NHK『あさが来た』第7回

「花びら」って単語を聞くと「回転かな?」などと下品なことしか思いつかないという、薄汚れた大人になってしまったことを後悔している当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第7回めの放送を見ましたよ。

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第2週『ふたつの花びら』

あさ(波瑠)とはつ(宮﨑あおい)は成長し、次の春にはそれぞれ大坂に嫁ぐことと決まった。

父・忠興(升毅)はこの期に及んで、娘かわいさのあまり、嫁に出すのが早過ぎるのではないかと心配し始めた。一方、母・梨江(寺島しのぶ)は自ら娘たちに嫁入り修行の追い込みを行い、むしろ嫁に行くのが遅すぎるくらいだと忠興を諭した。
加えて、あさの様子を見ると、今の機会を逃すわけにはいかないと言うのだ。

あさは、幼いころは親に決められた結婚など受け入れられないと反発していた。しかし、最近ではすっかり嫁に行く気になっているのである。梨江はあさの気持ちが変わる前に嫁がせてしまうのが得策だと考えていた。

あさが結婚に前向きなのには理由があった。
許嫁の新次郎(玉木宏)は、季節の変わり目ごとに京都を訪れる。その度にあさを連れ出し、ふたりで対話を重ねた。それで新次郎のことをすっかり理解し、結婚する覚悟もできたのである。
あさは、新次郎の笑顔が素敵だと思っていた。目を細くして笑う表情に不思議な魅力があると思い、惹かれていた。

ただし、あさのおてんばぶりは昔のままだった。近所の子どもたちがチャンバラをしていれば、晴れ着のまま乱入するなど乱暴な性格は変わっていなかった。粗暴な性格のせいで、花嫁修業もほとんど落第生であった。

一方、姉・はつは嫁入り修行をそつなくこなし、何をやらせてもあさとは天と地ほどの違いがあった。
ところが、嫁入りの日が近づくにつれて、どこかふさぎ込みがちになっていくのだった。その様子にはあさも気づいていており、彼女の婚約者・惣兵衛(柄本佑)をあまり気に入っていないのだろうと想像もできた。しかし、あさは姉には何も言うことができなかった。

ある日、京都へ能の見物に来たついでだと言って、はつの婚約者である惣兵衛とその母・菊(萬田久子)が訪ねてきた。彼らと会うのは4年ぶりである。

あさがこっそりと覗いていると、惣兵衛は昔と変わらず無表情で、ほとんど何も話さなかった。はつも元来の奥ゆかしい性格と緊張のせいで、聞き役に徹していた。主に惣兵衛の母・菊が時候の挨拶や幕末の動乱の話など、比較的当たり障りのない話題を提供していた。

たまたま家族が席を外し、はつが一人だけ残されて対応した。
惣兵衛の母・菊は彼を促し、少しははつと話をするよう水を向けた。しかし、惣兵衛は少しも打ち解けようとする態度を見せなかった。挙句には、結婚後は嫌でも毎日顔を合わせて口をきくことになるのだから、今話すのは無駄であると言って口をつぐんだ。そのような態度であっても、母・菊ははつにたいして詫びるでもなかった。

それどころか、菊ははつに恥をかかせるような質問まで始めた。
大坂一の両替商に嫁ぐからには、はつの身は潔白である必要がある。男関係の醜聞は起こしていないかなどと聞くのである。
もちろん、はつにはそのような問題はなかったが、あまりに侮辱的な物言いに黙り込んでしまった。

それを盗み聞いていたあさは腹が立って仕方がなかった。
彼女の怒りの矛先は、無礼な質問をした菊ではなかった。将来の妻をかばおうともせず、黙ってばかりの惣兵衛に対してふつふつと怒りが湧いた。

あさは、惣兵衛が一人で中座するのを待ち伏せた。彼が出てくると、あさは直談判した。
惣兵衛に、せめて笑顔を見せてくれと頼んだ。はつはよくできた姉であり、どこに出しても恥ずかしくない女性だ。しかし、そんな彼女だって、一人で知らないところに嫁に行くことに不安を感じるのも無理のないことだ。せめて、夫となる惣兵衛が笑ってくれたら、そんな不安も払拭されるだろうと言って、協力を乞うた。

しかし、惣兵衛の返事はつれなかった。
自分はあさに指図を受ける筋合いはない。少女時代はおてんばで少しは大人になったかと思ったが、相変わらず子供だ。それに比べれば、はつは奥ゆかしくてマシではあるが、辛気臭いのはどうしようもない。
などと冷たく言うのだった。

あさの怒りはエスカレートした。

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NHK『あさが来た』第6回

途中で脱落することなく1週間を乗り切ったことを嬉しく思う当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第6回めの放送を見ましたよ。

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第1週『小さな許嫁』

新次郎(玉木宏)から算盤を贈ってもらい、あさ(鈴木梨央)はとても喜び、機嫌が良くなった。朝目を覚ますと、必ずそれを手に取るほど気に入った。

ある日、母・梨江(寺島しのぶ)はあさとふたりきりで、ある秘密を打ち明けた。

実は、当初の予定では、あさとはつ(守殿愛生)は嫁ぎ先が逆だったというのだ。ふたりが生まれる前から、長女は白岡家に、次女は眉山家にそれぞれ嫁ぐことに決められていた。つまり、はつが新次郎と、あさが惣兵衛(柄本佑)と結婚するはずだったのだ。

しかし、ある時、あさの悪評が眉山家に漏れ伝わった。すなわち、あさは木に登って転落して傷らだけになるほどおてんば娘だという噂である。
惣兵衛の父・栄達(辰巳琢郎)は、あさは嫁としてふさわしくないと思い、はつを寄越すよう交渉にやって来た。しかし、あさ達の父・忠興(升毅)は、すでに決まったことをひっくり返すなど道理に合わないと言って突っぱねた。

忠興を攻略でいないと悟った眉山栄達は、新次郎の父・正吉(近藤正臣)に直談判した。栄達は、新次郎は次男で分家に出すのだから劣った嫁でも良いが、惣兵衛は長男で跡取りだからしっかりした嫁でなくてはならない。故にはつが欲しいなどと、歯に衣を着せずにまくし立てた。もちろん、そのような理由では白岡家も受け入れる訳にはいかない。しばらく押し問答が続いた。

そこへ、話を盗み聞いていた新次郎が現れ、彼自身がそれを承諾した。
その理由は単純で、新次郎はあさのことが好きなのだという。赤ん坊の時からあさを見ており、彼女のことを気に入っているから結婚するのは大歓迎だし、仲良くやれる自信もあるというのだ。

あさの父母も新次郎の思いを聞き、娘達がより幸せになる可能性があるならそれが良いと判断した。こうして、現在の許嫁が決まったのである。
母は、あさに他言しないよう注意した。本来は、本人たちに知らせるつもりは一切なかったのである。ましてや、はつには一生知られてはならないと釘を差した。

あさはあまりのことに驚いた。
驚くとともに、新次郎のことを見なおした。そして胸が苦しくなった。それは、あさの初恋だったが、彼女にはまだその苦しさの意味が理解できなかった。

その後、あさは算盤を習うことが許された。新次郎からの贈り物だということで特別に許可されたのだ。
するとあさはメキメキと腕を上達させた。これまで何をやらせてもあまりうまくいかなかったあさだったが、算盤だけは別だった。すぐに、店の丁稚や番頭にも負けないほどの腕前となった。

そして、1865年(慶応元年)。
あさとはつは年頃の娘に成長した。

ふたりとも体は立派に成長したが、中身は昔を変わらなかった。
はつ(宮﨑あおい)はおしとやかな立ち居振る舞いと琴の巧みな演奏で人を魅了させた。
あさ(波瑠)は晴れ着で木に登り、家族を心配させるというおてんば娘のままだった。

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NHK『あさが来た』第5回

今日は山瀬まみの46回めのお誕生日なので、彼女のこと以外は極力考えたくない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第5回めの放送を見ましたよ。

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第1週『小さな許嫁』

大坂の嫁ぎ先に挨拶に行き落胆して帰ってきたあさ(鈴木梨央)とはつ(守殿愛生)。その夜、ふたりは自分たちの不自由な身の上を悲観し、抱き合って号泣した。

しかし翌朝、あさが目を覚ますと隣にはつの姿はなかった。
はつは何事もなかったかのように朗らかに、朝早くから家事の手伝いをしているのだ。それがはつ本来の人柄とはいえ、昨夜の本音とは全くの別人であることを不思議に思った。

あさは、母・梨江(寺島しのぶ)とふたりっきりの機会を捉え、あらたまって自分たち姉妹のことを相談した。
家をもり立てるため親の決めた相手と結婚することの重要性は理解しているし、活気ある大坂の町もたいそう気に入ったと断った上で、それでも嫁に行きたくないと訴えた。自分の道は自分で決めたいという希望を伝えた。姉・はつも同じ気持ちでいることを確認したと主張した。

しかし、母・梨江は取り合わなかった。
梨江がはつと話したところ、はつは自分が泣いたのはなんでもないと言っていたというのだ。

不利だと悟ったあさは、許嫁・新次郎(玉木宏)のことを取り沙汰した。彼は挨拶もそこそこに中座した。それは、彼が自分のようなじゃじゃ馬を気に入っていない証拠に違いない。自分も結婚したくないし、相手も望んでいないのだから、誰も得をしない愚策であると主張した。

加えて、自分は嫁に行くのではなく、学問をやりたいという希望を伝えた。
母・梨江は、口調は優しかったが、考え方は父・忠興(升毅)と同じだった。女に学問は必要がなく、ただ嫁に行くことが努めだと諭した。梨江自身も嫁に来て、子どもたちが生まれたことを幸せだと思っている。そして、それは女にしかできない大事を成し遂げたことであると話した。
女が浅知恵で商売をやっても失敗するだけである。女には女の生き方があるのだと言い含めた。
あさは納得できなかった。

ある日、家からあさの姿が消えた。
探してみると、寺小屋で男の子に混じって読書を学んでいた。
家に帰るなり、あさは父・忠興に激しく叱られた。大きな商家の娘が寺子屋で学ぶなど家の恥だと嘆いた。

あさは口答えをした。
男子には許されている学問を、なぜ女子はしてはいけないのか。女だって学問を身に付けることで、何か良いことがあるはず。加えて、なぜ女は親の決めた相手と結婚しなければならないのか。女だって自分で考えて、進むべき道や生き方を決めたい、などと訴えた。
もちろん、あさの訴えは聞き入れられることはなかった。

腹を立てたあさは、押し入れに籠城した。

それと前後して、許嫁の新次郎が訪ねてきた。
先日の顔合わせを中座した非礼を詫びに来たのだ。

新次郎の来訪に気づかないあさは、嫁になど行きたくないと叫び声をあげていた。
自分と結婚したくないという訴えを漏れ聞いた新次郎は思わず苦笑いをした。

はつは一人で押し入れに入り、あさに優しく話した。
父・忠興は厳しいだけではなく、自分たち姉妹のことも優しく考えてくれているというのだ。その証拠に、大坂から帰ってきた日に、忠興はふたりの許嫁の欠点を嘆いていたのだという。あさの許嫁の新次郎は三味線にうつつを抜かすような遊び人である。はつの許嫁の惣兵衛(柄本佑)は貧乏ゆすりばかりしていて、大きな家の主の器ではない。
はつは、ちゃんと物事を見ている父を信用し、父の決めてくれた道を進むのだと話した。

その話を聞くと、あさも少し落ち着いてきた。はつに手を引かれて押入れから出てきた。
すると、そこに新次郎を見つけた。自分が新次郎と結婚したくないと喚いたことを全て聞かれたと悟った。恥ずかしくなって、再度押し入れに隠れた。

新次郎は押し入れの外から優しく語りかけた。
子供の頃から自分の結婚相手を決められないという気持ちはよく分かる。やめたかったら、やめてよい。全てはあさの好きにすればよいと話した。自分で考えて選んだ道を信じて進むのが最も良いと後押しした。

新次郎は、ふすまを少しだけ開けて、土産の算盤を差し出した。算盤は、ふたりが初めて会った時に、あさが楽器代わりにして遊んでいたものだ。
新次郎は、振ってみろと言った。その算盤はとてもいい音を鳴らした。

新次郎は、あさがよく考えた結果、自分と結婚することに決めたなら、その時は仲良くしようと言い残して帰って行った。
その時、あさの心のなかで何かが変わった。

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NHK『あさが来た』第4回

昨日は、とある女子から関西学院大学とスター・ウォーズのコラボグッズを送ってもらったり、某カープ女子から彼女が寄稿したカープ愛溢れるアホ記事を送ってもらったり、同僚女子ふたりに「ねぇねぇ、俺の髪薄くなってない?ねぇねぇ、本当のことを言ってよ!」としつこく迫って無難な返事を強要したり、某JKにブルセラという古物販売形態を教えるという社会人として後ろ指さされかねない行為に及んだり、会社帰りのコンビニでミニスカートにハイヒールのめちゃめちゃ足のかわいい女の子を見てすっかり目の保養ができたり、ためしてガッテン山瀬の足を見て寿命が3年延びたりと、とにかくゲスな一日だった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第4回めの放送を見ましたよ。

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第1週『小さな許嫁』

大坂のあさ(鈴木梨央)の嫁ぎ先に引き続き、一同ははつ(守殿愛生)の嫁ぎ先へと挨拶に向かった。

はつの嫁ぎ先の眉山家も大きな両替商で、あさの嫁ぎ先である白岡家とはライバル関係にある。家勢は白岡家を凌ぐほどと思われた。

はつは挨拶口上を立派に述べた。幼いのに堂々とした態度で、器量も良いはつを見て、眉山家の面々は満足した。特に、ここでも行儀の良くないあさが引き立て役となって、はつの魅力は一層際立った。

ところが、はつの夫となる惣兵衛(柄本佑)は一風変わった男だった。
肌は青白く、目が細い。少しも口を開かず無表情なのに、ひっきりなしに全身が小刻みに揺れている。
あさが粗相をして、座敷の上で転んだ。その勢いで惣兵衛に衝突してしまったのだが、彼は手助けしようともせず、汚らしいものを避けるかのように体を逃がすだけだった。
はつは、まるで能面のような冷たい男だと思った。

その時、店の方が騒がしくなった。
対応に出た惣兵衛の後について、あさも様子を覗きに行った。するとそこにいたのは、町中で自分とぶつかって一悶着あった武士(ディーン・フジオカ)だった。その武士は薩摩藩士の五代だと名乗り、上海で購入した軍艦の代金を工面して欲しいと居丈高に依頼した。

その依頼に対して、惣兵衛は愛想よく対応したが、今は蔵に金がないため出直して欲しいと下手に出て答えつつも、取り付く島もなく追い返した。五代は町人ごときになめられたと腹を立てたが、どうすることもできず引き下がるしかなかった。
五代が去った後に惣兵衛がボヤいたところによると、本当は金はあったのだ。武士に金を貸すと返ってくるあてが無いので、方便を使って追い返したのだ。

そのやり取りを見ていて、あさは五代の正体を初めて知った。
一方の五代も、陰からあさが覗いていたことに気づいていた。そして、あさのことを裕福な商人の娘だと思い込むのだった。
その夜、五代は同じく薩摩藩士の大久保一蔵(後の大久保利通; 柏原収史)と居酒屋で飲みながら愚痴った。商人風情にコケにされたことに腹を立てているのだ。五代は大坂商人を憎く思った。彼はイギリスとの貿易を実現させようと暗躍しており、それが成れば大坂は凋落するはずである。一刻も早く実現させ、大坂に一泡吹かせてやろうと決意するのだった。

京に戻ったあさとはつは、布団を並べて寝ていた。
ふたりは今日一日の出来事を振り返った。

はつは、惣兵衛に対する正直な感想を話した。
惣兵衛は一度も笑わない陰気な男だし、あさが転んでも助けない冷たい人だと評した。自分がそのような男の妻になるのかと思うと、はつは悲しくてしょうがないのだった。

あさは、自分の許嫁の新次郎(玉木宏)もたいがいな男だと言って慰めようとした。新次郎は両家の顔合わせに遅刻してきたばかりか、一言だけ話すと三味線の稽古のために再び出かけてしまった。わざわざ京から大坂に出向いた自分たちへの態度としては、これ以上ない失礼なものだと言って、はつだけが恵まれていないわけではないと元気づけようとした。

その言葉が、ますますはつを悲しくさせた。ついにはつは泣き出してしまった。

はつは今の自分の気持ちを話した。
商家の娘が親の言いつけ通りに嫁に行くのは当然のことであり、そんなことは自分にとっては平気なことだと思っていた。しかし、今日の出来事を思い出すととても悲しいというのだ。絶対に大坂に嫁になど行きたくないと思う。しかし、自分にはそれに抗う力はないのだと言って、ますます深く泣くのだった。

あさは、はつの気持ちがよくわかった。そもそも自分がまったく同じ思いを抱いていたからだ。

あさは、はつの涙を見るのは初めてだった。よほどのことに、あさもつられて泣き出した。ふたりは抱き合っていつまでも泣いた。

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NHK『あさが来た』第3回

ディーン・フジオカのオフィシャルサイトを開くと派手に音が鳴るので気をつけろと注意を促す当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第3回めの放送を見ましたよ。

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第1週『小さな許嫁』

あさ(鈴木梨央)と姉・はつ(守殿愛生)は、父・忠興(升毅)に連れられて大坂へ向かった。ふたりには生まれた時から大坂の両替商へ嫁ぐことが決まっており、それぞれの嫁ぎ先へ挨拶をするためだ。ふたりにとっては初めての大坂への旅だった。

大坂の中之島に到着すると、働く町人たちで大賑わいであった。
上品でおしとやかな姉・はつは、その混雑に圧倒され目を回した。

一方のあさは、むしろその活気に心が湧きたった。見るもの全てが物珍しく、静止を振り切って勝手に走りだし、町の見物を始めた。

往来で、あさは見知らぬ武士(ディーン・フジオカ)と衝突し、その勢いで双方ともに転んでしまった。武士は何かに追われているような素振りで、謝りもせずに走り去ってしまった。あさは失礼なことだと思いつつも、再度町の賑わいに目を奪われ、すぐに気にならなくなった。

しばらくすると、武士が戻ってきた。「その娘を捕まえろ」と叫びながら、あさを追いかけてくる。あさはわけがわからなかったが、本能的に逃げ出した。おてんば娘のあさは逃げ足も早かった。混雑する町中を軽快に走り抜け、必死に追いかける武士を翻弄した。

しかし、不慣れな土地で道に迷ってしまい、とうとう行き止まりで逃げ道を失った。
武士は、あさの袖に手を入れ、そこに収まっていたピストルを取り上げた。さっきぶつかった時にあさの袖に紛れ込んでしまっていたのだ。

ピストルを初めて見るあさは、それが何かわからなかった。持ち前の好奇心で武士に質問した。
しかし、武士は「おなごと話している暇は無い」と答えるのみで、そそくさと立ち去ろうとした。

その無礼な態度にあさは腹を立てた。
人にぶつかって謝りもせず、その後に追いかけてきて、体をまさぐった挙句に、物を奪って無言で立ち去る。そんなことは日本男子のすることではないと叱りつけた。
あさの物怖じしない態度に、武士も感心した。自身の非礼を謝し、急いでいることをかいつまんで説明し、「グッバイ」と告げて立ち去った。

あさはそれ以上関わろうとはしなかったが、その武士の言葉が奇妙だったことを思い出していた。京では聞いたことのない方言を物珍しく思った。

そんな騒動がありながら、あさの嫁ぎ先の白岡家に到着した。
白岡家の人々は、あさとはつを見比べて、どちらが嫁いでくるのかと緊張した。どう見ても、おてんばのあさよりも、おしとやかなはつの方が望ましいからだ。

両家の顔合わせが始まった。
あさは決められた挨拶口上も満足に言えなかった。それで白岡家の人々はすっかり白けてしまった。

一方、白岡家にも問題があった。
あさの夫となるはずの新次郎(玉木宏)がその場にいないのである。
実は新次郎は次男であり、結婚後は分家として独立することになっている。それで家族も多少甘いところがあるし、本人も気楽に振舞っているのだ。

しばらく話をしていると、やっと新次郎が帰ってきた。
遅刻したことを悪びれるわけでもなく、裏で拾ったという猫を抱いてきて、真っ先に餌の算段を指示している。

あさたちが来ていることにやっと気づくと、ズカズカとあさの目の前にやって来た。笑顔でいきなり手を握り、馴れ馴れしく「あさちゃん」などと声をかけた。
あさはその無礼な振る舞いに虫唾が走った。

それだけをすると、新次郎は用事があると言って、また出て行ってしまった。

散々な顔合わせであった。

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NHK『あさが来た』第2回

昨日の午前中にツイッターでリツイートされてきた中で一番面白かったのは「どれだけ前世で徳を積んだら生まれながらの許婚が玉木宏になるんだ、いくら払えばいいんだ」というものだったけれど、午後になって福山雅治が結婚したという大ニュースが流れてきて、先の投稿者はミーハーっぽいし、さぞや悲嘆にくれているのではないかと心配している当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第2回めの放送を見ましたよ。


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第1週『小さな許嫁』

あさ(鈴木梨央)は許嫁の白岡新次郎(玉木宏)と初めて会った。
しかし、忠興(升毅)から折檻されているところを見られてしまい、そのことを話題にされたせいで恥ずかしくなった。そして、デリカシーのない新次郎のことを嫌いになるのだった。

大阪への帰り道、新次郎の父・正吉(近藤正臣)はあさが嫁に来ることを心配した。あのようなじゃじゃ馬が嫁に来くると家の中がめちゃめちゃになるのではないかと思うからだ。夫となる新次郎がしっかり手綱を締めるよう注意した。
しかし、当の新次郎はどこ吹く風だった。あまり深刻にならず、自分にも扱いきれないだろうと笑いながらはぐらかすだけだった。

あさは、今日の粗相について父・忠興から再度叱られていた。商家の大切な道具である算盤を楽器のように振り回していたり、許嫁との対面中に勝手に部屋を飛び出したりしたからだ。大きな両替商である先方への嫁入りが破談になると、今井家の家運も大きく傾くのだ。

あさは口答えした。
自分も算盤を使って計算をしてみたいし、本も読んでみたい。男の子のようにまわしを締めて相撲を取ってみたい。なぜ女だからといって禁じられなくてはならないのかと訴えた。
しかし、父・忠興はつれなかった。女が優先して身に付けるべきは、夫や家族をもり立てる礼儀作法や芸事だと言うのだ。それすら満足にできないくせに、男のすることをやりたがるのは筋違いだと言って取り合わなかった。

そこへ、祖父の忠政(林与一)がやって来た。
彼はすでに隠居し、別なところで悠々自適な生活を送っている。たまに訪ねてきては、あさの良き遊び相手となっていた。忠政のあさに対する態度は特別で、過去には「あさが実は男だったということにして縁談を反故にし、むしろ嫁をとって今井家の家督を継がせよう」などと破茶目茶なことを言って家族を唖然とさせたこともある。

祖父・忠政は、忠興の前からあさを救い出し、一緒に木登りをした。木登りは禁じられていたが、忠政には誰も口出しはできないのだ。

ふたりきりになって、あさは自分の気持ちを話した。
新次郎と結婚するのは嫌だ。そもそも女がお中元やお歳暮のように、家から家へと贈り物のようにやり取りされること自体がおかしい。お家のためと言われても納得できないと訴えた。

聞き終わると、忠政はあさのことを褒めた。
普通の人は長いものに巻かれようとし、古いしきたりに盲目的に従ったりする。そういう生き方が一番楽だから。しかし、あさは違う。おかしいと思うことがあったら、立ち止まって考えている。そういう人間が世の中を変えていくのだと話した。そして、あさは誰かに叱られたり、後ろ指をさされたりしても、自分が良いと思ったことは自身を持ってやれと励ました。
あさは嬉しくなった。

それから約1年後。今井家の台所事情は少々苦しくなり始めていた。
幕末の混乱期で、幕府には金がなかった。幕府や武士たちは町の商家に頻繁に金を借りに来るようになった。それらの借金は返ってくる可能性はほとんどなかった。かといって、町民にはそれを断る術も無いのだ。事実上、無償で金を差し出しているのだ。
父・忠興は不景気な顔で「こんな時代は長くは続かない」とぼやいた。あさはその言葉を聞くともなしに聞いていた。

ある日、父・忠興は大阪の両替商を何件か回ると言い出した。
そのついでに、あさと姉・はつ(守殿愛生)も連れて行くと言うのだ。娘達の許嫁はいずれも大阪の両替商なので、挨拶に出向くと言う。

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NHK『あさが来た』第1回

「半年ぶりにおはようございます」とご挨拶申し上げる当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第1回めの放送を見ましたよ。

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第1週『小さな許嫁』

明治維新の約20年前、幕末の京都。
京でも随一の商家の次女として、今井あさ(鈴木梨央)は生まれた。

あさはおてんばな少女だった。
空を飛びたいと思い、背中に大きな凧を背負って木から飛び降りた。その試みは当然失敗し、落下して傷だらけになった。捕まえた蛇を振り回しながら街を闊歩する。相撲をとれば男の子にも負けない。彼女のやんちゃぶりに、同年代の男の子たちは、あさの姿を見るや逃げていってしまう。

父・忠興(升毅)は、あさがやんちゃをするたびに、尻を叩いて折檻する。それでもあさは懲りることがなく、父や母・梨江(寺島しのぶ)の目を盗んでは行儀の悪いことを繰り返している。

大きな商家である今井家では、男の子が生まれれば跡継ぎとし、女子は大阪の両替商に嫁がせると代々決まっている。そのため、一家の長男である弟・久太郎(二宮輝生)には、父・忠興から直接読み書きや算盤が教えこまれていた。
一方、あさと姉・はつ(守殿愛生)には、花嫁修業が施された。礼儀作法や茶道、裁縫や琴など、女性としてのたしなみを叩きこまれた。姉・はつは親の期待通り、おしとやかな少女として育っていた。

しかし、あさは親の期待に反してばかりだった。彼女は女性らしい生き方に、大きな疑問を抱いていたのである。ことあるごとに、周囲の人になぜ女性らしくあらなければならないのかと質問するのだが、納得のいく回答は得られなかった。

あさは、生まれた時から親に決められた許嫁のあることも気に入らなかった。
大阪の大きな両替商・白岡家へ嫁ぐことが決められていたが、住み慣れた京都を離れたくなかったし、会ったことも無い男と結婚するのも嫌だった。しかし、彼女にはどうすることもできないのだ。

ある日、あさは父の目を盗んで、本を読んだり、算盤で遊んだりしていた。花嫁修業よりも、男子向けの教養の方に大きな興味があったからだ。
しかし、あさが一番面白いと思ったのは、算盤の出す音だった。降ってみるとシャカシャカと音がなって、琴よりも断然面白いと思った。興が乗って、算盤を振りながら、歌い踊るのだった。

その姿を父・忠興に見咎められてしまった。下品な踊りをしていたことに加え、商家の大切な道具である算盤をおもちゃにしたことに父は怒った。すぐにあさを捕まえて、尻を折檻した。

あさが算盤で踊るところから、父に尻を叩かれるところまでの一部始終を盗み見ている男がいた。
その男こそ、あさの許嫁である白岡新次郎(玉木宏)であった。その日、顔合わせのために、偶然大阪から来ていたのだ。

改めて、座敷での対面となった。初めて会う許嫁に対して、あさはどうしていいのかわからなかった。
すると新次郎は、先ほど叩かれた尻は無事かと声をかけた。尻のことを話題に出され、あさは自分が辱められたと思い、座敷を飛び出した。

あさは、新次郎のことが大嫌いになった。

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#まつしけ 1周年

むかしむかし、あるところにアラフォー独身の男女がいました。

一緒に住んでいたわけではないけれど。
むかしといっても1年前のことだけれど。
過去形で書かれているけれど、ふたりともまだ生きているし、あいかわらずアラフォー独身のままだけれど。

独身であるということと人間であるということを除けば、およそ共通点を見つけ出すことの難しいふたりである。
思わず、「声が違う、年が違う、夢が違う、ほくろが違う、癖が違う、汗が違う、愛が違う、利き腕違う」などと、『イミテーション・ゴールド』(阿木燿子・作詞、山口百恵・歌)を口ずさんでしまうほどである。いや、年と利き腕は一緒だけれど。ごめんね。
一方は気がふれてるんじゃないかって思うほど山瀬まみのことが好きだし、他方は頭がいかれてるんじゃないかってくらい天知茂のことが好きらしいし(参考情報サイト: トラウマの天知茂; 彼女が更新しているわけではないので、あしからず)。
まったく共通点が見出だせない

そんなふたりが1年前、なんかの流れで映画の話になった。
もちろん、共通点がほとんどないふたりなので好きな映画のジャンルがぜんぜん違う、これまでに見てきた映画も全く違う。

そんなふたりが、相手が普段見ないような映画を無理やり見せるという不毛な嫌がらせをtwitter上でのしりとりという形式で1年続けてきた記録が以下である。
ふたりの戦いはまだまだ続く。

#なお、こうして振り返ると僕にとっては『陸軍中野学校』がベストでした。次点は『たそがれ清兵衛』

『まれ』まとめ記事断念

中川翔子を見るたびに、厚着の街の良い山のコンビニで働いていた なかぱみゅちゃん を思い出して胸がキューっとする当方が、今朝はおもいっきり寝坊しました。
それでちょっとまとめ記事のやる気が削がれました。

今、録画を見たのですが、一度下がったテンションはもう戻っては来ませんでした。
そんなわけで、三日坊主で『まれ』のまとめ記事は断念です。

どうぞご了承ください。

なお、今日の概要は

  • ヒロインの父・徹(大泉洋)が心を入れ替え、桶作元治(田中泯)の塩田でまじめに働き始めた。ただし、仕事がきつくて愚痴だらけ。
  • 母・藍子(常盤貴子)は、桶作文(田中裕子)にこれからも家に置いてもらうように頼むが、文は冷たく突き放す。でも、これはきっと、なし崩し的にいつくと予想される。
  • 希(土屋太鳳)は早く能登に馴染もうと努力する。夏祭りの子供相撲の練習に参加して地元の友達と仲良くしようとしたり、方言の単語帳を作って積極的に方言を喋ったり。
  • 希は自分が転入することになる小学校を見に行った。夏休みで無人のはずなのに、圭太(山崎祐馬)がいた。彼は涙ぐんでおり、希の姿を見つけるやいなや走り去った。誰もまだ知らないことだが、圭太は彼の父(板尾創路)の仕事の都合で転校しなくてはならない。
  • 元治は寡黙で真面目に塩田で働いている。徹が失敗しても声を荒らげることもなく、物静かな人格者。しかし、地元の夏祭りに関しては人が変わる。準備期間中は毎晩地元の男衆を家に集め、酒を飲みながら騒ぐ。今年は若い衆がいなくて山車の引き手のめどが立たないという話を聞かされると、元治は激昂する。電話で息子に電話をかけ、会社の若い衆を引き連れて里帰りしろと無理な命令をしたりする。津村家は元治の豹変ぶりに驚く。

といったところでしょうか。

次は、今年秋から放送予定の朝ドラ『あさが来た』(主演波留)で会いましょう。

ご清聴ありがとうございました。

NHK『まれ』第3回

田中裕子を見るたびに、サントリーオールドの名CMを思い出して胸キュンする当方が、NHK朝の連続テレビ小説『まれ』の第3回めの放送を見ましたよ。


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第1週『魔女姫バースデーケーキ』

桶作元治(田中泯)の伝統的塩田に対し、徹(大泉洋)は機械化と富裕層向けのブランド化を提案した。しかし、そのアイディアはみんなの反感を買った。
桶作文(田中裕子)はすぐに家を出て行くように告げ、藍子(常盤貴子)がせめて新しい家が見つかるまで置いてくれるよう頼むものの、否定的だった。なんとか数日の延長は認められたが、あまり猶予はなかった。

希(松本来夢)も、見果てぬ夢ばかり追いかける父・徹に愛想を尽かした。父に対して嫌いだと言い放ち、彼のことを無視するようになった。

一方で希は、自分たち家族が村で受け入れられるように自分なりに努力をするのだった。
元々、酢の物は嫌いだったにもかかわらず、文が作った朝食の酢の物を大好物のふりをして食べ、とても美味しいと愛想よく話すのだった。

また、元治の塩田での仕事を率先して手伝った。
その最中、元治は話のついでで希の名前の意味や彼女の将来の夢について尋ねた。

希は自分の名前には、父の意向で「大きな夢をつかむ」という意味が込められていることを説明した。その一方で、父の軽薄な生き方を見ていると地道にコツコツと生きることが重要だと思うようになったのだと付け加えた。

希はケーキ職人になりたいという夢を抱いていたこともあった。
そのきっかけとなったのは、自身の5才の誕生日のことだった。実は希と徹のふたりは同じ誕生日(8月10日)であった。当時、珍しく一山当てた徹は羽振りがよく、希と徹の誕生日を祝うために大きなバースデーケーキを買ってきた。

ケーキの上には、徹がおもちゃ屋で見つけたという、人形も乗せられていた。魔女なのかお姫様なのか判別のしにくい奇妙な人形であったが、希はそれをとても気に入った。「魔女姫」と名づけて、それ以来肌身離さず持っている。

その日食べたケーキはとても美味しく、家族に笑い声が絶えることもなかった。幼い希にとって、ケーキは家族の幸せの象徴となった。それから、事あるごとに希は自分でケーキを作るようになり、家族もそれを歓迎した。
そのような経緯から、希は将来ケーキ職人になりたいと思うようになったのだ。

しかし、徹の成功も一時的なもので、それ以後は坂道を転げるように失敗ばかりだった。ついには、全財産を株ですってしまい、夜逃げ同然で東京から能登にやって来て今日に至るのである。
その過程で、希は徹のような夢見がちな人生は送るべきではなく、地道にコツコツと働くことが何よりも重要だと信じるようになった。ケーキ職人になるという自身の夢も追いやることにしたのだ。

元治は何も答えなかったが、希に同情した。
家に帰って、文にもうしばらく津村一家を家に置いてやるよう話した。しかし、一家をよく思わない文は何も答えなかった。

希に嫌われたことが堪えた徹は、珍しく反省をしていた。
家族を集め、みなの前で頭を深く下げて謝った。

しかし、徹の反省点はどこか的外れだった。
彼の謝罪は、相場の読みを誤った点(結果に対する謝罪)に集中しており、そもそもの投機的な考え方(動機に対する謝罪)を改めるようなものではなかった。そのことが希をますます不機嫌にさせた。

希は自分の望みを語った。
徹には普通の父親のように、家族のために地道に働いてほしいと述べた。金持ちにならなくてもよく、たとえ小さな幸せであっても、家族がいつも笑っていられるようにして欲しいと告げた。

やっと自身の誤りに気づいた徹は、よりいっそう深く頭を下げると共に、自分のことを嫌いにならないでくれと滑稽なほど懇願した。
そのおかしな姿に家族は笑った。そして希の溜飲も下がった。

希は父をもう一度信じることにした。やっと自分たちはまっとうな家族になれるかもしれないと思えた。そして、またケーキを作って家族で食べる日が来るかもしれないと思うことができた。
希に小さな希望が芽生えた。

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