全156回完走できたことを感謝したい当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の最終回を見ましたよ。
源兵衛(大杉漣)の葬儀のため、一家は安来へ向かった。
葬儀は布美枝(松下奈緒)の実家で執り行なわれた。遺族たちは落ち込むのではなく、明るい笑顔で源兵衛を見送った。彼岸花の咲く季節に死んだものは、先祖に守られてあの世に行けると言われている。源兵衛は実の母・登志(野際陽子)や、若くして亡くした息子・貴司(星野源)らと一緒になれるのだから良かった。ミヤコ(古手川祐子)は気丈に言うのだった。
布美枝のおば・輝子(有森也実)は、布美枝と茂(向井理)の結婚に猛反対していたことを謝った。漫画家という職業がなんなのか分かっておらず、5日間で結婚を決めたことが気に入らなかったのだ。しかし、今にして思えば、ふたりは幸せになっており、源兵衛の見る目に間違いはなかったと思い知ったという。
源兵衛の婿探しの的確さは、布美枝の姉妹たち全員が同意するところだった。彼女らは全員、源兵衛の決めた相手と結婚し、それぞれ自他共に認める幸福な家庭を築いているのだ。
鬼太郎の作者として、茂は親戚の子供達に囲まれた。葬式の場で漫画ばかり描いている茂のことを申し訳なく思う布美枝であったが、ミヤコはむしろその方が良いと言う。家族が笑っていられることが、源兵衛への何よりの手向けだからだ。源兵衛は特徴のない普通の人生を過ごしたが、笑いの絶えない幸せな家族を残した。それが立派だと、ミヤコは言うのだった。
葬儀が一通り終わった。茂と布美枝は、珍しくふたりっきりで散歩に出かけた。ふたりは神社の参道の階段に腰をかけていた。そこは、幼い布美枝が「しげ」と呼ばれる少年と妖怪について話した場所であった(参考: 第2回)。
布美枝は、戯れに、結婚相手が自分で良かったのかと聞いてみた。別の人と結婚していたら、自分はどうなっていたと思うか、と茂に尋ねた。
照れくさい茂は、横を見たらいつも布美枝がぼんやりとした顔で立っていた、と軽口で答えるのが精一杯だった。
しかし、急に真剣な顔になり
「良かったんじゃないか、お前で」
とうつむきながら、ぼそぼそと付け足した。
林の中を歩いた。その時、何かに追いかけられている妖気を感じた。
ふたりは無言で手を繋ぎ、道の脇によけた。そして、打ち合わせたわけでもないのに、同時に
「べとべとさん、御先にお越し」
と唱えた。その呪文で、ふたりは妖怪をやり過ごすことができた。
茂は、布美枝が呪文を知っていたことに驚いた。それは、彼女が子供の頃に「しげ」から教えてもらった呪文であり、よく覚えていたのだ。「見えんけど、おる」そう話すと、再び歩き出した。
歩くふたりに、再び誰かが声をかけた。振り返ると、鬼太郎とその仲間たちが立っていた。それだけではなく、これまでに茂が生み出した漫画の登場人物たちが、林のあちらこちらから茂と布美枝を見守っていた。
今まで姿は見えなかったけれど、いつも彼らはふたりのそばにいたのだ。
「まだまだ、これからだ。」
「はい。」
彼岸花の咲く道を、ふたりは並んで歩いていった。