『螺鈿迷宮』 海堂尊

映画ドラマ化されて大ヒット中の小説『チーム・バチスタの栄光』の続・続編の『螺鈿迷宮』を文庫で読んだ。

上巻の方は、前作まででおなじみのメンバーがほとんど出てこないので、少々退屈だった。
とはいえ、前作『ナイチンゲールの沈黙』でも、いわゆるレギュラー陣はなかなか出てこなかったことを思い出した。最終的には”いつものあの人”が出てくるわけだが、ストーリーの前半は新登場の人物たちが話を進めていくというのが、このストーリーのスタイルだと今さらながら気づく。そう思い至ってみれば、退屈という評価は不当かもしれないが。
#なお、『チーム・バチスタの栄光』の田口先生も大局的に見れば脇役っぽいよね。

今回の『螺鈿迷宮』は、双子の女性医師、すみれと小百合が出てくる。序盤をボーっとして読んでしまったので、最後までどっちがどっちだかイマイチ頭の中で整理が付かないまま終わってしまった。
この二人の表裏一体さ加減は、どうやらストーリーのキモになってるようだから、これから読む人はきちんと注意深く読むことをお勧めする。
#この前まで連載していた”だんだん日誌”では、あんなに双子の違いに注意して文章を書いていたつもりの当方が、こういうミスを犯すとは。とほほ。

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『0〜3さいはじめての「ことば」』(小林哲生)

昔から、同性の友達が少なくて、異性の友達の多い当方ですが。

しかし、30も半ばという年齢に差し掛かると、そんな女の子友達もどんどん人妻になっていくわけで。人妻になっちゃうと、なんとなく旦那に対して気まずくて、以前のように遊びに誘いにくくなってしまったり。僕の最後の心の友だと思っていた女の子も、先日会ったら「私、来年の5月に結婚することにしたから。(スペード)」と、超クールに報告されたり。あああ。

とはいえ、昨日の夜「年が明けたら、一緒に京都競馬場に行きましょう!(はーと)」なんて美人妻から誘われるという出来事があり、嬉し恥ずかしで羽束師の辺りをgoogle mapsで見たりしながら、二つ返事でデート(デート?デートなのか!?)の約束をしてしまったわけだが。

そう、子どもがいない人妻だったらまだ良いのだ。
妊娠中だったり、子どもが小さかったりする人妻友達なんかになると、旦那はもちろん、子どもにも気兼ねしてさっぱりご無沙汰になってしまうわけだが。
そんな感じで、女友達の3人が妊娠したというニュースをここ1ヶ月のうちに断続的に聞き、ちょっぴり寂しくなるなぁなんて思っている今日この頃。

もちろん、仲の良い女の子たちから、可愛い赤ちゃんが生まれてくるのかと思うと、つい僕のほっぺたも緩んでしまうけれど。

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『聖の青春』(大崎善生)

村山は旅立った。どこからどういうルートで向かったのか大阪から函館に着くまでに、6日間を費やしたという。
 (中略)
「北海道って、花ばかり咲いていて、何もないところなんですね」
電話の向こうで村山は、とても晴れがましい声で言った。
それでいいんやと、口には出さなかったが森は思った。それを知るために旅があるんだ。

ガイドブックも何もない、行き当たりばったりの旅に憧れてしまいますな。
本に書かれていることを確認しにいく旅じゃなくて、自分で何かを発見する旅をしたいですな。

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『錦繍』 宮本輝

>宮本輝の作品はほとんど読んだというトモエンジェルさんが、一番好きだと言っていた、宮本輝の『錦繍(きんしゅう)』を読んだ。

確かに、これは良い。
男女の後ろめたい過去と、決意を秘めた将来が、美しい日本語でゆっくりと語られていく。
読んでいて、本当に気持ちのいい小説だった。

10年ほど前に、スキャンダラスな事件に巻き込まれて離婚し、音信不通だった男女が、旅先の山形で偶然の刹那的な再会を果たす。女は、逡巡しながらも、正直な気持ちを打ち明けたくなって手紙を差し出す。

前略
 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした。私は驚きのあまり、ドッコ沼の降り口に辿りつくまでの二十分間、言葉を忘れてしまったような状態になったくらいでございます。

有名な文学作品は、たいてい印象的な出だしであるものだが、この『錦繍』の冒頭文も僕は一生忘れないんじゃないかと思う。

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“REAL NIKKEI Style (3)”に永作博美の記事

山瀬まみを除けば、一番好きな女性芸能人として永作博美を挙げる当方である。
今年は彼女が主演している映画を2本(『人のセックスを笑うな』、『同窓会』)も見に行ったし、テレビドラマの『四つの嘘』も見た。

知り合いのblogで、「REAL NIKKEI STYLE” という季刊誌の最新号が発売になり(秋冬号)、そこに永作博美の対談記事が掲載されていると知ったので、本屋に走って同誌を買ってきた。

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『良い経済学 悪い経済学』(ポール・クルーグマン / 山岡洋一 訳)

ポール・クルーグマンが今年のノーベル経済学賞を受賞したということで、数年前に買ったきり読まずに放置されていた『良い経済学 悪い経済学』を読んだ。

本書を貫くメッセージはとてもわかりやすい。当方の言葉でまとめるなら
「”経済のグローバル化によって、激しい競争に巻き込まれ、多くの人が疲弊する” と世の人々は思い込んでいるけれど、それは誤り。」
ということ。
自由貿易を進めることで多くの人の暮らし向きは良くなるし(リカードの「比較優位理論」に基づく当たり前の結論)、発展途上国の安い労働力に職を奪われるという懸念も杞憂であり無視しうるほど小さい影響しかない(対GNP比で見れば、発展途上国からの輸入分は微々たるもの)というのが、クルーグマンの見解。

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『ご指名!古都のバスガイド』 木島亜里沙

某知人が密かに熱いまなざしを送っている、奈良交通のバスガイドさんである木島亜里沙さんの手記『ご指名!古都のバスガイド』を入手した。

奈良交通は普段から路線バスでお世話になっている地元企業だし、本のカバーを見るとかわいこちゃんだし。

ていうか、上記知人が彼女の本を買おうとしているらしく、
「彼女を渡すもんか!俺が先に入手してやる!」
と、独自に彼を恋のライバル視して、早急に入手した次第。

つーか、これ、以前に買った『新幹線ガール』と同じ出版社なんですな。

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『優駿』 宮本輝

家で猫を飼っていたり、干支が寅であったり、野球チームは阪神を応援していたり(関西ではこう言わざるを得ない)と、ネコ科系動物派を自称する当方は、お馬さんにはまったく興味がないわけで。

ところが最近、某マイミクさんが札幌競馬場に足繁く通っていたり、別のマイミクさんが乗馬体験に出かけたり。そういや、某古い付き合いのおねーさんも昔競馬関係のWEBサイトで名を上げていたとか、いなかったとか。そんなわけで、にわかに当方の周辺でお馬さんが熱くなってきている。

ていうか、よく考えたら、北海道の胆振・日高地方で育った当方。このあたりには、静内、浦河、社台、千歳などの、競走馬の生産地がたくさんある。思い出したんだけれど、高校や予備校の同級生に牧場の息子ってヤツが何人かいた。中には、現在、競走馬の牧場で働いている知人もいたり、いなかったり。

馬に対して、これだけ間接的な関係がある当方なのだから、なにか馬にまつわることに手を出さなくてはいけないような気がしてきた。

そんなわけで、競馬伝説 Live!なるオンラインゲームで遊び始めてみた(無料でも遊べる)。自分で競走馬を育てるという、「ウィニングポスト」や「ダービースタリオン」っぽいゲームだ。

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『あしたの虹』 ぱーぷる

今、NHKのニュースとかで知ったんだけれど、瀬戸内寂聴が “ぱーぷる” というペンネームでケータイ小説を書いたんだって。
タイトルは『あしたの虹』で、ヒカルという金持ちのボンボンが父の再婚相手に惚れてしまう話だそうだ。

似たような話があったなぁと思ったら、源氏物語だ。光源氏と藤壺だ。ペンネームも紫式部が元ネタらしいし。

探してみたら、『あしたの虹』はここで読めるっぽい。
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『わたしのハムスターを化石で残すには?』 ミック・オヘア

ミック・オヘア著(勅使河原まゆみ訳)『わたしのハムスターを化石で残すには?: アマチュア・サイエンティストに贈る驚くべき実験の数々』を読んだ。

メインタイトルだけを見ると、シャレたタイトルのミステリー小説のようにも思えるし、深遠な哲学的議論の書物にも見える。僕も本屋でこの本を見かけて、タイトルの意味がさっぱりわからなくて、気になって手にとってしまったクチ。
実際には、サブタイトルにもあるとおり、”サンデー・科学者” 向けに家で簡単に試せる実験の紹介をしている本。もとは、イギリスの科学週刊誌 “New Scientist” の中のコーナーだったらしい。読者からの素朴な疑問を、実験を行って説明するというもの。そのため、扱っている現象が日常生活でよくある話だし、実験のやり方も簡単だし、その説明や理論的根拠がしっかりと説明されていて、マジメな読み物。
中身はマジメなんだけれど、著者の語り口が軽妙で、いちいち笑える。

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