NHK『あまちゃん』第82回

来週の放送で石田ひかり(本ドラマのチーフ・プロデューサーの訓覇圭の妻だったりする)が登場するという情報をゲットした当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第82回めの放送を見ましたよ。

* * *

第14週「おら、大女優の付き人になる」

母・よしえ(八木亜希子)が蒸発し1ヶ月、ユイ(橋本愛)はグレてしまった。高校を辞め、家にも帰らなくなった。改造車を乗り回し、チンピラ風の男(山田健太)と同棲しているという噂になった。ネット上には荒れたユイの写真が流出したりした。

アキ(能年玲奈)は鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の付き人となった。ドラマ『静御前』の撮影に立ち会い、鈴鹿ひろ美の見事な演技力と存在感に圧倒された。しかし、いったんカメラの前を離れると鈴鹿ひろ美はどこにでもいるような庶民的なオバサンになり、そのギャップにも驚かされた。鈴鹿ひろ美は外面はいいが、アキとふたりきりになるとスタッフや共演者の陰口を叩いたり、金に細かく、服装は地味で、同じ話を何度も繰り返すのだった。21時以降は一切ものを食べないと決めており、その時間を過ぎると急に機嫌が悪くなり、攻撃的になる。

鈴鹿ひろ美の付き人をやりつつ、アキはGMTの活動も行なっていた。毎日19時からは劇場のレッスンルームでダンスの稽古を行う。その日、稽古中のメンバーに鈴鹿ひろ美から鮨の差し入れがあった。無頼鮨で働き始めた種市(福士蒼汰)が出前すると共に、鈴鹿ひろ美が店で待っているというメッセージを伝えた。アキはすぐに無頼鮨へ向かった。

鈴鹿ひろ美は、自分のことをどう思うかアキから率直な意見が聞きたいという。それでアキは、遠慮なく思っていることを答えた。アキの意見は、鈴鹿ひろ美の芝居は最高だという。だから、人としての面白みや趣味などはなくてよく、芝居だけをやっていれば良いと話した。鈴鹿ひろ美は、芝居以外に能が無いと言われたことで機嫌を悪くした。突然ひとりで帰ると言い出した。

去り際、アキはどうして自分に優しくしてくれるのか訪ねた。鈴鹿ひろ美は「自分に似ているからだ」とだけ答えて帰っていった。

その後、アキと種市はビルの屋上でふたりだけで話をした。暦の上では11月になり、もうすぐ正月だ。アキは東京に来たばかりだから、正月も帰郷はしないという。一方の種市は、家族に会ったり、ユイの様子を伺うためにも北三陸市に帰る予定だという。

種市もユイが荒れているという噂を聞きつけ、彼女のことをひどく心配しているのだ。アキに対しても、北三陸市に一度帰って、ユイを励ましてやるべきだと提案した。しかし、アキはユイに会うつもりは一切ないという。ユイの心情を考えれば、今の姿を自分には見せたくないはずだからだ。親友の間柄にも緊張感は必要であり、ユイは常に自分の先を行っている存在でなければならない。だから、今のユイには会わないし、彼女がグレてしまったという噂も聞かなかったことにするという。

* * *

続きを読む

NHK『あまちゃん』第81回

昨夜、牛乳(というかカルアミルク)をがぶ飲みしたせいか、お腹がゴロゴロしている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第81回めの放送を見ましたよ。

* * *

第14週「おら、大女優の付き人になる」

功(平泉成)が順調に回復し、ユイ(橋本愛)の上京も目前となった。

そんな矢先、ユイの母・よしえ(八木亜希子)が失踪した。1週間待っても帰らず、ヒロシ(小池徹平)は警察に捜索願を提出した。お嬢様育ちだったよしえは、功の介護に疲弊し、何もかもが嫌になったのだと想像された。

よしえがいなくなったことで、ユイの上京は再び延期された。ユイは部屋に閉じこもり、荒れてしまった。事情を知ったアキ(能年玲奈)から気遣う電話がかかってきてもユイは電話に出ない。それどころか、ケータイを投げつけ、アキとの連絡を一切絶ってしまった。

同じ頃、アキは社長の荒巻(古田新太)に呼ばれた。アメ横女学園のトップ・有馬めぐ(足立梨花)が交通事故に巻き込まれたという。幸い軽いむち打ち症で済んだものの、怪我よりも大きな問題が発生したという。彼女は、男性俳優の運転する自動車の助手席に乗っていて事故に遭った。恋愛禁止のアメ横メンバーにとっては重大なスキャンダルである。相手の俳優の事務所は、事故の30分後に有馬めぐが同乗していたことを認めるFAXをマスコミに流した。ふたりの交際は週刊誌にも書かれることになり、劇場にも取材陣が殺到するだろうというのだ。

有馬めぐの代役担当のアキにとっては、千載一遇のチャンスだった。彼女のことを心配する素振りを見せながらも、顔には思わず笑みが浮かんだ。ところがそこへ、有馬めぐ本人が現れた。怪我は軽いし、男性俳優との関係においてもやましいところがないと言い切り、自分がステージに立つ決意であった。それを聞いて、荒巻も有馬めぐの出演を認めた。こうなることは全て荒巻の読み通りだった。新人を代役に割り当てることで、有馬めぐの奮起を期待し、その通りになったのだ。こうしてアキが表舞台に出る機会は立ち消えとなった。

その代わり、アキは鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の付き人に任命されることになった。水口(松田龍平)に連れられて無頼鮨へ行くと、鈴鹿は主演ドラマ『静御前』のスタッフたちと食事をしていた。鈴鹿はすでにアキが付き人になることを了承していた。しかし、アキはまだ決めかねていた。ユイとの約束でアイドルを目指しているはずなのに、付き人になることは遠回りなのではないかと思うからだ。しかも、ユイの上京が延びたことや、有馬めぐの代役がすんでのところで立ち消えになったことなどで虫の居所が悪かった。それで即断しかねたのだ。

しかし、鈴鹿はアキの態度にはお構いなしだった。しかも、鈴鹿はユイが上京できなくなったという事情まで全て知っていた。アキが訝しむと、種市(福士蒼汰)から話を聞いたのだという。なんと、仕事を辞めて故郷に帰るはずだった種市が無頼鮨で働いていた。

アキは種市にも腹を立てた。ユイが大変な状況にあると知っているなら、なおさら北三陸市に帰ってやるべきだと食って掛かった。しかし、種市は、自分には自分の考えがあると言って聞かなかった。それがどんな考えなのか、彼からの説明はなかった。大将・梅頭(ピエール瀧)がこっそり教えてくれたことによれば、アキが種市のことをプライドばかり高くて器の小さな男だとなじったことが効いたのだという。ふたりが店で口論した数日後、突然種市が訪ねて来て、店で働くことになったという。アキの説教が種市を変えたのだという。

その夜、アキは寮でGMTメンバーや水口と相談した。有馬めぐは、過去にも元カレとのプリクラ写真が流出し、半年間休業していたことがあるという。その時のつらい思いが反動となり、今や絶対に仕事に穴を開けないのだという。このまま有馬めぐの代役担当をしていても表舞台に出られる可能性はほとんどない。むしろ、鈴鹿ひろ美の付き人をしていたほうがチャンスが広がるかもしれないという結論になった。それで、付き人になることを承諾した。

それから1か月後。すっかりやさぐれたユイが、チンピラ風の男(山田健太)と一緒に北三陸駅に現れた。

* * *

続きを読む

NHK『あまちゃん』第80回

隣家へ引越しの挨拶に行ったところ乳児のいる若夫婦が住んでいたのだが、その奥さんが中学生に見えるほどの激烈ベビーフェイスだったせいで、思わず変な気を起こしそうになってしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第80回めの放送を見ましたよ。

* * *

第14週「おら、大女優の付き人になる」

アキ(能年玲奈)が種市(福士蒼汰)が劇場そばの無頼鮨で食事をしていると、社長の荒巻(古田新太)と鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)が連れ立ってやって来た。ふたりがただならぬ関係であると聞いていたことや、事務所では恋愛禁止のため種市と一緒にいるところを見られてはまずいため、アキはとっさに隠れた。

ふたりは付き人のことについて話をしていた。プライバシーを大切にしたいと考える鈴鹿は、先日運転手をクビにしたという。自分の行き先や自宅に、他人が常に付いて来ることに我慢がならないのだという。専属運転手までクビにするという鈴鹿の潔癖症に荒巻は呆れた。そして、以前に荒巻も鈴鹿のマネージャーをしていて、1年間でクビにされたことを引き合いに出し笑うのだった。

荒巻は、鈴鹿に新しい付き人を薦めた。岩手から来た面白い子がいて、鈴鹿のデビュー曲「潮騒のメモリー」を歌っているので調度良いと言うのだ。それはまさにアキのことであった。鈴鹿は、同じ店で一度アキに会っているし、アキも「潮騒のメモリー」のことを鈴鹿に話した。しかし、鈴鹿はそのことがうろ覚えであった。そこまで話すと荒巻は仕事があると言って先に帰り、まもなく鈴鹿も帰っていった。

ふたりが帰り、やっとアキは緊張がとけた。同じく話を盗み聞いていた種市も、芸能界の厳しさを垣間見た思いがした。

話題はユイ(橋本愛)のことに戻った。彼女の上京を信じて疑わないアキに対して、種市はユイはすでに上京を諦めているのではないかと話すのだった。これまで順風満帆で挫折したこともなくプライドの高いユイなので、今の状況に耐えられないはずだと言うのだ。北三陸市で地方アイドルとして活躍するのが良いだろうと意見を述べた。

それを聞いたアキは激昂した。ユイを侮辱したことはもちろんだが、種市の何事にも対する後ろ向きな態度に腹がたったのだ。以前の種市は何事にも熱く、真っ直ぐであった。田舎にいれば田舎の悪口を言い、東京では東京の悪口を言うような人間を嫌っていたはずだ。しかし、今や種市は正反対になったと詰った。東京の悪口を言い、仕事を辞めて故郷に帰るという種市に激しく失望したのだ。自分の初恋の相手の器の小ささを知り、怒りと悲しみが渾然一体となった。

アキの大声は、店の大将・梅頭(ピエール瀧)からもたしなめられるほどだった。それを潮にふたりは帰ることにした。種市が支払いをしようとすると、梅頭はすでに鈴鹿ひろ美から代金をもらっているという。アキは、鈴鹿がアキの存在に気づいていたのだと知った。

その頃、ユイの父・功(平泉成)は順調に回復していた。家族が付きっきりでリハビリの介助をすることで、通常よりも早いペースで回復している。もうすぐ退院もできそうだという。

しかし、功の回復とは反比例するかのように、ユイの母・よしえ(八木亜希子)は憔悴していった。功が倒れてから1ヶ月半、ずっと緊張していたのだが、退院が近づくに連れて気が緩んできた。それまでの反動で疲れが一気に出てきたのだ。

よしえはひとりで病院から家に帰ろうとしたが、どうにも家へまっすぐと足が向かなかった。喫茶リアスに立ち寄り、春子(小泉今日子)とふたりきりで話をした。春子もよしえの疲労を感じ取った。無理をせずに、街の人々に助けを求めることをアドバイスした。どうせみんな暇でおせっかいなのだから、良くしてくれるはずだという。しかも、春子や駅長・大吉(杉本哲太)、観光協会長・菅原(吹越満)はいずれも高校教師時代の功の教え子であり、協力を惜しまないと言って励ました。

功の退院の目処が立ったことで、ユイも上京の準備を再開した。そして、ユイはアキにメールを送った。その文面はこれまでのように空虚なものではなく、心のこもったものだった。アキの頑張りに自分も励まされた、必ず上京するというアキとの約束をもうすぐ果たせそうだなどと、前向きな言葉が綴られていた。それを見て、アキも喜んだ。

ある晩、アキは無頼鮨の裏口に佇んでいた。ごみの処分に出てきた大将・梅頭は、アキの思惑を理解した。アキは鈴鹿に礼を言いたいのだ。ちょうど鈴鹿が店に来ていたので、アキを店内に入れてやった。

アキは鈴鹿に2度も会計をもってもらったことの礼を言った。そして、改めて自己紹介をした。鈴鹿は上機嫌で話を聞いた。

* * *

続きを読む

NHK『あまちゃん』第79回

本ドラマの先週(第13週)のサブタイトルは「おら、奈落に落ちる」だったわけだが、それをもじって「おれ、奈良に落ち着く」(本当は奈良のすぐそばの京都府だけど)とひとりごちている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第79回めの放送を見ましたよ。

* * *

第14週「おら、大女優の付き人になる」

アキ(能年玲奈)は憧れの鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)と会うことができて有頂天になった。しかし、水口(松田龍平)によれば、そのことはあまり口外しない方がいいという。なぜなら、社長の荒巻(古田新太)と鈴鹿ひろ美は過去に何事かあったらしいからだという。

アキはユイ(橋本愛)に電話をかけるが、いつも留守電に繋がってしまう。それでも、電話をかけるたびにメールで返事だけは返してくれた。

ところが、ヒロシ(小池徹平)と電話で話したところ、ユイは学校に行っていないという。父・功(平泉成)の看病で学校を長期で休んだせいで、なんとなく登校しにくくなったのだという。この間、第2回ミス北鉄コンテストでユイが再度グランプリに選ばれた。しかし、ユイは授賞式も欠席したという。なまじ有名人になり、上京するはずができなくなってしまい、ユイは表舞台に出たくないと思っているのだ。以前は街でファンに声をかけられれば愛想よく応じていたのだが、今では無視したり怯えて逃げまわったりするようになってしまった。

そんなユイの姿を見て、駅長・大吉(杉本哲太)や副駅長・吉田(荒川良々)は、ユイの元気が出るように何かをしてやろうと考え始めた。しかし、春子(小泉今日子)はそんなふたりを叱った。こういう時は、介入しないでそっとしておくのが一番なのだ。

ヒロシから話を聞いて、アキはユイのことが心配になり始めた。話を聞いてもらうために、上野で屋台を開いている安部(片桐はいり)を訪ねた。するとそこへ、安部のまめぶ汁の常連客となった種市(福士蒼汰)も現れた。アキと種市は、劇場近くの無頼鮨へ場所を移してゆっくりと話をすることにした。

アキは、ユイからもらったメールを種市に見せた。ヒロシの話だとユイはふさぎ込んでいるとのことだが、アキに送られてきたメールの文面は元気なので矛盾しているというのだ。そのメールを見た種市は、すぐに不審な点を見つけた。短い文面の中に4回も「(私は)大丈夫」と書いてあるのだ。尋常な精神状態で書いたものではないというのが種市の見立てだった。種市もユイのことを心配し始めるのだった。

アキは、ユイのことがつくづく素晴らしいと思った。そこにユイがいなくても、みんながユイのことを気にかけるからだ。彼女と遠距離恋愛中の種市は当然としても、事務所でもみんながユイに期待を寄せている。ユイこそスターの素質を持ち、表舞台に立つべき人間だと思うのだった。

種市は、自分が仕事を辞めたことを告白した。ユイのことも気になるし、来週にでも田舎に帰り、新しい仕事を始めるつもりだという。種市は羽田空港の滑走路拡張工事の潜水夫として建設会社に就職した。しかし、その会社は東京スカイツリーの工事も請け負っており、種市は配置転換でスカイツリーの現場に回されたという。潜水の仕事ができなくなっただけではなく、強度の高所恐怖症である種市は仕事のやる気をすっかり失ってしまった。それで会社を辞めたのだという。

アキは内心で種市に失望した。何事にも熱くて真っ直ぐだった種市はもういないと思うのだった。

その時、無頼鮨へ荒巻と鈴鹿ひろ美がふたり揃って入ってきた。ふたりがただならぬ仲だと水口から釘を差されていたアキは、思わずこそこそと隠れるのだった。

* * *

続きを読む

NHK『あまちゃん』第78回

本日からアメ横女学園の「暦の上ではディセンバー」の配信が始まり(レコチョクほか)、早速購入したが2回ほど聞いて再生を止め、もっぱら「潮騒のメモリー」の替え歌「シロコロのメモリー」(歌詞文末)を自作して歌っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第78回めの放送を見ましたよ。



* * *

第13週「おら、奈落に落ちる」

ユイ(橋本愛)が2週間ぶりにスナック梨明日に姿を現した。町の大人たちはユイを歓迎し声をかけるが、ユイはむっつりとして急に店を飛び出してしまった。

春子(小泉今日子)だけはユイの気持ちを察し、大人たちを叱りつけた。上京が取り止めになって傷ついているところに、大人たちが腫れ物に触れるような接し方をすればますます傷つくというのだった。不自然に歓迎したり、上京したアキ(能年玲奈)のこと、ミス北鉄のことなどをまくし立てたせいでユイは傷ついたのだと諭した。春子にはユイの気持ちがよく分かるのだった。

GMTメンバーの遠藤真奈(大野いと)は、初日こそ衣装替えで大失敗をしたが、それ以外は立派に代役を務め、3日間の公演を終えた。GMTメンバーと水口(松田龍平)は、劇場近くの無頼鮨で打ち上げを行った。

真奈は初日に失敗した時は、アイドルを辞めて田舎に帰ろうと考えたという。しかし、アキの励ましがあって思いとどまることができたと感謝した。その言葉から宴が始まり、メンバーたちは開放的な気分になって大騒ぎを始めた。座敷で踊り始めたり、大声でおしゃべりしたりと、他の客に迷惑をかけるほどだった。店主・梅頭(ピエール瀧)は無口な男だったが、GMTらのマナーの悪さに眉をひそめた。

宴会の幹事はアキだったが、自分で寿司屋に来るのは初めてだった。夏(宮本信子)に電話で相談したところ、おまかせでもひとりあたり2000円くらいあれば足りるとの事だったが、実際に並べられた鮨を見ると、到底その金額では収まりそうになく、内心ヒヤヒヤし始めた。水口の様子を横目で伺ったが、彼も金は持っていないようだった。水口は鮨に一切手を付けず、焼酎のふりをしながら水ばかり飲んでいた。いざとなったら逃げる気であることが手に取るようにわかったのだ。

メンバーは自分の好きなタレントについて語り合った。好きな女優を聞かれ、アキは迷うことなく鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の名を即答した。芸能界では鈴鹿ひろ美の評判はあまりよくないという。他のメンバーは彼女の悪口を言い立てるのだった。

その時、隣の座敷の女性客が会計を済ませ、店を出た。しかも、大将・梅頭や店員(日向丈)によれば、アキたちの分までその客が支払ってくれたという。アキはその客の顔を一瞥しただけで、鈴鹿ひろ美本人だと気付いた。みんなは急いで店を出て彼女を追いかけた。

鈴鹿ひろ美は、自分もGMTらと同じくらいの年頃から芸能活動をやってきたし、みんなの話を漏れ聞いて気分が良くなったのだという。それで支払いをさせてもらったと、爽やかに答えた。GMTのメンバーは、うっかりと鈴鹿の悪口を言ってしまったことを深く謝罪した。それを受け入れ、鈴鹿はタクシーに乗り込んだ。

アキはタクシーの鈴鹿を捕まえ、握手を求めた。自分が鈴鹿の大ファンであることをもう一度話し、鈴鹿に憧れて上京したと自己紹介した。「潮騒のメモリー」がとても好きだということも説明した。それを聞いた鈴鹿は、いつかアキと一緒に芝居をしようと約束し去っていった。

アキは鈴鹿ひろ美にますます惚れ込むのだった。

* * *

続きを読む

NHK『あまちゃん』第77回

ヒゲを剃ってから行くべきかどうか激しく迷っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第77回めの放送を見ましたよ。

* * *

第13週「おら、奈落に落ちる」

アキ(能年玲奈)は上野で安部(片桐はいり)と再会した。

安部は栃木県宇都宮市のデパートで、北三陸市の紹介とまめぶを販売する店をやっていたが、それは失敗に終わったという。それでも故郷に帰るわけにもいかず、安いトラックを手に入れて立ち食いそばの屋台を開いたのだ。客の注文はそばとうどんばかりだが、まめぶもメニューに載せ、口頭で地道に宣伝しているのだという。ごくわずかだが、まめぶを求める常連客もできたという。

アキは久しぶりに安部のまめぶを食べた。特に美味しいものではないが、安部の作るまめぶ汁はアキの大好物だ。上京して2週間だが北三陸市を懐かしく思い、安部との再会も大いに喜び、心が晴れ晴れとした。

ところが、アキが寮に帰ると、正宗(尾美としのり)が待ち構えていた。正宗はアキの芸能活動に猛反対し、説教を始めた。

しかし、正宗との話し合いの途中で、GMT47に大ニュースが飛び込んできた。アメ横女学園のメンバー・成田りな(水瀬いのり)が体調不良で休演することになったので、その代役として遠藤真奈(大野いと)がステージに立つこととなった。当の真奈は緊張のあまり胃が痛くなってしまったが、GMTのメンバーが出演するのは初めてのことで、みんなは大いに盛り上がった。そのどさくさで、正宗のことは無視されてしまった。

いよいよ真奈の代役本番となった。ところが、真奈は衣装替えの段取りを間違えてしまい、アーミールックに着替えるべきところをパンダの衣装を着てしまった。再び着替える時間は残されておらず、仕方なくパンダの姿のままステージに出た。この失敗により、真奈はもちろんGMTのメンバー全員が、アメ女の正式メンバーたちから白い目で見られる事となった。

それ以外はうまくこなした真奈であったが、衣装替えの失敗が後を引き、終演後にひどく落ち込んでしまった。その日は、珍しく社長の荒巻(古田新太)も劇場に来ており、彼に失態を見られてしまった形になるからだ。

彼女に引きこまれ、他のGMTメンバーたちも沈み込んだ。そんな中、アキだけはマイペースだった。ステージ下のレッスンルームで陽の目を見ないよりも、いくら失敗したとしてもステージの上で客の目に触れる方が良いに決まっていると話した。自分たちはステージ下の「奈落」から真奈のことを応援しているから、翌日からの代役も精一杯頑張れと応援した。その言葉に、真奈をはじめメンバー全員の士気が上がった。

その頃、水口(松田龍平)は荒巻とGMT47の事について話し合っていた。荒巻は、自分の経験に照らして、アイドルユニットの成功はそれほど簡単なことではないと話した。アメ横女学園でさえ、人気が出るまで4年間の下積みがあった。水口がGMT47プロジェクトを性急に進めていることについて、もっと慎重に事を運ぶように注意を促した。また、アキについては、訛りのある独特のキャラクター以外には特に見るべき点がないと言うのだった。アメ女のトップメンバー・有馬めぐ(足立梨花)の代役に抜擢したことについても、近頃増長している有馬めぐを反省させるための当て馬であることを認めた。

水口は黙って荒巻の話を聞いていたが、彼には野心があった。GMT47をアメ女の単なる2軍で終わらせるつもりはないのだ。上野の東京EDOシアターを飛び出し、武道館をファイナルとする全国ツアーもできるアイドルユニットにしたいと考えていた。必ず47都道府県の全てからアイドルを集めることを決意している。仮にメンバー招集に失敗し、今のメンバーも辞めたとしても、最後の1人になるまで見捨てるつもりはない。GMT47は水口が初めてひとりで任されたプロジェクトであり、彼も熱意を持って取り組んでいるのだ。

水口は、自分の野心をGMTのメンバーに聞かせた。メンバーたちはそれを聞いて、ますます意気が揚がるのだった。

北三陸市では、第2回ミス北鉄コンテストが開かれようとしていた。しかし、初代チャンピオンのユイ(橋本愛)に比べて、地元にはこれといった候補者もおらず、どうも盛り上がりに欠けるのだった。

そんな中、喫茶リアスにヒロシ(小池徹平)とユイが現れた。

* * *

続きを読む

NHK『あまちゃん』第76回

NHKの公式サイトでアメ横女学園の特集ページができつつあることを知り、その気合に頭がクラクラするけれど、顔はニヤニヤしてしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第76回めの放送を見ましたよ。

* * *

第13週「おら、奈落に落ちる」

アキ(能年玲奈)は春子(小泉今日子)が自分の半生を綴った手紙を読んでいた。

春子(有村架純)は1984年夏に上京しオーディション番組でチャンピオンになったものの、その番組が急遽打ち切りとなり、歌手デビューへの道が絶たれてしまった。故郷に帰るわけにもいかず、原宿・竹下通りの近くにある純喫茶アイドルでアルバイトをしながらアイドルデビューを目指すことになった。喫茶店主・甲斐(松尾スズキ)がかわいがってくれたこともあり、春子は前向きに努力していた。

しかし、オーディションでの春子は落選続きであった。春子はボイストレーニングやダンスレッスンに力を入れ、プロ意識を持って応募していた。しかし、時代が変わり、おニャン子クラブのような素人っぽさを全面に押し出すアイドルがもてはやされるようになっていたのだ。春子のような玄人的な女の子は審査員の受けが悪かったのだ。

春子が上京して1年ほど経った頃、荒巻(古田新太)が純喫茶アイドルに現れた。オーディション番組の専属ダンサーをやっていた荒巻だが、彼も番組の打ち切りで仕事を失ってしまった。それを機にダンサーを辞め、今はタレントのスカウトをしていた。街で声をかけた少女(神定まお)を説得するために喫茶店に来たのだ。しかし、スカウトとしてはまだ半人前の荒巻は、少女に逃げられてしまった。

春子は素知らぬふりをして彼らの話を聞いていた。そして、荒巻が目を離した隙に、テーブルの上に放置されていた彼の名刺を盗んだ。

春子の手紙はそこで終わっていた。アキは春子と荒巻が知り合いらしいことに驚くとともに、いい所で手紙が終わっていることにがっかりした。そして、娘を気遣う母親らしい言葉がほとんど書かれていないことにもがっかりした。

寮の居間で熱中して手紙を読んでいたアキは、そこに水口(松田龍平)がいたことに気づかなかった。水口は北三陸市へ行って、ユイ(橋本愛)の様子を探ってきたという。結局ユイには会えなかったが、母・よしえ(八木亜希子)から詳しい話を聞けたという。脳の疾患で倒れた功(平泉成)の手術は成功し意識は戻ったものの、重度の後遺症があり家族総出での介護が必要だという。ユイがつきっきりで看病しており、功の回復の目処が立たないうちは上京することもできないのだという。

ユイの状況を説明した上で、水口はアキの意思を再確認した。元々、上京することはユイの意向であり、アキはその付添いのような形だ。ユイが来れなくなってしまった以上、アキが帰郷したいと言うならそれを認めるというのだ。

しかし、アキは東京に残ることを強く主張した。今朝、荒巻から有馬めぐ(足立梨花)の代役に抜擢されたことを報告し、それをチャンスとして頑張ることを宣言した。そして、ユイとの約束を果たすために、彼女の上京を待ち続けるというのだ。

水口によれば、荒巻の決定は単なる気まぐれかもしれないという。実力の劣る新人を代役にすることで、正式メンバーの危機感を煽り、彼女らを奮起させることがよくあるのだという。特に、近頃の有馬めぐは天狗になっていたので、反省を促したというのが水口の見立てだった。有馬めぐが本気を出せば、体調管理を徹底させ、休演することはないだろうという。そうなるとアキの出番は一切ないのだ。それでもアキは諦めずに頑張ることを誓った。

翌日、ユイからアキへメールが届いた。その文面は明るく前向きなもので、アキは改めて勇気づけられた。

一方で、アキの毎日はとてもハードなものだった。ひたすらダンスの稽古をすると共に、アメ横女学園の公演が始まると裏方としてメンバーの着替えや力仕事をやらされた。就寝前には寮でGMT47のメンバーと危機感を持ったミーティングが行われた。特に、自分たちがいつまでも縁の下の力持ちばかりで日の目を見ないままではいけないと意識合わせが行われた。

上京して1週間が経ち、2学期が始まった。アキは新たに朝日奈学園芸能コースに通うこととなった。芸能活動で売れている生徒は学校に来ることができず、クラスの半分近くが欠席していた。このクラスでは、遅刻や欠席がステータスなのであった。

アキは忙しい毎日に慣れ始めてきたが、荒巻とは一度会ったきりだ。有馬めぐの代役として具体的な指示は全くない。水口の言うとおり、自分の大抜擢は単なる気まぐれだったのではないかと心配になり始めた。

そんな時、アキは街で「まめぶ」という声を聞いた。その声が聞こえた立ち食いそばのトラック屋台を覗いてみると、そこにいたのは懐かしい安部(片桐はいり)だった。

* * *

続きを読む

NHK『あまちゃん』第75回

古田新太が踊る大和ハウス工業株式会社のCM「ベトナムにも」篇の大好きな当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第75回めの放送を見ましたよ。

* * *

第13週「おら、奈落に落ちる」

誰よりも早くレッスンルームに向かったアキ(能年玲奈)は、ひとりで踊りながら振り付けを考えている荒巻社長(古田新太)に出くわした。

荒巻は新しい振り付けに悩んでおり、アキに意見を求めた。実際には荒巻は深く考えもせずに声をかけただけだったのだが、アキは自分のアイドルとしての資質が試されているのだと勘違いした。荒巻が提示した候補を無視して、自分なりの振り付けを考案して提案した。すると、即座にアキのアイディアが採用された。そこへ、アメ横女学園のトップ・有馬めぐ(足立梨花)が姿を現した。荒巻は、アキの考えた振り付けを有馬に早速教えた。

荒巻はそこで初めてアキが誰なのか尋ねた。アキが北三陸市から来たことを説明すると、やっと荒巻はアキの事を思い出した。そして、その場で急に有馬めぐのシャドウにすることに決めてしまった。つまり、有馬めぐが病気や怪我で休演した時にアキが代役となるのだ。有馬は、無言の微笑で応えたが、荒巻やアキの見えない所で不服な表情を浮かべた。

他のGMT47のメンバーに聞いたところ、荒巻は元ダンサーで、田原俊彦のバックを務めたほどだったという。そのような経歴を持っているため、自分がプロデュースするときは、はじめに振り付けを考えるのだという。通常なら、曲や詩が先にあってそれに振り付けをするのだが、荒巻の場合は順序が逆なのだという。メンバーたちは、音楽なしに踊りを作れる荒巻の才能を褒め称えた。

アキの上京を知った父・正宗(尾美としのり)は春子(小泉今日子)に電話をかけた。正宗は、自分が女性(大久保佳代子)と交際していることは一切伏せた上で、アキが芸能界のような浮ついた世界に入ることを猛反対した。そのことについてすでに北三陸市で散々やりあった春子は正宗の相手をするのが面倒くさくなった。荒巻の事務所に入ったとだけ説明した。彼の何かを知っている正宗は、一方で安心するような、他方でむしろ心配するような素振りを見せた。

その日の夜、アキは春子から渡された手紙の存在を思い出し、読み始めた。そこには春子がアイドルを目指して上京した時の様子が書き綴られていた。

1984年夏、素人参加型オーディション番組「君でもスターだよ!」に出場した春子(有村架純)は、松田聖子の「風立ちぬ」を歌った。歌い出しのリズムも高音の伸びも申し分なく、春子は手応えを感じた。ただし、審査委員長(浜田晃)のヘッドフォンのコードが抜けていて、彼が聞いたふりをしていることだけは気になった。それでも春子はチャンピオン(渡辺万美)に圧勝し、新たなチャンピオンの座についた。

ところが、最後に司会者(小藪千豊)から今日の放送で番組が終了することが発表された。来週からは素人参加型モノマネ番組に変わるのだという。せっかくチャンピオンになったのだが、春子の活躍の場がなくなってしまったのだ。モノマネをするなら来週も出演してよいと言われたが、春子にはモノマネをする能力も意欲もなかった。

失望した春子がテレビ局の廊下を歩いていると、番組の中で春子のバックダンサーを務めていた男とぶつかった。彼も番組の打ち切りでダンサーとしての仕事を失い、ショックを受けていたのだ。その男こそ、若き日の荒巻であった。

* * *

続きを読む

NHK『あまちゃん』第74回

「♪ずんだ ずんだ~」(The Blue Hearts『リンダリンダ』の替え歌)と歌っている仙台ギュウタンガールズの小野寺薫子を演じている優希美青山瀬まみ足立梨花と同じくホリプロタレントスカウトキャラバンのグランプリ(2012)だと知った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第74回めの放送を見ましたよ。

* * *

第13週「おら、奈落に落ちる」

芸能界の厳しさに、アキ(能年玲奈)は上京初日から打ちのめされた。その辛さを慰めてもらおうと、別れた父・正宗(尾美としのり)の住むマンションへ向かった。

しかし、家にはアキの知らない女(大久保佳代子)がバスローブ姿でくつろいでいた。正宗の説明によれば、同窓会で再会した中学校の同級生で、彼女もバツイチだという。彼女と深い中になったのは春子(小泉今日子)と正式に離婚した後なので(離婚12月24日、同窓会1月4日)、決して不倫ではないと弁解した。

正宗に慰めてもらうために来たはずなのに、アキはさらなる悩みを抱え込んでしまうこととなった。その時、春子から様子を伺う電話がかかって来た。アキは正宗に会いに来たことは話したが、女がいたことは隠しておいた。しかし、アキの口調から春子は何か不審なものを感じるのであった。

アキは実家に住むわけにもいかず、あてもなく東京の町をさまよった。町を歩いていると、東京の学校でアキをいじめていたクラスメイト(星名利華宮城美寿々)に出くわした。彼女らはアキが地方アイドルになったことを知っており、そのことをからかった。アキは辛くなり、泣きながら逃げ出した。

行き場所のなくなったアキは、水口(松田龍平)に連絡を取り、谷中にあるGMT47の合宿所に住まわせてもらうこととなった。ただしそこは、古い民家で風呂もなく、寝室も2-3人で共有するという形式であった。しかも、プライバシーの少ない建物構造にも関わらず、水口も同じ家屋に住んでいるという。正宗以外の男性と一緒に寝泊まりしたことのないアキは緊張した一夜を過ごした。

それでも、アキは比較的スムーズに馴染むことができた。昼間は留守だったGMT47のメンバー宮下アユミ(山下リオ)に初めて会うと、アキは岩手出身だということを盛り込んだ奇妙なポーズを交えて自己紹介を行った。その様子には水口も感心した。また、メンバーたちが自炊する料理も、各自の故郷の食材がふんだんに盛り込まれた地方色豊かなものだ。アキはその食卓に感激したし、他のメンバーたちもアキのキャラクターをすぐに気に入った。

水口はアキにアメ横女学園のCDやDVDを手渡し、振付を覚えるよう命じた。アキは朝食を終えると、それらの資料を持って誰よりも早く劇場のレッスンルーム「奈落」へ向かった。すると、そこでは社長の荒巻(古田新太)がひとりで振り付けの確認をしていた。アメ横女学園のメンバーですらなかなか会えない人物なのだが、アキはいきなりふたりっきりとなってしまった。

* * *

続きを読む

NHK『あまちゃん』第73回

以前にガイドブックであらすじを読んだ時、どこでどう計算を間違えたのか東京編は7月からだと思いこんでおり、いろいろ運命的だなぁと思っていたのだけれど、今日から東京編になったことで肩透かしを食らった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第73回めの放送を見ましたよ。

* * *

第13週「おら、奈落に落ちる」

1984年夏、アイドルを目指して家出し上京した18歳の春子(有村架純)は上野のアメ横を見物した。それから25年、2009年夏に17歳のアキ(能年玲奈)も同じ場所に立った。

アメ横の入り口には、1年前にオープンした「東京EDOシアター」があった。荒巻(古田新太)率いる芸能事務所ハートフルが作った劇場で、アイドルユニット「アメ横女学園」の公演が行われている。平日は19時半からの1ステージだけだが、週末には1日に2ステージ行われる。アキは東京EDOシアターに向かい、マネージャーの水口(松田龍平)に出迎えてもらった。

ユイ(橋本愛)の父・功(平泉成)が倒れ、彼女が来れなくなったことはまだ水口に伝わっていなかった。1人で上京したアキから事情を聞くと、水口は激しく動揺した。水口はユイをグループのセンター候補にするつもりで、事務所のスタッフにもそう豪語していたからだ。水口はアキに八つ当たりをし、アキも申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

アキは水口に連れられ、劇場スタッフにあいさつ回りをした。社長の荒巻は渋谷の本社にいて、劇場にはめったに顔を出さないため、彼に会うことはできなかった。その代わり、チーフマネージャーの河島(マギー)には会うことができた。アキとユイの顔を知らない河島は、水口にアキは「かわいい方」なのか「訛ってる方」なのかと尋ねた。水口は事務的に「訛ってる方」だと答えた。それ以後、アキは会う人全てから同じ質問を投げかけられ、毎回水口は同じ回答をした。

劇場内にはメンバーの名札表が張り出されていた。総勢40名近いメンバーが序列に従って上から下へと並べられている。トップメンバーの「アメ女八賢伝」を筆頭に、約20名がレギュラーと位置づけられていた。他の20人は補欠だという。しかし、アキの名札はアメ横女学園の補欠にも入れてもらえなかった。彼女が所属するのは、アメ横女学園のさらに下の「GMT47」だからだ。そこには現在5人の名札が張られていた。

アキは、休憩中のメンバー高幡アリサ(吉田里琴)13歳と成田りな(水瀬いのり)15歳に会った。ふたりはステージで披露するのと同じく、奇妙な自己紹介を行った。アキは自分よりも年下の先輩がいること、そして彼女らの独特のテンションに呆気にとられた。水口からは、アキも同じようなユニークな自己紹介を考えるよう言われた。東京についてまだ2時間しか経っていないが、早くも北三陸市に帰りたくなった。

続いてアキは、ステージのリハーサルを見学した。トップメンバーの有馬めぐ(足立梨花)を中心に、華やかなステージだった。アキはその様子を写真に撮り、ユイにメールで送ってやった。自分たちも同じステージに立てることを楽しみにした。

しかし、水口からはそう簡単にステージに上がれると思うなと釘を差された。誰しも最低1年はレッスンを積んでいるのだという。しかも、アキの所属するGMTは代役専門だという。メンバーに怪我や急病でもなければ表舞台に立つことはないのだという。最後に水口は、アキを「奈落」と呼ばれるレッスンルームに案内した。そこはステージの真下に作られた部屋で、ステージの音が漏れ聞こえてくる。

「奈落」にはGMT47のメンバーがたむろしていた。埼玉出身の入間しおり(松岡茉優)、福岡の遠藤真奈(大野いと)、沖縄の喜屋武エレン(蔵下穂波)、仙台・小野寺薫子(優希美青)らであった。アメ横女学園のメンバーの華やかさとは異なり、彼女らは私服姿で、どこか気だるい雰囲気を醸し出していた。彼女らはアキのことや岩手県のことを何も知らなかった。唯一知っていたのは、「かわいい方」はセンター確定で、「訛っている方」は一般受けはしないけれどマニア受けするキャラであるという噂話だけだった。

その時、真上のステージではリハーサルが再開された。すると、彼女らは突如態度が変わり、曲に合わせて熱心に振付の練習を始めた。いつ来るかわからない代役の日に備えて、レッスンに励んでいるのだ。

1日が終わり、アキは早くも東京が嫌になった。想像以上に厳しい世界に心細くなった。

アキは、東京では実家のマンションを住まいとするつもりでいた。今は、別れた父・正宗(尾美としのり)が1人で暮らしている。しかし、アキも春子(小泉今日子)も事前に知らせてはいなかった。突然アキが家に現れたことで、正宗は激しく慌てた。アキが家に入ろうとしても、正宗は頑なに拒んだ。押し問答をしながら家の中を覗くと、バスローブ姿の女(大久保佳代子)がいるのが見えた。

* * *

続きを読む