広島・西条で美酒鍋を食べた

 学会関係で広島方面に来ています。宿は東広島市の西条。
 西条には日本酒の蔵元がたくさんあり、酒飲みには夢の街らしい(参考: 日本の西条酒)。僕は日本酒は全然わからないけれど、たとえば賀茂鶴という銘柄くらいは聞いたことがある。

 西条には、名物料理として「美酒鍋」というのがあるそうだ。
 美酒鍋と書いて「びしょなべ」と読む。元々は、蔵の働き手のまかない料理だったらしい。多様な肉・野菜を塩コショウだけで味付けしたシンプルな鍋。最大の特徴は、水やだし汁は一切使わないこと。そのかわりに、日本酒をドボドボ入れて、それで煮立てる。

美酒鍋

 野菜がクタクタになるまでよく煮こんであり、酒に浸っているのに味はあさっりさっぱり。始めて食べるものですが、どこか懐かしい味がしました。
 蔵人の賄い食であることは先に書きましたが、彼らの舌がバカになって利酒に影響が出ないように、シンプルな味付けにしてあるそうです。それでも味わい深く、美味しく、スイスイと食べてしまいました。

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NHK『ゲゲゲの女房』第148回

 NHKオンデマンドで『ちりとてちん』の配信が始まり、同ドラマで取り上げられた落語を一流の噺家がやっている映像も一緒にリストされていると知った当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第148回めの放送を見ましたよ。

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「独立宣言」

 夕食後、怒りの収まらない藍子(青谷優衣)は部屋に閉じこもってしまった。
 喜子(荒井萌)によれば、藍子の頑固なところや物事に一生懸命打ち込むところは、茂(向井理)にそっくりだという。特に、夜遅くまで机に向かう背中の様子が父の生き写しだという。藍子が陰ながら努力していることは、布美枝(松下奈緒)もきちんと把握していなかった。どうして彼女に目を向けて、頑張りを褒めてやれなかったのだろうと、反省するのだった。

 布美枝の母・ミヤコ(古手川祐子)は、絹代(竹下景子)の部屋で茶を飲んでいた。絹代は、修平(風間杜夫)が居なくなった寂しさをとつとつと話した。心臓の悪い自分の方が先に死ぬと思い、修平に口うるさく家事を仕込んだ。好きな芝居や映画の時間を制限してやらせたのに、皮肉な結果になったことを後悔している。
 そして何よりも絹代に取って予想外だったことは、親が勝手に決めた結婚相手であり、赤の他人であったはずの修平への愛着だという。血を分けた息子や孫でさえ、自分の空虚さを埋めることはできないと言って、涙を流すのだった。

 藍子を怒らせた張本人である茂(向井理)と源兵衛(大杉漣)は、居間で碁を打っていた。古いふたりの約束が、ついに果たされたのだ。
 楽しく興じながらも、ふたりは藍子への対処を碁の戦術になぞらえている。たとえば、良いと思って打った手が裏目に出ることもあるのだ、といった具合に。

 碁のルールは何もわからないミヤコがそばにやってきて、碁に口出しをした。源兵衛が悪手を打って待ったをかけた瞬間に、無理に押すととうまく行くはずのものも失敗してしまう、と告げるのだった。茂と源兵衛はその一言にはっとさせられるのだった。藍子のことは無理強いするのではなく、もう少し様子をみるということになった。

 翌日、源兵衛らが安来に帰る直前、茂以外の家族とともに深大寺へ出かけた。
 ミヤコは、藍子に虎の話をした。言い伝えによると、虎は自分の子供の為に1日に千里の道を往復するという。源兵衛もその虎のように、娘たちのことを心配していると説明した。布美枝や長女・暁子(飯沼千恵子)に会いたいと思っても、虎のようには長い道を行き来することができない。だから、遠くはなれていても安心できるように、立派な夫を見つけてやったのだ。そして、その目論見はうまくいって、布美枝も暁子も不自由なく幸せに暮らしている。
 きっと茂も同じ気持なのだろう、とミヤコは付け足した。意地を張って謝ることのできない源兵衛に代わって、ミヤコが藍子に謝った。

 藍子は、前夜のミヤコの一言のことも喜子から聞いていた。さらに今日のミヤコの言葉もあって、完全に元の明るさを取り戻した。源兵衛に対する怒りもすっかり消え、また遊びに来て欲しいと言って、安来に送り出すのだった。
 藍子と喜子は、ミヤコの控えめな人心掌握術にすっかり感心してしまった。そして、その性格は布美枝にも引き継がれていると言って、ふたりで母のことを褒めたり、からかったりするのだった。

 昭和60年4月。
 藍子は念願の教師になることができた。3年生のクラス担任で、熱意を持って楽しく仕事に打ち込んでいる。幸いにして、赴任校は実家から通える場所であり、全てが丸く収まっていた。
 喜子は短大1年生になった。彼女は短大に進学したものの、自分が本当にやりたいことをまだ見つけられずにいた。

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NHK『ゲゲゲの女房』第147回

 女の子をデート(デート?デートなのか!?)に誘ったところ、その日は用事が入っていると言われ、よく聞けば1週間ほど前にデート(デート?デートなのか!?)に誘った張本人がまさしく僕であると指摘された当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第147回めの放送を見ましたよ。

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「独立宣言」

 布美枝の父・源兵衛(大杉漣)は、藍子(青谷優衣)が教師になると聞いて大喜びする。しかし、布美枝(松下奈緒)から、茂(向井理)が反対している様子を聞くと心配になった。さらに、藍子が遠方に赴任し家を出る可能性があると聞いて、困惑するのだった。

 夜、源兵衛は茂の仕事場を訪れた。源兵衛は家父長権の重要さを茂に確認する。そして、藍子の将来も茂が導いてやらねばならないと念押しした。
 源兵衛は、藍子が教師になることには大賛成だが、親の目の届かない赴任地で勝手に結婚相手を見つけるのは容認できないと言う。そこで、赴任前に見合いをして婚約者だけは決めておくのが良いという。村井家と近いところに住む、次男か三男を相手とし、結婚後は自家に取り込むという展望まで入れ知恵した。
 茂はすぐにその意見に従うことを決めてしまった。

 翌日、茂は早速にも兄嫁(愛華みれ)を呼び出し、彼女の顔の広さを見込んで、見合いの世話をしてくれるよう頼んだ。はじめて話を聞いた布美枝は慌てて止めようとする。しかし、茂と兄嫁はすっかりその気になっており、布美枝も渋々ながら巻き込まれてしまった。もちろん、藍子には秘密裏に進められた。

 ところが2日後、あっさりと藍子の知るところとなった。まさか本人が知らないとは思わなかった茂の兄(大倉孝二)が、うっかりと秘密を漏らしてしまったのだ。
 藍子は、布美枝や茂に激しく抗議し、家族の雰囲気は最悪になってしまった。

 そのまま夕食になり、源兵衛と喜子(荒井萌)が場を明るくしようと試みるがうまくいかない。
 ついに、藍子はみんなの前で、勝手に見合いを進められていたことへの不快感を顕にした。それを聞いた源兵衛は、茂に計画を持ちかけたのは自分であると白状した。藍子は、源兵衛に対しても敵意を剥き出すこととなった。

 ちょうどそこへ、三男・光男(永岡佑)のところへ身を寄せていた絹代(竹下景子)が帰ってきた。

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NHK『ゲゲゲの女房』第146回

 本日のゲゲ絵: Togetterの数々を見て、スゴイなぁ、エライなぁ、と心から感激した当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第146回めの放送を見ましたよ。

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「独立宣言」

 戌井(梶原善)の出版社から漫画文庫がすでに40冊出た。もちろん、他の会社からの出版点数も増えている。茂(向井理)の仕事は順調だ。一方で、プロダクションとして著作権の管理を強化していかねばならないと思うのだった。

 茂の兄(大倉孝二)の家に身を寄せていた絹代(竹下景子)が予定より早く帰って来た。一家とそりが合わなかったのだという。子供たちが大きな音で音楽を聞いているのを近所迷惑だと言っていきなり電源を抜いたり、態度の悪い飲食店店員に対して大騒ぎしたりしたという。絹代の怒りはスジが通っているものの、兄一家では持て余してしまったのだ。
 義姉(愛華みれ)は、絹代と20年近くも一緒に暮らしている布美枝(松下奈緒)は立派だと褒めた。家のことはうまくいって当たり前で、褒められることのほとんどない布美枝は嬉しくなった。最近は、茂と藍子(青谷優衣)の対立で頭を痛めていることもあり、ますます嬉しいことだった。

 絹代は、老いてますます盛んだ。国内旅行はもう飽きたので、ヨーロッパに行きたいと言い出した。無理難題に頭を抱える息子たちだったが、父・修平(風間杜夫)にはろくなことをしてやれなかったので、その分も加えて絹代を孝行してやろうと話し合うのだった。
 その矢先、絹代は突然、三男・光男(永岡佑)の家に行くと言い出して、みんなは呆れてしまうも、従うしかなかった。

 その頃、藍子は街の喫茶店で幼なじみの智美(水崎綾女)に進路のことを相談していた。智美によれば、学校嫌いだった藍子が教師になることが意外だという。藍子は成績が悪かったし、茂のことで同級生からからかわれていたからだ。
 藍子は、自分がそういう境遇だったからこそ、学校に馴染めない子供の立場に立てる教師になれるのだと、自分の目論見を話す。それに、家を出て教師になりたい理由は、水木しげるの娘だと言われない生活をしたいのだということを打ち明ける。

 なんと、その喫茶店には浦木(杉浦太陽)がいて、ふたりの話をすっかり聞いていた。
 浦木によれば、茂は昔からガキ大将気質であったという。今でも自分がガキ大将で、家族やアシスタントたちを子分だとみなしているフシがある。自分がみんなを従わせて率いることが、みんなの幸せであると信じているのだと説明した。周りは押し付けがましいと思うが、本人はそのことが分かっていないのだ、と。
 それまで浦木のことを胡散臭い男だと思っていた藍子だが、今日の話はもっともで、心から納得出来るものだと思った。

 浦木が修平の弔問に行くというので、藍子と一緒に家へ向かった。
 その途中、布美枝の両親

家に向かう途中、布美枝の両親(大杉漣古手川祐子)に出くわした。母・ミヤコはリウマチで膝が痛み、うずくまっていた。初対面にも関わらず、浦木は源兵衛に命じられて、彼女を家まで背負って行くことになった。自分勝手な源兵衛の態度に、浦木は辟易しながらも、逆らうことはできなかった。

 布美枝は、予定よりも早い両親の到着に驚く。源兵衛は一刻も早く修平を弔いたくて、居ても立ってもいられなくなり、急遽予定を早めたという。
 突然の来訪に驚く布美枝であったが、どこか嬉しそうでもあった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第145回

 喜子役の荒井萌駿台予備校の今年のキャンペーンガールだと知って、劇中の喜子も無事に高校卒業後の進路が決まればいいのにと思った当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第145回めの放送を見ましたよ。

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「独立宣言」

 修平(風間杜夫)が死んでから一月が経った。直後はしょんぼりしていた絹代(竹下景子)だが、最近は元気を取り戻し、長男夫婦の所へ身を寄せ彼らを振り回しているようだ。
 布美枝(松下奈緒)の両親からハガキが届いた。弔問のために調布へ出てくるつもりだという。布美枝の母(古手川祐子)は古風な女性で、生涯で安来を離れたことがほとんど無い。そんな彼女が旅行に出て、会いに来てくれるということで、布美枝も嬉しくなった。

 藍子(青谷優衣)の元へ教員採用の合格通知が届いた。
 有頂天で両親に報告する藍子であったが、茂(向井理)は目の前で心底がっかりと残念がるのだった。茂は、藍子を水木プロの職員にしたいと考えており、藍子が教員になることには猛反対なのだ。どうせ合格するはずがないとタカをくくっていたのだが、アテがはずれてしまった。
 茂の気持ちがわかる布美枝も、思わず藍子の合格に困ったような顔をした。それが決め手となって、藍子は完全にいじけてしまった。後から帰宅した喜子(荒井萌)も意外だという声をあげた。家族の誰からも祝福してもらえず、藍子の怒りには拍車がかかった。

 茂は、藍子を水木プロの跡取りにしたいのだ。現在のマネージャーの光男(永岡佑)は茂と2つしか年が変わらない。若い人材として藍子を活用したいと考えていた。
 表向きはそういうことになっていたが、布美枝には茂の本音も分かっていた。茂は娘が離れていくのを寂しがっているのだ。いつまでも娘を手元に置いておきたいという男親の心境もあるのだ。

 茂は、藍子に合格辞退させることを思いついた。そのことを布美枝に話しているところを藍子に聞かれてしまった。自分の人生を父に勝手に左右されそうになっていることに、藍子は猛反発した。茂は、常々「好きなことをして生きるのが一番」と言っているのに、どうして藍子がそうすることを許してくれないのだと、くってかかるのだった。

 布美枝は、藍子が一人になったところを見計らい、取り成しに行った。茂の本心は藍子と離れたくないという事だと教え、時間をかけてゆっくりと平和に話し合うよう勧める。
 しかし、藍子は聞く耳を持たない。昔から茂に夢を潰されてばかりだという。漫画家になりたいと言えば、地味な点描ばかりイジメのようにやらされた。アニメーターになりたいと言えば、アニメ会社が倒産した話を聞かされた。父に進路の相談はしたくないという。

 それに、自分は父の元を離れたいのだと訴える。地元にいては、自分は常に「水木しげるの娘」と見られる。周りから特別視されるような生活は送りたくないのだという。「村井藍子」という独立した個人として生きてみたいのだという。それが、家を離れて教師として自立したい理由なのだ。

 布美枝は、茂の気持ちも藍子の気持ちもよくわかった。それだけに、ますますどうしていいかわからなくなってしまった。

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『微視的(ちまちま)お宝鑑定団』を読んだ

 僕の大マイブームは東海林さだおだ。

 僕はメディアマーカーというサイトで読書記録を付けている。
 そのサイトで、自分がどれだけ東海林さだおを読んでいるか調べてみたところ、今日までに24冊だった(2010年9月11日現在)。
 本格的に読み始めたのが昨年の10月なので、平均すれば月に2冊ずつのペースだ(記録を見ると2008年になぜか1冊読んでいるが、これは無視する)。
 これだけ読んでいるのにまだ飽きることはないし、まだ読んでない本もある。基本的に彼のエッセイしか読んでいない。しかし、漫画(たとえば、毎日新聞の『アサッテ君』など)まで含めて全部読もうと思ったら、その営みがいつ終わるのかよくわからない。

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NHK『ゲゲゲの女房』第144回

 おかげさまで食あたりの件は、お粥をたっぷりと食べたり、コーラを少し飲んだり、散髪に行ったりする程度には回復してきた当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第144回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 少し具合の良い修平(風間杜夫)は、布美枝(松下奈緒)と話をしている。
 修平のおじは、絵かきをしていたが30歳くらいのころパリで夭折した。奇妙なことに、彼が亡くなった日に茂(向井理)が生まれた。修平は、茂こそおじの生まれ変わりではないかと考えている。絵の才能を引き継いだ証拠に、今は立派な漫画家になっていると言うのだった。

 布美枝が茶の用意をしている間に、修平は再び寝入ってしまった。

 修平は夢を見ていた。広い映画館の中に、自分ひとりだけが座っている。「第三丸の爆発」という題の無声映画が始まったのだが、活動弁士は若い頃の修平自身であった。映画の主人公も修平で、前半は自分自身の半生記であった。東京の大学に通ったのに映画や演劇に熱中したこと、境港に映画館を作ったこと、いつ書き上がるともしれないシナリオを書き続けている姿などが映し出された。いよいよ「第三丸の爆発」の本編が始まろうかというとき、”The end” という字幕と共に映画は終わってしまった。
 修平があっけに取られていると、場内が騒がしくなった。さっきまで無人だったはずの映画館は、いつの間にか満席になっており、割れんばかりの拍手が送られていた。見渡すと、修平の両親、パリで亡くなったおじ、旧知の活動弁士・一学(鈴木綜馬)など、古くに死に別れた人々ばかりがそこにいた。

 「なんだ、もう終わりか。あー、面白かったなぁ」
そうつぶやくと、修平は映画館の座席で眠り込んでしまった。

 数日後、修平は眠ったまま息を引き取った。

 修平の亡骸を前に、絹代(松下奈緒)が最初にしたことは隠していた香水の瓶を持ってくることだった。修平はこの香りが好きだったと言いながら、絹代は遺体にたっぷりと香水を振りかけた。家族はその行動の理由がわからなかった。しかし、その香水は、修平が川西一学の孫娘(入山法子)と出かける時にも使っていたもので、真相を知らなかった絹代が嫉妬して隠してしまっていたものだった。好きなだけ使わせてやれば良かったと、謝りながら何度も何度も香水を振りかけた。

 初七日の法要も終わった頃、絹代は茂に修平の形見を見せた。修平がシナリオ執筆に使用していた万年筆を茂に持っているよう命じた。その万年筆は、パリで亡くなった絵描きのおじからもらったものだという。修平はそのペンで傑作シナリをを書くと息巻いており、絹代も期待するところがあったのに、結局できなかったと寂しそうに言った。
 修平は茂がおじの生まれ変わりだと言っていたが、絹代は口では否定していた。しかし、絹代もそれはあながち間違いでもないと思うところもある。生まれ変わりの茂こそが、おじのペンを持つにふさわしいと考えているのだ。村井家の芸術の血筋を、おじ、修平を経て茂に伝えていくことこそ、修平の願いであると言うのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第143回

 どうやら一昨日食べた刺身にあたったのではないかと思われ、ゴジラの放射熱線のようにザ・プレミアムカルピス2本分を豪快に吐き戻したりして、各方面にはご迷惑やご心配をおかけしている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第143回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 修平(風間杜夫)の体調は悪く、床に伏せてばかりいる。それでも、少しでも調子の良い日は映画シナリオの続きを書いたりしている。

 この日、茂(向井理)と布美枝(松下奈緒)は仲人として、アシスタント相沢(中林大樹)の結婚式に出かけていた。藍子(青谷優衣)は教員採用試験で留守。絹代(竹下景子)は買い物に出かけていた。
 家に一人残った喜子(荒井萌)が修平のそばについていた。

 喜子は高校卒業後の進路について、修平に相談してみた。祖父・修平は文章を書くのが得意で、父・茂は絵を描く才能に恵まれている。しかし、自分はそのどちらも苦手であり、しいて親の血を引き継いでいる点を挙げれば、朝寝坊だけであると自嘲する。
 修平は、人の一生はどんなにうまくいったとしてもたかが知れており、まるで流れていく雲のようなものだ。だから好きなことをやればいいとアドバイスする。ただし、修平は人生を雲に喩えたことに対して、自分に酔っているに過ぎなかった。そのため、喜子は役に立たない助言だと思っていた。

 結婚式から茂らが帰って来た。下戸の茂であったが、仲人の立場上、客から勧められる酒を断ることができなかった。そのため、完全に酔っ払ってダウンしてしまっていた。布美枝は、義父母にそのことを報告しながら、まるで自分たちの結婚式の時のようだと話した。茂と布美枝の結婚式でも、茂は勧められるがままに酒を飲んで、式場で倒れてしまったのだ。
 布美枝の結婚式では、茂が豪快に放屁した。それを受けて、修平が屁の講釈をした。そんなことを懐かしく話し合っていた。屁から連想して、修平は「人生とは屁である」と言い出した。大きな音を出して飛び出すが、あっという間に消えて無くなるという意だという。人に笑われたりして、取るに足らないつまらないものだが、それでもやはり面白い。それが屁であり、人生であるという。

 昭和59年10月になった。
 最近の修平は、シナリオを書く事もほとんどなく、1日じゅう寝てばかりいる。
 茂が本人から聞いたところによると、修平は自分の遺骨は境港の墓に入れて欲しいと言っているらしい。調布の茂のもとに身を寄せて20年になるが、やはり故郷は懐かしく、死後はそこに戻りたいと思っているのだ。

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NHK『ゲゲゲの女房』第142回

 夜は涼しくなり、窓を開けて寝ていたら体調を悪くした当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第142回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 喫茶店で倒れた修平(風間杜夫)は、居合わせたアシスタントらに付き添われて帰ってきた。修平は血圧を下げる薬を飲み過ぎて貧血を起こしたようだ。医者の往診を受け、彼の体調は落ち着いた。
 問題は、修平と一緒に若い女までが家に来てしまったことだ。

 彼女は、以前に茂(向井理)に会いに来た劇団員の一人、川西志穂(入山法子)だった。彼女は、自分が修平を映画に誘って連れ回したせいで大変なことになったと詫びた。以前、銀座の歌舞伎座に連れて行ってもらったお礼をしたかったのだという。

 実は、修平と志穂には奇妙な縁があったのだ。志穂の祖父・川西一学(鈴木綜馬)は、活動弁士(サイレント映画のセリフや状況説明をする職)だった。修平が運営していた境港キネマで働いたことがあり、修平と親しかった。
 志穂は祖父から修平の話をよく聞いていたという。先日、村井プロダクションを訪問し修平に会った時には気付かなかったが、後で考えてみれば祖父の親友であると思い至ったのだ。それで手紙を書き、実際に会って話を聞くようになったというのだ。

 志穂の祖父・一学はすでに亡くなったが、生前には修平が書いていた映画シナリオの続きをずっと気にしていたという。境港で第三丸という船が爆発したことを題材にしたシナリオだが、爆発事故の前で筆が止まっていたという。志穂もその続きを聞きたくなったというのが、修平に会う動機だった。

 話を聞いていた絹代(竹下景子)も昔のことが懐かしくなってきた。もちろん、一学のこともよく覚えていて、修平とふたりで夜遅くまで映画の話をしていたことなどを志穂に聞かせてやった。映画館が潰れ、戦争のゴタゴタなどもあり、一学と音信不通になってしまったことは、絹代も悔やんでいたのだ。
 修平の浮気疑惑が晴れたことと、旧知の孫に会えたことで、絹代はいっぺんに機嫌が良くなった。

 修平が志穂と出かけていたことを知らなかったはずの絹代が、近頃どうして不機嫌だったのか茂は理由がわからないままだった。一方で布美枝は、絹代が修平が女性と出かけていることに気づいていたのではないか、そのせいでヤキモチを焼いていたのではないかと、女の勘で気付くのだった。
 しかし、茂や布美枝(松下奈緒)は、やましいことがないのに、修平が志穂とのことを隠していた理由がさっぱりわからなかった。

 修平は、隠していた理由を絹代にだけ白状した。志穂と会ったことで、書きかけのシナリオを完成させる気になった。しかし、また挫折してしまうかもしれない。再開し、また途中で投げ出したと知られてしまってはきまりが悪い。だから、みんなには黙っていたのだという。
 一方で、絹代が妬いていたと気づいた修平は、彼女のことをからかう。それを認めたくない絹代は落ち着きをなくし、話題を変えようとキョロキョロする。シナリオ原稿の入った手提げ鞄をベッドの修平に押し付け、今度はしっかり書き上げるようにと発破をかける。そして、完成したものを読むのが楽しみだと付け足した。

 昭和57年7月になった。
 藍子の教員採用一次試験の日である。茂はいまだに藍子(菊池和澄)が教師になることに賛成していない。しかし、何も口出ししないのは、教員採用試験の倍率を考えれば藍子が合格するはずはないと思っているかららしい。
 喜子(松本春姫)によれば、藍子は夜遅くまで勉強していて、相当真剣に取り組んでいるらしい。そんな姉の様子を見て、喜子も自分の進路について、少しだけ真剣に考え始めるのだった。

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