくなってしまう。

父・忠興(升毅)は、あさとはつに嫁としての心構えを再度言い含めた。しっかりと腹を据えて嫁ぎ先の家を守ることが大事な努めであり、二度と帰ってこない覚悟で行けと話した。
昔なら、自身の自由を奪われることに猛反発したあさであったが、近頃では表立って反論することはなくなっていた。多少は成長して自分の運命を受け入れることができるようになったことと、新次郎(玉木宏)への恋心があったからだ。

嫁入りするふたりには、それぞれ女中が付き添っていくことになっている。あさには年少のふゆ(清原果耶)が、はつには年長のうめ(友近)が従うことに決められていた。
はつは、うめと仲が悪いわけではないが、あさとうめが一緒に行くのがいいと考えていた。あさは幼い頃からうめと特に気が合ったし、まだ精神的に幼いあさには精神的に成熟したうめの手助けが必要だと思うからだ。
はつは、母・梨江(寺島しのぶ)にそのことを頼み込んだ。この家での最後のわがままを聞いて欲しいと懇願した。めったにわがままを言わないはつの珍しい様子に、母・梨江は応じるしかなかった。

嫁入りの2日前、新次郎とその父・正吉(近藤正臣)が今井家を訪ねてきた。
それはなんの前触れもなく、早朝にわざわざ船に乗って大坂から京都までやって来たのだ。しかも、ふたりの姿は憔悴しきっており、いつも明るく朗らかなはずの新次郎の顔も青ざめて無表情だった。

新次郎の父・正吉は深く頭を下げ、あさと新次郎の結婚を延期して欲しいと頼み込んだ。
長男の正太郎(木内義一)が結核のため、10日前に死んだ。そのため、今は嫁を受け入れられる状況ではないと言うのだ。

今井家では、正太郎の病気のことを知らず、全くの寝耳に水だった。
むしろ、そのような大変な時期にわざわざ知らせに来てくれたことに恐縮した。結婚の延期も受け入れた。

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NHK『あさが来た』第10回

昨日と一昨日のマクラでは「三千世界の鴉を殺し ぬしと朝寝がしてみたい」をネタにしたわけだが、この歌の意味についてクドクド説明するのは興ざめだし、WEB検索すればすぐにわかるので割愛するけれど、ひとつだけ言っておきたいことは、僕はドラマ『タイガー&ドラゴン: 三枚起請の回』でこの歌を知ったという事実であり、このドラマはダブル主演の長瀬智也と岡田准一が男の僕から見てもカッコイイなぁと思うし、伊東美咲は僕のストライクゾーンを外しているのだけれど純粋に美人だなぁと思ったし、Crazy Ken Bandの主題歌もキマっているし、古典落語をうまく翻案した宮藤官九郎の脚本も冴えてるし、なんといっても西田敏行笑福亭鶴瓶の配役の妙にニヤリとさせられたりする(この点に関しては、連続ドラマ版を全部見ていく必要があるが)ので、みんな一度は見てみるといいよとお勧めする当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第10回めの放送を見ましたよ。

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第2週『ふたつの花びら』

あさ(波瑠)が新次郎(玉木宏)に手紙を出してから2ヶ月が過ぎたが、彼からの返事が来ない。あさは新次郎のことばかり考え、気を揉んでいた。

新次郎は番頭の亀助(三宅弘城)が破れた手紙を復元しているのを見つけた。聞いてみると、新次郎の母・よの(風吹ジュン)が、読む前に誤って破ってしまった手紙の内容を確認しているのだという。
それというのも、彼女は長男・正太郎(木内義一)が肺の病で寝込んでしまったことをひどく悲しんで泣いてばかりいる。涙を拭いているうちに鼻紙を使いきってしまい、たまたまそばにあった手紙を掴んで鼻をかんだ。それがあまりに字の汚い手紙だったので腹を立て、中身を見る前に破り捨ててしまったというのだ。

あまりの滑稽さに新次郎もおかしくなった。亀助と一緒に面白半分で紙片を並べ始めた。惣兵衛(柄本佑)の人となりを教えて欲しいという切なる願いがしたためられており、それを長い間放置していたことに青ざめた。

早速、新次郎は、一人で料亭にいる惣兵衛を尋ねた。そこでふたりだけで話をした。
結婚のことを話題にすると、惣兵衛は全く興味がなさそうだった。自分の意思とは無関係で、家同士の決まり事なので知ったことではないと言うのだ。

そればかりか、惣兵衛は母・菊(萬田久子)を殺したいほど憎んでいると打ち明けた。
そもそも菊が家の跡取り娘で、惣兵衛の父・栄達(辰巳琢郎)は入婿なのだ。そのため、菊は威張っているばかりか、男のことを単なる道具だとしか思っていない。惣兵衛自身も彼女の駒として使われていると感じているのだ。
さらに、そのような経験から惣兵衛は女達が大嫌いだという。女はずるくて、煩わしくて、意地汚いと評した。

そこまで一方的にまくし立てると、惣兵衛は帰って行った。
新次郎は、あさになんと言って伝えたらいいものか思案にくれた。

大坂でそのようなことが起きているとは知る由もなく、京都ではあさとはつ(宮﨑あおい)の嫁入り準備が着々と進められていた。ふたりは揃って、弥生の晦日に嫁入りをする。その日まで1ヶ月を切っていた。

はつはその日に向けて淡々と準備していた。彼女が言うには、自分には親が決めてくれた道を進むことしかできないし、それが自分のやれる精一杯のこと。後悔するはずもないと話すのだ。

一方のあさはまだ気持ちの整理がつかなかった。
その上、嫁入りの際のお付の女中として、あさにはふゆ(清原果耶)が付き従うこととなった。彼女と仲が悪いわけではなかったが、あさは幼い時から面倒を見てもらった女中のうめ(友近)と別れるのが悲しいのだ。うめははつのお付となることが決められている。

イライラしたあさは、庭の木に登って苛立ちを発散させようとした。
その危険な行為を見つけ、止めに入ったのは女中のうめだった。

うめは、木登りの代わりに自分と相撲を取ることを提案した。あさは喜んで応じた。小さな時から、相撲では男の子にも負けたことのなかったあさだが、うめだけにはどうしても勝てなかった。これが最後の相撲だと思ったあさは、今度こそ勝つと意気込んだ。

うめと組み合うと、あさの胸中にはいろいろな悩みが去来した。
なぜ自分たちは親の言いなりに結婚しなくてはならないのか。どうして新次郎は自分に手紙を書いたり、会いに来てくれたりしなくなったのか。はつは、なぜ許嫁や姑から冷たく扱われなければならないのか。

女中のうめは、そんなあさにも手加減はしなかった。夢中になり、あさのことを思い切り投げ飛ばした。直後、我に返ったうめは、慌ててあさを助け起こした。
あさは、うめの胸で号泣した。くれぐれも、姉・はつをしっかり支えてくれと頼み込むと同時に、これまで育ててくれた感謝を精一杯述べるのだった。

その頃、大坂では新次郎の兄・正太郎が危篤に陥った。

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NHK『あさが来た』第9回

昨日のマクラで「三千世界の鴉を殺し ぬしと朝寝がしてみたい」などと書いてしまったせいで、「これってもちろんワタシのことよね?」といった問い合わせが殺到したとかしないとかの噂があり、まるで落語の『三枚起請』みたいな状況になったとかならなかったとか漏れ伝わってくるし、鴉が皆殺しにされたのかされなかったのかわからないわけだが、唯一はっきりしている事実は今朝も思いっきり朝寝坊してしまったということである当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第9回めの放送を見ましたよ。

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第2週『ふたつの花びら』

あさ(波瑠)は祖父・忠政(林与一)に手紙の書き方を習い、新次郎(玉木宏)に手紙を書いた。誰かに手紙を書くのは初めてのことであるし、習字もサボってきたのでなかなか上手に書き上げることができなかった。けれども、下手くそなりになんとか書き上げた。

あさが新次郎に手紙を書いた理由は、姉・はつ(宮﨑あおい)のことが心配だったからだ。
はつの許嫁である惣兵衛(柄本佑)がどんな人物かわからないので、はつが幸せな結婚生活を送れるかどうか不安である。そこで、新次郎に惣兵衛のことを尋ねたいと思ったのだ。どちらも大坂の大きな両替商であるし、新次郎は彼のことをよく知っていると思った。そこで、惣兵衛の人となりを知らせて欲しいと依頼した。
そこには、新次郎への親愛の情は一切書かず、もっぱら姉・はつのために手紙を書いた。

父・栄達(辰巳琢郎)が新次郎の家へ手紙を出すついでに、あさは自分の手紙も一緒に送ってもらった。

しかし、2ヶ月経っても新次郎からの返事は来なかった。また、これまで季節の変わり目ごとに京都へ遊びに来ていた新次郎本人もパッタリと姿を見せなくなった。
結婚が1ヶ月後に迫っているにもかかわらず音信不通になったことで、あさは気をもんだ。自分の字が汚くて文意が伝わらなかったのか、それとも失礼な内容のため新次郎に嫌われてしまったのではないかと心配をした。

そんなある日、1通の手紙があさに届いた。
待ちに待った新次郎からの返事かと期待して受け取ったが、それは外国から送られてきたものだった。それは4年前に大坂で出会って無礼な振る舞いをされた武士・五代(ディーン・フジオカ)からのものだった。

五代の手紙によれば、彼はイギリスのロンドンにいるという。
外国で見聞を広めた彼から見ると、日本はとてもちっぽけな国なのだという。ロンドンでは日本では考えられないくらい、女性が自由で活動的だという。ある時、彼は自転車に乗って颯爽と走っていく女性を見かけたという。その活発な姿からあさを思い出したのだという。それで手紙を書いたと書かれており、彼がスケッチした自転車と女性の絵が同封されていた。

あさは、五代からの手紙に感激した。
とても細い筆(羽ペン)で字が書かれていたり、宛先や差出人欄に書かれている外国の文字、五代の肖像写真などどれも日本ではほとんど見たことのないものだった。

ところが、母・梨江(寺島しのぶ)はその手紙を見つけるやいなや、取り上げて破ってしまった。嫁入り直前の娘が、よその男から手紙を受け取ったなど外聞が悪いというのだ。

あさは貴重な手紙を取り上げられたことに少々がっかりしたが、そんなことはすぐに忘れてしまった。
あくまで、あさの心は新次郎に向いているからだ。

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NHK『あさが来た』第8回

昨夜「三千世界の鴉を殺し ぬしと朝寝がしてみたい」などという都々逸を思い出しながら眠りについたら、今朝はまんまと朝寝坊してしまったのだけれど、艶っぽいことは当然何もなかったし、朝のうちにまとめ記事も書けなかった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第8回めの放送を見ましたよ。

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第2週『ふたつの花びら』

はつ(宮﨑あおい)の許嫁・惣兵衛(柄本佑)が会いに来た。
しかし、彼は無愛想なままで、はつと口を聞かない。彼の母・菊(萬田久子)がはつを侮辱した時も、はつを庇おうともしない。

その態度に腹を立てたあさ(波瑠)は、惣兵衛が一人になった時を捕まえて、はつに優しく笑いかけて欲しいと頼んだ。
ところが、惣兵衛は相変わらず冷たかった。物静かなはつのことを辛気臭い女だと侮辱したのに加え、自分に指図をするあさのことはおてんばで生意気な女だと言い放った。
あさは腸が煮えくり返った。

惣兵衛たちは帰ることとなった。
惣兵衛は、はつが見送りに来ても相変わらず無視し続けた。
また、彼の母・菊は、新次郎(玉木宏)の家が大変になっているらしいと意味深に告げて去っていった。

彼らが帰った後、はつの母・梨江(寺島しのぶ)は心配になった。惣兵衛も姑も癖がある人物だと思ったからだ。はつは母を安心させようと笑ってみせたが、その笑顔にはどこか力がなかった。

そこへ、あさが飛び込んできた。
惣兵衛に腹を立てているあさは、結婚に反対だと言うのだ。しかし、あさの抗議を押し留めたのは、はつだった。本人に言われると、あさも黙らざるを得なかった。

その場で、あさの父・忠興(升毅)は懐から手紙を取り出した。それは、今しがた届いたもので、差出人は新次郎の父・正吉(近藤正臣)だった。本来、今日は新次郎が京都に遊びに来るはずだったが、それができなくなったと伝える手紙だった。詳しい事情は書かれていなかったが、惣兵衛の母の噂と合わせて、なんとなく胸騒ぎがした。

その手紙には、新次郎からあさへ宛てた手紙も同封されていた。
新次郎が来れないことに一度はがっかりしたあさであったが、自分への手紙のあることに舞い上がった。すぐに読んで見ようかと思ったが、女中たち(友近清原果耶)が覗き込もうとするので落ち着かない。

そこであさは、はつだけを伴って別室で読み始めた。
あさが新次郎から手紙をもらうのは初めてのことで、胸がドキドキした。一人で読む勇気がなかったので、はつにも一緒に読んで欲しかったのだ。
初めて見る新次郎の字はとても美しかった。あさは光源氏が書いたのではないかと錯覚するほどだった。

新次郎からの手紙は、短くて素っ気ないものだった。約束の日に会えなくなったことを詫び、あさの健康を気遣う程度の事しか書いていなかった。あさは期待はずれで、つまらなく思った。

一方のはつは、とても興奮していた。それはどこから見ても恋文に違いないと言うのだ。新次郎のあさに対する恋心に溢れていると説明した。はつからそう言われると、あさもまんざらでもない気がしてきた。たった数行の手紙がとても情熱的な恋文に思えてきたのだった。

はつはすぐに返事を描くように勧めたが、あさは躊躇した。
どんな文面を書けばいいか思いつかないし、悪筆を自覚しているので、下手に手紙など書いたら失望されてしまうのではないかと心配したのだ。

あさが返事を逡巡している間に夕方になった。あさははつにもう一度相談しようとしたが、彼女の姿が見えなかった。探してみると、人気のないところではつが泣いていた。
あさは、はつが惣兵衛と結婚したくなくて泣いているのではないかと尋ねた。しかし、はつはそれを否定した。最近、どういうわけか自然と涙が出てくるのだと説明し、心配はないと答えた。

そして、あさが幸せで良かったと言うのだ。新次郎はとても素敵な男性なので、あさが羨ましいと言うのだ。そして、自分が新次郎と結婚できたらよかったのにと、つい本音をこぼしてしまった。
失言に気づいたはつはすぐに冗談だとごまかしたが、あさは心を傷めた。実は、本来ははつが新次郎と結婚するはずだったからだ。あさと結婚するはずだった惣兵衛の家にあさの悪評が伝わり、そのせいで許嫁が取り替えられたのだ。
あさはそのことを聞かされていたが、はつには生涯秘密にするよう命じられていた。あさははつの本音を聞いて心が苦しくなった。

その夜、あさはあることを思いついた。
祖父・忠政(林与一)に手紙の書き方を教えてくれと頼むのだった。

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