本厄もあと半月で終わりだと気付いて、ほのかに夢と希望の湧いてきた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第70回めの放送を見ましたよ。
ある夜、あさ(波瑠)は娘・千代をあやすため近所を散歩していた。すると、新次郎(玉木宏)とサトシ(長塚圭史)が連れ立って歩いているのを見つけた。
こっそり様子をうかがうはずだったが、あさはくしゃみをしてしまい、ふたりに見つかった。それで、あさも合流してサトシから話を聞いた。
サトシこと松造の母は、彼とふたりで町から逃げ出した直後に亡くなったという。サトシはその後やっとのことで失踪した父を見つけたが、ずっと貧しい暮らしをしていたという。
サトシは、炭鉱に爆薬を仕掛けたのは自分であると認めた。
動機は、加野屋が憎かったことにあると白状した。金の亡者である加野屋が、金貸しの片手間で炭鉱にまで手を出したことが気に入らなかった。事故が起きれば手を引くと思ったのだ。あさが常々語っている「石炭が日本を変える」という決まり文句も空々しく聞こえていたという。
雁助(山内圭哉)が事件のことを警察に通報したため、サトシは鉱山から逃げざるを得なかった。おそらく日本中に手配され、今後はもうどこの鉱山でも働くことができないだろう。そのため、加野屋に放火するつもりで大阪に来たのだという。自暴自棄になり、加野屋もろとも破滅しようと企んだのだ。
しかし、今はその気も失せたという。大阪に来てみれば、正吉(近藤正臣)の先が短いことがわかった。引退したとはいえ正吉が今でも加野屋の大黒柱である。正吉が死ねば、加野屋は放っておいても滅亡すると思ったからだ。
新次郎は、サトシの今後を深く心配した。それと同時に、サトシがひねくれてしまったのは自分のせいだと後悔した。サトシの家が潰れそうになった時、自分が何も手を差し伸べられなかったのが原因だと思ったのだ。
新次郎は、今こそサトシのために手を尽くす時だと考えた。仕事の世話や住居を手配してやろうと申し出た。そして、自分の財布を取り出して、当座の金を渡そうとした。
そんな新次郎の様子に、サトシは気分を害した。
あさも、新次郎の対応は誤りであるとして、止めた。
それまで黙っていたあさが、一気に話し始めた。
あさは、サトシが加野屋を憎み、復讐を企てるのも無理はないことだと認めた。
しかし、炭鉱を道連れにすることは大きな誤りだと指摘した。爆薬を仕掛けて落盤させるなど、一歩間違えば大勢の死人が出てもおかしくはなかった。それに、長期間の休業になって一番困るのは鉱夫たちだ。たとえ加野屋の資産を全てつぎ込んだとしても、鉱夫たちの今後の生活の安定は補償できない。
サトシは、みなから一目置かれる立派な鉱夫であり、組頭であった。そんなサトシが、他の鉱夫たちの生活を壊し、申し訳なくは思わないのかと問い詰めた。
あさは、今こそ厳しく接する時だと考えていた。炭鉱や鉱夫たち、そして家を守るためには偽善者でいるわけにはいかないと決意していたのだ。
サトシは、優しくしようとする新次郎ではなく、厳しい態度のあさの方に共感した。
サトシは加野屋から暖簾分けを受けるときに、自分の父が正吉から言われたという言葉を思い出した。正吉によれば、なにがあっても温情で金の貸し借りはできないと言ったのだという。そのせいで自分の家は潰れてしまったが、その冷酷さは家を守るために必要なことだと理解もできると話した。
故に、自分に情けをかけようとしている新次郎ではなく、冷酷なあさの言うことの方が理解できるという。
サトシは、あさの言うとおりだと思い、深く頭を下げて謝罪した。
サトシは、最後の願いだと頼みこんで、正吉と面会した。
正吉は、サトシの父を助けられなかったことを謝った。当時の自分はしきたりを守ることに固執して、全く手を差し伸べなかった。手を尽くせば、何か助ける方法があったかもしれないが、力不足の自分にはどうすることもできなかったと後悔した。サトシに深く頭を下げた。
正吉は、サトシの父の思い出を話して聞かせた。
当時の大福帳を見せ、サトシの父は字が綺麗で几帳面で、頼りがいのある人物だったと話した。そして、彼の好物だったというまんじゅうを振る舞った。
サトシは泣きながらまんじゅうをかじった。
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