NHK『おかえりモネ』第67回

ずっと天気が悪くて辟易している当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第67回めの放送を見ましたよ。

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第14週『離れられないもの』

1週間前、東北地方の明岩市で豪雨により土砂災害が起きた。住民たちは早めに避難し、一人もけが人がなかった。実はこの地区は、8年前にも同様の被害を受けていた。その時の経験が活かされ、住民たちの対応が早かったのだ。
しかし、道路が寸断するなど、彼らの生活は破壊されてしまった。この地区は豪雪地帯ではあったが、それまでは水害が起きたことはなかった。けれども、近年の気候変動で度々豪雨に襲われるようになった。人が暮らしにくい場所になりつつあった。

週末、朝岡(西島秀俊)が登米へ突然出向いた本当の理由は、被害に遭った明岩市を訪問することであった。誰もそのことに気づかなかったが、サヤカ(夏木マリ)だけは見抜いた。朝岡の靴が泥だらけであったからだ。そもそも、サヤカと朝岡が知り合うきっかけになったのも8年前の明岩市の土砂災害の時だった。その時も今回も、朝岡は居ても立ってもいられなくなって明岩市に向かったのだった。

テレビ局の災害担当報道記者・沢渡(玉置玲央)は、明岩市の住民たちの避難行動について特集する企画を提案した。早めの避難行動の重要性を訴えたいのだという。朝岡も賛同した。

一同は、災害によって生活が奪われることについて話し合った。それまで災害のなかった地域で災害が頻発するようになった以上、人々は移住すべきかもしれないという意見も出た。
それに対して、百音は納得できなかった。愛着のある土地から離れることは簡単なことではないと思うからだ。

仕事を終え、帰宅してからも百音はそのことについて考え続けていた。
コインランドリーで菅波(坂口健太郎)にも相談してみた。菅波は移住も致し方ないという意見だった。確かに、地域の住民にとっては受け入れがたい判断である。しかし、当事者にとって難しい問題は、第三者が助言して促すことが重要だと話した。それは、医者も同じであり、患者が判断しがたい問題に対して親身になって助言するのだという。

百音は菅波の説明を理性では理解できた。しかし、感情的に受け入れることができなかった。気持ちが落ち込むばかりで、菅波の前でうつむいてしまった。
そんな百音を落ち着かせようと、菅波は手を伸ばして撫でようとした。しかし、躊躇して手が空中で止まったままになった。

そこへ百音の父・耕治(内野聖陽)が突如姿を現した。ふたりきりのただならぬ様子を見て驚くのだった。

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NHK『おかえりモネ』第66回

鉄フライパンを買ったのが楽しくて、昨日は全く同じ材料で2回もチャーハンを作って食べた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第66回めの放送を見ましたよ。

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第14週『離れられないもの』

2016年10月。
秋は様々なスポーツ大会が開催される。朝岡(西島秀俊)は全国を飛び回り、スポーツ大会の気象分析の手伝いをしていた。運営者は大会当日の天候を知りたがっており、朝岡にとっても自身が推進するスポーツ気象を普及させる良い機会だった。
しかし、夜を徹して出張先から帰ってくるなど、朝のテレビ局の仕事にギリギリとなってしまうこともしばしばであり、周囲をハラハラさせた。朝の番組の責任者の高村デスク高岡早紀)は、そんな朝岡にイライラするようになった。

登米では、石ノ森章太郎の企画展が行われるという。彼のファンである朝岡の元へ、百音(清原果耶)を経由して案内が届いた。朝岡は。石ノ森章太郎が描いた森林に降る雨の絵が好きだなどと話した。

そんなある日、東北地方の明岩市が豪雨に見舞われた。朝岡らは深夜3時過ぎに特別緊急番組で報道した。まだ暗く、詳しい取材もできていないが、川が氾濫し土砂災害の被害が出ている模様だという。
特別番組が終わってスタッフルームに帰ってきた朝岡は、いつもの柔和な様子とは違って、どこか落ち着きがなかった。未明で情報が得られないことは仕方ないにもかかわらず、スタッフに当たるほどだった。

夜が明け、次第に詳細な状況がわかってきた。土石流が発生し、一部の集落へ続く道路が分断されたという。復旧するまで1週間程度かかる見込みだという。幸い、住民たちは早めに避難し、全員無事だという。テレビ局のスタッフたちは安堵した。
しかし、朝岡だけは厳しい表情を崩さなかった。人命が無事だったのは幸いだが、彼らの生活が破壊されてしまったと心を痛めていた。

それから1週間後の週明け、朝岡は登米の土産を持ってテレビ局に現れた。急に思いたち、百音を誘わないまま、石ノ森章太郎企画展を見に登米に行ったのだという。

土産でみんなの機嫌を取りつつ、朝岡はキャスターを翌11月いっぱいで辞め、スポーツ気象に専念すると発表した。やっとテレビ局側に受け入れてもらえたのだという。
ずっと反対していた高村デスクもついに折れ、後任キャスターには神野(今田美桜)を指名した。加えて、屋外中継を百音に任せると伝えた。

百音は、その場で出演を断った。
その場では理由を明かさなかったが、テレビに出たくて気象予報士になったわけではないからだ。近い未来の予測を元に、人を助けることが自分の使命だと思っているからだ。
しかし、朝岡も百音を強く推していた。現在はアルバイトであるが、正社員採用に切り替えるよう会社に掛け合うなどと言って応援した。

帰宅した百音はサヤカ(夏木マリ)に電話で相談した。サヤカは、百音がよく考えて判断すれば良いと助言した。
その後、サヤカは朝岡が登米に遊びに来たときの様子を話そうとした。しかし、朝岡の様子がおかしかったことを言いかけて、電話を切ってしまった。

ある日、朝岡はひとりでじっと石ノ森章太郎の雨の絵を見つめていた。

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NHK『おかえりモネ』第65回

なぜだか急に鉄製フライパンブームが始まり、鶏キャベツチャーハンを作ったらめちゃくちゃ美味しくて感動したのだけれど(プラセボかもしれない)、昨日家で使い始めの油ならしをした結果、一晩経っても家の中の油の匂いがとれなくて辟易している当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第65回めの放送を見ましたよ。

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第13週『風を切って進め』

車いすマラソンの強化選手選考会の終盤、スポーツ気象班の予測通り強い風が吹き始めた。本番3日前にその事がわかり、風が吹いたら鮫島(菅原小春)が得意としている逆風を切り裂く走りをするよう提案していた。しかし、それまでの練習では鮫島の得意戦法を封印した練習を続けてきており、鮫島は納得しているように見えなかった。
風の変化に鮫島がどう対応するか、一同は固唾を呑んで見守った。

はたして鮫島は、提案通り作戦を切り替えた。するとみるみるラップタイムが上がり、結果として55分6秒でゴールした。標準記録である55分20秒をクリアし、無事に強化選手に選ばれた。

選考会後、鮫島は初めから指示に従うつもりだったと明かした。車いすの座席を前傾姿勢用に調整し、逆風で走りやすいようにしていたのだという。スポーツ気象班を全面的に信頼していたのだ。
練習期間中、鮫島のタイムが伸び悩んだ時期があった。その時、百音(清原果耶)はデータではなく、鮫島本人の感覚や得意戦法を活かすべきだと提案した。それを聞いた鮫島は、今までの自分のやり方で上手くいかないからデータに頼ることにしたのだと激昂した。
その場では怒ってみせたが、鮫島の本心では百音の言葉が嬉しかったのだという。それで百音たちスポーツ気象チームに全幅の信頼を寄せようと決めたのだという。それで全てが上手く行った。

登米への出張で選考会の応援には行けなかった菅波(坂口健太郎)が帰ってきた。鮫島への支援が成功裏に終わったことを共に喜ぶ一方で、百音には気になることがあった。もし鮫島が百音の言葉に素直に従い最悪な結果になったら、鮫島だけではなく、百音も耐えられない失望に陥るだろうと言われたことだ。
百音には、それが菅波の経験によるものだと思われた。そこで詳しい経緯を尋ねた。

菅波によれば、それは彼が助手として初めて患者を担当したときのことだと言う。
患者(石井正則)は40代の男性で、有名な楽団のホルン奏者だった。その患者の肺にガンが見つかった。ホルン奏者にとって肺は重要な器官なので、最小限の手術で治療を行うことになった。半年後に公演も控えており、手術を行えば出演も可能だと考えられていた。
最初に病気を見つけたのは菅波であり、患者は菅波に大いに感謝し、菅波に全幅の信頼を置くようになった。

ところが、手術前の検査で気になる所見が出た。主治医は手術を見合わせ、より詳しい検査が必要だと考えた。場合によっては化学療法を合わせた治療に切り替えるべきであるとした。
しかし、菅波は予定通り手術をすることを主張した。このタイミングで手術を行わなければ、半年後の公演会に間に合わないからだ。患者はその公演会への出演会を何よりも楽しみにしており、その希望を叶えてやるべきだと強く思ったのだ。

患者本人も菅波の意見に強く賛同し、主治医は仕方なく手術を行った。ところが、胸を開いてみたら予想以上に病気が進行していた。結果として、患者はプロのホルン奏者として復帰できないほどに肺を切除することになってしまった。手術前に化学療法を適用していれば、肺の機能を残して、ホルン奏者として復帰する可能性があったかもしれない。

菅波の主張によって、患者の演奏家人生を奪う結果となってしまったのだ。
後で聞いた話では、患者本人はすぐに手術を行うべきかどうか迷っていたという。しかし、最終的には菅波への信頼が上回り、菅波の意見に従うことにしたのだという。
親身にしてくれた菅波の言葉を信じたばかりに患者は最悪な目に遭い、そのことはまた菅波をずっと苦しめることとなった。それは、菅波が百音と鮫島の関係を見て懸念したことだった。

話を終えると菅波はじっとうつむいてしまった。
百音はもらい泣きをしながら、菅波の背中をさすり続けた。

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NHK『おかえりモネ』第64回

雨で全く気分のアガらない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第64回めの放送を見ましたよ。

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第13週『風を切って進め』

暑さに弱い鮫島(菅原小春)に対して、スポーツ気象班はペース抑制と氷状ドリンク補給で体力を温存し、後半にスパートをかける作戦を立案した。しかし、鮫島の記録は思うように伸びなかった。
鮫島は、早い段階で向かい風を切り、先頭に立って逃げ切るのが得意なのだという。過去の戦績でも、実際に風の強いレースで勝っている。本人も風を切り裂くレースに喜びを感じているという。

百音(清原果耶)は、今のレース戦略では鮫島の持ち味を活かせないのではないかと思うようになった。そこで、スポーツ気象班で相談し、第2作戦を立案した。

選考会の3日前、鮫島を会社に呼んで第2案の説明をした。
当日の競技場付近の気象予報では、レース開始直後はほとんど風が吹かないという。周辺に南風は吹くものの、競技場の南側にあるスタンドによって遮られてしまうからだという。しかし、レース中に南西寄りに風向きが変化する可能性があると予測された。その方角には低いスタンドしか無く、競技場内に風が吹き込む。しかも、競技場周辺のビルの影響により、南西風はより強くなる。

もし風が吹けば、競技場のトラックの半分は追い風になり、もう半分は向かい風になる。追い風の場所では風にのって体力を温存し、向かい風の時に鮫島の持ち味を活かした全力疾走をするというのが第2作戦である。風の吹かない前半は従来の作戦通りペースを抑えて走り、予測通り風が吹けば切り替えるというのがスポーツ気象班の提案だった。

鮫島は風が吹くかどうか半信半疑だった。また、レースの3日前になって急に新しい戦略を提示されたことにも困惑した。
朝岡(西島秀俊)は、自分たちスポーツ気象班の役割は情報提供までであると話した。その情報を信頼し、従うかどうかの決断は鮫島に任せると話した。

そうして、選考会の日になった。
百音だけが会場に付き添い、各種観測機器やビデオカメラを設置した。そのデータは即座に会社に送られ、スポーツ気象班の他のメンバーたちが会社でリアルタイムの分析を行った。現場への指示は電話で行い、百音がトラック脇から鮫島に伝達することになった。

選考会は鮫島ひとりで行われた。トラック52周を55分20秒以内にゴールできれば強化選手に選出される。

前半は予想通り風が吹かなかった。しかし、第1作戦に従ってペースを抑えた走りでも良好なラップタイムであった。
けれども、終盤が近づくにつれてラップタイムが落ち始めた。このままではあと一歩のところで標準記録に届かない可能性がある。

残り14周(残り約25%)のとき、百音は上空の雲の流れが変化したことに気づいた。会社のメンバーに確認すると、確かに風向きの変わり目であった。ここが作戦の切り替え時である。百音は鮫島に指示を出した。

鮫島はその声を聞いた。しかし、従うかどうかは鮫島に一任されていた。

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NHK『おかえりモネ』第63回

このあと9時から僕の住む自治体の40歳以上への新型コロナワクチンの予約受付が始まるので、はりきっている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第63回めの放送を見ましたよ。

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第13週『風を切って進め』

鮫島(菅原小春)の代表選考会まであと6日となった。
強化選手に選ばれる標準タイムはハーフマラソン55分20秒であるが、この日の鮫島の記録は55分29秒であった。もう少しのところでタイムが伸び悩んでいた。

鮫島も少し元気がなかった。付き添いに来ていた百音(清原果耶)に本音を話しはじめた
スポーツ気象班が立てた作戦は、鮫島の深部体温の上昇を抑えるため、ラップタイムを守って控えめな走りをするというものである。しかし、そうすることで鮫島は走るのが面白くなくなったと言うのだ。
鮫島は風に強い選手であることを自覚している。他の選手の背後について風よけにし、ラストスパートまで体力を温存する。しかし鮫島は、早い段階で前に出て、他の選手から風よけに利用される間もなく引き離し、そのまま逃げ切るのが好きなのだと言う。向かい風を自分で切り裂いていく感覚は自分にしかわからない気持ちよさなのだ。

そこで百音はあらためて鮫島の過去のレース当日の気象データやや、次の選考会当日の最新の風の予報を調べ直した。すると、確かに鮫島が優勝した日はいずれも風の強い日だった。そして、選考会当日は強い風が吹くと予想されていた。

シェアハウスに顔を出した鮫島に対し、百音はそのことを報告した。そして、本番で思うようにタイムが伸びなかったら場合はペースを抑えるのではなく、鮫島本人の持ち味である先行逃げ切り作戦に切り替えてよいのではないかと提案した。もう一歩のところで標準記録に届かないのは、鮫島が自分の走る感覚を抑え込んでしまい、強みを発揮できないのではないかと説明した。

その提案を受けた鮫島は激しく怒り出した。
これまで鮫島は自分の感覚だけを頼りに走り、次第に結果が残せなくなった。だから、データ重視の方針に切り替えたのだ。自分の感覚に頼る精神論ではなく、データに裏打ちされた科学的方法に従うと決めたのだから百音の助言など聞く耳を持たないと吐き捨て帰ってしまった。

代表選考会3日前。スポーツ気象班のみでミーティングが行われた。
百音が鮫島を怒らせてしまったことについて、朝岡(西島秀俊)にも叱られた。気象予報は常にいくつかの可能性が考えられる。選手を迷わせるような軽はずみな発言は避けなければならないからだ。

一方で朝岡は、百音が鮫島の変化に気づいたことは評価した。
気象状況は常に変化し得るものであり、変化したら即座に別のプランに変更する必要がある。鮫島に変化があったことも同様であるし、より強い風が吹くという予想も出てきた。

そこで朝岡は、別のレース戦略を準備することとした。

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NHK『おかえりモネ』第62回

タイミングを逸してしまったけれど、8月7日の蒔田彩珠さんのお誕生日をお祝い申し上げる当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第62回めの放送を見ましたよ。

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第13週『風を切って進め』

鮫島(菅原小春)の練習場からの帰り道は雨だった。傘を持っていない菅波(坂口健太郎)と共に、百音(清原果耶)は相合い傘で帰路についた。
しかし、ふたりで食事に行ったり、百音のシェアハウスに寄っていくよう誘うなどと行ったことはなく、それぞれはまっすぐ家に帰った。それを聞いた明日美(恒松祐里)はあまりにも奥手である両者にがっかりした。

9月9日(代表選考会16日前)、鮫島が暑さに弱い原因が判明した。彼女は深部体温(体の内部の体温)が上がりすぎる体質であり、そのためにパフォーマンスが落ちていると推定された。競技中の深部体温上昇を抑えることができれば有利にレースを進められるはずである。しかし、その方法はすぐには思いつかなかった。

勤務後、百音はいつものようにコインランドリーにいた。菅波(坂口健太郎)も現れ、ふたりで深部体温抑制の方法について話し合っていた。
そこへ菜津(マイコ)と明日美が顔を出し、アイスクリームがあるから一緒に食べようと誘った。

1週間後の9月16日は百音の誕生日である。明日美は菅波にアクションを起こすよう言外に迫った。その剣幕に慌てた菅波は大急ぎでアイスクリームを頬張った。そのため、激しいアイスクリーム頭痛に襲われてしまった。
しかし、それが怪我の功名となり、鮫島の深部体温抑制のアイディアに結びついた。

車椅子マラソンでは、車椅子にドリンクを搭載し、いつでも水分補給をすることができる。菅波は、通常のドリンクではなく、凍らせたドリンクを細かく砕いたものを補給することを提案した。氷は通常の液体よりも温度が低い上、表面積も大きくなるので効果的に体の熱を取ってくれるという。
通常のドリンクよりも粘度が高くなるので吸い込みにくいという欠点はあるが、鮫島の吸引力であれば問題はなかった。また、鮫島は幸運なことにアイスクリーム頭痛になりにくい体質だった。

氷状のドリンクを使用するようになり、鮫島のパフォーマンスも劇的に向上した。選考会当日の気温は高いと予想されており、前半はペースを控えて深部体温の上昇を抑制し、後半のパフォーマンスを落とさないようにするというレース戦略も決定された。

9月16日の夜、百音の21歳の誕生日パーティーがシェアハウスで行われた。
親しい人々が集まってくれて、百音は楽しい時間を過ごした。
ただし、菅波は参加することができなかった。登米で担当している老婆の容態が悪化し、急遽往診に向かったのだ。

菅波からはメールが届いた。老婆の容態は落ち着いたと事務的な連絡であった。
最後に一文だけ、百音の誕生日を祝う言葉があった。

パーティが終わり自室に戻った百音は、以前に菅波からもらった中学生向けの理科の教科書を手にとった。それは気象の勉強を始めたばかりの頃、百音の19歳の誕生日に菅波から貰ったものだった。

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NHK『おかえりモネ』第61回

僕にとってはテレビがつまらなくて悪夢のような半月だったわけで、この間はチャンネルがほぼBSプレミアムに固定されていて、都合があってチャンネルを変える時に事故で一瞬目にしてしまったことはあったけれど、一切オリンピック中継を見ないと決めて過ごしていたわけで、それも昨日でやっと終わって心底せいせいしている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第61回めの放送を見ましたよ。

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第13週『風を切って進め』

9月5日、鮫島(菅原小春)の代表選考会まであと20日となった。
選考会会場の過去20年間の気象データを調べたところ、いずれの年も暑かった。今年も暑くなると容易に予想された。
鮫島は暑さにめっぽう弱い。過去のレース結果を見ても、冬のレースは優勝しているが、夏場のレースは如実に成績が悪かった。

代表選考会に向けて、暑さそのものに対する一般的な対策はもちろんのこと、鮫島自身の体質改善も課題となった。体質改善のためには医師の協力が不可欠である。
朝岡(西島秀俊)は、旧知の仲である中村医師(平山祐介)を会社に招き、協力を仰いだ。中村は大いに興味を示し、協力することを約束してくれた。

翌日、百音(清原果耶)はいつものように鮫島の練習場に詰め、中村医師の到着を待った。しかし、中村は約束の時間になってもなかなか現れない。

代わりにやってきたのは菅波(坂口健太郎)だった。
世間では医療従事者の長時間労働が問題視されている。菅波も超過勤務が続いていおり、勤務している大学病院から指導され、強制的に10日間の夏休みを取得させられたという。その時間を当てて、鮫島に協力することになったと説明した。
しかし、菅波は嫌がる風ではなかった。サメが常に泳いでいないと死んでしまうのと同じように、自分も常に動いていないと気がすまないのでちょうどよいのだと話した。

菅波の指導の下、鮫島は日々の体温や睡眠、食事、主観的ストレスなどを記録することになった。それと並行して、気温や湿度を人為的に変化させ、運動時のデータを詳細に収集した。全ては順調に進んでいった。

ある日、鮫島の練習場から帰るとき、雨が降っていた。
天気予報を見ていなかったという菅波は傘を持っていなかった。ふたりは百音の小さな折りたたみ傘で、照れながら一緒に帰路についた。

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NHK『おかえりモネ』第60回

今日やっと、今田美桜さんは佐藤めぐみさんの若い頃に似ていることに気付いて、それで俺は萌えているんだなと気付いた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』の第60回めの放送を見ましたよ。

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第12週『あなたのおかげで』

鮫島(菅原小春)のトレーニングに付き添った百音(清原果耶)は、朝岡(西島秀俊)が学生駅伝の選手だったことを話した。雨の予報を受けて対策したが、予報がはずれて熱中症でリタイアしたのだと教えた。それは鮫島がリオデジャネイロ・パラリンピックの代表選考会で失敗したのと全く同じことだった。朝岡が鮫島に肩入れする理由はそこにあると理解できた。

鮫島は、朝岡が自分だけではなく、チームメイトや大学の伝統まで潰してしまったことを悔いているのだろうと察した。駅伝は一人で行う競技ではないからだ。一方、鮫島が取り組んでいる車いすマラソンは個人競技である。だから、鮫島は他の人のことは気にせず、自分自身のためだけに走っている点が違うと話した。
けれども鮫島は、周囲の人々の協力が不可欠であることも痛感していた。そういった人々への感謝は忘れないし、必ず恩返しをしたいと考えているという。恩返しの方法としては、自分の頑張っている姿を見せることで、どこかの誰かを少しでも元気づけることだと話した。

百音はその考えに同意した。自分のために一生懸命やっていることが誰かのためになることは幸せなことである。
それはここ何日かの百音の悩みとも共通していた。人々を助けるという大義名分で災害予防を訴えている百音であるが、それは自己満足ではないかと神野(今田美桜)に指摘されてしまったのだ。今日の鮫島の言葉で、百音は少し気が楽になった。

鮫島を支援するスポーツ気象チームでは、鮫島の体質に関するデータ分析が不足していることが問題視された。一流アスリートには、専属ドクターによる体調管理が行われるケースが一般的である。しかし鮫島には専属ドクターがおらず、ましてやツテすらなかった。

百音は菅波(坂口健太郎)のことを思い出した。しかし、隔週で登米と東京を行き来している彼の負担のことを思うと簡単には頼めそうになかった。また、彼との関係を明日美(恒松祐里)にからかわれるのも避けたかった。

ずいぶんと逡巡した挙げ句、思い切って菅波にメールと電話で相談した。
しかし、菅波は素っ気なく断った。理由は百音が想像したとおり、登米との往復で時間がとれないというものだった。

そんなある日、仕事を終えた百音がシェアハウスに戻ると、そこには菅波がいた。いつものようにコインランドリーで洗濯していると、すっかり顔なじみになった菜津(マイコ)に留守番を頼まれたのだという。
菅波はあらためて鮫島の専属ドクターを引き受けることはできないと断った。百音もそれ以上は頼まなかった。

代わりに百音は、以前に菅波から言われた「『あなたのおかげで助かりました』という言葉は麻薬である」という言葉の意味を尋ねた。台風対策を事前に知らせたことで祖父・龍己(藤竜也)から感謝され、百音のおかげで助かったと言われたという。すごく嬉しかった反面、菅波の言葉を思い出して引っかかっているのだと説明した。

菅波によれば、その言葉は、自分に価値があると思わせてくれて気持ちのいいものだという。特に、百音のように自分は無力だと思っている人間にとってはこれ以上の快楽は無い。自分自身のためにその快楽を再び欲しくなり、周りが見えなくなるほど突っ走ってしまうのだと説いた。

そしてそれは、菅波自身の経験でもあるという。菅波はその快楽に溺れ、ある人の人生を奪ってしまったという。

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