某知人女性(当方の仲良しの中では珍しい正統派美女)から結婚するという報告を受け、なんだよマジかよ、俺の方が良いに決まってるって、考えなおせと思ったのだけれど、彼女の夫になる人は尾野真千子のファンで朝ドラも毎日見ているという話を聞いた途端、「それなら良いヤツだ。幸せになれ!」と心の底から祝福することに決めた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第134回目の放送を見ましたよ。
1986年(昭和61年)1月。
呉服屋の若旦那・吉岡(茂山逸平)を一度だけ助けるつもりで作ってやったシルバー向けスーツが大ヒットした。
吉岡によれば、サンプルを持って得意先回りをしたところ、たった1週間で予定販売数の半分が売れたという。客に話を聞くと、スマートでお洒落なデザインであるばかりか、高齢女性の体型や気持ちによく合い、着心地が良いと感想を述べたという。1着18万円という価格でも飛ぶように売れたのだ。
糸子は、自分がデザインしたのだから当然だといって、機嫌を良くした。
吉岡の友人の河瀬(川岡大次郎)が、知人の高山(藤間宇宙)に声をかけた。彼は商社のアパレル部門で働いている。彼の会社で販売に協力したところ、瞬く間に売れてしまった。そこで、生地を追加輸入し増産するほどになったという。
大きな手応えを感じた3人は、本格的に糸子のブランドを作りたいと思うようになった。そこで揃って糸子に頼みに来たのだ。糸子はとても嬉しかった。自分のデザインした洋服が世間で広く受け入れられたことは自信に繋がったし、若者たちが自分を一流のデザイナーだと認めて熱意に商売に誘ってくれたことも嬉しかった。
けれども、糸子は話を断った。
糸子は、自分は「オーダーメイド職人」としての矜持があるのだという。自分は洋裁職人として50年間働いてきた。その間、10年間は戦争のためにやりたい仕事がやれなかった。そして、戦争が終わったと思ったら既製服の時代になり、オーダーメイドは儲からなくなった。糸子自身、何度も既製服産業への転向を考えたりもした。
それでもなお、糸子は自分は一生をオーダーメイド職人として生きていく意地があるのだという。たとえ最後の一人となっても、オーダーメイドをやめるわけにはいかない。だから、これ以上既製服デザインの手伝いはできないといって、申し訳なさそうに断った。若者たちを助けたい気持ちはあるが、それができない。糸子は誠意を持って話したつもりだった。
ところが、若者たちはそんな糸子をバカにした。今さら「意地」などといっても流行らないというのだ。その態度に、糸子はいっぺんに腹を立てた。3人に二度と来るなと言って追い出してしまった。
それでも、糸子は自分の実力が認められたことは嬉しかった。気持ちにもハリが出てきた。
少し迷いのあった糸子は、直子(川崎亜沙美)に電話で相談してみた。シルバー世代向けの商品は自分には絶対に作れないだろうと言って、直子は感心した。けれども、プレタポルテの厳しさを知っている直子は、糸子がそれを始めることに反対した。気持ちばかり若くても、体力的に厳しいと言って、老いた母をいたわったのだ。
その言葉に納得した糸子は迷いが吹っ切れた。
糸子はまだまだ一線で働きたいと思うし、新しいことに挑戦したいという意欲はある。けれども、体力の衰えを自覚して自重してしまうのも事実だ。膝や腰が痛むので、最近では寝室のある2階との階段の登り下りにも苦労する始末だ。
重い体を引きずるようにして階段を登っていると、足を滑らせて転げ落ちてしまった。
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