天王山・久修園院: 西国愛染明王ツアー(12)

久修園院の御朱印

西国愛染十七霊場の12番、大阪府枚方市の久修園院(くしゅうおんいん)に行ってきた。

ここに収蔵されている愛染明王は、高さが6尺(約2m)もあり、日本で最も大きい愛染明王像ではないかと言われているそうだ。確かに、薄暗いお堂の中で見ると、その巨大さに思わず息をのんだ。造形も雄々しく、なかなかの迫力。この愛染明王の前では、悪いことできないなぁ、って感じになってくる。

愛染明王と言えば真っ赤なボディが特徴だが、ここの愛染明王は黒くすすけている。指の間やわきの下など、かげになる部分は赤い色が見て取れたが、それ以外は黒くなっていた。
案内してくれたおばあさんの話(後述するが、彼女の話は要領を得なくて、僕の理解が間違っているかもしれない)によれば、一度火災に巻き込まれて、煤だらけになったそうだ。煤を払って身を清めようとしたのだけれど、当時の住職さんの「仏さんの体に軽々しく触れるべきではない」という意見に従ってそのままにしてあるとか。
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紀三井寺: オヤジ・キラーの石段には物語がある

紀三井寺の新仏殿昨日は紀伊半島の東側の三重県を攻めてきたので、今日はバランスをとるために、西側の和歌山県を攻めてきた。
ストイックに車で走るだけで、どこにも寄り道をするつもりはなかった。しかし、国道42号線で和歌山市南部を走行中、正面の山の中腹、生い茂る木々に埋もれるようにして綺麗なお堂が見えてきた。すばやくカーナビに目を移すと、「紀三井寺(きみいでら)」と記されており、所在も主要道路から近かったので立ち寄ってみることにした。
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『見仏記: ゴールデンガイド』 いとうせいこう・みうらじゅん

当方の見仏趣味を啓いてくれた、いとうせいこう・みうらじゅんの最新作『見仏記: ゴールデンガイド』が発売になった。
前作「見仏記: 海外篇」からは7年ぶりだそうだ。

2003年から1年間、web KADOKAWAに連載されていたものをまとめてある。いとうせいこうのあとがきによれば、連載末期にみうらじゅんがやる気をなくしてイラストが未完成のまま放置同然だったらしい。それを今回みうらじゅんがイラストを描く気を起こして、本書が完成したとのこと。

今回のテーマ「ゴールデンガイド」とは、

マニアックは不可、メジャーどころにしぼって紹介。

p.207

だそうだ。

確かにスタートは奈良で花がたくさんあって有名な長谷寺だったり、3話目では京都で一二を争う有名どころの清水寺に出かけたり、4話目では同じく京都で桜の有名な醍醐寺を紹介したりと、「ゴールデンガイド」に恥じないラインナップだった。
#ちなみに、ここに挙げたものは京都移住後一度も行ったことがないので、行きたいと思ってる。

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奈良国立博物館: 愛染明王は田中邦衛のルームメイト

奈良国立博物館の愛染明王(同館サイトより)当方の恋する愛染明王があると聞けば、日本全国どこでも出かけていく気満々の当方だが、まさか奈良随一の観光地・奈良公園にある奈良国立博物館でも1体収蔵されていたとは盲点だった。そんなわけで、見仏してきた(平常展拝観料 500円)。

しかも、奈良国立博物館の愛染明王はかなり状態がいい。
1256年に作られたものだそうだが、保存状態が良かったらしく、肌の赤色はとてもきれいに残っているし、6本の手に持った装飾品(本当は、1本の腕には何も持たないので5つだが)も作成当時のものがそのまま残っているそうだ。細い作りの矢や弓は欠けている場合が多いので、それだけでかなり感動。
近寄って目を凝らすと、胸に着けているチョーカーのような装飾具も丹念に作られていて美しい。金色の細い細工の先に、青いビーズが付けられているのが見事で、しばし見入ってしまった。
奈良国立博物館による説明

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神童寺: 天弓愛染明王に会いに行く

神童寺の天弓愛染明王(木津川市のサイトより)当方宅から車で約20分、木津川市山城町にある神童寺に当方の大好きな仏像である愛染明王が収蔵されているという情報をGETしたので、早速面会に行ってきた(右写真; 木津川市のサイトより)。
当blogでは頻繁に愛染明王が登場しているのでメジャーな仏像かと錯覚してしまう読者もいるかもしれないのだが、それは当方が愛染明王を狙って見仏しているからであって、普通はそんなにお目にかかれるわけではない(きっと)。
しかも、神童寺にあるものは、天に向かって弓矢を引いている「天弓愛染明王」と呼ばれるタイプだ。今まで当方が見てきた(といっても2回だが)愛染明王は、いずれも弓と矢を持っているのだが(これは愛染明王の定番グッズ)矢をつがえているものは見たことがなかった。
天に矢を向けることの意味は知らない当方だが、愛染明王に恋している身の当方としては、キューピッドの愛の矢よろしく、その矢で射抜かれてみたいものである。

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