フジ『北の国から』第14回

最近、伊丹十三のエッセイ集である『ヨーロッパ退屈日記』やら『女たちよ!』やらを読んでいるわけだが、クールでダンディでちょっとガンコなんだけでユーモアのある著者の様子が本作の吉野によく重なるなぁと思う当方が、BSフジ『北の国から』の第14回を見ましたよ。

* * *

純(吉岡秀隆)と雪子(竹下景子)が東京の令子(いしだあゆみ)を見舞って4日目。ふたりが病院に行くと、令子は薬で眠ったままだった。雪子は純を残して、病室を後にした。

雪子は吉野(伊丹十三)とふたりだけで会いに行ったのだ。
雪子は、令子の病状が良くならないのは入院している病院に問題があると考えていた。その病院は吉野の縁故であり、令子が彼に気兼ねして転院したがらないことも知っていた。それで、まずは吉野を説得する必要があると考えたからだ。
吉野は院長と直接話してきた結果を伝えた。令子の病状については可能性を全て考慮して検査をしている。それでも病原が見つからないので、神経や精神の問題であると考えるのが妥当だという。病院側としても、令子の転院を妨害しているわけではないし、雪子と令子がどうしても希望するなら送り出すつもりではある。そういったことを、吉野は嫌味混じりに説明した。
吉野は話題を変え、純に言及した。翌日、純は北海道に帰ることになっている。純と別れることで、令子の病状が悪化するのではないかと詰め寄った。令子のためにも純を東京に引き止めておくようにと責めるのだった。しかし、雪子はそれには何も答えなかった。

純は病室でじっと令子の寝顔を見ていた。
令子が目を覚ました。純の姿を見つけると、今見ていた夢の話を始めた。夢の中にも純がいて、彼のお気に入りの5段変速ギア付きの自転車に乗っていたのだという。昔純がやっていたように、曲乗りばかりするので令子はハラハラと見ているという夢だったという。東京時代に純が乗っていたその自転車は、今でもアパートの物置にしまってあるという。そこまで喋ると、令子は再び眠りに落ちた。

令子が眠ってしまったので、純はアパートに戻った。そして、令子が話していた5段変速自転車を物置から引っ張りだした。半年放置されていただけで、自転車はすっかり錆びてみすぼらしくなっていた。しかし純は紙やすりで錆を落とし、油をさして、愛おしそうに整備した。アパートの前で作業を行なっていると、同級生だったタカシが迎えに来たので、ふたりで自転車に乗って出かけた。

以前のタカシは、純と同じように変速ギア付きのスポーツタイプの自転車に乗っていたはずなのに、今日はもっとモダンな自転車に乗っていた。聞けば、お年玉を貯めて新調したのだという。もう変速ギア付きの自転車は流行遅れだから乗らないのだという。タカシの家に行くと、純の知らないプラモデルがたくさんあった。例えば、スペースシャトルというものを見せられたが、純にはピンとこなかった。
それからタカシは、高校生の兄が隠し持っているというヌード写真集を見せた。純は初めて見る女性のヌード写真に驚き、罪悪感を抱いた。タカシは餞別だと言って強引に純に引き渡した。純は返そうとするが、タカシは力づくで押し付けてくるのだった。しばらく押し問答が続いたが、その騒ぎが誰かに見つかっては困ると思い、純は渋々もらって帰ることにした。
タカシの家を出る時、彼の古い自転車が打ち捨てられているのが見えた。タカシによればまだ使えるが、流行遅れだから乗らないのだという。
また、渡されたヌード写真集はカバンの底板の下に隠した。帰りの飛行機の手荷物検査場で見つかって叱られるのではないかと思うと、純は心配でならなかった。

アパートでヌード写真集をカバンに隠し終えると、純は令子の病室に戻った。令子は、翌日に純が帰ることをしきりに残念がっている。病気が治ったら北海道に遊びに行きたいなどと言うのだ。
それを聞いていた純は、令子が以前に麓郷へ来たこと(第9回)を指摘した。令子は隠していたつもりだろうが、純も螢も気づいていたと告げた。パジャマに令子の匂いがついていることに螢が気づいたのだと説明した。令子は涙ぐんだ。
純は、令子は純が東京に残る事を望んでいるか質問した。令子は肯定も否定もせず、純の方こそ東京に残る気があるのかと質問した。ところが、純がその答えを言う前に、雪子が病室に戻ってきて会話は打ち切りとなった。

病院を辞した純と雪子は、喫茶店で夕食を摂った。
純は、明日の飛行機には乗らないことを雪子に表明した。五郎(田中邦衛)は怒るだろうが、病気の令子を残しては行けないと言うのだ。また、令子に情が移り、五郎との間で板挟みになるくらいだったら、東京になど来るべきではなかったと後悔の念を表明した。
その時、雪子は冷淡だった。五郎は怒らないから、純の好きなようにすればいいと冷たく告げた。むしろ、五郎はそうなることを予期していたと言う。雪子の態度に怯えた純は、雪子に許しを請うた。けれども雪子は「私には関係ないわ」とさらに冷たく突き放すのみだった。

その晩、純は五郎へ手紙を書いた。まずは、その日起きた当たり障りの無い内容を綴った。友達のタカシとキャッチボールをしたり、自転車を乗り回したりしたことの報告だ。

手紙を書きながら、純は一家で東京に住んでいた時の事を思い出した。
当時、純の友達の間で変速ギア付きの自転車が流行っていた。ところが、純は自転車を持っておらず疎外感を抱いていた。令子に相談し、買ってもらう約束を取り付けた。ところが、その話を聞いていた五郎が、ゴミ捨て場からみすぼらしい自転車を拾ってきた。自分で修理してペンキを塗り直し、それを純に与えた。純は大いに不満だったが、自転車が無いよりはマシだと思い、それに乗って仲間の輪に入った。
ところがある日、警察官が家に訪ねてきた。自転車の元の所有者から訴えがあったので、回収するという。事を穏便に済ませたい令子は即座に謝って差し出した。しかし、五郎は納得がいかなかった。1ヶ月以上もゴミ捨て場に放置されており、そのままでは到底使用できない自転車だったのに、今頃他人が所有権を主張するのはおかしいと言って警官に食ってかかった。さらに、流行遅れだからといって、まだ使えるものをすぐに捨ててしまう風潮も気に入らないなどと自説を打った。警官は怒りだすが、令子が必死に謝ってその場はなんとか収まった。そして、それから何日かして、令子が真新しい5段変速ギア付き自転車を買ってくれた。

その時の純は、五郎は物事の分からない田舎者で、話が分かるのは都会的な令子の方だと思った。
しかし、不思議なことに、今では五郎の気持ちがわからないでもなかった。それというのも、麓郷での半年間の生活を経験したからだ。その生活は、全ての必需品を自分たちで作り出し、様々な工夫を凝らして営んでいるものだ。水道や電気まで自給自足している。純自身はそんな生活に不満が多いし、ほとんど何も手伝いはしなかった。それでも、五郎の行き方のわずか一部でも理解し始めていることを自覚した。

純は、五郎に宛てて書いていた手紙を反故にした。そして、当初の予定通り北海道へ戻ることを決めた。
純は自分で自分の気持ちがわからなかった。五郎との約束はそれほど重要なわけではないし、東京での暮らしが性に合っているのは間違いないし、病気の母のそばにもいたい。しかし、なぜだか無性に麓郷へ帰らなくてはならない気がした。
令子に会えば決意が揺らぐ。それが分かっていたので、純は翌日母には会わず、直接空港へ向かった。令子に、吉野のことが嫌いではないと伝えられなかったことだけが心残りだった。

麓郷に帰って1週間ほどで、純は元の生活に戻った。令子のこともほぼ気にならなくなった。純の留守中、螢と五郎はUFOを見たという。純はあまりにバカバカしくて、まじめに取り合わなかった。

純は、東京から持ち帰ったヌード写真集を正吉(中澤佳仁)とふたりで閲覧した。ふたりは、女性の裸を見ると陰茎が勃起することについて話し合った。その現象については気づいていたが、どうしてそうなるのかふたりにはわからなかった。正吉が杵次(大友柳太朗)に質問したところ、「フキノトウが春に大きくなるのと同じ事だ」という返事があったという。純と正吉には意味がさっぱりわからなかった。
さらに正吉は、自分の経験談を話し始めた。最近結婚した夫婦の家のそばを通りがかった時、中から新婦の笑い声と泣き声の混じったような声が聞こえてきたのだという。それを聞いた時、正吉の陰茎が勃起したのだという。純にはそれがどういうことか想像できなかった。そこで、その日の夜、ふたりで声を聞きに行くことにした。

夜になって、純は星の観察に行くと嘘をついて家を出ようとした。しかし、螢も星を見たいといって付いてきてしまった。純と正吉は走って振り切ろうとするが、螢は足が早くて逃げきれなかった。走り疲れた3人は、野原の上に倒れ込んだ。
その時、夜空に大きな光が見えた。それは色が変わったり、ジグザグに動いたりしていた。3人はUFOに違いないと思い、追いかけた。しばらく追いかけると、森の上に停止して、まるで誰かと会話をするように色が変わり、柔らかく光った。呆然と眺めていると、UFOは突如舞い上がって消えてしまった。

あっけにとられていると、UFOがいたあたりから誰かが歩いてくるのが見えた。3人は慌てて物陰に隠れ、様子を伺った。すると、担任の凉子先生(原田美枝子)が朗らかに「365歩のマーチ」の鼻歌を口ずさみながら歩き去った。涼子は宇宙人と親しい間柄なのかもしれないし、そもそも宇宙人が涼子に化けているのかもしれないと思われた。
自分たちが秘密を見てしまったことを宇宙人に知れると危険が及ぶように思われた。だから、今夜のことは3人の秘密にした。

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フジ『北の国から』第13回

留守にしていたせいで放送に4日ほど遅れをとってしまい本作についてはもう追いつく見込みはなくてしょんぼりしているし、『おしん』の方に関してはもう全く余裕が無いので諦めようかとまで思いつめた当方が、BSフジ『北の国から』の第13回を見ましたよ。

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1981年(昭和56年)5月。
螢(中嶋朋子)は山でフキノトウを採り、野鳥やキツネ、満開の桜の様子などを見て春の到来を感じた。

一方、その日の朝、純(吉岡秀隆)は雪子(竹下景子)と共に東京へ旅だった。令子(いしだあゆみ)が病気で入院したというので、見舞いに行くことにしたのだ。螢は学校があると言って来なかった。純は金曜日に東京に来て、翌火曜日に帰る予定であった。

令子は、純が突然現れたことに驚きつつも、大いに喜んだ。純の滞在が短いと聞きつつも、相好を崩した。

一方の雪子は、令子の入院している病院の雰囲気を訝しんだ。あまり大きくはない病院だからだ。その上、令子は胆石で入院したはずなのに、レントゲン検査してみると何も写らなかったのだという。令子は、神経性のもので心配はないと笑って答えるのだった。

美容室の従業員が、入院中の令子の身の回りの世話をしていた。彼女は雪子にこっそりと事情を話した。
令子の病気の原因は分からないが、ひどい痛みを伴っているという。苦しむとモルヒネを投与するという対処療法しか行われておらず、入院してからもひどくなる一方なのだという。もっと大きな病院で精密検査を受けた方が良いと勧める人もいるが、令子は聞く耳を持たないのだ。それというのも、令子の恋人・吉野(伊丹十三)が紹介した所だから。吉野の上司の親戚の病院であり、彼の立場が悪くなるのを懸念して転院しないらしいのだ。
雪子は、令子に転院を勧めた。しかし、やはり令子は何かと別の理由を述べて、ごまかすのだった。すると、薬の切れた令子は痛みに苦しみ始めた。すぐに医師が呼ばれ、注射を打たれると眠ってしまった。純は、そんな母の様子にショックを受けた。

その夜、雪子は東京の友人を訪ねた。彼女は元看護師で、夫は勤務医である。彼女に令子の状況を相談したところ、やはり転院を勧められた。砂のように小さい胆石は発見が難しいので、大きな病院できちんと検査した方が良いという意見だった。彼女の働いていた病院でも、似たようなケースがあり、その患者は痛みに苦しみながら死んでいったのだという。彼女の夫は、令子の受け入れ体制を整えてくれた。
令子の件が落着すると、話は雪子の恋人の方へ向かった。雪子が北海道で暮らし始めた理由は、現地に新しい恋人ができたせいであろうとカマをかけられた。雪子は何も答えなかったが、脳裏は草太(岩城滉一)のことでいっぱいになった。

純と雪子は、令子のアパートに滞在することとなった。そのアパートは、黒板家が以前に住んでいた場所から近かった。
雪子が知人を尋ねて留守の間、純は東京時代の同級生・恵子(永浜三千子)に会いに行った。彼女は英語塾に通っているというので、それが終わるまで教室を覗くことにした。ところが純は、恵子の姿が見れた喜びよりも、自分が取り残されてしまったショックに苦しめられた。以前、純よりも出来の悪かった友達が、今では見違えるようにスラスラと英語で受け答えしていた。たった半年の間で、自分がひどく遅れてしまったと思った。辛くなり、その日は恵子に会わずに帰ってしまった。

翌日の土曜日の朝、純は登校途中の恵子を待ちぶせた。恵子は純の姿を見るなり、再会を喜んでくれた。それが純には嬉しかった。放課後、恵子の他、懐かしい友だちが数人集まった。
けれども、純は彼らの話の輪に入れなかった。彼らは最新のテレビや音楽の話で盛り上がっているのだが、それらの情報から隔離されている純には何もわからないのだ。隅で一人でヘッドフォンをつけて音楽を聞かせてもらっていた。不意に、北海道の野生動物の話を聞かれた。純は、ここぞとばかりに、ホラを吹いた。リスやキツネはもちろん、クマを間近で見ることも日常茶飯事だなどと言ってしまったのだ。東京の友達たちは感心して聞いてくれたが、純は終始傷ついていた。自分がすでに東京の人間ではなくなってしまっていることが悲しかったのだ。

その後、純は令子の病室に向かった。そこでは雪子と令子が言い争いをしていた。勝手に転院の準備を進めた雪子に対して、令子が腹を立てているのだ。令子は決して承諾しなかったし、吉野に話したら許さないと声を荒げた。
その時、ちょうど吉野が見舞いに現れた。令子は、純に対しては吉野のことを高校時代の友人だと紹介するに止めた。吉野は気さくに馴れ馴れしく、純に話しかけた。純は、吉野のことが気に食わなかった。特に、自分の母のことを名前で呼び捨てにしていることが特に気に入らなかった。

翌日曜日。
病院に行こうとしていたら、アパートへ電話がかかって来た。吉野が純を映画に連れて行ってくれるという。純は吉野と一緒に出かけることなどごめんだと思ったが、子どもなりに気を使って大げさに喜んでみせた。純は渋々出かけていった。映画は『宇宙戦艦ヤマト』だった。昨日、東京の友達たちが見たいと言っていた映画だ。彼らより先に見れることで鼻が高い思いがした。ところが、アニメ映画に退屈した吉野は眠りに落ちてしまい、大きないびきをかきはじめた。いくら揺すっても起きないし、周囲の観客からは白い目で見られるので、純はいたたまれなくなり映画の途中で席を立ってしまった。

その後は、遊園地に連れて行ってもらった。吉野は、ジェットコースターなどに付き合って乗ってくれた。
遊園地には、パンチングマシンがあった。拳で殴りつけると、その威力に応じた評価がなされる遊具だ。純が挑戦するも、ほとんど最低の評価しか得られなかった。不良たちがやって来て、純をバカにして見せつけるように殴りつけた。すると、かなりの好成績が得られた。純は感心した。
その様子を見ていた吉野が、自分も挑戦しようと進み出た。不良たちからは、「おじさんがやっても怪我をするだけだ」などとバカにされるが、吉野は無言で挑んだ。すると、不良たちの成績を越えたのはもちろん、パンチングマシンの最高評価を獲得した。不良たちは目の色を変えて吉野を称えた。

はやし立てる不良たちを尻目に、吉野はほぼ無言で立ち去った。唯一、ボクシング経験があるのかと問われ、「真似だけな」と答えるに留まった。純は、吉野のその一言に惚れた。実力者なのに、クールに謙遜する態度がとてもかっこよく見えたのだ。たとえば、同じくボクシングの練習をしている草太なら、軽薄な表情で聞かれもしないことまでベラベラと話すことだろうと想像された。それとは全く違う吉野の様子が素敵に思えた。

それでも、純は自分が吉野のことを気に入り始めたことを表に出すことははばかられた。
食事をしながら、令子や純自身の今後の事を聞かれたが、素っ気ない喧嘩腰の口調で答えた。自分は数日のうちに北海道に帰るので、あとは吉野にすべて任せると言うのだった。
ところが吉野は引き下がらなかった。男が一人でいることと、女が一人でいることはそもそも意味合いが違う。そうであるにもかかわらず、黒板家では令子だけを一人ぼっちにして、父がふたりの子どもを連れて行ってしまった。それは不公平だと言い、純が東京で令子と共に暮らすべきだと説得した。
純は、母には吉野がいると指摘した。純は、令子と吉野の交際については知らんぷりをするつもりでいたが、つい勢いで口走ってしまった。吉野がもう二度と令子に会わないと約束するなら、自分は母と一緒に暮らすと言い加えた。吉野は、それについてはどうなるかわからないと答えた。わからないことについては約束できないと、理路整然と答えた。
純は、大人相手にすごい話をしていると思った。吉野が令子と結婚する気でいることもわかった。一方で、もう吉野のことは嫌いではなかった。

その後、純は一人で令子の病室に来た。吉野のことを聞かれ、純は楽しかったし、良い人だったと答えた。令子は純のためにガンダムのプラモデル(1/60; 当時2,500円)を用意しており、純は大喜びした。ただ、それと引き換えのように、令子は純が本当に北海道へ帰るつもりかと聞くのだった。純はプラモデルに熱中するふりをして何も答えなかった。

直後、恵子が見舞いに来てくれた。ふたりで外に遊びに出かけた。
恵子も純が北海道に帰ることを残念がった。一人ぼっちになる令子もかわいそうだと付け加えた。恵子と彼女の母は、純が自宅に下宿してもいいと相談していると打ち明けた。父は外国に単身赴任しているし、兄も大阪に下宿している。母子2人きりで寂しいので、純の居候は大歓迎なのだという。なんなら、令子が退院したら一緒に住んでも良いと言うのだ。令子は美容室の仕事で忙しいから、家事の負担が減るのは嬉しいはずだと述べた。

純は北海道に帰ることを迷い始めた。
夜、雪子に正直に相談した。母のことが心配になってきたこと、吉野に父だけが子どもを引き取ることは不公平だと言われたことなどだ。そして、自分は答えを保留しておきたいのだが、一度北海道に戻って五郎(田中邦衛)の管轄下に入ってしまうと、他の選択肢は全て奪われてしまうのではないかと心配しているのだ。もちろん、五郎や螢と話し合う必要はあることも理解しており、純一人ではどうしていいのかわからなくなってしまったのだ。
結局、雪子に思いを打ち明けても、結論は出なかった。

その頃、麓郷では中畑(地井武男)が五郎を訪ねてきていた。中畑は、東京に言った純のことを案じていた。母や東京に未練のある純のことだから、令子に東京に残ってくれと泣きつかれたら帰ってこないだろうと言うのだ。それに対して五郎は、その時は仕方ないと一言寂しそうに答えるだけだった。

道端で花を摘み、学校から機嫌よく帰ってきた螢は、戸外からふたりの話を盗み聞いてしまった。螢は楽しい気分がいっぺんで台無しになってしまった。

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フジ『北の国から』第12回

本日、女性をデート(デート?デートなのか!?)に誘うメールを書くにあたり、別の女性に文面を添削してもらうというただでさえ無様な状況に陥ったわけだが、その文案に一発でOKが出てしまい、本業の論文では不採録ばかりなのに、こういう文章ばかり修正なしで採択されるというとても無様な自分に情けなくなった当方が、BSフジ『北の国から』の第12回を見ましたよ。

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つらら(熊谷美由紀/現・松田美由紀)が家出して2日が経った。しかし、彼女の行方は知れないままだった。純(吉岡秀隆)が五郎(田中邦衛)につららの事を聞くと、五郎はその話をするなと言ったきり、二度とその話題に触れなかった。

螢(中嶋朋子)が餌付けしていたキタキツネがトラバサミの罠にはまったのも2日前だ。そのキツ目もトラバサミをぶら下げたまま姿を消し、二度と表れなかった。
山歩きをしていたクマ(南雲佑介/現・南雲勇助)が、トラバサミの罠をいくつか見つけた。全て解除し、そのうちの一つを持ち帰り五郎や中畑(地井武男)に見せた。クマによれば、罠は雪を使って巧妙に隠されていたという。トラバサミ猟は免許が必要であり、今回仕掛けた人物もかなりの手練だろうと予想された。1月下旬に禁猟になるため、駆け込みで猟をしているらしかった。

1月20日、小学校が再開された。
中畑の娘であるすみえ(塩月徳子)が、螢のキツネが罠にかかったことをみんなに知らせた。それをきっかけに、涼子先生(原田美枝子)は子供たちに野生動物との付き合い方について議論させた。純をはじめ、ほとんどの子どもは動物を狩ることは残酷だと主張した。特に、螢がかわいがっていたキツネならなおさらだという論調だった。

そんな中、正吉(中澤佳仁)だけは堂々と反対意見を述べた。キタキツネは家畜や畑を荒らす悪い動物なのだから、狩られて当然だと言いはった。そもそも螢が餌付けしたことで人里に近寄るようになったのであり、人の生活圏にやって来ていつ悪さをするかわからないし、早く仕留めてよかったなどと主張した。
涼子先生は正吉の話を引き継いだ。キツネは野生動物であり、自力で獲物を飼って生きている。人が餌付けすると、餌の獲り方を忘れてしまい、自然の中で自活できなくなってしまうかもしれない。それは自然の摂理に反すると言うのだった。正吉は得意になったが、他の子供達は納得がいかなかった。議論は平行線のままだった。

放課後、正吉は一人で涼子先生を訪ねた。
正吉は、自分の祖父・杵次(大友柳太朗)がトラバサミを仕掛けていることを知っていた。そのことを打ち明けに来たのだ。杵次は若い頃から冬には必ず動物を狩っているという。正吉は、キツネの毛皮で暖かいチョッキを作ってもらったこともあるという。けれども、まさか螢のキツネが罠にかかるとは思ってもいなかったと、苦しい胸の内を明かした。特に、杵次が集落でも鼻つまみ者であることを知っているだけに、正吉はますます不安になるのだった。
涼子は、正吉に他言しないよう助言した。杵次が長年続けてきた生活を誰にも非難する権利はない。だから、正吉は何も気にすることはないと言って慰めるのだった。
帰宅した正吉は、杵次にもう二度とキツネを取らないように頼んだ。チョッキはいらないので、狩りはしないでくれと言うのだった。

その日の夜。
螢は自責の念にかられていた。正吉の言うように、自分が餌付けしたせいでキツネを不幸な目に合わせたのではないかと後悔していた。寝室でそのことを純に話した。
しかし、純は螢の話をさっぱり聞いていなかった。純は五郎と雪子の関係が気になって仕方がなかった。正吉が言ったように、五郎と雪子が男女の仲になっているというのは、もしかしたら真実かもしれないと疑う気持ちがあるからだ。

そして、五郎と雪子は居間で並んで仕事をしていた。雪子は五郎にポツリポツリと話しかけた。草太(岩城滉一)は多くを語らないが、どうもつららを探しに回っているという。どうも旭川のあたりにいるらしいことがわかったという。それを聞いても、五郎は何も答えなかった。
さらに雪子は、草太の家の牧場を手伝いに行っているが、自分が歓迎されてない気がすると打ち明けた。どうも、自分を雇うことは草太が独断で決めたことで、草太の父・清吉(大滝秀治)らとは相談していないようだと言うのだ。清吉は雪子と口を利こうともしないのだ。五郎は雪子の懸念を否定した。清吉は元来無口な性格なので、気にすることではないと言って慰めた。

翌日の放課後、涼子先生は純と螢を職員室に呼び出した。
涼子は、トラバサミを仕掛けた人物を恨んではならないと諭した。たとえばネズミは倉庫の野菜をかじるし、鹿は畑を荒らして人を困らせる。それと同じように、キツネも害をなすのだ。麓郷に住む人々は決して裕福ではなく、大変な苦労をしながら生きている。害獣を始末したり、その肉や毛皮を利用する人がいるのも仕方ないと説いた。そういう習慣を長く続けてきた人々がいることを理解し、彼らの生き方や思いを理解し、決して憎むなと言い聞かせた。
純は、涼子の言うことはもっともだと思った。しかし一方で、どうしても納得いかない気持ちもあった。

純と螢が家に帰ると、ちょうど自家風力発電装置が完成するところだった。家の中の電灯を光らせることに成功した。一同は大喜びした。その日は雪子の誕生日だった。電気の開通と雪子を祝うパーティーを行うことを計画した。

その頃、草太の牧場で働いていた雪子は、清吉に呼び出された。清吉は、単刀直入に雪子に働いて欲しくないと告げた。
まずは、経営上の問題がある。彼らの牧場は3軒の家庭で共同経営している。ところが、その3軒を養うのも難しいほど経営が苦しい。雪子を雇う余裕などそもそもなかったのだ。
続いて、草太に関する問題がある。雪子の雇用は草太が勝手に決めたことで、清吉には何の相談もなかった。それに、草太はつららと結婚して家を継ぐはずだった。草太が勝手に鞍替えしたこととはいえ、雪子の登場で予定が狂ってしまった。百歩譲って、雪子が牧場の嫁となって家を助ける覚悟なら問題はない。しかし、都会に帰るつもりなら、二度と出入りしないで欲しいと言うのだ。草太が後に引けなくなって、雪子を追って家を出ると困るのだ。
それに関して、清吉の仲間の問題がある。本音を言えば、清吉は自分の代で麓郷の生活は終えてもいいと思っている。4人の息子たちはすでに麓郷を出たし、5人目の息子である草太がそうするのも仕方ないと思っている。けれども、この集落の開墾で苦楽を共にした仲間を裏切ることはできないと考えている。その仲間の一人がというのが、つららの兄である吉本辰巳(塔崎健二)だ。草太はつららと結婚する約束をしていて、両家もそのつもりだった。草太がつららを捨てたことは、全て草太の悪行であり、雪子は巻き込まれただけであり濡れ衣だ。それでも、辰巳への義理として、雪子を置いておくわけには行かないと言うのだ。

雪子は反論もできず、泣きながら家へ帰った。途中で草太と出くわしたが、雪子は口も聞かずに、雪道を歩いて家路についた。

雪子が家に着くと、家は真っ暗だった。落ち込んだ気分のまま家に入ると、突然部屋が明るくなった。中畑の家族やクマらまで集まっていて、みんながバースデー・ソングを歌ってくれた。電気が開通したことも知らなかったし、まさか自分の誕生日を祝ってくれるとも思っていなかった。雪子はみんなの前で涙ぐんだ。それでも、みんなで明るく楽しいパーティーとなった。

薪がなくなったので、五郎と純、螢は外に取りに出た。すると、杵次が立っているのを見つけた。五郎は家の中へ誘うが、杵次は固辞した。杵次は風力発電に成功したことを複雑な思いで見ていた。それから杵次は、五郎に馬を買うことを持ちかけた。五郎は返事を保留した。それに構わず、杵次は一人で静かに話し続けた。今の馬は20年買い続けて、多少情も移っている。けれども、名前をつけてやらなかったと後悔を表明した。
そもそも、このあたりでは馬に名前をつける習慣は無かったという。名前をつけると情が移り、手放すときに辛くなるからだ。それというもの、このあたりの農家はとても貧しい。夏に一生懸命働いても、冬を越すだけの蓄えができない。そこで、冬になると決まって馬を売って金に変えたのだという。そして、春になると農作業用の馬を新たに買う。いちいち名前をつけてかわいがる暇はないのだ。
冬に馬を売り、春に購入するためには、金を準備する必要がある。そのため、冬の間に動物を狩って毛皮を売っていたのだという。杵次にとって、それが当たり前の生活なのだ。この冬は正吉のために毛皮のチョッキを作ってやるつもりだったと語った。そして、キツネがやられたトラバサミは自分が仕掛けたものだと告白した。ただし、正吉は何も知らないことだから、彼を恨まないでくれと頼み込んだ。純と螢は受け入れた。
そこまで話すと、杵次は家へ帰って行った。

それから時が流れ、4月になった。黒板家が麓郷に住み始めてから半年が過ぎた。純と螢はすっかりここでの生活に慣れ親しんだ。雪が溶け始め、一部では土も見えてきた。春がもう目の前だった。純と螢は山で大量にふきのとうの若芽を摘んだ。

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フジ『北の国から』第11回

朝ドラ『カーネーション』で三浦組合長(近藤正臣)が「はずれても、踏みとどまっても、人の道」と言っていたなぁと思い出した当方が、BSフジ『北の国から』の第11回を見ましたよ。

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純(吉岡秀隆)と雪子(竹下景子)の遭難騒ぎを引き起こした吹雪がやっと去った。麓郷に青空が戻った。
螢(中嶋朋子)は真新しい雪の上にキタキツネの足あとを見つけた。純がむしゃくしゃして石を投げつけて以来(第5回)、姿を見せなかったキツネが戻ってきたようだ。螢とともに、純も喜んだ。

五郎(田中邦衛)は杵次(大友柳太朗)を訪ねた。純と雪子は、杵次の馬のおかげで命が救われたのだ。その礼として、日本酒の1升瓶と現金1万円を携えてきた。貧乏な五郎にとっては、それが精一杯だった。ところが杵次は、酒は貰うが現金はいらないと言い出した。額が少ないとケチをつけた。家族の命の代償としては安すぎる、最低でも10万円は持って来いと言うのだった。五郎は食い下がったが、どうしても金を渡すことはできなかった。
困った五郎は、つい軽い気持ちで中畑(地井武男)や クマ(南雲佑介/現・南雲勇助)らに顛末を話してしまった。中畑らは、ケチでずる賢い杵次の言いそうなことだと言って、口々にバカにした。そして、そのことをあちこちで面白おかしく言いふらすようになった。

吹雪で停電の間、草太(岩城滉一)は自宅の牛舎の管理に奔走していた。そのため、雪子らが遭難して九死に一生を得たことを知らなかった。話を聞くやいなや、雪子の家まで会いに来た。風邪気味だという雪子の熱を測るために、草太は自分の額を雪子の額にくっつけた。そのどさくさに紛れて、草太は雪子にキスをした。雪子は子供たちに見られるのを気にして抵抗する素振りを見せたが、まんざらではない様子でもあった。
また、草太は、雪子が自分の牧場で働けるように手配したと告げた。仕事を探していた雪子は、早速翌日から働きに出ることになった。毎朝、草太がわざわざ雪子を迎えに来た。牧場でも、草太は鼻の下を伸ばしながら、雪子につきっきりで仕事を教えた。

それからというもの、純はつらら(熊谷美由紀/現・松田美由紀)に付きまとわられた。つららは純に話があるといって追いかけてくるのだ。純には、草太と雪子の関係がどうなっているか聞かれるのだろうと予想できた。純にも詳しいことはわからないし、面倒なことに巻き込まれたくないので、純は逃げまわってばかりいた。そもそも、二股をかけた草太が悪いのだと腹をたてるのだった。

そんなある日、正吉(中澤佳仁)が見知らぬ男子中学生と共に純を物陰に呼び出した。そして、ふたりで純を小突き回した。正吉の言い分は、祖父の杵次が馬の出動料として10万円を請求し、そのことを五郎と純が言いふらしたために街中で物笑いの種になっているというものだった。純にとっては寝耳に水だったが、正吉は聞く耳を持たなかった。さらにふたりは、五郎と雪子が男女の仲だという噂が流れていると言い、五郎を侮辱した。さらに、純が同級生の中畑すみえ(塩月徳子)と仲良くしていることを引き合いに出し、親子揃ってスケベだと言ってバカにした。純は根も葉もない噂だと否定したが、自分から手を出すことはできず、ふたりの暴力になされるがままだった。

草太の牧場に、友人の川島(小松政夫)が訪ねてきた。話があるから夜に時間を作ってくれというのだ。草太は気乗りしなかったが、しつこく頼まれるので承諾した。その時、川島は牧場で働く雪子を初めて見て、一目惚れしてしまった。

その夜、草太は約束通り居酒屋にやって来た。川島は会うやいなや、雪子は高嶺の花なので草太がものにするのは無理だと告げた。その代わり、つららと添い遂げろと言うのだった。つららは草太と結婚するつもりでこれまで付き合っていたのだし、草太の両親(大滝秀治今井和子)も彼女のことを気に入っている。草太もそのことは理解していたはずだ。それにもかかわらず、つららを捨てて雪子に乗り換えることは人の道を外れることだと川島は説いた。
川島は、つららに泣きながら相談されたという。それで川島もつららの味方になることにしたのだ。近所の喫茶店につららを待たせているから、今すぐに会いに行けと草太に告げた。

草太は指定された喫茶店へ向かった。離れた場所から覗くと、窓際につららの座っているのが見えた。草太はしばらくつららのことを見ていた。そして、喫茶店へは入らず、そのまま帰ってしまった。雪子に会いたくなって黒板家に立ち寄ったが、そこにはすでに川島が来ていた。ふたりは気まずそうに睨み合うのだった。

あくる日、純は草太に会いに来た。そして、ケンカのやり方を教えて欲しいと頼んだ。草太はまじめに取り合わなかったが、正吉が雪子と五郎ができていると吹聴したことがケンカの原因だと知ると、俄然純の味方をする気になった。草太が立会人となって、純と正吉が果し合いをすることになった。純は、草太から教えられた通り正吉の睾丸を握って苦しめ、ケンカに勝った。そして、そもそもが子どものケンカなので、それでふたりは仲直りした。
一方の草太は、雪子を侮辱されたことが未だ許せず、彼女を馬鹿にすると純以上の力で睾丸を握りつぶすといって脅かすのだった。

その晩、草太は父・清吉から説教された。前の晩につららが会いに来たのだという。清吉もつららの味方だった。むしろ、雪子のような都会の女は北海道の農家に嫁に来るわけがないと、初めから決めてかかっていた。今までに、北海道での暮らしに憧れてやって来た若い娘たちはたくさんいたが、いずれも生活の厳しさにへこたれて逃げ帰ってしまったのだ。
一方的に言われ、草太は頭にきた。自分もこの土地を出て行きたいののに、仕方なく残ってやっているのだなどと捨て台詞を吐き、家を飛び出してしまった。

富良野の街で、草太は酒をあおった。そんな草太を見つけた街の若い者は、草太との関係を知った上で雪子のことを侮辱した。曰く、雪子は五郎の先妻の妹だが、五郎と雪子が一線を越えて男女の仲になったから先妻が離縁状を叩きつけたというのだ。ただでさえむしゃくしゃしていた草太は、店内で大立ち回りをした。ボクシングのトレーニングをしている草太がケンカを始めると、誰にも止められなかった。すぐに警察が呼ばれ、草太は交番に連れて行かれた。

交番に着く頃には、草太はすっかり落ち着いて、おとなしくしていた。草太の取り調べにあたった刑事(蟹江敬三)は、高校時代によく張り合った他校の生徒であることがわかった。昔のよしみで、ふたりは世間話を始めた。その時、刑事の元に家出人捜索願の情報が入った。刑事はその書類を草太に見せた。
なんと、つららが失踪したというのだ。家に置き手紙が残されており、金や通帳がなくなっていた。ただし、行き先は一切記されていなかった。

開放され、行き先のなくなった草太は黒板家に向かった。すると、つららの兄・辰巳(塔崎健二)が捜索用に借りた五郎の車を返しに来た。そこで、草太と辰巳は顔を合わせた。辰巳は無言のまま草太に近づくと、草太を殴り倒した。草太は無言のまま無抵抗だった。五郎が辰巳を押しとどめると、辰巳は草太に唾を吐きかけて帰って行った。草太はいつまでも雪の上に倒れていた。五郎は草太を1度だけ優しく撫でると、やはり無言のまま家に入っていった。

その一部始終を見ていた純は、辛抱たまらずに2階の寝室に駆け上がった。そこでは、雪子が寝袋に包まって寝ていた。風邪で熱があり、頭もいたいと訴えている。純は雪子を許せなかった。つららが家出をしたと乱暴に言い捨てると寝室を出て行った。

居間では、五郎は何事もなかったかのように、風力発電用のプロペラを磨きあげていた。螢は食後の後片付けをしていた。全員、何事もなかったことを装っているかのようだった。

その時、家の外からキツネの鳴き声が聞こえた。螢は例のキタキツネが帰ってきたのだと思い、餌を持って外へ飛び出した。しかし、キツネの様子はおかしかった。目を凝らして見てみると、足に不審な金具がついていた。五郎は、トラバサミの罠にかかったのだと教えた。螢は泣きながらキツネに走りより助けようとしたが、キツネはすでに遠くまで去っていた。五郎と純は悲しみながらその様子を見ていた。

トラバサミに挟まれたキツネの足跡は、いつもと違って、雪の上でジグザグに伸びていた。五郎は、翌日明るくなったら足あとを追ってキツネを探しに行くと約束した。
しかし、その日の晩から雪になった。翌朝には足あとは全て消えてしまっていることだろう。

* * *

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NHK『おしん』第13-18回(第3週)

どうも自宅HDDレコーダーが不調でDVDに移すことができず、せっかく全話をDVDに保存しておこうと思ったのにそれができないとなるとすごく萎えてしまうだろう当方が、NHK連続テレビ小説アンコール『おしん』の第3週を見ましたよ。

* * *

(第13回)
おしん(小林綾子)は、つね (丸山裕子)の金を盗んだという濡れ衣を着せられた。どんなことがあっても春までの辛抱だと耐えていたはずなのに、我知らず緊張の糸が切れ、無断で奉公先を飛び出してしまった。実家に帰るつもりで山に入っていったが、激しい吹雪となり、おしんは行き倒れてしまった。

おしんが目を覚ますと、粗末な山小屋の藁布団の中で、知らない男と一緒に寝ていた。
男は俊作(中村雅俊)という猟師だった。松造(大久保正信)という老人とともに、山の中で暮らしているという。俊作は山の中で凍死寸前のおしんを見つけ、小屋まで運んで一晩中暖め続けたので。おかげでおしんは九死に一生を得た。

おしんは一晩で回復したので、松造はおしんを山の麓まで送って行こうとした。しかし、おしんは帰ることを拒否した。逃げ出してきた奉公先には戻りたくないし、実家に帰るわけにもいかない。どこにも行き場所がないと訴えた。その話を聞いて、俊作はしばらく預かってやることにした。おしんには深い事情があるのだろうと察したのに加え、いずれにせよこの深い雪では故郷に帰れるわけもないからだ。春まで置いてやることにした。

陰で、松造は俊作に小言を行った。自分たちは世間から隠れて山に暮らしているのに、よそ者と関わるろくな事にならないというのだ。後におしんが自分たちの居場所を漏らしてしまうと、命が危なくなる。隠れ家の場所を深く知る前に帰すのが得策だというのだ。しかし、俊作は聞き入れなかった。おしんも自分たちと同じように何かから逃げている。そのような人間を放ってはおけないというのだ。

その頃、おしんの奉公先では騒ぎになっていた。
つねの財布からなくなっていた50銭銀貨は、主人・軍次(平泉征/現・平泉成)が無断借用したと言うのだ。支払いをするときにちょうど銭がなかったので、そこにあった財布から借りたのだ。軍次はうっかりしていて言い忘れたと謝った。おしんの所持していた銀貨は彼女自身のものだったということが証明されたのだ。
しかし、主人の行いに対して、つねは何も抗議しなかった。その上、おしんに気の毒をしたと反省する色も見せなかった。おしんは自分が米1俵と引き換えに奉公に来たということをよく理解しており、その責任を果たすために、すぐに戻ってくるだろうと楽観的に考えるばかりだった。

おしんには、俊作と松造が何者かはわからなかった。しかし、一見怖い顔の俊作ではあるが、どことなく眼差しが優しいことに気づいていた。おしんは俊作に妙な安らぎを感じ取っていた。

(第14回)
俊作らは粗末な暮らしをしていた。猟で仕留めた獣や少ない野菜を煮込んだものを食べていた。動物の毛皮や山で作った炭を春になったら麓に売りに行き、他の必要な物を手に入れるのだという。それでも、おしんには目新しい生活が楽しくて仕方なかったし、毎度暖かい食事にありつけるのもありがたかった。

おしんは、奉公先を飛び出した経緯を話した。奉公が辛かったり、盗みの疑いをかけられたことを苦にして逃げたのではないと説明した。奪われた50銭銀貨は、自分がどんなに腹が減っても使わなかった金だ。同じように、祖母(大路三千緒)が食べるものを我慢して作ったへそくりだ。その金が奪われたことを悲観し、また、実家に繋がる川の流れを見ていると、我知らずに歩き出してしまっていたと話した。

俊作はおしんに同情した。おしんの名は「信」(信じる)、「心」(こころ)、「芯」(物事の中心)、「新」(新しい)、「真」(真実)、「辛」(辛抱)、「神」など、様々な意味を持ち、良い名であると褒めた。その名前に負けないように、強くい生きろと励ました。そして、これまでの辛かったことは全て忘れて、春までゆっくりとここで過ごせと言うのだった。

しかし、松造は俊作とは反対の立場だった。ここでの生活が他人に知られると身が危険であるばかりか、そもそも質素な生活であるところにおしんの食料まで負担が増えるというのだ。それにもかかわらず、俊作はおしんが満腹になるまで際限なく食事を与えた。
松造は、貧乏な農家の三男として生まれたという。幼い頃は村長の家で奉公し、年季が明けて実家に帰ったが相続する土地がなかった。仕方なく、山へ入り炭焼の仕事を始めた。貧乏なためになかなか結婚できなかったが、なんとか妻を娶り2人の息子も生まれた。ところが、そんな息子たちに残す財産などあるはずもなかった。息子はいずれも軍人になり、日露戦争の203高地(中国旅順)で2人とも戦死した。以後、ひょんなことから俊作と出会い、親子同然として暮らして今に至る。
松造は、おしんの前であることも忘れ、俊作に自分の命を大切にしろと説得するのだった。

それでも、おしんが俊作らと暮らし始めて20日ほどが過ぎた。俊作の猟について行ったり、松造の炭焼を見学したりと、全てが新鮮であった。実家のことも奉公先のことも、全ては遠い世界のおとぎ話のように思えてくるのだった。

その頃、つねは源助(小倉馨)を呼びつけていた。彼がおしんの奉公を世話したのだ。いなくなってから20日も経ったのだから、もう実家に帰っているに違いない。おしんは年季明けの前に帰ってしまったのだから、先払いした米1俵を取り返して来て欲しいというのだ。おしんは使い物にならないので、もう帰ってくる必要はないと告げた。
ただし、おしんから取り上げた50銭銀貨だけは源助に託し、本人に帰すよう頼んだ。

(第15回)
源助はおしんの実家に来て、力づくで米を奪っていった。
ふじ(泉ピン子)と作造(伊東四朗)はおしんが出奔したことなど初耳で、おしんも帰っていないと訴えるが源助は容赦がなかった。

作造は激怒した。今後おしんが帰ってきても、二度と敷居をまたがせないと息巻いた。
一方のふじはおしんがもう死んでいるものと思った。この雪深い中、子どもが一人で山に入ったら到底生きているはずがないからだ。せめて遺体だけでも探そうと飛び出したが、作造が押しとどめた。子どもはおしんだけではなく、先日生まれたばかりの赤ん坊も含め、他の家族もいる。それらの面倒も見ずに家をでることは許されないというのだ。ふじは悲しんだ。
源助が持ってきた銀貨は、祖母の手に戻った。最後の望みの現金すら持たずに飛び出すとは、おしんに何があったのか想像もつかなかった。

俊作の家で世話になっているおしんは、せめてもの償いにと、あれこれよく働いたし、あかるく健気だった。
ところが、俊作はおしんが必要以上に働くと、怒るような素振りを見せた。おしんには理由がわからなかったが、俊作は必要以上に情が移ったり、懐かれたりするのを避けようとしていたのだ。むしろ、そういった感情を抑えることがすでに難しくなっており、俊作はおしんを預かったことをすでに後悔し始めていた。

俊作は、複雑な思いを抱えながら、戸外でハーモニカを吹いていた。それは肌身離さず、いつも持っているハーモニカだった。ハーモニカを初めて見聞きするおしんは、それが珍しくて仕方がなかった。そばによってよく聞こうとするが、俊作は無言で立ち去ってしまった。
おしんは悲しくなった。ここでも自分は邪魔者扱いされているのだと思ったのだ。この世で自分に優しくしてくれるのは、実家の母と祖母しかいないと思った。

そんなある日、俊作が酷い熱を出して倒れた。服を脱がすと、腹に大きな傷跡があった。松造によれば、その古傷のせいで、俊作はよく高熱を出すのだという。203高地での戦闘の際に当たった銃弾が体内に残り、それが原因なのだという。
おしんは、寝ずに看病を行った。一晩中、何度も外に出ては雪を取ってきて、それを溶かした水で俊作を冷やしてやった。俊作が目を覚ますとおかゆを作ってやり、汗で汚れた衣類はすぐに外へ洗いに行ったし、着替える前の衣類は火で炙って暖めた。

(第16回)
おしんの献身的な看病が俊作の心を開いた。体調が回復すると俊作は字を教えた。おしんにとっては、字を習うことも嬉しかったが、それよりも俊作の優しさが何より嬉しかった。

俊作らの貧しい生活には、まともな文房具などなかった。そのため、木の皮や板切れに消し炭で字を書いた。豊かな現代に暮らすおしん(乙羽信子)はその時のことを覚えており、部下や家族が鉛筆やボールペンを粗末にすると今でも怒る。俊作との暮らしで学んだことは、物がなくても幸せになれるということだったという。
そして、もっと重要なことは、生きるとはどういうことなのか多くのことを学んだのだという。

俊作の小屋には何冊かの本があった。その中に、木の葉をしおりにしてある物(『明星』)があったので、おしんは手にとって読んでみた。それは、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」であった。漢字にふりがながあったので、おしんは全て読むことができた。けれども、意味はさっぱりわからなかった。

それは俊作が一番好きな詩だという。俊作は意味を教えた。戦争に行った弟のことを悲しむ歌であり、弟は戦争に行くために生まれ育ったのではない、きっと生きて帰ってきて欲しい、そういう内容だと教えた。続けて、俊作は戦争がいかに馬鹿げていて非人道的なものであるかを話して聞かせた。戦争は相手の物をたくさん壊し、たくさん殺した方が勝つ。人を傷つけることは良くないことだと誰もが知っているのに、戦争の時だけは手柄だといわれる。こんなにおかしなことはないと言うのだ。
そして、将来、日本が戦争を始めようとしたら、全力で反対しろと説いた。一人ひとりの力は小さくても、団結すれば大きな力となって国家を変えられると説得した。おしんはまだ幼かったが、俊作の言わんとしていることはよくわかった。俊作は、その本をおしんにくれた。
俊作は、自分も軍隊で大勢の人を殺したと告白した。だから軍人を辞めたのだと説明した。

(第17回)
正月が近づいた。

ふじは、家から米を1升持ちだして寺へ行った。すでに死んだであろうおしんに戒名を付けてもらうためである。それでも、一番安い戒名しかもらえなかった。その行為に、作造は激怒した。持ち出した米が数日分の食料に匹敵するからだ。それを何の腹の足しにもならないものに変えてきたのが腹立たしいのだ。米がなくなったことの腹いせに、今年の餅つきは中止することにした。人が死んだ家では正月行事を自粛するというのが言い分だった。
ところが、作造の胸には別の思いもあった。まだ、おしんが死んだとは信じたくなかったのだ。おしんが生きていると信じているからこそ、戒名をつけるという縁起の悪い行為が許せなかった。

俊作の小屋では餅つきを行うことになった。これまで餅つきなどやったことはなかったが、今年はおしんがいるので特別だという。この日のためにこっそりと準備しておいたもち米と、松造が手作りした杵と臼が用いられた。それに加えて、おしんの毛皮の羽織を新しく作ってくれた。それまでは俊作のブカブカの毛皮をまとっていたのだが、今度のはおしんの体に合わせて作ってあった。おしんは幸福感に満ち足りた。
本当は、雪が溶けたら麓まで売りに行くはずだった毛皮をおしんのために使った。当初は反対していた松造だが、今ではおしんのことが実の孫のようにかわいく思えてきたのだ。

ある日、九九を覚えたおしんに、俊作は話しかけた。
生きていれば、辛いことや苦しいことに加え、嫌な人間に会うこともある。しかし、恨んだり憎んだりしてはいけない。人を憎んだり、傷つけたりすると、それは結局自分に跳ね返ってくる。その代わりに、相手の気持ちになり、その人がそうする理由を考えろと言うのだ。その時、自分に落ち度があることに気づいたら、そこを直して成長すべきだ。万が一、相手の攻撃に理由がない場合には、その人のことを憐れむのが良い。心が貧しい、気の毒な人間であると憐れむべきだ。
おしんには、人を許せる人間になってほしい。いくら勉学を身につけても、心が豊かでなければそれらを活かすことができない。人を愛することが出来れば、人からも愛してもらえる。そうすれば、心豊かに生きていける。

以上が俊作の教えだった。残念なことに、おしんには「愛」とはなんなのかわからなかった。しかし、俊作が戦争で人を殺したことを悔いていることはよくわかった。そして、愛をまだ知らないが、人を愛する人になろうと決意した。

(第18回)
春が近づいてきた。まだ雪は残っているが、おしんでも歩けるほどまで溶けてきた。

いよいよおしんが去る日が来た。翌朝早く、松造がおしんを送って行くことになった。俊作は逃亡兵として追われる身なので、人里に近づくわけにはいかないのだ。ところが、松造は足を滑らせて捻挫してしまった。しばらくの間、山道を歩くことができない。おしんは、自分の旅立ちが延期されると思い喜んだ。しかし、俊作は予定通り出発すべきだと主張した。帰る日が長引くほど、おしんも帰りにくくなるだろうから、早い方が良いというのだ。俊作が注意深く、麓の村の近くまで送ると言って聞かなかった。

出発の前、おしんはもう一度ハーモニカを聞きたいとせがんだ。ひと通り吹き終えると、俊作はハーモニカをおしんに譲った。今後、おしんには辛いことや悲しいことがあるだろうが、それを吹けば慰めになるというのだ。また、俊作も過去の自分と決別したいと思っていた。そのハーモニカは出征前に購入し、戦場でも肌身離さず持っていた。ハーモニカとともに、戦争の記憶も忘れてしまいたいというのだ。俊作はおしんにハーモニカの手ほどきをした。

そうして、俊作とおしんは出発した。
やっと麓の村が見えてきた時、前方から数人の憲兵隊がやって来るのが見えた。とっさに身を隠したが、俊作はすぐに見つかってしまった。自分は一介の猟師であり、妹を親戚に預けて学校に通わせるのだ、不審なところは無いなどと言い逃れようとしたが、彼らには通用しなかった。抵抗して逃げようとした俊作は、その場で射殺されてしまった。

俊作の最期の言葉は、おしんは後悔のない生き方をしろと言うものだった。

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フジ『北の国から』第10回

昨夜はかわいこちゃん2人(およびその他)とカラオケに行っていたために本まとめ記事を書けなかったわけだが、今朝『純と愛』を見ていて、昨夜のかわいこちゃんのうち1名が高橋メアリージュンに似てるかもしれないと思いついて、なんとなくテンションの上がった当方が、BSフジ『北の国から』の第10回を見ましたよ。

* * *

純(吉岡秀隆)は自らのおしゃべりのせいで、またしても困ったことになっていた。
正吉(中澤佳仁)の家に遊びに行った時、五郎(田中邦衛)が進めている風力による自家発電のことを話したのだ。すると、正吉の祖父・杵次(大友柳太朗)がそれを聞いており、北海道電力の知り合いにかけあって電気を引いてやると言い出したのだ。人のいい五郎だが、彼は杵次のことだけは嫌っている。純は五郎と杵次の間で板挟みになってしまったのだ。

そんなある日、つらら(熊谷美由紀/現・松田美由紀)の母・友子(今野照子)が訪ねてきた。五郎が注文していた発電機用の部品が入荷したと、友子の家に電話で連絡があったのだ。ちょうど五郎は留守だったので、雪子(竹下景子)が純と一緒に受け取りに行くことにした。内緒で部品を取ってきて、五郎を驚かせることを画策したのだ。友子の家でライトバンを借り、ふたりは麓郷の街へ向かった。
出発する時は抜けるような青空だった。しかし、天気予報や地元の人々は、午後から天気が崩れて吹雪になると予想していた。けれども、空を見上げた純には、そんな予想が当たるようにはちっとも思えなかった。

その頃五郎は、街中にある中畑(地井武男)の家へ向かう途中だった。そこで正吉とみどり(林美智子)の姿を見つけた。年越しのために帰省していたみどりが、正吉を残して、勤め先の飲み屋のある旭川に帰るところだった。
みどりは、杵次とけんかしたことをポツリと話しだした。原因は家で飼っている馬だという。みどりの言い分は、馬は餌代ばかりがかかって役に立たないのだから売れと言うのだ。自分が旭川で好きでもない男相手に愛想を尽くして仕送りしている金が馬の餌になるかと思うとやるせないと言うのだ。しかし、杵次にとって馬は家族同然で、今の馬とは18年の付き合いだと言う。すでに老馬なので、売ったとしてもすぐに食用肉にされてしまう。みどりは、杵次の気持ちも理解しつつ、ついかっとなって言い争いになってしまうのだといって自嘲した。

みどりらと別れた五郎は、中畑の家へ行った。中畑も杵次の馬のことは知っていた。中畑が聞いた噂では、杵次は馬の引き取り手を探していた時期もあったらしい。ところが、品質からいって10万円もしないような馬なのに、杵次は30万円で売ろうとしたのだという。そのせいで、買い手は見つからなかったのだという。それに、現代では馬はほとんど役に立たないというのだった。

13時頃、発電機の部品を受け取った雪子と純は寄り道をして帰ることにした。突然、純が草太(岩城滉一)の所に寄ろうと言い出したのだ。表向きの理由はスキーに行った時の写真をもらうという事だったが、ませている純は雪子と草太を会わせてやろうと画策したのだ。そのことを告げると、雪子もまんざらではない表情を見せた。それで、山中にある草太の家へ行くことになった。

空が急に曇りだし、純たちが街を出る時に少し雪が降りだした。ただし、いつも見慣れている程度の雪だった。
ところが、山道に入った途端、突如としてひどい吹雪になった。少し行っただけで、視界がほぼ真っ白になった。道路の境目もわからないほどだった。雪子は車の速度を十分に落とし、注意深く運転した。30分ばかり走った。いつもならとっくに草太の家に着く頃なのだが、速度が遅いのでまだ着かない。それどころか、視界が悪くて家の入口すら見えないため、家がまだ先にあるのか、もう通り過ぎてしまったのかすらわからなくなってしまった。

そして、最悪なことに車は雪の吹き溜まりに突っ込んでしまい、スリップして動かなくなった。慌てて雪をはね除けて脱出しようと試みたが、どんどん降り積もる雪の前には埒が明かなかった。手を尽くしたふたりは、車内で吹雪をやり過ごす他に方法がなくなった。

螢(中嶋朋子)が一人で留守番をしていると、杵次が訪ねてきた。螢は杵次とは初対面だったが、正吉の祖父だということは知っていたので家にあげた。すると杵次は、自分が幼かった時の昔話を螢に聞かせた。螢は楽しそうにそれを聞いた。杵次が吹雪の中を馬ソリに乗って来たと聞くと、外まで馬を見に行ったりした。

そこへ、五郎が帰宅した。
杵次の用件は電線の敷設についてだった。杵次は五郎の家まで電気を引き、工事代金も破格にするよう、北海道電力の者に依頼したと告げた。担当者はかなり渋ったが怒鳴りつけて従わせたなどと、自分の手柄を誇った。五郎の計画している風力発電など子どものおもちゃみたいなものだと言い捨てた。それを聞いた五郎は、下手に出つつもきっぱりと断った。
すると杵次は気分を害した。水道の時も役場に掛け合って引かせる杵次の申し出を五郎は断ったことを蒸し返した。そして、五郎が現代文明をわざわざ利用しないでいることを批判した。昔、村には電気が来ていなかった。その時、杵次や五郎の父、中畑の父、その他大勢で運動を行い、やっとの思いで電力供給を実現したのだという。先人たちの努力の結晶と遺産を受け取らない五郎のことが気に喰わないのだという。昔を懐かしがって礼賛するばかりでなく、二度と戻りたくない過去もあることを忘れるなと忠告して帰って行った。

18時になった。
純と雪子が帰ってこないことが心配になった五郎は探しに出かけた。まず、つららの家へ行き、電話を借りて心当たりにかけて見ることにした。ところが、つららの家は停電していた。どうやら、吹雪のせいで送電線が切れてしまったらしく、富良野全体が停電してしまっているようだった。
電話で各方面に連絡を取ったところ、ふたりは13時ころに街を出たこと、草太の家には来ていないことがわかり、結局行方は掴めなかった。さらに、どこの家も停電で大騒ぎであった。最近では、暖房や水道の運転に電力を使用する家が多くなった。それらが全く動かないのだ。また、牛舎を持つ草太の家や豚舎のある中畑の家では、畜舎を新式の電力暖房に取り替えていた。代替手段の確保のためにみんなが出払っており、純と雪子の捜索に割ける人員もなかった。

五郎は、車で回れる範囲はほぼ探し尽くした。けれども依然として見つけられない。残る可能性は、草太の家へ繋がる山道だけだったが、そこは除雪車すら引き返すほどの猛吹雪となっていた。到底、五郎ひとりの力では探しに行けなかった。
電話で中畑と相談していると、彼が馬ソリなら除雪されていない道でも入っていけるのではないかと提案した。五郎は早速、杵次に頭を下げに行った。

21時になった。
取り残された車の中で、雪子と純は凍えていた。車は完全に雪に埋もれてしまい、ドアが開かないことはもちろん、窓を開けても雪の壁に阻まれている。体力を消耗したふたりは眠りに落ちてしまった。
純は夢を見ていた。令子(いしだあゆみ)を含めた家族4人が花畑で愉快に仲良く遊んでいる夢だった。暖かい春で一面に花が咲き誇っていた。五郎と令子も手を取り合って走り回っていた。

ふと、雪子はどこかから鈴の音が聞こえてくるのに気づいた。慌てて純を起こし、ふたりで大声をあげた。鈴の音はだんだんと大きくなり、ふいに止んだ。
それは馬ソリの鈴だった。馬ソリで捜索していた五郎と杵次はついに純と雪子を発見した。というよりも、五郎たちには何も見えなかったが、車の埋まっていた場所で馬が勝手に足を止めたのだという。おかげで無事に救助することができた。

吹雪はそれから2日間も続いた。ふたりが生還できたことは奇跡に他ならなかった。
吹雪が続く間、純と雪子は疲れて眠ってばかりいた。五郎はほとんど口を聞かず、ぼんやりと酒ばかり飲んでいた。それでも、黒板家の生活は日常通りだった。他の家では停電のせいで日常生活がままならなかった。ところが、黒板家には元々電気がないので、停電にも吹雪にもほとんど影響を受けなかったのだ。

* * *

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フジ『北の国から』第9回

心理学専攻だったくせに随分大きくなるまで「理性」と「感情」の違いが実感としてわかっておらず、20代半ばに異性関係で揉めた時に生まれて初めて自分が非合理な言動をしていることを自覚し、「あー、これが感情に駆られるという状態かー」と妙に感心したという経験のある当方が、BSフジ『北の国から』の第9回を見ましたよ。

* * *

1981年(昭和56年)正月。
純(吉岡秀隆)は同級生の正吉(中澤佳仁)の家へ遊びに行った。純は初めて正吉の母・みどり(林美智子)と話した。みどりは五郎(田中邦衛)とは古い顔見知りのようで、純のことを五郎には似ていないと評した。純にはそれがなんとなく嬉しかった。みどりは五郎に会いたいと懐かしそうに話すのだった。

草太(岩城滉一)とつらら(熊谷美由紀/現・松田美由紀)、そして雪子(竹下景子)が三角関係になっていることは正吉にすら知られていた。ふたりはマセた言葉を交わし、彼らの愛憎劇を面白おかしく見ていた。

その頃、つららが五郎を訪ねていた。
つららは、草太が自分にプロポーズしてくれたことを打ち明けた。しかし、雪子が帰ってきた途端に態度が豹変したと訴えるのだった。つららは物分かりのいい女になりたいと願っている。けれども、自分がどんどん嫌な女になっていることを自覚しているなどと一方的に話し続けた。
つららは、草太と雪子の仲がどの程度進展しているのか五郎に尋ねた。しかし、五郎は自分は恋愛については疎いなどと言い訳して答えようとしなかった。ところが、無器用な五郎の表情は真実を雄弁に語ってしまっていた。つららは、五郎はいい人だと評し、寂しそうに帰って行った。

1月5日、草太は雪子、純、螢、そして正吉をつれて大雪山へスキーに出かけた。
まさにその日、令子(いしだあゆみ)が麓郷に突如現れた。中畑(地井武男)の家を訪れ、五郎の家の場所を教えて欲しいと頼んだ。五郎は郵便物を中畑の家で受け取るよう手配していたので、令子は中畑の住所は知っていたが、五郎の家の住所までは知らなかったのだ。
中畑は令子を案内してやることにした。無視したとしても、令子は手をつくしてどっちみち五郎の家を見つけることだろう。それに中畑は、純と螢が留守にしていることを知っていた。今なら連れて行っても大丈夫だと判断したのだ。

突然の令子の登場に、五郎はひどくうろたえた。しかし、無下に追い返すわけにもいかず、家へ招き入れた。
令子は水道や電気といった公共設備のない住宅に驚いた。子供たちの寝ている部屋が、もともとは馬小屋だったところであり、2階に上がるにも粗末な梯子しかないことに眉をひそめた。それでも、子供たちの寝室を見ているだけで嬉しくて胸がいっぱいになるのだった。蛍のパジャマを長い間抱きしめていた。

令子は子供たちに会いたいとせがんだ。五郎が立ち会ってでも良いので、ふたりに会いたいと頼み込んだ。
しかし、五郎は、今はそれはできないと言って断った。五郎は、自分の一存で母親と子供たちを引き離すことは許されるべきではないと理解している。子供たちも令子に会いたがっているだろうと想像できる。けれども、まだ合わせるタイミングではないと説明するのだった。子供たちは3ヶ月経って、やっと麓郷での生活に慣れはじめた。強くたくましくなり、大きく成長しようとしているところである。そんな矢先に令子に会ってしまうと一気に里心が付き、これまでの成長が水泡に帰してしまうおそれがあるというのだ。1年か2年して、ふたりが十分に成長しきったら令子に会わせると約束した。そして、その時に、子供たちに好きな生き方を選ばせようと提案した。
令子はそれを受け入れた。

その代わりに五郎は、令子が遠くから子供たちの姿を見ることを許した。翌日の昼ころに子供たちを外に出し、中畑の車の中から見えるように手配するというのだ。令子はそれで納得した。
五郎は外で待っていた中畑を呼び寄せ、子供たちが帰ってくる前に令子を彼の車で帰らせた。

純と螢、雪子が帰宅した。
螢は家の雰囲気が違うことを察知し、来客があったのか五郎に尋ねた。しかし、五郎は中畑以外に誰も来ていないと嘘で答えた。
続いて、純は戸棚の上にデパートの包装紙で包まれた箱があるのに気づいた。それは五郎にとっても不意打ちだった。五郎は慌てて包みを奪うと、無造作に中身を取り出した。中からは、電池で動くカセット・ラジオが出てきた。五郎は純と螢へのお年玉だと嘘をついて手渡した。文明的な贈り物に純はたいそう喜んだ。

その隙に、五郎はデパートの包み紙やラジオの箱をまとめ、外に出て迷うことなく焼いた。様子がおかしいことに気づいて追ってきた雪子に、五郎は令子が来たことをこっそり打ち明けた。次の日に車の中から子供たちを見させる予定であることも告げた。五郎は自分は残酷なことをしているかと雪子に尋ねるが、雪子は何も答えなかった。

そんなふたりの様子を見ていた螢は、ますます不審に思うのだった。
夜中に、螢は隣で寝ている雪子を揺り起こした。寝室がなぜかきれいになっている上、自分のパジャマに令子の匂いが付いていると指摘し、令子が来たのではないかと聞いた。雪子は蛍のパジャマを嗅いで見せ、気のせいだと言ってごまかした。しかし、螢は納得がいかなかった。

翌日、五郎は風力発電機を作る計画を発表した。これまでせっせと描きためた設計図を披露し、今日は木を切ってプロペラを作ると宣言した。一同は外に出て作業を始めた。五郎がのこぎりを持ち、純と螢には木を抑える役割を与えた。
そこへ、中畑の車がやって来て、少し離れた所に停まった。純と螢はそっちへ迎えに行こうとしたが、五郎は木から手を離すなといって止めた。中畑が一人で近づいてきたので、五郎はのこぎりを純に任せ、中畑と立ち話を始めた。
その見せ場を、令子は言いつけ通りに中畑の車の中からじっと覗いていた。

間の悪いことに、草太が車でやって来た。中畑の車の横に自分の車を停めた。そして、家の方へ歩いてくる途中で、中畑の車に見知らぬ美女が乗り込んでいることに気づいた。草太は中畑をからかうように、遠くからこの女は誰だなどと叫ぶのだった。
雪子は慌てて草太の方へ走っていった。草太の腕を取ると、彼の車の方へ押し戻した。中畑の車にさり気なく近づいて、令子に姿を隠すよう指示した。そして、草太を車に押しこめ、自分も乗り込んで発進させた。
大人たちの奇妙な様子に、純は中畑の車が気になった。目を凝らして車の中の人物を確認しようとしたところ、螢が手を休めるなと叱咤した。言われるままに、純は木を切り続けた。

中畑は頃合いだと見て取り、用事があると言って帰って行った。令子は走る車の中から、ずっと子供たちの方を振り返ってみているのだった。そして、そのまま旭川空港から飛行機で帰京した。
令子が去ったのを確認すると、五郎は作業の終了を宣言した。純と螢を連れ出してソリ遊びに興じた。3人とも心の底から楽しんだ。

その頃、雪子は草太に事情を話していた。話を聞いた草太は怒りに駆られた。螢がうすうす勘づいていると聞いて、ますます腹を立てた。すぐに会える所にいる母子を会わせないでいること、しかも螢の気持ちまで踏みにじる五郎の所業をあまりに残酷だと言って怒り震えるのだった。

五郎は、子供たちを雪山に残し、先に帰宅した。物思いにふけながら、令子の置いていったラジオを手にとった。
そこへ、正吉の母・みどりが訪ねてきた。ふたりは幼馴染みで、20年ぶりの再会であった。会うやいなや、互いに配偶者と別れたことを報告し合い、それがおかしくて笑いあった。片親で子どもを育てる苦労について、互いに同情し合った。
みどりは、離婚に際して子供だけは絶対に手放さなかったことを話した。女にとって子どもは、腹を痛めて生んだのであり、自分の体の一部を切り取ったものだから、何よりもかわいいと言うのだった。みどりは旭川で働いているので正吉とは離れて暮らしているが、彼に会えることが何よりも嬉しいのだと話すのだった。五郎は複雑な表情でそれを聞いていた。

そこへ草太が怒鳴りこんできた。みどりがいるのも構わず、五郎が母と子供たちを会わせなかったことを激しい口調で糾弾した。普段は雪子にデレデレしている草太であるが、今日ばかりは雪子の静止にも取り合わなかった。五郎はうなだれて言われるがままであった。

その時、みどりも口を挟んだ。ただし、草太を加勢するかわりに、草太のことをどやしつけた。人にはそれぞれ、その人にしかわからない、理屈では説明できないような気持ちがある。それをわからないような若造が、他人の心の中にズケズケと入り込むのではないと、草太を撃退した。

場が鎮まり、一同は周りを見渡した。気づくと、ソリ遊びから帰ってきた純と螢が戸口に立っていた。どうやらふたりは話を聞いてしまったようだった。

夕食の時間になった。五郎と雪子は気まずそうに俯いていた。一方の純と螢は、どんなにスキーが楽しいか、目を輝かせてしゃべり続けていた。
頃合いを見て、五郎は令子がラジオを持ってきたことを告白した。

けれども、純と螢は即座に話題を変えた。風力発電装置が完成したらテレビが見られるどころか、電気代もタダだと言って大はしゃぎした。沢から自力で引いてきた水道もタダだし、素晴らしい生活だと言うのだ。純は今は令子のことに触れるべきではないと考えていた。申し合わせたわけでもないのに、螢も同じ気持でいるらしいことがよくわかった。

* * *

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フジ『北の国から』第8回

中学生の時、同級生女子から手編みの手袋を貰ったのだけれども、それがあまりに酷い出来で正直迷惑だったのだけれど、せっかく作ってくれたのだからと思って毎日それを履いて通学した「紳士で優しい(自称)」当方が、BSフジ『北の国から』の第8回を見ましたよ。

* * *

1980年12月29日。
五郎(田中邦衛)は仲間たち数人の力を借りて、水道を作る工事をしていた。これまでは森の奥にある沢まで毎日徒歩で水汲みに行かねばならなかった。雪の降る前は純(吉岡秀隆)と螢(中嶋朋子)の役目だったが、根雪になってからは子供の足では無理になった。大人の五郎でさえ、雪に足を取られて水を全てこぼしてしまうなど、不便でならなかった。そこで、森の中を1kmばかりパイプを渡し、家まで水を引こうというのだ。ところが、作業は難航した。どうやら、パイプの中に溜まっていた水が凍って詰まってしまったようだった。何日か前に敷設したパイプはすでに雪に埋もれており、凍結箇所を見つけることが容易ではないのだ。
楽しみにしていた水道が開通できないとわかり、純は不貞腐れた。素人がやるには無理があるので、役場の水道課に頼んで工事してもらった方が良いに決まっていると愚痴を言った。面白くなくなって、純は街まで年賀状の投函に行くことにした。

麓郷の街はいつもより賑やかだった。街を離れて働きに出ていた人々が、年越しのために次々と帰ってきているからだ。バス停では家族を出迎える人々でいっぱいだった。
純は、そんな人々の中に同級生・正吉(中澤佳仁)の姿を見つけた。彼の母・みどり(林美智子)は旭川で働いており、彼女も帰ってくるはずだった。しかし、バスが到着してもみどりは乗っていなかった。正吉は諦めて家に帰ることにしたが、純の姿を見つけると家に誘った。

正吉は祖父・杵次(大友柳太朗)とふたり暮らしである。杵次は街の嫌われ者で、人のよい五郎ですら杵次を避けるほどだ(第5回参照)。ところが、その日は留守にしていた。正吉は隠しておいた酒瓶を取り出してきて、純に勧めた。大人の口ぶりを真似た年末の挨拶をしながら、湯のみに酒を注ぎ、一気に煽った。酒を飲んだことのない純は躊躇したものの、正吉の手前口を付けないわけにもいかなかった。意を決して啜ってみると、ほとんど水だった。正吉がいうには、ほんのちょっとだけ残っていた酒に水を足したものだという。純も大人が酒を呑む真似をした。
正吉は純の家にテレビが無いことを知っているので、大晦日に紅白歌合戦を家まで見に来るよう誘った。正吉は八代亜紀の『雨の慕情』のものまねをしてみせるのだった。その流行歌のことを知らない純は、自分が遅れていることを恥ずかしく思った。だからどうしても紅白歌合戦を見に来たいと思った。しかし、五郎がそれを許さないだろうと思い、返事を濁した。
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12月30日。
純が目を覚ますと、五郎はすでに森に入ってパイプの凍結場所を探していた。けれども、結局場所を特定することはできなかった。
五郎が作業をしていると、杵次がふらりと現れた。杵次は役場に顔が利くので水道工事を頼んでやると申し出た。しかし、杵次の世話になりたくない五郎は素っ気なく断った。続けて杵次は、五郎の家に電器やテレビのないことを指摘し、大晦日に子供たちを自分の家に寄こすよう言った。これに対しても、五郎は気のない返事をした。杵次はそれ以上は食い下がらず去っていった。ただし、去り際に、人の好意は素直に受け取れと忠告するのだった。

その頃、麓郷では雪子(竹下景子)のことがちょっとした噂の種になっていた。10日ほどで麓郷に戻ってくると言っていたのに、もう1ヶ月近くも東京に行ったままだったからだ。草太(岩城滉一)が毎日駅で雪子の帰りを待っていることもみんなに知られており、ちょっとした笑い者になっている。

東京の雪子は、二度と来ないと誓っていた(第6回参照)下北沢に来ていた。年末の買い物客でごった返す商店街の中に、雪子は元愛人の井関(村井国夫)の姿を見つけた。井関は妻子と共に買い物に来ていた。井関も雪子を見つけ、ふたりは人垣を介してしばし見つめ合った。
雪子は自分の立っていた場所に紙袋を置いて立ち去った。井関は妻子の目を盗んで近づき、それを拾い上げた。中には手編みのマフラーが入っていた。メモには「気に入らなかったら捨てて下さい。北海道に帰ります」とあった。井関はマフラーを袋に入れ、元あった場所に戻した。そして、家族と一緒に立ち去った。雪子は物陰からその一部始終を見ていた。

そんなことを知るはずもない草太は、今日も布部駅で雪子の帰りを待っていた。汽車は到着したが、やはり雪子は乗っていなかった。諦めて駅を出ると、つらら(熊谷美由紀/現・松田美由紀)が待っていた。草太は彼女を無視して立ち去ろうとしたが、つららは話があると言って誘った。
つららは、麓郷を出て旭川で暮らすと言い出した。遠回しに、キャバレーなどの水商売で働くことをほのめかした。聞いていた草太は、ぶっきらぼうにうちの嫁になると思っていて父(大滝秀治)と母(今井和子)もそのつもりで楽しみにしていると答えた。しかし、その言葉はつららの決意を変えさせなかった。草太は両親の意思を伝えただけで、草太自身の意思を言わなかったからだ。つららは、草太が自分に愛情がないことを知っており、雪子に完全に心を奪われたことを知っている。
草太は、もう雪子のことは諦めたと応じた。そもそも、田舎者の自分と、都会の洗練された女性である雪子とでは釣り合いが取れないというのだ。まるで、五郎と令子(いしだあゆみ)のように失敗することが目に見えていると話した。
草太は、ぼそりと「一緒になるべ」とつぶやいた。つららは、その言葉は草太の本心ではないと分かっていた。それでも、そう言ってくれたことが嬉しかった。

12月31日。
五郎はやっとパイプの凍結箇所を見つけた。そこを溶かし、ついに手作りの水道が開通した。五郎と純、螢は抱き合って大喜びした。さっそく米を研いだり、顔を洗ったりした。冬の川から引いた水はとても冷たかった。しかし、その冷たさが一向に苦にならないほど嬉しいことだった。

夜、五郎はとても機嫌が良くなった。純と螢が正吉の家にテレビを見に行くことを自ら許可した。ふたりを車で送って行き、中畑の家で時間を潰した後、紅白歌合戦が終わる頃に迎えに行くという算段を整えた。

正吉の家に着いた純と螢は、大喜びで家に近づいていった。しかし、家に入ることが躊躇われた。外から覗くと、正吉の母・みどりが帰ってきており、正吉とじゃれ合いながら水入らずの様子が見えたのだ。しばし絶句し立ちすくみ、ふたりは歩いて家へ帰って行った。

中畑の家に着いた五郎も同様だった。中畑の家に家族や親戚が集まって愉快にしている様子が外からわかった。五郎はそれを邪魔する気になれなかった。一人で家に帰り、年賀状の続きを書くことにした。
五郎は、令子への年賀状を書き始めた。子供たちが元気であることを書いた。令子の様子を尋ねる一文を書いた。その後、しばし迷った挙句、五郎自身の近況報告を書こうとした。その時、子供たちが帰ってきた。五郎は手を止めて、書きかけの年賀状を隠した。
五郎は予定よりも早く帰ってきた理由を尋ねたが、ふたりは黙ったまま答えなかった。そこで、3人で富良野の夜景を見に出かけることにした。

富良野の街の灯は美しかった。
五郎は子供たちに優しく語りかけた。家の灯りひとつひとつに、それぞれの大晦日がある。我が家では紅白歌合戦は見れないが、自分たちだけの大晦日はある。純と螢のこの1年の頑張りに感謝しており、それを一生忘れないと告げるのだった。
それに加えて、五郎は凉子先生(原田美枝子)に言われた言葉を思い出した。五郎と純が互いによそよそしい敬語で話すのが奇妙だというのだ。そこで五郎は、今を限りに、純によそよそしい話し方をするのをやめると約束した。純にも同じ約束をさせた。
そして3人で、富良野の街に向かって「さようなら、1980年!」と叫んだ。

家に帰ると、なぜか家に灯りがついていた。雪子が突然帰ってきていたのだ。皆、大いに喜んだ。
そこへ、草太とつららがご機嫌で初詣に誘いに来た。ところが雪子の姿を見た途端、ふたりの態度は正反対となった。草太は有頂天になって喜んだ。一方のつららは能面のような沈み込んだ表情になった。

その頃、令子は、新年の準備をする客の対応で遅くまで仕事をしていた。長い一日が終わり、無人になった美容室で孤独にタバコを吸うのだった。

草太とつららは去り、黒板家では五郎、雪子、純、蛍の4人が大はしゃぎしていた。

* * *

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フジ『北の国から』第7回

今週、週刊現代フライデーを購入し、両誌ともにエロい袋とじがついていたのだが、どうにもそれを開いて見る気が起きず「俺のアッチ方面は枯れてしまったんだなぁ・・・」と切なくなった当方が、BSフジ『北の国から』の第7回を見ましたよ。

* * *

12月も半ばを過ぎ、クリスマスが近づいてきた。純(吉岡秀隆)は東京の華やかなクリスマスの雰囲気に憧れた。麓郷では毎日雪かきばかりやらされ、サンタがやって来る気配はどこにもなかった。

五郎(田中邦衛)は中畑(地井武男)の仕事を手伝い、毎日山で仕事をしている。おばの雪子(竹下景子)は東京に行ってしまった。日中は家に誰も居ないので、放課後の純と螢(中嶋朋子)は中畑の家で過ごした。中畑の娘・すみえ(塩月徳子)は純と同級生であり、一緒に勉強をするためだ。しかし実際には、純と螢は中畑の家にあるテレビに夢中になっていた。また、夕食も中畑の家で食べていた。中畑の妻・みずえ(清水まゆみ)は料理が上手だった。純は、みずえの料理を食べると、無性に母・令子(いしだあゆみ)のことを思い出すのだった。

中畑の家の電話が鳴った。東京に住む親戚の家に子供が生まれたのだという。電話で楽しそうに話している中畑らを見ていると、純は電話が気になってしかたがなくなった。以前、東京から来た弁護士(宮本信子)が令子に電話をかけてくれたのに、それに出ずに逃げてきたことを思い出したのだ(第4回)。逃げた日の夜、夢に令子が出てきて電話で話がしたかったなどと言っていたことも思い出された。

ある日、家の者が全員お使いに出かけるなどして、偶然に純が中畑家で一人で留守番することになった。その隙に純は東京の令子に電話をかけた。ところが、純は令子が電話に出ても無言のままで、何もしゃべらずに電話を切ってしまった。なぜか話すことができなかったのだ。

別の日、中畑の材木店の1年の仕事が終わった。中畑の家に従業員やその家族が招待されて慰労会が開かれた。五郎たちも招かれた。純は、みんなが宴会で盛り上がっているのを見計らい、中畑の家と棟続きの事務所に忍び込んだ。そこから再度、令子に電話をかけた。電話に出た令子は、純からの電話であると勘付いていた。またしても黙り込んでいる純であったが、令子から何度も名前を呼ばれて、ついに返事をした。純から電話がかかって来たことを喜んだ令子は涙を流しながら純にあれこれと話しかけた。しかし、いつ人に見咎められるかと思うと、純は気が気ではなかった。人が来るからと言って、ろくに話さずに電話を切ってしまった。

翌日から五郎は自宅裏の森に入って何かの作業を始めた。純と螢は、五郎が手伝ってほしそうにしている様子には気づいていたし、五郎が一緒にいるので中畑の家に行く必要もなかったのだが、中畑の家に入り浸った。五郎には勉強するためだと言い訳をした。けれども、純は力仕事が大嫌いだったし、中畑の家でクリスマスパーティーの準備をするのが楽しみだったのが本当の理由だった。

それに加えて、純はもう一つの秘密の計画があった。令子に電話をかけて、螢と話をさせてやろうと思っていたのだ。事前に螢に話すと、彼女は五郎に義理立てして断るので、ギリギリまで秘密にしていた。またしても中畑家の人がいなくなり、純と螢だけが残された。純は事務所に忍び込んで電話をかけると、螢を呼びつけた。そして、螢に受話器を手渡した。
何も疑わない螢は、受話器を耳に当てた。すると、令子の声が聞こえた。螢は放心し、電話を切ってその場を逃げ出した。
螢は怒った。五郎に告げ口しないと約束してくれたが、それから純とは口を利かなくなった。

12月24日になった。学校は今日で終わり、1月20日まで長い冬休みが始まる。
五郎は学校までふたりを迎えに来た。そのついでに、凉子先生(原田美枝子)に挨拶をした。すると、涼子から螢の不審な行動について聞かされた。前日、涼子が目を離した隙に螢が職員室に忍び込んで、どうやら令子に電話をかけていたようであると言うのだ。涼子はそれに気づいたが隠れていたという。しばらくして、螢は何事もなかったかのように裏口から帰って行ったという。
五郎は驚いた。そして、純ではなく、確かに螢だったかと確認した。涼子が螢だったと答えると、五郎は複雑な表情を浮かべた。

話を終えた五郎は、子供たちと合流した。純は中畑の家のクリスマスパーティーに行く許可を求め、五郎は許した。螢は行きたがらなかったが、五郎が行くように命じた。ふたりと別れ、五郎は一人で家へ帰って行った。

中畑の家で、純と螢はクリスマス・イブを楽しんだ。しかし、これからいよいよ食事だという段になって、中畑がふたりを家まで送って行くと言い出した。料理は箱に詰めたから、自分の家でパーティーをやれと言うのだ。螢は素直に従ったが、純は不貞腐れながら帰路についた。
家に着くと、中畑は純に説いた。中畑は、五郎の寂しい思いを察しろと言うのだ。令子と別れて純は寂しい思いをしているだろうが、五郎はそれ以上に寂しい思いをしていると言うのだ。なぜなら、純が生まれるずっと前から、五郎は令子と一緒にいたのだ。それに、五郎は子供たちのために一生懸命努力していると言う。たとえば、寝ている子供たちが凍えないように、夜中に何度も起きてストーブの火が消えないようにしていることを教えた。純はそれを初めて知った。
さらに中畑は、純の態度を責めた。純は怠け者で、妹の螢よりも家の手伝いをしていない。麓郷での生活はただでさえ厳しいのに、東京のように人に頼ることもできない。自分の面倒は自分で看る必要がある。特に純は、一家の長男としていつでも家を支えられるようにならなくてはならない。それが一切できていないと、中畑は優しくも手厳しくたしなめるのだった。
純は中畑の言葉に打ちのめされた。ことごとく、中畑の言うとおりだった。自分は男なのにいつも女々しく、力仕事をサボってばかりで、ずる賢くて口ばかりだと反省した。

家に帰ると、純と螢へのクリスマスプレゼントとしてスキーが置いてあった。クリスマスプレゼントは靴下に入れてあるものだと思った五郎は、スキーを靴下に入れようとしたようだ。しかし、当然入らないので、スキーの先に靴下がはめてあるのみだった。純はそれが可笑しくも、嬉しかった。

その晩、親子3人は1階のストーブのそばで並んで寝た。螢は、内緒で令子に電話をかけたことを五郎に自ら打ち明けて謝った。五郎は、令子は喜んでいたことだろうと言い、螢とどんな話をしたのか優しく問うのだった。

純も、内緒で電話をかけたことを白状しようとした。しかし、なんとなくタイミングを外してしまい、言い出せなくなった。
その晩、純は夢を見た。森の奥からキャンドルを手にした行列が歩いてきた。列の先頭には、五郎と令子、螢がいた。純は脇からそれを見ており、呼びかけるのだが誰にも気づいてもらえなかった。純は疎外感を感じ、泣きながら涙を流した。

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フジ『北の国から』第6回

今日、関東地方は雪が降って大変だったわけだが、神奈川県内でも相模川を挟んで北側(座間市や相模原市)は大雪だったけれど、南側(厚木市)はぜんぜんたいしたことがなく、「川1本で気候がぜんぜん違うのだなぁ」と神奈川県民経験値がまた少し上がった当方が、BSフジ『北の国から』の第6回を見ましたよ。

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麓郷は根雪が深くなった。純(吉岡秀隆)は厳しい冬に辟易した。

雪子(竹下景子)がマフラーを編み始めた。螢(中嶋朋子)は、雪子から草太(岩城滉一)へのクリスマス・プレゼントだと予想した。その考えを純に話したところ、まるでメロドラマのようだと言って純は興奮した。ふたりは、雪子は草太のことが好きなのだろうと考えた。

その予想はふたりだけの秘密だったはずなのに、純は調子に乗って草太にすっかり話してしまった。
以来、草太はすっかり様子がおかしくなった。急ぎの用もないのに夜遅くまで牛舎に入り浸って仕事に没頭したかと思えば、夜はなかなか寝付けなくなり、自分は不眠症になったと周りに言いふらしはじめた。

草太は友人の川島(小松政夫)に相談した。川島の答えは、モジモジしないで、さっさと口説けというものだった。小細工をせずに、押さえこんでキスをすれば、どんな女も喜ぶというものだった。

そんな矢先、螢は重大なことに気づいた。雪子の編んでいるマフラーには「T I」というイニシャルが編み込まれていた。それは、北村草太とは明らかに違うものなのだ。純は、草太に誤った期待を持たせてしまったことで大いに慌てた。

その頃、雪子と草太は車の中でふたりっきりだった。草太が雪子を呼び出したのだ。しかし、草太の態度は終始落ち着かなかった。雪子が不審がりはじめたころ、草太は雪子を抱き寄せ、強引にキスをした。
純は、その日を境に雪子と草太の様子がおかしいことに気づいた。草太が雪子のことを呼び捨てにするようになったのだ。明らかに距離が近づいているように見えた。

それから何日かして、つらら(熊谷美由紀/現・松田美由紀)が訪ねてきた。つららはふさぎこんでいる様子で、雪子とふたりっきりで話をした。
つららは、雪子のような都会暮らしに慣れた女は北海道の農村に永住することは不可能だと告げた。いくら好きな人ができたからといって、並大抵の努力では農家の嫁になることはできないと言う。そして、つららは自分が草太の嫁になって、彼の農場を一生手伝っていく決意をすでに固めていると話した。けれども、草太が雪子に惚れ込んでしまった。雪子に農家の嫁になる覚悟がないのなら、すぐに麓郷を出て行って欲しいというのがつららの願いだった。
冷静に聞いていた雪子は、つららの立場に同情した。けれども、つららに反対した。誰かが誰かを好きになってしまったら、それはそれで仕方のないことだというのが雪子の意見だった。続けて、現在の自分は草太に対して特別な感情は抱いていないと言い切った。その上で、自分がどこで暮らそうと、人に指図される言われはないと言って、つららの要求を拒絶した。
その後、つららは黙って帰って行った。雪子は彼女を見送ろうともしなかった。2階の寝室から盗み聞きしていた純は、雪子の冷たい一面を初めて見て、軽い衝撃を受けていた。

つららが帰った後、雪子は風呂焚きを始めた。一人で作業していると、昔の出来事が思い出された。
下北沢の喫茶店で、かつての愛人・井関(村井国夫)から別れ話を切り出された時の様子だ。井関は、いつか偶然再会した時に和やかな関係が作れるよう、握手して別れようと提案した。けれども雪子はきっぱりと拒絶した。本当に別れるなら、いつか再会する可能性など考える必要がないと言うのだ。そして、別れた後は井関の住む下北沢には二度と来ないので会う可能性はないと告げた。相手と出くわすような場所には絶対に足を向けない、人と人が別れるとはそういうことだと雪子は説くのだった。
回想から意識を戻した雪子は、タバコに火をつけた。その時のマッチは、かつての下北沢の喫茶店の最後のマッチだった。

その晩、五郎(田中邦衛)は草太の父である清吉(大滝秀治)に呼び出されていた。
清吉の質問は、雪子は草太に気があるのかという事だった。五郎は笑いながら否定するが、清吉はなおも食い下がった。草太自身が、雪子と相思相愛だと言っているのだという。清吉は、若者同士の恋愛は応援したい一方で、跡継ぎである草太が家を出て行くことを心配しているのだ。元々、草太は都会で仕事をしたがっていた。それを何とか説得して、牧場の跡継ぎとさせることができた。雪子はいずれ麓郷を出て行くと思われる。その時に、草太が後を追うことを心配しているのだ。
清吉は、雪子に永住する意思があるのかどうか、確かめて欲しいと五郎に頼むのだった。

家に帰ってきたが、五郎は雪子に話を聞くことができなかった。
すると雪子が、突然、一度東京に戻ると話し始めた。姉・令子(いしだあゆみ)に預けている荷物の整理のために、10日ばかり帰京すると言うのだ。それを口火に、五郎は清吉に頼まれた質問を雪子にぶつけた。しかし、雪子の返事は煮え切らなかった。それについては、東京でゆっくり考えたいと言うのだ。五郎は、今日のところはそれで納得した。

翌々日、雪子は東京へ旅立った。純と螢は、母・令子に「元気にしています」とだけ言付けた。雪子はすぐに帰ってくると約束したが、その他は口数が少なかった。純と螢は、雪子がもう帰ってこない気がした。
雪子が帰った日の夜、何もしらない草太が家に遊びに来た。五郎から雪子の帰京を聞かされて、草太は激しいショックを受けているようだった。

その晩からまた雪が降りだした。

* * *

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