散々あちこちで「やらない」と言っていたもんだから、なんだか決まりが悪くて、「これは、ゲゲゲ仕事のボーナス・トラックっつーか、アンコールっつーか、そういうもんですよ」と言い訳から始める当方が、NHK連続テレビ小説『てっぱん』の第1回めの放送を見ましたよ。
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第1週「ばあちゃんが来た!」
2008年夏、広島県尾道市。
高校3年生の村上あかり(瀧本美織)は吹奏楽部に所属し、トランペットを担当している。卒業後の進路は未だ決めかねているが、できれば一生トランペットに携わりたいと思っている。漠然と、吹奏楽部のある大学に進学できれば良いと考えている。
今日は、野球部の地区予選大会の応援団として球場に来ている。しかし、あかりの高校の野球部は弱小チームで、コールド負けまで打者一人となった。チームも応援団も意気消沈してしまった。
そんな中、あかりは一人スタンドの最前列まで飛び出し、みんなを奮い立たせるように応援曲を吹き出した。それにつられて、一同も元気を取り戻した。
あかりのようなやんちゃな子のことを、尾道では「がんぼたれ」と呼ぶ。
結局、試合には負けてしまったが、あかりはみんなで演奏できたことを楽しく思い、応援だけは相手チームに負けていなかったと胸を張った。
その頃、尾道の古道具屋を謎の老婆(富司純子)が訪れていた。彼女は楽器ケースに付けられたテントウムシのぬいぐるみと中身を確認し、自分の娘が使っていたトランペットであると確信した。すぐにそれを買い求めた。
ケースの中には、1枚の写真が一緒に収められていた。
あかりの自宅は瀬戸内海に浮かぶ小島にあり、鉄工業を営んでいる。尾道は造船業が盛んであり、その下請けで部品の作製を行っている。
渡船で帰宅するために港に向かうと、堤防に見知らぬ老婆(富司純子)が立っているのが見えた。彼女はトランペットを手に持ち不穏な動作をしていたため、あかりの目を引いたのだ。あかりが見ている前で、老婆はトランペットを海に投げ捨てた。
あかりは海に飛び込んでそのトランペットを拾い上げた。なぜ海に捨てるのかと尋ねるあかりに対して、老婆は明確な理由も述べず、捨てたのだと言いはる。欲しければあかりにくれてやるとまで言った。
そのトランペットは、あかりの目から見て高価な物だった。自分が普段使っている物より立派なトランペットであると言った。
その一言を聞き、あかりがトランペット吹きだと知った老婆は、態度を急変させた。ラッパを吹いているようではロクな一生を送ることができないと言い捨てて立ち去るのだった。
老婆はトランペットを投げ捨てる前に、ケースに入っていた写真だけは手元に残しておいた。彼女はその写真をひとりで見て、何かの決意を固めたようだ。
びしょ濡れで帰宅したあかりを両親(安田成美、遠藤憲一)は工場で出迎えた。あかりの「がんぼたれ」ぶりに、両親は驚くやら呆れるやらであった。
母・真知子は、あかりが見慣れないケースを持っていることに目を留めた。そして、そこに付いているテントウムシのぬいぐるみに思うところがあったが、その場では何も言わずに見送った。
その日の村上家の夕食はお好み焼きだった。父・錠が船の廃材をリサイクルして作った鉄板を庭に備え付け、協力してお好み焼きを作るのが一家の何よりの楽しみだった。
あかりにはふたりの兄がおり、彼らに特に可愛がられて育ったせいか、男勝りの「がんぼたれ」になってしまった。長男の欽也(遠藤要)は地元の信用金庫で堅実に働いている。一方の次男・鉄平は高校を留年し、今はあかりと同じ高校3年生である。
楽しく団らんをしていると、家の呼び鈴がなった。
あかりが出てみると、そこには昼間出会った老婆が立っていた。
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