コネチカット州の大学に勤める白人男性ウォルター(リチャード・ジェンキンス)は、全くうだつが上がらない。発展途上国への経済支援を専門にするが、近年は論文を全く書いていないし、講義内容も20年間変えていない。ピアニストだった妻に先立たれ、唯一彼女の思い出だけを胸に、無気力な毎日を送っている。
 ある日、お情けで共著者に加えてもらった論文の学会発表のため、ニューヨークに行くことになった。第一著者が産休のため、どうしても出張できなくなってしまったのだ。少しも気乗りしないのだが、発表をキャンセルするわけにもいかず、嫌々出かけていった。

 ニューヨークには、ずいぶん前に購入したアパートメントを持っていた。しかし、どこでどう話がもつれたのか、シリアとセネガルからそれぞれやって来た不法滞在のカップルが又借りして住んでいた。所有権を主張してふたりを追い出すウォルターであったが、行き先の無い彼らを不憫に思い、新しい住処が見つかるまで置いてやることにした。

 保守的なアメリカ文化に育ったウォルターと、アフリカ文化をルーツとする彼らの間には当然ぎこちなさがあった。ところがウォルターは、学会での付き合いに馴染めない一方で、シリア人タレク(ハーズ・スレイマン)の打楽器ジャンベに興味が惹かれていく。いつしか、彼と一緒にストリートで演奏するまでになる。

 そんなある日、とても些細な出来事のせいでタレクが警察に逮捕され、不法滞在が大きな問題となった。
 その事件を通して、ウォルターは良き/善き人生とは何かを考え始めるのだった。

扉をたたく人

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