お盆に故郷でクラス会を行うからぜひ帰って来いと電話があったのだが、夏の北海道は飛行機代が高いばかりか、実家に滞在すると朝から晩まで親にかまわれてしまい、落ち着いて朝ドラを見ることも難しく、この連載に穴をあける懸念があり、実際に過去『だんだん』の連載を取りやめたのは同ドラマが面白くなかったことが理由だけれど、実家滞在中で集中してドラマを見れなかったことも少なからず影響していると思われ、その二の舞を避けるというだけ理由で帰省をやめようかなぁ、どうしようかなぁと悩んでいる当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第84回めの放送を見ましたよ。
村井家のふたりに、政志(光石研)は自分の過去を話し始める。腕の良い電気工だった彼は、シベリアに抑留された時も人一倍働いた。ソ連人からの評価も高く重宝がられたのだが、反対に日本人の仲間からは妬まれ、いじめの対象となった。そのせいで、人間不信、無気力になってしまったのだ。
戦争の悲惨さに共感する茂(向井理)ではあるが、自分で自分を不憫に思うことは筋違いであると断言する。戦争で死んでしまった人間に比べれば、どんなに苦しくても、好きなことをやって生きているのが幸せなことである、と。その言葉に、政志は何かを思うのであった。
その時、商店街の靖代(東てる美)がやって来て、美智子(松坂慶子)が行方不明だと伝えた。政志は、心配はするものの、照れ隠しと強がりで、探しに行こうともしない。布美枝は、美智子が店も夫婦もおしまいだと言って泣いていたことを政志に知らせた。
それを聞いた政志は、居ても立ってもいられなくなり、美智子を探しに行くことにした。息子の墓がある深大寺にいると予測し駆けつけてみると、やはりそこで美智子は見つかった。
家に帰ると、政志はついに自分の決意を打ち明けた。千葉の会社に就職し、電気工として出直したい。調布の貸本屋を閉めて、一家で千葉に引っ越そうと言うのだ。
今まで家のことはなんにもしてこなかったのに、勝手なことを言わないで欲しいと反論する美智子。しかし、不満を述べる顔も、どことなく嬉しそうだ。ついに政志の言い分に同意し、転居することが決まった。
夫婦の溝も埋まり、ふたりは明るい夫婦に戻った。
昭和39年10月10日。今日は東京オリンピックの開会式である。人々はテレビやラジオに釘付けである。村井家のラジオは調子が悪く、なかなか放送を聞くことができない。
そこへ、貸本屋の常連・太一(鈴木裕樹)が慌てて飛び込んできた。こみち書房が突然閉店し、トラックで引越し作業をしていると伝えに来た。
美智子は、人々に見送られるのが辛いので、秘密裏に町を去ろうとしていたのだ。そのため、引越しの日程を誰にも話さずにいた。オリンピックの開会式の日ならば、人々の目をそらすことができるだろうと、かねてから計画を立てていたのだ。しかし、それは失敗してしまった。
真っ青な秋晴れの下、美智子らの一家は、意気揚々と新しい生活へ向けて旅立って行った。