「死にたい」とか言ってる人に言いたいこと

他の人に比べて、僕が特にそういう場面に出くわす機会が多いとは思っていない。きっと、誰しも何回かはそういうケースに出くわしたことがあるだろう。たまにいるのだ、「死にたい」と口にする人。ネット上では「タヒたい」などと表記される場合もある。

幸いなことに、僕がこれまで経験してきた中では、そう言って本当に死んだ人はいない。たいていは冗談だったり、ごく瞬間的に心が弱っているだけだったり、ため息代わりにそう発言するのが癖になっていたりするだけだったりする。

しかし、そう言われるたびにこっちはドキドキする。
もしかしたら冗談じゃないかもしれないし、もう何日も神経が参っているのかもしれないし、深刻な心境の吐露かもしれない。本当に目の前で飛び降りたり、毒を飲んだり、頸動脈を切ったりするかもしれない。そんな様子を目の当たりにしたら僕はいったいどうすりゃいいんだ、とドキドキする。目の前ではなかったとしても、後日その人の自死を聞いたりしたら、それはもう、こっちまで「タヒたい」と言うほど落ち込むだろう。

だからもう、軽々しく「死にたい」なんて言わないで欲しい。マジで。そっちは「今日は天気がいいですね」程度の軽い挨拶程度の冗談のつもりで言ってるのかもしれないけれど、こっちはそれが本気か冗談かわからないんだ。いちいち振り回されてシンドイんだ。マジで。
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NHK『あまちゃん』第13回

宮藤官九郎『え、なんでまた?』のあとがきに「2013年2月11日現在『あまちゃん』の91話を書いています。・・・(中略)・・・ほぼ1日1話ずつ書いています」とあり、それから60日強経過したわけで、1日も休まなければすでに最終話(156回)を書き終えている頃だろうなと思いつつ、さすがに休みは取るだろうから20話/月と考えれば、今は140話前後を書いてるのかなと想像する当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第13回目の放送を見ましたよ。

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第3週「おら、友だちができた!」
春子(小泉今日子)は土壇場で袖が浜に残ることにした。アキ(能年玲奈)が帰ってきたことで、夏(宮本信子)はたいそう喜んだ。

しかし、春子は不機嫌だった。なぜ夏が引き止めに来なかったのかと食ってかかった。ただし、春子が言っているのは今朝のことではなく、24年前の家出の時のことだ。その前の晩、春子(有村架純)は布団に入った夏に対して、海女になりたくないこと、東京に行きたいことを話した。夏が寝たふりをしていたことは分かっていた。だから、夏は知っていながら春子の東京行きを無視したのだ。

夏は去る者は追わずがモットーだと言って取り合わなかった。春子はますます頭にきた。残ることに決めたのはアキのためではなく、自分のためだと言う。夏を自分の方へ振り向かせることが目的だというのだ。それでも春子は素直になれない。今度自分が出て行く時は泣きながら旗を振らせてやる、などと喧嘩腰だ。

夏は、あの言葉を言えと迫った。春子は不貞腐れながらも「ただいま」と言った。夏は高笑いしながら「おかえり」と答えた。無器用ながらも、春子の24年に渡る家出が終わった。

アキは早速、海女クラブへ行って、袖が浜に残ることを報告した。海女たち(渡辺えり木野花美保純片桐はいり)も喜んでくれた。

続いてアキはユイ(橋本愛)に会って報告した。ユイは、上京した時に頼る相手がいなくなったと言って一瞬暗い顔をするが、そもそも自分の方がアキより東京に詳しいのだから問題はないと茶化した。

ユイは、アキに学校のことを尋ねた。アキは、東京での自分は暗くて、学校には友だちも恋人も、好きな人すらもいないと答えた。それを聞いたユイは、自分も仲のいい相手はいるが、友だちはいないと同調した。さらにユイは、この街が好きか嫌いかという事も考えたことがないという。どうせ街を出て上京することに決めているのだから、変に情が移らないように、目を背けているのだという。

それでも、ユイにとってアキとの付き合いは別なようだった。袖が浜に住むのなら、自分と同じ高校へ編入しろと勧めた。一緒に通学できるから良いと言うのだ。その言葉に従って、アキは北三陸高校へ編入した。

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NHK『あまちゃん』第12回

昨夜、不意に過去の自分の大失態を思い出してしまい、The 虎舞竜の『ロード』(作詞作曲・高橋ジョージ; 歌詞)をもじって、「ちょうど10年前に新幹線に乗った夜。昨日のことのように今はっきりと思い出す。週末のせいで指定席は満席さ。どこまでも続く黒いオヤジ頭が汚くて。サイドシートの君はまるでマグマのように、無表情のまま毒リンゴの魔女。ニヤニヤ話した俺を恨めしそうに睨んで、俺の言葉を繰り返し『なにそれ、信じられない・・・』と言った。何でもないような事(だと俺が思い違いしたこと)が最悪だったと思う。とんでもない夜の事、二度とは戻れない夜」などとヤケクソ気味に歌っていた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第12回目の放送を見ましたよ。

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第2週「おら、東京さ帰りたくねぇ」
楽しかった夏休みも今日で終わりだ。明日の朝、アキ(能年玲奈)は東京に帰らねばならない。アキはそのことを納得していた。抗うことなく、定められた運命を受け入れていた。漁協でみんなに別れを告げた。来年の夏休みに再び来ると約束した。

しかし、海女たち(渡辺えり木野花美保純片桐はいり)は仕事の手を休めず、アキの話も聞き流すような態度だった。それどころか、自分たちは高齢だから、来年は仕事を辞めているかもしれないなどと冷たいことを言う始末だった。

短期間だが東京で働いていたヒロシ(小池徹平)は、アキにカレーショップの無料券をくれた。漁協長・長内(でんでん)は、海女たちの言ってることは本心ではない、来年も仕事をしているはずだから心配するなと言う。

夏(宮本信子)は剥いたばかりのウニの身を手ずからアキに食べさせ、「忘れるな」と一言告げるだけだった。

結局、アキを引き止めたり、名残を惜しんでくれる者は一人もいなかった。

しかしそれは、みんなの本意ではなかった。みんなは喫茶・リアスに集まり、こっそりと相談していた。アキは24年ぶりの若い新人海女だ。それが観光業に与える良い影響を考えると、彼女を手放したくなかった。

海女たちは、駅長・大向(杉本哲太)の春子に対する恋心も焚きつけた。春子(小泉今日子)が東京に帰ってしまう前にプロポーズしろと言うのだ。

けれども、アキや春子を引き止める良策は見つからなかった。それどころか、肝心の夏がサバサバしており「去るものは追わず」などと言うものだから、打つ手が見つからなかった。

春子は、最後にもう一度アキの本心を確かめようとした。ところがアキは、吹っ切れたので東京に帰ることに異存はないと答えた。一人ぼっちの正宗(尾美としのり)のことをかわいそうに思う、北三陸市に友達ができたので満足している、来年また来ればいい、などと答えるのだった。

すると、そこへ夏が帰宅した。春子は夏ともう一度話し合いたかった。しかし、夏は朝が早いなどといって布団に入ってしまった。その様子を見た春子は頭にきた。24年前と態度が同じだというのだ。

1984年、高校生だった春子(有村架純)は地元の人々から海女になるよう要請された。判断に困った春子は夏に相談したかった。しかし、その時も夏は何も言わずに、さっさと布団に入ってしまった。それで、春子は誰とも相談できずに、翌朝家出したのだ。

その時のことを引き合いに出し、春子は夏を罵った。いつも夏は相談にのってくれない。肝心なことは全て春子一人に決めさせようとする。親なのにズルいことだなどと一方的にまくし立てた。けれどもやはり、夏は何も答えなかった。

翌朝、海女たちは家まで見送りに来てくれた。しかし、夏の姿はなかった。彼女は早朝から海に出てしまい、一言も別れの言葉はなかった。アキは大向の運転する車の中から、世話になった海女たちや袖が浜の珍しい風景を眺めた。さっきまでは気丈に振舞っていたが、やはり寂しかった。密かに半べそをかいてしまった。

駅に着くと、春子とアキは大向に明るく礼を言った。春子に惚れており、みんなに応援されている大向であったが、やはり改めてプロポーズすることはできなかった。来年の再会を約束するだけだった。列車の時刻が近づくと、無情にも発車ベルを押した。

春子が先に列車に乗り込んだ。しかし、アキはホームから動こうとしない。夏が見送りに来ないとつぶやくのだった。東京へ帰ることはアキが納得して自分で決めたことだと言って、春子はアキを急かした。しかし、アキはまだ動こうとはしなかった。

ドアが閉まる直前、アキは意を決して列車に飛び乗った。それと入れ替わるように、春子はホームに飛び降りた。慌てた春子はアキの腕を掴み、彼女を列車から引きずり降ろした。その瞬間、ドアが閉まり、大向だけを乗せて列車は出発してしまった。

アキは笑顔で夏の家に戻った。夏はアキの意外なUターンを喜んだ。泣きそうな表情になり、心の底からアキを歓迎した。

そんなアキと夏を尻目に、春子だけは虫の居所が悪かった。夏に対して、待っていたのにどうして来なかったのかと問い詰めた。夏はワカメが沢山採れたなどととぼけようとしたが、春子の口撃はやまなかった。それどころか、春子が問題にしているのは今朝のことではなく、24年前のあの日のことだった

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NHK『あまちゃん』第11回

菊池桃子の『卒業 -GRADUATION-』(作詞・秋元康、作曲・林哲司)のサビ「4月になるとここへ来て 卒業写真めくるのよ あれほど誰かを愛せやしないと」が大好きで、ここ数日脳内ヘビーローテーションしているわけだが、それ以外の歌詞を覚えていないので調べてみたところ、「誕生日にはサンテグジュペリ ふいに贈ってくれた 一行おきに好きだよと青いペンで書いてた」という部分があり、それはさすがにちょっとキモいなと思った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第11回目の放送を見ましたよ。

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第2週「おら、東京さ帰りたくねぇ」
アキ(能年玲奈)の素潜りの練習が始まった。当然、初めからうまくいくものでもなかった。海底にウニがあるのを見ることはできたが、手を伸ばしても獲ることはできなかった。夏(宮本信子)らからは、「ウニだと思うから取れない、銭だと思ったら獲れる。1個500円だ」などとからかわれるのだった。

素潜りの練習と並行して、アキは列車でのウニ丼販売も続けていた。

アキは、駅のホームで先日のカメラ小僧・ヒビキ一郎(村杉蝉之介)を見つけた。彼の盗撮騒ぎのおかげで、結果としてアキは1分以上息を止めることができ、海女の見習いとして認めてもらえた。そのことを彼に感謝した。

しかし、ヒビキ一郎の態度は冷たかった。つきまとうアキに対して「どけよブス、邪魔なんだよ」などと暴言を吐くのだ。彼は浴衣姿のユイ(橋本愛)を釣れ出しており、彼女の撮影をしているのだった。

アキはユイのかわいらしい姿に見とれてしまった。ユイには一度挨拶したことがあったし(第5回)、列車でもよく見かける。けれども、自分のことなど覚えていないだろうと思い、これまで声をかけそびれていた。すると、ユイがアキに話しかけてくれた。彼女はアキの名前も素性も全て覚えていた。ふたりは意気投合し、しばしおしゃべりをした。

あのカメラマン・ヒビキ一郎はユイのブログを見てコメントをくれたのだという。それで今日初めて会って、撮影モデルになったという。それから、アキに東京のことを聞いた。アキが世田谷に住んでいると知ると、ユイは感激した。下北沢や三軒茶屋などがあり、演劇やライブなどのメッカだと聞いていたからだ。しかし、ユイはまだ一度も東京に行ったことがないのだという。

アキとユイは友だちになった。単なる友情に留まらず、恋心にも似た感情を抱いた。アキはぼんやりとユイのことばかり考えるようになった。

別の日には、北三陸秋祭りの準備を見に行った。その祭りは9月に行われるもので、巨大な山車が街を練り歩く。夏の間に、人々が総出で準備を行うのだ。ふたりも夜遅くまで山車作りを手伝った。

ふとアキは寂しくなった。秋祭りが開催される9月には、アキは東京に帰ってしまっている。この勇壮な山車が動くところを見ることができないのだ。アキは東京が好きではない。その上、大好きになったユイに会うこともできなくなってしまうのだ。

そんなアキの心境を知ってか知らずか、ユイは東京への憧ればかり話した。お台場や原宿、吉祥寺など若者に人気のスポットを次々に挙げた。しかし、アキはいずれにも行ったことはなかったし、今まで興味を持ったこともなかった。

アキは奇妙なすれ違いを感じた。ユイはアキの知らない東京ばかりを知っていて、地元の北三陸市のことには感心を持っていない。一方のアキは、東京には何も魅力を感じないのに、北三陸市のことには興味津々だ。きれいな海やリアス式海岸の切り立った岩、田園風景の中を縫って走るかわいい列車。全てがアキにとっては新鮮で素敵なものに思えるのに。

アキがユイと仲良くなったと知った春子(小泉今日子)は心配になった。彼女が東京に帰りたくないと言い出すと予測できたからだ。対して夏は、アキが帰りたくないなら残っても良いという意見だった。弥生(渡辺えり)に言わせれば、夏は夏で、これまでは一人で寂しい思いをしていたのだ。

当のアキは、本音では東京に帰りたくなかった。しかし、それは仕方のない事と諦めていた。せめて、残された時間で北三陸を目一杯知ろうと努力した。海女修行に打ち込むとともに、この地方特有の風物を見学して回った。

北三陸市の名産の一つに琥珀がある。琥珀掘りの小田(塩見三省)に坑道の案内をしてもらった。そこは彼が40年かかって一人で掘ったものだ。小田によれば、坑道は孤独であるが、自分と向き合うことができるのだという。音が外に漏れないので、大声を出してストレス発散するにも最適だという。

アキは「東京さ帰りたくねー」と叫んだ。ここに留まって、夏や春子と暮らし、毎日海に潜りたいと本音を口にした。

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NHK『あまちゃん』第10回

宮藤官九郎脚本で、小泉今日子尾美としのりがタクシー運転手をしている『マンハッタンラブストーリー』というドラマがあると知り、早速レンタルディスクを取り寄せた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第10回目の放送を見ましたよ。
2013-04-10 20.32.41

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第2週「おら、東京さ帰りたくねぇ」
正宗(尾美としのり)は、海女の仕事を手伝うアキ(能年玲奈)を遠くから眺めた。明るく快活に振る舞うアキの姿を見るのは初めての経験だった。もっとそばに行って見てみたかったが、春子(小泉今日子)に止められた。アキは正宗に会うと、いつものように暗い子になってしまうから、姿を見せない方がいいと言うのだ。

漁港の監視小屋からは、ヒロシ(小池徹平)もアキの姿を見ていた。彼は本来の仕事である海の監視を怠り、双眼鏡でアキの姿ばかりを追っていた。

翌朝、正宗は東京へ帰ることにした。海女姿で仕事に向かうアキを呼び止めた。正宗のことをあまり好いていないアキはあまり喋ろうとしない。正宗がまた会いに来るなどと話すと、暗い表情を浮かべた。しかし、東京にいた頃のアキとは少しだけ違っていた。すぐに表情を取り繕い、次に正宗が来る時までには海に潜れるようにしておくなどと、少しは正宗の再訪を歓迎するような発言をした。そして、歩き去りながら、何度も振り返って大きく手を振るのだった。

そして、8月の中旬を過ぎた。春子との約束により、アキが袖が浜に滞在できるのは夏休みの間だけである。2学期からは東京へ戻って学校に通わなくてはならない。あと2週間ばかりしか残されていないが、アキはまだ素潜りを許してもらえずにいた。最初の課題である1分以上の息止めをクリアできていないからだ。

そんな時、物陰からフラッシュとシャッター音が聞こえた。立派なカメラを携えた男(村杉蝉之介)がアキのことを隠し撮りをしていたのだ。怒ったアキは彼を追いかけたが途中で見失ってしまった。

家に帰ったアキは、春子と夏(宮本信子)に報告した。春子はアキの身を案じた。隠し撮りをするような男は、逆上すると何をしでかすかわからない。もう二度と追いかけたりしないように言いつけ、警察に連絡するといって息巻いた。

一方の夏は楽観的だった。昔から海女漁の時期になるとカメラ小僧が現れるのも恒例だと言うのだ。さらに、彼らにカメラを向けられているうちが女としての花盛りだと言って笑い飛ばした。しかも、夏はその男の存在をすでに知っていた。話してみたところ悪い人間ではなかったという。それに大事な観光客だから邪険にできないと言うのだった。

春子と夏は互いに相手を罵り合った。春子が「田舎者はすぐに誰でも信用してしまう」と言えば、夏は「東京の人は被害妄想が大きすぎる」などと応えるのだった。

翌日から、春子も浜に出て不審者がいないか見張ることにした。案の定、怪しい男が現れた。春子が大騒ぎして追いかけると、アキの指導をしていた美寿々(美保純)らもつられて持ち場を離れてしまった。ヒロシにサイレンを鳴らさせ、漁港中で警戒したがその男を捕まえることはできなかった。

水の中で息を止めていたアキは、浜での騒ぎに全く気づかなかった。1分以上息を止めることに集中し、じっとしていた。アキはずいぶんと長い間息を止めることができた。しかし、顔を上げると、沖の方へ流されていた。夢中だったために自分が流されていることに気づかなかったのだ。監視していたはずの人々も、カメラ小僧を追いかけていたためにアキから目を離してしまったのだ。

アキは偶然通りがかった漁船に助けられ、大事には至らなかった。しかし、春子は大騒ぎして、もう海には入るなと言うのだった。一方の夏は、潮に流されることは誰しも一度は経験することであるし、アキを過保護にしすぎるのも良くないと応えた。

美須々が持っていたストップウォッチを確認すると、アキは少なくとも1分40秒以上息を止めていたらしいことがわかった。アキは最初の課題を達成したと認められた。ようやく海女としてのスタート地点に立った。

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NHK『あまちゃん』第9回

昨日、本作に歌手としての小泉今日子本人は登場するか気になるというという話を書いたのだが、喫茶リアスに来た観光客が「ママさん、小泉今日子に似てるって言われない?」、「よく言われるんですよー」というベタなネタがあるといいなぁと思う当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第9回目の放送を見ましたよ。

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第2週「おら、東京さ帰りたくねぇ」
東京から父・正宗(尾美としのり)が妻子を追ってやって来た。アキ(能年玲奈)は、父の小言から逃げるために海に飛び込んだ。それでその場は収まった。

正宗と春子(小泉今日子)は話し合いをすることになった。その間、アキは漁協の海女クラブで時間を潰す事となった。

アキは袖が浜の人々の過去について様々な話を聞いた。駅長・大向(杉本哲太)と安部(片桐はいり)が半年だけ結婚していたこと。漁協長の長内(でんでん)とかつ枝(木野花)も元夫婦で、現在は離婚しているが一緒に住んでいること。美寿々(美保純)は男と何度も駆け落ちをしては、別れて帰ってきた。

かつ枝と美須々は異口同音に、人にはいろいろなことがあり、それを乗り越えて今がある。様々な事情を抱えて戻ってくる。受け入れる側も、それをわかっているから優しく受け入れるのだと話した。

その話を聞いて、アキは胸のつかえが取れた気がした。

その頃、夏(宮本信子)の家では、正宗はどうして春子が出て行ったのかわからないと文句を言っていた。一方の春子は、夫婦関係が冷えきっていたのは分かっていたはずだと反論した。ふたりの話は平行線だった。

そこへ夏が割って入った。春子の父・忠兵衛(蟹江敬三)は遠洋漁業の漁師で、年に10日ほどしか家にいなかった。そのせいで、春子は普通の家庭とは違った育ち方をしてしまったと弁護した。それを聞いた正宗は、自分は家庭を最優先する良い夫であり父であったと主張した。

春子は、そうした正宗の態度がアキのことを追い込んでいたと反論した。アキにいい子に育って欲しいという願いや言動が逆方向に働いた可能性があるというのだ。

その日の話し合いはそれで終わった。正宗は同席していた大向に送られて、駅前のビジネスホテルに宿泊することになった。なお、大向の指摘で、春子の書いた離婚届には不備のあることがわかった。妻の欄は離婚前の苗字と印鑑でなければならないのに、春子は離婚後のものを記入してしまったのだ。先に投函した離婚届は無効であった。

アキが帰宅した。春子は大儀そうに正宗との話し合いの結果を説明しようとした。しかし、アキは春子を遮った。人にはいろいろあるものだなどと達観した一言を述べて、そのまま寝てしまった。

その頃、喫茶兼スナック・リアスには、正宗が大向らと一緒にいた。正宗は春子との馴れ初めについて語った。

1989年(平成元年)、24歳だった正宗(森岡龍)は、世田谷から上野駅まで客を乗せた。それは23歳の春子(有村架純)だった。道が混んでいたので、ふたりは様々な話をしたという。春子は、東京での生活に疲れたので田舎に帰ると言っていた。東北の出身だと打ち明けていたので、上野から列車に乗るのも当然であった。

上野で春子を降ろした直後、正宗がタクシーを流していると女性に呼び止められた。それは春子だった。彼女は列車に乗らなかったのだ。ふたりの再会も偶然だった。タクシーは先程の道を逆に進んで世田谷へ戻った。連絡先を交換し、相談に乗っている間に交際を開始した。その年に結婚し、2年後にアキが生まれたのだという。

正宗は、家族との時間を大切にしていたと話した。土日は仕事を休みにし、平日も6時には仕事を上がるようにしていた。これだけ家族思いなのに、春子が出て行く理由がわからないと言うのだ。

話を聞いていた弥生(渡辺えり)の意見は逆だった。むしろ、正宗のメリハリのない生活が問題なのだという。弥生の父も漁師で、半年に1度しか家に帰ってこない。たまに父が帰ってくると、母はとても嬉しそうにしていたのだという。しかし、1週間もすると父のことが邪魔になり、ケンカが始まるのだという。

弥生の結論としては、時には距離を置くのが長続きのコツであり、四六時中一緒にいたら会話すらなくなるのは当然だというものだった。

翌朝、正宗は再び袖が浜ヘ向かった。今回は、アキが働く姿を遠くから眺めるに留めた。すると、今まで学校や家庭で見せたことのない、溌剌としたアキの姿を見ることができた。とても明るい笑顔と声だった。

そこへ、春子もやって来て、ふたりでアキを眺めるのだった。

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NHK『あまちゃん』第8回

本作は2008年の岩手県北三陸市袖が浜という架空の土地を舞台にしているわけだが(NHKオンデマンドで地図やセットデザインが公開されている)、松田聖子など実在の歌手が出てくるなど現実の日本ともリンクしており、そうすると当然3年後の東日本大震災が劇中で描かれるかどうかが焦点になってくるのだが、とりあえずそれは脇に置いて、松田聖子と肩を並べるほどのアイドルであった小泉今日子本人がこのドラマの世界に存在しているのかどうか、存在するとするなら小泉今日子が歌う映像が流れるのかどうか、それが気になって仕方のない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第8回目の放送を見ましたよ。

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第2週「おら、東京さ帰りたくねぇ」
漁業組合長の長内(でんでん)は北三陸駅前で奇妙なタクシーに乗り込んでしまった。袖ヶ浜の漁協へ行けと言っても、運転手(尾美としのり)は道がわからないと言うのだ。聞けば、東京から来たのだという。運転手にとって好都合だったことは、彼も袖が浜に行こうとしていたことだ。結局、長内が運転して目的地へ向かった。

その日の海女修行を終えたアキ(能年玲奈)は、漁協の海女クラブでおしゃべりをしていた。そこへ長内がやって来た。妙なタクシー運転手に会って、自分で運転してきたなどとボヤいた。長内は、海女は楽しい事ばかりだと思っているアキに対して、いきなり潮に流される等の危険もあると釘を差した。

その時、アキは古い海女の写真が貼られているのを見つけた。その写真の海女たちは上半身裸であり、アキはたいそう驚いた。その様子を見た長内は、裸だと水の抵抗が少なくて潜りやすい、新人海女は裸で踊るのが常だなどと言い出した。アキは裸になるのが嫌で落ち込んでしまった。

帰宅したアキは、夏(宮本信子)に理由も言わず海女になるのをやめると言い出した。わけの分からない夏は、アキが漠然とした不安を抱えているのだろうと思い、「慣れれば平気だ」などと慰めた。アキは、裸になることにもすぐに慣れると言われているのだと思い込み、ますます頑なに拒否するのだった。

すぐに長内と海女・かつ枝(木野花)が家にやってきて、裸で潜るのは冗談だと種を明かした。昔は確かに裸で潜っていた時代もあるが、それは夏が結婚する前の事だという。そして、裸で潜るのをやめるきっかけを作ったのが、アキの祖父・忠兵衛(蟹江敬三)なのだという。

当初海女漁は、男たちが遠洋漁業で留守にする間、自分たちの食料を獲得するために行われていた。それがいつしか、客相手の観光業としての側面を有するようになったという経緯がある。女たちの裸が見世物になっていることについて、忠兵衛ら街の漁師が怒りの声を上げたのだ。海女の夫たちは1年のほとんどを遠洋で過ごしており、妻の裸を見ることができない。それなのに、観光客が野放図に見物するのが許せないと言って実力行使で漁協に詰め寄ったのだ。

その働きによって、海女が裸で潜ることは取りやめられた。そして、夏はその時の忠兵衛の姿に惚れ込んでしまった。それがきっかけでふたりは結婚したと話すのだった。アキは感激した。

その頃、離婚届を書き上げた春子(小泉今日子)はポストの前にいた。しかし、なかなか投函する決心がつかないでいた。投函口に封筒を半分突っ込んで躊躇していると、突然大きなクラクションが鳴った。それに驚いた春子は思わず手を放してしまった。それで離婚届はポストに収まってしまった。

クラクションを鳴らしたのは、夫の正宗(尾美としのり)だった。春子とアキを追いかけて、仕事用のタクシーで岩手まで来たのだ。理由も告げずに岩手に帰った春子の真意を確かめようと思ったのだ。けれども春子は「手紙に書いた」の一点張りで詳しく説明しようとはしない。手短に、離婚届を速達で送ったので、東京で受け取って提出してほしいと告げるだけだった。

それから正宗と春子は、観光海女のテントへ向かった。そこでは絣半纏の海女姿でアキが働いていた。その姿を見るやいなや正宗は怒鳴り始めた。正宗からの電話やメールには一切応えない(これは、ケータイを海に落としたとアキは答える)など、学校の補習や塾の夏期講習を休んでおり成績低下の一途だなどと矢継早に叱った。アキは弁解できずにうつむくばかりだった。

そこへ、夏が割って入った。正宗は春子には頭が上がらないが、それ以外に対しては強気な態度である。夏に対しても単なる老海女だろうと思って見下した。しかし、彼女がアキの祖母だと自己紹介し、自分の義母にあたる人物だと知ると急に態度が卑屈になってしまった。夏から、春子と正宗は別れるはずだから、アキのことはもう関係ないと言われてしまった。正宗は、自分は別れるつもりがないと答えるのがやっとだった。

その時、肝心なアキの姿が無いことに気づいた。大きな水音がして駆けつけてみると、またしてもアキが海に飛び込んでいた。

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NHK『あまちゃん』第7回

先週の放送では能年玲奈小泉今日子の足の裏が何度も映ったというのに、それをことごとく記述し忘れてしまい、とても悔しい思いをしている足の裏フェチの当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第7回目の放送を見ましたよ。

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第2週「おら、東京さ帰りたくねぇ」
16歳のアキ(能年玲奈)は、袖が浜で24年ぶりの新人海女となった。

しかし、素人がいきなり潜って漁をできるものでもない。初めは観光客相手の雑用ばかりやらされた。ウニ殻の処分やカメラのシャッター係、まめぶ汁の配布などだ。少々間の抜けているアキは、そういった簡単なことすら満足にできず、夏(宮本信子)たちを呆れさせた。

海女の観光営業が終わると、やっと潜り方を教えてもらえた。水がとても冷たくてアキは驚いた。アキが少しずつ海に慣れていくよう指導が行われた。海での練習が終わると、掃除や後片付けを行い、海女クラブでおしゃべりをする。そうしているうちにあっという間に夜になってしまう。アキは疲れてクタクタになり、夕食を食べながら居眠りしてしまうほどだった。

アキと春子(小泉今日子)が北三陸に来てから1週間になった。夏は、春子の今後について尋ねた。

春子は離婚することを決めたと打ち明けた。これまで結婚のことすらまともに報告していなかったが、ごく簡単に夫(尾美としのり)のことを説明した。タクシー運転手であり、とてもいい人であった、と。

夏は春子の離婚についてとやかく言わなかった。離婚するということは春子が東京に帰る理由もないという事である。夏は春子が実家に居ても良いと提案した。ただし、そのためには生活費を入れろと迫った。夏が経営している喫茶店/スナックのリアスで雇われママとして働けというのだ。これまでは夏や他の海女たちが交代で店番をしていたが、海女漁のシーズンになると忙しくなってしまうからだ。

春子は反対した。春子は帰省したことを地元の人々には知られたくないと思っていた。駅に併設された喫茶店で働けば、あっという間に街の噂になることを恐れたのである。しかし、夏によればすでに春子のことは、パチンコ店に入り浸っているというところまで含めて、噂になっているという。今さら躊躇してもしかたがないと言われ、春子は渋々受け入れた。

夏と春子は面と向かえば憎まれ口ばかり言い合っているが、一瞬だけふたりは母娘の表情を浮かべた。ふたり並んで食器を洗った。

春子が喫茶店で働き始めると、駅長の大向(杉本哲太)が入り浸るようになった。勤務中なのでアルコールは飲まないが、自動販売機で買えば安く上がるようなウーロン茶を何杯もおかわりして飲んだ。

大吉は北三陸市を盛り上げようと身を粉にして働いている。1984年に北三陸鉄道が開通し、駅員として働き始めたその日からそれは変わらない。残念ながら、彼が思ったようには発展しなかったが、田舎は田舎で良い物だと春子に水を向けた。

春子は、自分は必ずしも田舎が嫌いなわけではないと話した。田舎にいた頃のダサい自分が嫌いなのだと説明した。そして、当時の自分を知っている人々がいる街が嫌いなのだという。昔の自分を知っている一人である大向のことも嫌いだと明言した。

それを聞いた大向は逆上した。「俺はあの頃の春子が好きだ!」と叫んだ。春子がいた頃の街が好きだから頑張っているのだとまくし立てた。当時は誰もがこの街の未来は明るいと信じていた、鉄道が開通し、田舎者でもやればできるのだと自信を得た。しかし、その通りにはならなかった。自棄になった大向は、カラオケで下手くそな「ゴーストバスターズ」をがなりたてるのだった。

アキは元気に夏休みの海女生活を満喫していた。観光海女の仕事以外に、夏のウニ丼作りも手伝ったし、彼女に代わって車内販売にも精を出した。早くウニ丼を売りきれば、その分だけ早く海に行ける。だからアキは張り切って売った。
アキは列車の中でユイ(橋本愛)を見かけた。言葉を交わすことはなかったし、ユイは目を合わせようともしなかったが、アキは彼女のただならぬ雰囲気が気になって仕方なかった。

素潜りにおけるアキの目下の課題は、1分間息を止めて潜り続けることだった。しかし、アキはどんなに頑張っても20秒ほどしか継続できなかった。かなり初歩の段階でつまずいていた。

春子はついに離婚届を書き上げた。その時、夫の正宗が仕事用のタクシーで北三陸駅前に来ていた。

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NHK朝の連続テレビ小説『純情きらり』第1回

僕は未見だったので本日7:15からBSプレミアムで再放送が始まったことはただでさえ楽しみなのに、毎朝宮崎あおい能年玲奈というダブルかわいこちゃんを見ることができるんだ、こんな嬉しいことはない、わかってくれるよね、ララァにはいつでも会いにいけるからなどと独り言ちている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純情きらり』の第1回目の放送を見ましたよ。
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NHK『あまちゃん』第6回

ドラマの舞台は北三陸市という架空の街なのだが、岩手県久慈市がモデルであるということは判明しており、劇中の北三陸鉄道というのは三陸鉄道であり、第1話で主人公らが降り立ったのも同鉄道北リアス線の久慈駅を模した北三陸駅であり、地図で見るとずいぶん北にあるんだなあと驚くわけだが(‘ j ’)/、同じように久慈市の海人センターの辺りを地図で見ると駅から9kmほどの距離があることがわかり、駅長の大向(杉本哲太)が春子(小泉今日子)や夏(宮本信子)を車で送迎するのも納得なのだけれど、そのわりには春子が時折一人で駅と実家を簡単に往復したり、サイレンが鳴った途端に大向が家に現れたりするのでどうにも腑に落ちないなあと思っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第6回目の放送を見ましたよ。

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第1週「おら、この海が好きだ!」
アキ(能年玲奈)は自ら海に飛び込んだ。誰かに背中を押されるのではなく、自分の意思で海に飛び込んだ。そうすることで、アキは自分で自分の殻を破ろうとしたのだ。

海に沈みながら、アキはこれまでの学校生活を思った。クラスメイトたちから、アキは何を考えているかわからず地味でつまらない少女だと思われていた。それどころか、目の前でまるで本人がいないかのように、アキの悪口を言うのだ。東京には忌まわしい思いしかないのだ。

しかし、自ら飛び込むことでアキは変わった。海面に浮上したアキの表情は晴れ晴れとしていた。その時を境にアキは生まれ変わった。地味で暗くてパッとしない自分自身を海の底に捨ててきたのだ。

サイレンを聞きつけて海へ駆けつけた春子(小泉今日子)と夏(宮本信子)に向かって、アキは「海女になる」と満面の笑みで宣言した。

漁協の海女クラブには、話を聞きつけた人々が早速集まってきた。24年ぶりの海女の誕生に大いに盛り上がった。しかし、春子だけは面白くなかった。アキが海女になることをまだ認めたわけではないと言い、ふたりで話し合いたいと言うのだ。

アキと春子は、実家の縁側で話し合った。夏は向こうで居眠りをしていた。春子はそれがタヌキ寝入りであって、ふたりの話を盗み聞きしているだろうことは分かっていたが、放っておいた。

春子は、海女がどんなに厳しい仕事かを説明してアキを翻意させようとした。水が冷たいことや、場合によっては海難事故に遭うことなどを説明した。過酷である証拠に、もう24年間もなり手がいないのだと言った。

けれどもアキは珍しく強情だった。実際にやってみなければ、本当に良いことがあるのかないのか、悪いことばかりなのかわからないと言うのだ。

春子は自分の生涯について話し始めた。

初めての記憶は、仕事をする夏に連れられて海へ行ったことだ。幼い春子(豊嶋花)は、その時から海を見ると不安になるようになった。夏が海に潜ると、二度と浮かんでこないのではないかと、流されて死んでしまったのではないかと恐ろしくなるのだ。やっと海から顔を出すと春子はほっとした。しかし、またすぐに潜るので不安になる。その繰り返しだったのだという。

小学校高学年になると、春子(田附未衣愛)は強制的に潜りの練習をさせられた。当時の夏は今よりもずっと厳しく恐ろしかったので、春子は逆らうことができなかった。

1984年6月30日、高校3年生の春子(有村架純)のところへ、市長(北見敏之)らが訪ねてきた。翌日の北三陸鉄道開通、および、海女漁の解禁に合わせて春子を海女としてデビューさせたいというのだ。観光客やマスコミが大勢集まるので、高校生海女を話題にさせて、街を盛り上げようという目論見なのだ。夏をはじめ、周囲の人々はすでに承知済みのようだった。すでに春子の海女用絣半纏まで準備されていた。

それが嫌で、ついに春子は家出したのだ。開通した鉄道の始発列車に飛び乗って東京へ出た。それから24年間、一度も帰省することはなかったのだ。

アキは、初めて聞く母の生い立ちに興味をいだいた。祖父・忠兵衛(蟹江敬三)や、父・正宗(尾美としのり)のことも聞いてみた。

春子の父・忠兵衛は遠洋漁業の船乗りで、年に10日ほどしか家にいない。この辺りではどの家でも同じ境遇なので、そういうものだと納得はしていた。けれども、やはり寂しさを感じずにいられなかったのだという。両親共に仕事ばかりだったからだ。

そういう思いがあったので、春子は家庭を大切にしてくれる人と結婚したいと思った。漁師や船乗りではなく、陸にいて、毎日家へ帰ってきてくれる夫であり父が理想だと思った。それで正宗と結婚した。しかし、実際に正宗が毎日帰ってくると、それはそれで疲れると本音を言った。こんなはずじゃなかったのにと自嘲した。

そこまで話すと、春子は何かが吹っ切れた。結婚はやってみなければわからない。海女も同じだ。アキが海女になることを許可した。ただし、夏休みだけの期間限定とした。2学期が始まったら東京の学校へ戻り、勉学に励んできちんと卒業することを条件とした。アキは喜んで約束した。

アキは、すぐに夏に報告しようとした。しかし、そこで寝ていたはずの夏は、翌日のウニ丼の仕込みのために台所に入っていた。その代わり、床の上に海女の衣装が置いてあった。見ると、春子の名前が縫いつけてあった。24年前、春子が着るはずだった絣半纏だ。アキはそれを愛でた。

翌日、アキはその衣装を身につけ、先輩海女たち(渡辺えり木野花美保純片桐はいり)と共に磯へ向かった。最初の仕事は、観光宣伝ポスターの撮影だった。

こうして、晴れて24年ぶりに新人海女が誕生した。

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